Fallout archive   作:Rockjaw

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かなり長くなりそうなので二部構成です


Epilogue: True Feelings Revealed and the First Stirrings Part1

トリニティでの騒動の収束、百合園セイアとの二度目の夢の中の会合も数日前の事。

 

ネイトは合間に挟まった休日を思い切りアリスと共に過ごし溜まっていた互いの寂しさを発散。

 

アビドスでの業務や廃墟区画での業務も行い…

 

「えぇっと次は…。」

 

「うへぇ~…おじさん、こんなお高いの見たこともないよぉ~…。」

 

「ん…一個一個がまるで宝石みたい…!」

 

ホシノとシロコを伴って彼の姿は再びトリニティにあった。

 

「二人とも、まだ数軒回るが大丈夫か?」

 

「いいよぉ~。なんたって『お礼』の品の買いこみでしょ~?」

 

「私達もあの人たちには感謝しなきゃだから。」

 

「それに私達もおこぼれに与れてるんだから役得ってやつだねぇ~。」

 

感謝を述べるネイトに答える二人の手には…なにやらこじゃれた紙袋を提げている。

 

「おこぼれって…一応トリニティに名だたる老舗のチョコだぞ?」

 

「分かってるってぇ。」

 

「あ、ノノミ達の分も買わなきゃ。」

 

少し呆れながら指摘するネイトに軽く返すホシノと留守番している面々へのお土産の事を思い出すシロコ。

 

そう、三人がトリニティを訪問している理由は柊姉妹と彼女たちがいるクラスへのお土産の買いこみだ。

 

以前は騒動や襲撃への準備のために調査までだったがようやく用意する算段も付けることができトリニティに再来訪したのだ。

 

その割にはネイトがそんな大荷物を抱えているようには見えないが…

 

「それにしてもやっぱりPip-Boyって便利だねぇ~。」

 

「ん…あれだけ買ってたらもう両手が一杯になっているはず。」

 

「俺もまさかPip-Boyのスタッシュをチョコで埋める日が来るとは思わなかったがな…。」

 

それもそのはず、買いこんだ大量のチョコレートはPip-Boyの収納機能を使いその内にしまい込んであるのだ。

 

これによりいまだに身軽にネイトはチョコの入手を続けることができている。

 

すると、

 

「…今更だが別に護衛とかはよかったんだが…。」

 

ネイトは苦笑を浮かべつつホシノとシロコに声をかける。

 

単なる買い出しなので本来は一人で来るつもりだったが…

 

「何言ってんの?こんな危ないとこにネイトさん一人で行かせらんないでしょ?」

 

「ん…ネイトさんは強いけど私達がいればもっと強くなる。」

 

若干表情に圧がこもり二人はそう返した。

 

「…これでもいい歳してるオッサンなんだけどなぁ…。」

 

まるで初めてのお使いのような用心深さに苦笑するネイト。

 

それでも二人の心配も一理ある。

 

昨日の騒動に関してミカの容疑や拘束されたことなどはすでに周知の事実でそれ以外の部分、補習授業部の関与などについては緘口令がひかれてある。

 

だが、それでも人の口に戸が立てられないものだ。

 

確実にどこかから補習授業部やネイト筆頭のアビドス勢の関与は漏れているはず。

 

アビドスとトリニティの関係性は言うまでもなくその顔役を二度も叩き潰しているのだ。

 

プライドの高いトリニティ生徒の中には過激な行動を取るやもしれないが…

 

「トリニティって『面子』がものを言うんでしょ?だったら、アビドス一の『面子』が役に立つってことだよぉ~。」

 

「ん…生徒会委員に手を出す様な奴はそうはいないはず。私達の実力も知られているからきっと手が出せないよ。」

 

そこでアビドスの重役にして主戦力の一角のホシノとシロコがどうこうすれば生半可なトリニティ生徒では手が出せないということだ。

 

