Fallout archive   作:Rockjaw

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今回からいよいよブルアカ本編の時間軸です


Abydos Uprising, ed.
Kivotos, Upheaval


ある新月の夜。

 

闇の帳が下りるアビドスの砂漠の奥地にある廃工場群。

 

ここは現在、カタカタヘルメット団に占拠され本部として利用されている。

 

そんなヘルメット団本部で…

 

「「「………。」」」

 

ネイト、シロコ、ホシノの三人が静かにロープを窓から垂らし降下していた。

 

ロープの先やそれぞれの背中には荷物を満載にして。

 

直後、工場に鳴り響く警報と煌々と輝き始める照明群。

 

「そら逃げろ!」

 

「ん…今回も大量…!」

 

「うへ~良いモン持ってんねぇ~。」

 

いうが早いかそれぞれ荷物を背負い一気に走り出す三人。

 

と、そこへ、

 

「ネイトの親分!こっちも大量でさぁ!」

 

「新品の武器に弾薬、たっぷりですぜ!」

 

「へっへっへっ!こりゃたまらんですなぁ!」

 

別班として忍び込んでいた番長組と

 

「アニキぃ!しっかりとやってきましたぜ!」

 

「へっへっへっ!ヘルメット団の奴等度肝抜くぞ!」

 

「あとで引っこ抜いた分は渡します!」

 

これまた別行動していたスケバン組も合流。

 

「よぉし、上々だ!帰ったら柴関ラーメンを奢ってやる!」

 

「トッピングもつけてよぉ!」

 

「ん…餃子も欲しい…!」

 

「もちろん、何でも頼んでいいぞ!」

 

『ウオッシャー!』

 

総勢9人の侵入部隊はなおも走り続け工場の敷地内を脱出し、

 

「皆さぁん!こっちですよぉ!」

 

「ちょっと、20秒遅刻よ!」

 

「急いでください!追手が来てます!」

 

砂漠の丘の陰に待ち構えていたノノミとセリカにアヤネが待つ2tトラックが見えてきた。

 

「よしどんどん乗っけろ!」

 

素早く分捕ってきた装備や弾薬を荷台に放り込みネイトたちも素早く乗り込み、

 

「アヤネ、出してくれ!」

 

「了解しました!」

 

アクセル全開でトラックが走り出す。

 

ちょうどそのタイミングで、

 

「撃てッ!逃がすな!」

 

カタカタヘルメット団が追いかけてきて発砲。

 

しかし、掠りもせず走り去るトラックを止めるには至らない。

 

「あいつらまた盗んでいきやがって!」

 

「追え、今度こそ逃がすな!」

 

「ここはうちらの庭だ、地の利はある!」

 

ならばと保有する車両に乗り込み追撃を仕掛けようとする。

 

さすがは根城が砂漠のど真ん中なだけあって砂でもものともしないようなタフなマシンばかりだ。

 

さらには砲塔付きの装甲車までそろえている。

 

全力で飛ばせば追いつけるはずだ。

 

「よし出せ出せェっ!」

 

車両に乗り込みエンジンをかけアクセルを踏み込み動き出すヘルメット団の車両。

 

だが、

 

『あだぁッ!?』

 

動いた瞬間すべてのタイヤが転がり落ちたり、

 

『わあああッ!?』

 

かと思ったら片方の車輪だけ脱輪しクラッシュ、

 

『………。』

 

乗り込みドアを閉めたとたん外装やらエンジンが音を立てて崩れたり

 

『うわああああ!?』

 

車体が横真っ二つに切られていて火花を上げてスリップしたりとまともな車両は一つもない。

 

「な、なんだってんだよ…!?」

 

この状況にカタカタヘルメット団の首領は唖然としながらゆっくりと車を進める。

 

と、そこへどの車からは分からないが脱輪したタイヤが転がってきて首領の乗る車に当たる。

 

次の瞬間、

 

『あらぁッ!?』

 

ドアも車輪も外れ前後のボンネットが跳ね上がりオイルが噴出した。

 

で、ご丁寧に前ボンネットの裏側には…『支援物資感謝する』と言う張り紙がでかでかと貼られていた。

 

それから一時間後、柴関ラーメンにて。

 