ただでさえ対外的な信頼がどんどん損なわれているトリニティ。

 

もし、ただチョコを買いに来たアビドスの生徒会長や役員に手を出せば…結末は知れている。

 

「全く…火薬庫の中をタバコ吹かしながら歩いてる気分だよ。」

 

「それを言うならネイトさんは燃え盛ってる発煙筒だねぇ。」

 

「そんなこといいから早く次のお店に行こう、ネイトさん。」

 

「だな。さっさと用事済ませてさっさと帰るに…。」

 

ともあれ、長居すれば無用なトラブルの元だ。

 

量が量なのであと数店舗回らなければならないがそれもあと1時間もかからずに終わる。

 

三人は足早に次の店に向おうとした。

 

すると、

 

「もし。」

 

「「「………。」」」

 

三人を呼び止めるかのような声を掛けられ、

 

「………。」

 

コクコクッ

 

ネイトはアイコンタクトで二人に合図を飛ばしあえてもう一歩を踏み出した。

 

が、

 

「お待ちになってください。アビドス高等学校、生徒会長の『小鳥遊ホシノ』様と庶務の『砂狼シロコ』様。そして、W.G.T.C.代表取締役社長の『ナサニエル・マーティン』様。」

 

今度は完全に名指しで呼び止められ…

 

「…君は誰なの?」

 

こうなっては逃げ切れないと『Eye of Horus』と『Iron Horus』の展開準備を整えホシノは振り向く。

 

シロコも『WHITE FANG 465』、ネイトは脇に提げたレーザーライフルをいつでも構えられるようにし彼女に続く。

 

振り返ってそこにいたのは…

 

「トリニティの周遊中の突然のお声がけしたご無礼をお許しください。」

 

背中から大きな鶴の翼を生やしたティーパーティーの制服を着たいかにもお嬢様と言った感じの生徒が一人佇んでいた。

 

「私は『フィリウス分派』リーダー『桐藤ナギサ』様付秘書を務めております、『松萩イヅル』と申します。」

 

そう自己紹介し、イヅルと名乗ったその生徒はカーテシーをし恭しくあいさつをする。

 

が、

 

「ん…ティーパーティーの生徒…。」

 

「で?ただチョコを買いに来ただけの私達に一体何の用なの、秘書ちゃん?」

 

その自己紹介で一気に警戒度を跳ね上げるシロコとホシノ。

 

なんせ、今まで話していた警戒度トップの組織の…それもトップの秘書という人物が現れたのだ。

 

「………私はナギサ様より貴方方をお茶会にお招きするよう命じられてここに参りました。」

 

その百戦錬磨の強者しか出せない気迫に若干たじろぎながらもイヅルは自身がここに来た理由を明かし、

 

「お休みの所大変恐縮ですが私と共にティーパーティーのサロンまで同行していただけますでしょうか?」

 

そう嫋やかに再度頭を下げ同行を求める。

 

「…なんだか前にも聞いたようなお誘いだが…。」

 

それに対し、ネイトは一歩前に踏み出し…

 

「なぜ、桐藤ナギサ本人が来ない?それが筋ってものだろ?」

 

もっともな質問を彼女に投げかけた。

 

以前…『通功の古聖堂』の全休日にも同じようなことをティーパーティーの配下の生徒から言われた。

 

あの時は明らかに礼儀知らずな内容で突っぱねたら正体に来た生徒が激怒し銃を向けられた。

 

脅威にはなり得なかったが…心象としては最悪を通り越している。

 

だというのに…先日よりも上役、ナギサの側近ともいえる人物だが本人が一切出てこない。

 

もっともなネイトの指摘に対し…

 

「…ナギサ様は現在、トリニティ世論からの風当たりが強く公の場での発言や行動を控えております。ですから、大変失礼を承知で私を使わされたのです。」

 

イヅルも素直にナギサがこの場にいない、もとい来れない理由を明かす。

 