「うへ~いやぁ今夜も大量だったにぇ~。」

 

「これでまた装備の更新ができるってもんすよ。」

 

「それにしても皆さん、分解が速くなりましたねぇ~。」

 

「そりゃそうですよ、ノノミ姐!今なら三人がかりであれくらいばらすのわけねぇっすって!』

 

「毎度こんな風に荒らされてるヘルメット団にはちょっと同情しちゃうけど…。」

 

「あ、アハハハ…まぁ事前の危機対処と言うことで、セリカちゃん。」

 

「すんませーん!チャーシュー丼追加お願いしま~す!」

 

「ん…私もチャーハンください。」

 

「あいよぉ!じゃんじゃん食べちゃってくれぇ!」

 

ネイトと対策委員会と今回参加した番長とスケバンたちでささやかな宴会が行われていた。

 

ネイトの奢り、食べ盛りの学生たちと言うこともあってどんどん空の器が出来上がっていく。

 

柴大将もそんな賑やかな席から届く注文を微笑ましそうにさばいていく。

 

そんな中、

 

「んー…。」

 

「ネイトの兄貴、どうかしたんですかい?」

 

「何か気になることでもあったんですかぁ?」

 

つけ麺をひとしきり食べた後ネイトは目録を手に何やら考え込んでいた。

 

「いやな、どうもヘルメット団の装備でな。」

 

「んむ~ふぁにかふぇんにゃろぉ~?」

 

「ホシノ先輩、食べながらしゃべるのは行儀が悪いわよ。」

 

「それで奴らの装備がどうしたんですかい?」

 

「…ここ一~二か月の間だがな。以前に比べ品質が格段に良くなってる。」

 

「ん…どういうこと?」

 

「見てみろ。」

 

そう言い、手元の資料をテーブルの上に広げるネイト。

 

ホシノ達もその資料に視線を向ける。

 

「以前、奴らの主装備はSIG556。性能は申し分ないが比較的安価なライフルだ。」

 

「雇われる前の俺達でもよっぽど財布が薄くなきゃ使わないものですね。」

 

「まぁ、前はこれがうちの主装備だったんだが。だが、ここ2か月の間の装備を見てみろ。」

 

「…M4にSCAR-HやSIG MCX…。確かに装備が高級品になってきてますね…。」

 

「他の装備もだ。分隊支援火器もMINIMIやRPDからM27IARやRPKに更新がかかってきている。」

 

「あ、MGも前は旧式なのにM240やPKPに変わってますぜ。」

 

今あげた銃器はキヴォトスでもメジャーな物ばかりだ。

 

だが、不良同然のヘルメット団が部隊運用できるほど数をそろえられるか?ということには首をかしげるくらいには値が張る代物ではある。

 

「ん…まさかネイトさんからもらった日当を…?」

 

確かに収入の面では今現在ネイトの日雇いという線も考えられるが、

 

「でも、シロコの姉貴。俺達が言うのもなんですが奴ら食うにも苦労してた連中だぜ?」

 

「それにシロコちゃん、これだけの銃を揃えるにはネイトさんのお給金くらいじゃ足りませんよぉ?」

 

そこそこ大所帯のヘルメット団全体で装備更新できるかと言われると首をかしげざるを得ない。

 

無理に幹部たちが日当のすべてを徴収すればヘルメット団は早々に離散しているはず。

 

「何か私たちが知らない収入手段があるのかしら?」

 

「アジトぶっ潰されても装備更新できるだけの収入って…なんだろう。」

 

「…分かんねぇなぁ。親分みたいなことができりゃそういうこともできるんだろうけどなぁ。」

 

この不審な事態に頭をひねる面々。

 

すると、

 

「…たぶん相当太いパトロンがついているんだろうねぇ。」

 

ホシノが一つの説を上げる。

 

パトロン、つまりは後援者と言うことだ。

 

確かに強力なバックアップが得られれば大規模な装備刷新も可能だろう。

 

が、

 

「俺もその案を考えた。で、わざわざ不良の徒党を支援する組織とは?っていう疑問にぶち当たった。」

 

「うへ~それ言われちゃうとおじさんも参っちゃうなぁ。」

 

パトロンと言うのはいわば一種の投資家だ。

 

投資家とは利益が保証されなければ動かない。

 

余程の魅力がある人物であるなら考えられなくもないがヘルメット団はあくまで不良の集団だ。

 

頻繁に小競り合い…と言うには戦車など最近はよく出てきているがアビドス高校相手に負けが込んでいる程度の不良集団だ。

 

そんな集団を誰が支援するというのか?

 

「何はともあれ気にかけておくべき事象だな。」

 

「ん…向こうが強くなっても私たちは負けない。」

 

「姉貴の言う通りだぜ、兄貴!」

 

「私の方からも少し探りを入れてみます。」

 

「頼んだぞ、アヤネ。」

 

と話が一区切りついたタイミングで、

 

「あいよぉ、チャーシュー丼とチャーハンお待ちぃ!」

 

先ほど注文した料理を持って柴大将がやってきた。

 

「何難しい顔しちゃってんのぉ、皆!うちのラーメン食ってる間位のんびりしなよぉ!」

 

「…そうだな。難しい話は今は止めよう。」

 

「ですねぇ。せっかく作戦成功のお食事会ですものねぇ♪」

 

柴大将の言うようにそこでいったん話を終えネイトも食事に戻る。

 

その後、食べ盛りの面々が満腹になるまで食べ続け宴会は終了。

 

「んじゃあネイトさぁん、また明日ねぇ。」

 

「オウ、また明日。」

 

帰る方向が違うホシノ達とはここで別れ、番長たちとともにトラックでアビドス高校へ帰校。

 

今回の収穫を倉庫へしまい、

 

「親分、お疲れさまでした!」

 

「皆も今日は遅くまですまないな。明日は特に予定がないからゆっくり休んでくれ。」

 

「うっす、おやすみなさい!」

 

番長やスケバンたちも併設された寮へと戻っていった。

 

彼らも見送り終えようやくネイトも根城の技術室へ帰還。

 

「…はぁ、なんだかんだもうすぐ半年かぁ。」

 

椅子に腰かけながら外の景色を眺めるネイト。

 

そう、あと少しでネイトがキヴォトスにやってきて半年という節目の日。

 

あの日から比べたらアビドス高校は大変革を遂げたといってもいい。

 

借金もあと少しで完済。

 

生徒数は不良のネットワークでここの噂が広がりさらに増えてこの前とうとう3桁を超えた。

 

学校の設備も各所にタレットなど防衛設備も充実。

 

そして…

 

「そろそろ始動準備をしてもいいかもな。」

 

施錠された机の奥から取り出したファイルを見てネイトも呟く。

 

その表紙にはこう書かれてあった。

 

『Abydos Revitalization Plan』と。

 

かつての人生で学んだ技術をフルに活用しネイトが日夜考え続けてきたアビドス復興計画の原案だ。

 

復興だけではない、その後どうやってアビドスを栄えさせるか、その計画もおぼろげながらしっかり記載されている。

 

「…ユメよ。もう少しだ。もう少しで…俺がここへ来た勤めを始められる。」

 

そんなことを夜空に向け呟くネイト。

 

が、

 

「………なぁ、男やもめの夜に忍び込むのはあまりいい趣味とは言えないぞ。」

 

背後を振り返ることなくそう言葉を発すると、

 

「クックックッ…やはり鋭いですね、ネイトさん。」

 

「アポをとれっての、黒服。番号教えてるだろ。」

 

以前のように影がそのまま体を得たように『黒服』が現れた。

 

ここ数か月、この二人は不定期ではあるがこうして夜に集まっている。

 

まぁ野郎が二人集まってやることは一つだ。

 

「いいワインとアテが手に入りましてね…。ぜひあなたと、と思いまして…。」

 

「待ってろ、グラス持ってくる。」

 

酒盛りである。

 

手早くグラスや黒服が持ってきたつまみの準備を終え、

 

「…ほぉ、芳醇なブドウのいい香りだ。樽にもいい木を使ってる。」

 

「味が分かる方に飲まれてこのワインも幸せでしょう…。」

 

最早定番となりつつある静かな酒盛りが始まった。

 