確かにこれまでのティーパーティーの失策はこの学校の世論を悪化させるには十分な威力を持つ。

 

この上、他ならぬティーパーティーのミカが殺人未遂やクーデター未遂までやらかしたのだ。

 

『逆風』、などという表現では言い表せられない様な学校運営を行わなければならないはず。

 

しかし、だ。

 

「ん…悪いけどトリニティの偉い人の都合は私達には全く関係のないこと。」

 

「シロコちゃんの言う通りだよ。招きたいって言ってる本人が来ないってのは…随分私達って軽く見られてるねぇ?」

 

『知った事ではない』、この一言に尽きる。

 

如何に世間の風当たりが強かろうが本人が来るのが道理だろう。

 

それが秘書とはいえ代理人を送り込むのは…マナーに反し自分たちを軽く見ていると思うのは至極当然だ。

 

「…言葉はきついだろうが俺も同意見だ。で?断れば…また俺に銃を向けるのか?」

 

ネイトも過去の出来事を引き合いに出しイヅルに問いかける。

 

「そっそのようなことは…。」

 

当然、否定するイヅル。

 

以前、同じくネイトを招こうと遣わしたティーパーティーの生徒はあまりにもネイトに無礼を働いた挙句に銃を向けるという暴挙にまで及んだ。

 

今、そのようなことをやれば冗談抜きでアビドスとトリニティは衝突するだろう。

 

だが…

 

「いいよぉ、私達はそれでも?」

 

「そっちの方が話がすぐに済むからね。」

 

ホシノやシロコにとってはむしろそちらの方がwelcomeだと言わんばかりの反応を見せる。

 

何もしなければ何もしないが相手がやる気ならばとことん相手になる。

 

ネイトがくる以前からの…彼女たちの気性と言ってもいいだろう。

 

「ドンパチはさすがに面倒だが…そういうことだ。」

 

ネイトもネイトでやる気満々のようで…

 

「それに以前も言ったが…二つ返事で応じるほどアビドスはトリニティを信用していない。」

 

以前と同じように自身のトリニティへの心情を混ぜた意見を述べる。

 

「………ッ!」

 

それを聞き、表情を悲しそうに歪ませ言葉を詰まらせるイヅル。

 

「…それじゃあ俺達はまだ用事があるからこれで失礼…。」

 

そんな彼女を見て話を打ち切り三人も踵を返し立ち去ろうとする。

 

「おっお待ちに…!」

 

イヅルがそれを呼び止めようと声を上げた…その時、

 

「待って待って、三人ともぉ!」

 

張り詰めたこの場には不釣り合いなさらに必死だがどこか抜けている印象を持つ声が響く。

 

「…いるんだからちゃっちゃと出て来いよ。」

 

「ん…気配でバレバレ。もうちょっと訓練すべき。」

 

「単なる付き添いかと思ってたけどまぁ出てくるよね。」

 

それを聞き、足を止めて振り向くと…

 

「あ…アハハ…やっぱり三人相手に隠れきるのは難しいなぁ…。」

 

そこらの路地か角で聞き耳を立てていたであろう先生が両者の間に立ち困ったような笑顔を浮かべていた。

 

「というか、まだトリニティにいたのか?」

 

「ヒフミたちの合格でお役御免になったのかと思ってた。」

 

「まぁまだ少しやることが残ってたんだよ、シロコ。」

 

「で、今日は…そこの秘書ちゃんとおじさんたちをナンパにでも来たのぉ?」

 

先生が来たことで幾分か緊張は和らいだがそれでも警戒を解かないネイトたち。

 

そんなホシノの冗談交じりの問いかけに…

 

「…ネイトさんにホシノにシロコ。どうか、ナギサの話だけでも聞いてあげてはもらえないかな…?」

 

表情はそのままだが目は真剣さを帯び茶会への参加をお願いする先生。

 

「…先生。私達がそっちのトップに一体どれだけ迷惑かけられたか分かってないわけじゃないよね?」

 