「そういえば少し聞いてましたが…草案ですが完成していたのですね…。」

 

「盗み聞きは感心しないが…まぁそんなところだ。」

 

「クックックッ…経営者として剛腕も敏腕も振るう貴方のこと…。さぞ想像の範疇を超えたことをお考えなんでしょう…。」

 

「邪魔するなよ?これが俺がキヴォトスにやってきた宿命みたいなものだからな。」

 

「まさか、邪魔するなんてとんでもない…。遠くから楽しく拝見させていただきますよ…。」

 

「どうだか。『ゲマトリア』も一枚岩じゃないんだろ?」

 

「痛いところを突きますねぇ…。」

 

そんな互いに牽制と本音を出し合いながらも楽しみながら進んでいくネイトと黒服の酒盛り。

 

「我々も『マダム』の扱いには腐心しているのです…。手腕こそ私も高く評価してはいるのですが…。」

 

「『マダム』?…まぁ、ご婦人の扱いは万国共通で難しいものだろうなぁ。」

 

珍しくネガティブな黒服にネイトも同意する意見を述べるも…

 

「もしもの際は貴方に『マダム』のご機嫌を取っていただきましょうかね…。」

 

「止めろ止めろ、ホシノ達だけでこっちは手一杯なのにへそ曲げたご婦人なんか押し付けるな。」

 

厄介ごとを任せられそうな雰囲気になりそそくさとお断りを入れるのであった。

 

「そうならないことを祈るしかないですなぁ…。」

 

「全く…少しは年寄りを労われっての。」

 

「そうですねぇ…。あと40年後くらいにはそうしましょう…」

 

「コイツぅ…。」

 

とまぁ二人の酒盛りはいつもの感じで飲み進めて言っていると…

 

「…っと、そうでした…。一つネイトさんにお知らせがあるのでした…。」

 

「お知らせ?」

 

黒服がネイトに何か伝えなければならないことを思い出したようだが…

 

「明日の朝…キヴォトス全土で大混乱を引き起こす事態が発生します…。」

 

その内容が忘れていたにしてはかなりの重大案件だった。

 

「…お前たちが起こしたことじゃないよな?」

 

目つきを鋭くし黒服に問いかけるネイト。

 

「いえ…この事態は我々からしても予想外のことでして…。」

 

「…ということは、すでにもう『事態』は発生済み。それが露見するのが明日の朝ってことか?」

 

「ご推察の通りです…。」

 

相変わらず表情は分からないが困惑が声音に混じる黒服。

 

「…分かった。黒服、お前の言葉を信じるとしよう。」

 

その様子を見てネイトも明日起こる混乱は避けようのない、『予定調和』のようなものだと理解。

 

「…すまない。そんな話を聞いた後だとこれ以上深酒するのは控えたほうがいいな。」

 

「承知しました…。名残惜しいですが今日はこの辺りでお暇させていただきます…。」

 

起こることが分かることに対して対策を練らないことほど愚かなことはない。

 

急遽、酒盛りはここで切り上げることに。

 

「落ち着いたらまた飲みなおそう。今度は俺が用意する。」

 

「分かりました…。ネイトさん、どうかご武運を…。」

 

「…らしくないな。黒服がそんなことを言うのは。」

 

「クックックッ…友人の健在を祈るのは当然のこと…。では、おやすみなさい…。」

 

そう言い終えるといつものように黒服は扉を出ていき足音を消した。

 

「…さて。」

 

一先ず眠りにつく前にネイトはスマホのモモトークを立ち上げる。

 

その中のアビドス高校にいる全員が入っているグループトークにこうメッセージを残した。

 

『非常招集、明日7時までに完全装備で体育館に集合。』

 

「よし、俺もさっさと寝よう。」

 

反応を見ることなくネイトもベッドに入りすぐに寝息を立てるのであった。

 

―――――――――――――

 

――――――

 

――――

 

翌朝、6:40。

 

「うへ~もうみんな揃ってるよぉ。」

 

「おはようございます、ホシノの姉御!」

 

『おはざっす!』

 

「ハイ皆おはよ~。」

 

まだ時間には余裕があるというのに寝坊助気味のホシノも体育館に集合。

 

すでに寮住まいの生徒たちは勢ぞろいし完全武装だ。

 

「ん…ホシノ先輩、こっち。」

 

「およ、おじさんがビリだったかぁ。」

 

「おはようございますぅ。」

 

「一体何でしょうね…。」

 

「非常招集なんて物騒な話ね…。」

 

対策委員会メンバーもすでに装備を整え集合済み。

 

そこへ、

 

「皆おはよう。休日なのに急に非常招集の連絡を入れてすまない。」

 

パワーアーマーを装着し肩のホルダーにガトリングレーザーを背負ったネイトもやってきた。

 

「総員、起立!」

 

『おはようございます!』

 

ホシノの号令で一斉に全員が立ち上がりネイトに挨拶を返す。

 

「さて、全員が揃ったことだし時間は早いが状況を説明する。」

 

「ん…何があったの、ネイトさん?」

 

「昨日、確かな筋からある情報がもたらされた。これから数時間以内にキヴォトス全体に混乱が起こる事件が起こるそうだ。質問はあるか?」

 

「ハイ!」

 

「はい、アヤネ。」

 

「その騒動と言うのは一体何ですか?」

 

「それは分からない。だが、『事態』はすでに起こっていて混乱が起こることは避けられないそうだ。」

 

「その情報の出所ってどこなのよ?」

 

「すまないがそれは言えない。先方との協力態勢を保っておきたいからな。」

 

「…分かったわ。」

 

普段ならそんなあいまいな回答は許さないセリカだがのっぴきならないネイトの口調に素直に引き下がる。

 

「はい、完全装備で招集をかけた理由は何ですかぁ?」

 

今度はノノミから完全装備の理由を尋ねられる。

 

「そんな混乱が起こるなら『ヴァルキューレ』が出動すると思うんですが…。」

 

他の生徒からもそんな意見が出る

 

『ヴァルキューレ』、正式名『ヴァルキューレ警察学校』。

 

このキヴォトスにおける警察に相当する法執行機関だ。

 

ネイトが言うような騒動が起こるのなら出動してしかるべきだが…

 

「分かっている。だが、おそらく他所が忙しすぎてアビドスには人員は回されないだろうな。」

 

ネイトの答えに納得するような一同。

 

この騒動はキヴォトス全体で起こる。

 

となると、ヴァルキューレも確実に人手不足に陥る。

 

さらにそこにキヴォトスが持つ治安の悪さも加わると…

 

「過疎気味なアビドスに人員回すよりD.U.やヤバそうなゲヘナに人員回したいよねぇ。」

 

アビドスに人員を回さない理由は悲しいかな納得するしかない。

 

ならば…

 

「だから、我々が独自で治安維持行動をとる。ここはアビドス自治区、学校主導で行動を起こしても文句は言われないはずだ。」

 

自分たちで騒動が終息するまで動くしかない。

 

この言葉に全員の表情が引き締まる。

 

「とりあえず、それまでは普段の業務は一旦休止。治安維持活動中は普段の倍の時給を支払う。武器・弾薬も備蓄は十二分にある。存分に使ってくれ。」

 

『おぉ!』

 

「それから危険手当として対兵器戦闘における撃破ボーナスも設ける。だが、積極的に狩りに行くな。他の部隊と連携したうえで対処してもらいたい。」

 

『了解!』

 

無論、危険な仕事に彼ら彼女らを向かわせるのだ。

 

それ相応の見返りもしっかりと用意している。

 

ネイトのこの対応に生徒たちの士気もうなぎのぼりだ。

 

「うへ~みんなやる気十分だぁ。これはおじさんも本気出すっきゃないねぇ。」

 

「ん…私たちも負けていられない…!稼げるときに稼がないと…!」

 

「そうよ、ボーナスを逃がす手なんてないわ!」

 

「あらあら、大盤振る舞いですねぇ♪」

 

「ネイトさん、財務面は大丈夫なんですか?」

 

対策委員会メンバーもネイトの太っ腹な対応にやる気十分だ。

 

一応、アヤネが心配そうにネイトに尋ねるも、

 

「構うもんか。こういう時のために貯蓄している。使うべき時に使わない金など鼻紙以下だ。」

 