「うん。分かっているよ、ホシノ。それに…イヅルがここにいるのは筋違いではあることもね。」

 

「ん…分かっているならどうしてそんな顔も見せない奴の突然呼ばれたお茶会にでなきゃいけないの?」

 

「そうだね、シロコ。でも…そこを何とかナギサの今の立場も察してはもらえないかな…?」

 

変わらずこれまでのアビドスとトリニティの関係を述べこの状況の不義理さを問うホシノとシロコを同意しつつ宥める先生。

 

そして、

 

「おい、先生。」

 

「なんですか、ネイトさん?」

 

「お前は…今どういう立場でこの場に立っているんだ?」

 

ネイトが投げかけた質問に…

 

「…私は今、『私』としてここに立っています。」

 

そう言い、足元を指さして…

 

「ナギサが困っていることもホシノやシロコにネイトさんがティーパーティーをあまりよく思っていないのも理解しています。…それをどちらにとっても少しだけでもいい方向にもっていきたい、そう言う思いで私はここに立っています。」

 

『………。』

 

「それが…シャーレの役目ですから。私はずっと『シャーレの先生』としてここに立っていますよ、師匠。」

 

以前よりもしっかりとした信念を感じる言葉で答えたのだった。

 

「…仰る通り、ナギサ様のこれまでの行いと態度は弁解の余地もございません…!ですが…どうかこの無礼は私めの首を差し出すことでご容赦いただき…御足労願えないでしょうか…!」

 

イヅルも沈痛な面持ちで深々と頭を下げ再度、ナギサの元への同行を求める。

 

「…はぁ~。」

 

二人の話を聞きネイトは頭を掻き…

 

「ホシノ、シロコ…どうする?」

 

立場上は上の二人に判断を委ねると、

 

「まぁ先生には本当に色々お世話になってるし…ね?」

 

「そこまで言うなら…いいよ。」

 

ホシノとシロコは少し考え同行に応じるのであった。

 

「…分かった。松萩イヅルだったな?そちらの求めに応じよう。」

 

それならばネイトも拒否する理由もなくトリニティ側からの申し出を受け入れた。

 

「あっありがとうござい…!」

 

礼を述べるイヅルだが…

 

「勘違いしないで。先生の顔を立てただけで…そっちのことは信用していないから。」

 

「ん…下手なことをすれば…すぐに帰ってそれでもう『おしまい』。」

 

ホシノとシロコがぴしゃりとトリニティの都合に配慮したものではないと言い切って見せた。

 

「て…手厳しいね、二人とも…。」

 

「言ったろ、先生。こっちは『知った事じゃない』って言葉で済ませられるんだ。これが正真正銘…最後のチャンスだぞ。」

 

「もちろんでございます…。では、お三方と先生もこちらへ…。」

 

というわけでイヅルの案内でナギサが待つサロンへとネイト達と先生は向うのであった。

 

一行はその後、トリニティの一等地にあるサロンに到着。

 

明らかにドレスコードがあるような佇まいだが生憎突然のお招きのため免除された。

 

そのまま一行は二階のテラスまで通され…

 

「では、参りましょう。」

 

その場所に通じる扉をイヅルが開き脇に脇によけ…

 

「こちらへお進みください。ナギサ様がお待ちになっています。」

 

再び頭を下げ四人を見送るのであった。

 

テラスに出るとそこには…

 

「…お待ちしておりました。アビドス高等学校生徒会長小鳥遊ホシノさん、生徒会庶務の砂狼シロコさん、W.G.T.C.社長ナサニエル・マーティンさん。」

 

お菓子やティーセットが置かれたテーブルの脇にトリニティのトップであるナギサが佇み会釈をして三人に歓迎の言葉をかけてきた。

 

「…突然だったけどお招きどうも、ホストちゃん。」

 

「ん…初めまして。」

 

「あの夜以来だな。」

 