「…分かりました。私も存分に働かせていただきます。」

 

W.G.T.C.創立以来の貯えを放出することを厭わないネイトの答えに彼女も腹をくくる。

 

「だが、一先ずは待機だ。スマホを使っても構わない。むしろ積極的に使って情報収集を頼む。」

 

一通りの伝達を終え、ことが起こるまで待機任務にはいる一同。

 

ニュースを探す者、自らの人脈に電話で変わったことはないかと尋ねる者、モモッターなどのアプリで情報収集する者と過ごし方はそれぞれだ。

 

一方、

 

《キヴォトスの皆さん、おはようございます。7:00になりました。クロノスエイトの時間です。》

 

「…まだこっちの方は何も報道していないか。」

 

テレビを持ち込んでニュース番組を視聴するネイト。

 

まぁベタだが情報の非常事態における情報の確度は一定の保証がある。

 

「おじさん、この時間のニュースみるの久々ぁ。」

 

「あらあら、ホシノ先輩。早起きしないとだめですよぉ?」

 

「でも、ホントにいつもと変わらないニュースねぇ。」

 

「このまま何もないといいんですけど…。」

 

「ん…でも必ず何かが起こる…。」

 

いたっていつも通りの日常を移すニュース番組。

 

なんの代わり映えもない、キヴォトスの朝の日常風景だ。

 

そんな変わり映えもしない朝の時間が流れていき…午前10時を迎えようとしていた。

 

だが、その時間に差し掛かったあたりで…

 

「…………。」

 

ネイトの纏う雰囲気が変わった。

 

どう変わったかと言うと表現が難しいが…何やら確信めいた雰囲気だ。

 

「…どうかしたんですか、ネイトさん?」

 

そんなネイトに真剣な表情になったホシノは尋ねる。

 

「…あの日もこんな感じだったなと思いだしてな。」

 

「ん…あの日って何、ネイトさん?」

 

「あの日も…こんな普段と変わらない朝だった。顔を洗ってコーヒーを飲んで…妻や息子と触れ合って…そんな変わり映えのしない朝だった。」

 

「…それがネイトさんにとってどんな日だったんですかぁ?」

 

「忘れもしない…いや、忘れることなんてできない。その日…世界のすべてが変わってしまったんだからな。」

 

「だから一体その日に何が…。」

 

「…そろそろ時間だ。」

 

「じ、時間ってどういう意味で…。」

 

テレビに映し出された時刻を見てネイトは確信を持った。

 

『何かが起こるなら確実にこの時間だ。』と。

 

「10…9…8…7…6…5…4…。」

 

突如としてカウントダウンを始めるネイト。

 

普段からは考えられない彼の状態にこの場にいる全員の視線が注がれる。

 

そして…

 

「3…2…1…0。」

 

カウントダウンを終えた次の瞬間、

 

《番組の途中ですが臨時ニュースをお伝えします!》

 

『ッ!!??!?』

 

突如として画面が切り替わり臨時ニュースが報道される。

 

《たった今、連邦生徒会生徒会主席行政官『七神リン』氏より声明文が発表されました!現在、サンクトゥムタワーがシステムダウンを起こし行政権が失効!これにより各所で混乱が発生するとのことです!》

 

そして語られる、キヴォトスを大混乱に容易に落としうる事件の情報。

 

「さ、サンクトゥムタワーがシステムダウン…!?」

 

「ど、どうなってるのよ…!?」

 

「連邦生徒会長は何してんだ!?」

 

怒りや驚愕と言った動揺が伝播する一同。

 

だが、

 

「総員、きりぃつ!!!」

 

『ッ!』

 

ネイトの裂ぱくの掛け声で一斉に立ち上がる生徒たち。

 

「これよりアビドス自治区は非常警戒態勢に入る!各員、所定の行動に移れ!」

 

『了解!』

 

そして、その勢いのままネイトの指示を受け生徒たちは外へ飛び出していった。

 

一人残されたネイトはテレビに表示された時刻を見て呟く。

 

「9:47…全く…嫌なことってのは続くものだ。」

 

9:47…それはかつて世界を焼き尽くした『最終核戦争』勃発の報道がなされた時刻と同じ時間を示していた。

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