三人は油断を見せない立ち振る舞いであいさつを交わす。

 

「どうぞ、お掛けになってください。」

 

着席を進めるナギサに対し

 

「…ネイトさん、私たちどこに座ればいいの?」

 

正直このような社交の場に慣れていないホシノが自分が座るべき席についてネイトに尋ねると…

 

「ホシノが一番上座でそこから庭側の席にシロコ・俺っていう順番だな。」

 

「おっけぇ~。」

 

「ん…分かった。」

 

「…随分詳しいですね、ネイトさん。」

 

「士官学校で最低限のテーブルマナーは叩き込まれるからな。先生は対面の真ん中だろ?」

 

「…ご名答です。」

 

ネイトがかつて教わったテーブルマナーで素早く席を教えそそくさと席に着いた。

 

が、席に着くなり…

 

ガシャッ

 

「…!」

 

三人はそれぞれの得物をすぐに構えられるようにテーブルに立てかけてたり天板の上に載せておく。

 

ホシノはIronHorusをナギサとの間に展開した状態で置きシロコに至っては愛用のコンバットナイフを膝の上に載せている。

 

本来、トリニティのお茶会において武器は椅子の後ろに立てかけたりするのが作法だが…

 

(警戒している…と言うことですね…。)

 

心の底から交流の場とは思っていないという意思の表れだ。

 

だが、それを指摘することはできない。

 

「…本日は別のご予定がおありだったのに私の急なお願いで時間を作っていただき本当にありがとうございます。まずは温かいお茶で一息ついてくださいね。」

 

席に着くとこの茶会のホストであるナギサがポットを持ち…

 

「まずは先生に…この度のお茶会に対するご助力を心から感謝いたします。」

 

先生に感謝の言葉を述べながらそっとカップに紅茶を注ぎ始めた。

 

が…

 

チリチリ…ッ

 

やはり緊張しているのだろう。

 

ポットの注ぎ口とカップの縁がぶつかり小さな音を立てる。

 

「ありがとう、ナギサ。」

 

先生は微笑みナギサの緊張をほぐすように声をかける。

 

「どういたしまして。」

 

ナギサは硬い表情ながらも微笑み返しホシノの元に向かう。

 

すると…

 

ギュウ…

 

「…ッ!」

 

無意識だろう。

 

ホシノは右手をIron Horusのグリップにかける。

 

ただそれだけなのに…場の空気が重くなるのを感じるナギサ。

 

それでも…

 

「…小鳥遊ホシノさん。まずは…あなた方アビドスに多大なるご迷惑をおかけしたこと。そして…私の疑心暗鬼のせいで皆さんを深く傷つけてしまったことを…この場を借りて……いえ、この話し合いが始まる前に…まずお詫びさせてください。」

 

意を決し、ホシノに対しこれまでの様々なアビドスに対する数々の非礼を謝罪し深々と頭を下げる。

 

「ふ~ん…。」

 

ホシノは鋭い目線のまま彼女を横目で見つつそう漏らす。

 

「ですが、今日ばかりは…どうか私の言葉に偽りがないかを先生の目の前で見極めていただきたいのです。…どうぞ、トリニティが誇る最高品質の茶葉で入れた紅茶です。」

 

そして、今回の話し合いの目的を明かしカップに紅茶を注ぎ始めた。

 

それを見て…

 

「…分かったよ、ナギサちゃん。」

 

「ッ!」

 

「おじさんたちも最初から撃ち合うためにここへ来たわけじゃない。ナギサちゃんが何を話すのか…先生や二人と一緒に最後までじっくり聞かせてもらうからさ。」

 

ホシノもIron Horusから手を放しちゃんとこの話し合いに臨む姿勢をしめした。

 

「…ありがとうございます。」

 

紅茶を注ぎ終えたナギサはそう頭を下げ次はホシノ以上に警戒心むき出しのシロコの元へ向かう。

 

その際に…いつでも抜けるようにスナップボタンが外され鯉口が切られており鈍い鋼色が覗いていた。

 

「ッ…シロコさん。どうぞお召し上がりください。…その…お口に合えば良いのですが…。」

 

それでもナギサはひるまずにシロコの前に置かれたカップに紅茶を注ぐ。

 

シロコは鼻をひくつかせその匂いを嗅ぎ…

 

「…このお茶、毒入ってないよね?」

 

「ッ!」

 

ある意味、彼女らしいドストレートな警戒の指摘をしナギサを固まらせた。

 

が、

 

「コラ、シロコ。ナギサがそんなことするわけないじゃないか。」

 

そんな彼女を先生が窘め…

 

「心配だったらカップを交換しようか?」

 

「せっ先生…!?」

 

自らのカップとの交換を提案しそれを差し出す。

 

「ん…いいよ。」

 

驚くナギサをしり目にシロコは自分のカップを差し出し彼のものと交換。

 

「ごめんね、ナギサ。」

 

「…いいえ、シロコさんにいらぬ心配をおかけしたのはこちらです。」

 

マナー違反を承知でやったこの行為を謝る先生にナギサは首を横に振り固辞し、

 

「シロコさん、どうか安心して楽しんでくださいね。」

 

シロコの警戒心を解くように微笑みながら声をかける。

 

「…ありがとう、いただきます。」

 

パチン

 

彼女の表情を見てシロコも少し警戒心を下げナイフをしっかりと鞘に納めた。

 

そして…

 

「…ネイト社長、先日の騒動だけではなく…D.U.では私共の同僚が貴方を…。」

 

最後にネイトのカップに紅茶を注ぐナギサ。

 

ナギサの意思ではないにしても…ネイトの命を狙うというキヴォトスの禁忌に触れてしまっていたのだ。

 

その上、首謀者は幼馴染にして同僚でもある聖園ミカともなれば…彼女のショックは大きいはずだ。

 

それ以外にもW.G.T.C.に対する様々な不義理に前回のお誘いの際の無礼など数えるときりがない。

 

おそらく一番気を張り詰めてお茶を注いでいると…

 

「…そう怯えるな。」

 

「え…?」

 

ネイトがそんな彼女に声をかけて…

 

「やっと『正門』から入ってきて誠意も示してるんだ。話は…ちゃんと聞く。」

 

「ッ!?」

 

声の巌こそそのままだが彼女の誠意にしっかり答えると言ってくれた。

 

その言葉にナギサは少し固まり…

 

「…ありがとう…ございます…!」

 

少し声を震わせ一礼し席に戻っていく。

 

そして席に着き少し目元を拭い、

 

「………それでは、改めて。先生が繋いでくださったこの良き日に…アビドス高等学校の皆さんをこうしてお迎えできたことを…心から嬉しく思います。」

 

ナギサはしっかりとした眼差しでホシノ達を見つめ感謝と歓迎の言葉を述べて頭を下げ、

 

「本日のためにトリニティでも最高品質の茶葉とそれによく合うお菓子をご用意いたしました。急なお呼び立てで皆さんもお疲れでしょう?まずは難しいお話は抜きにして、温かいうちにお召し上がりください。」

 

顔を上げてお茶会の始まりを宣言するのだった。

 

「それじゃ…いただきます。」

 

「いただきます。」

 

「頂かせてもらう。」

 

「ナギサ、いただくね。」

 

それを受けそれぞれ一声彼女にかけカップを持ち紅茶を味わう。

 

「…うん、やっぱりナギサの紅茶は美味しいね。」

 

「ありがとうございます、先生。」

 

過去何度か彼女の紅茶を味わっている先生はその変わらない味を誉める。

 

そして、

 

「…うん。普段は紅茶はあまり飲まないけど…美味しいよ、ナギサちゃん。」

 

「ん…今まで飲んだことないような凄く高級そうな味がする。」

 

「フム…マスターやミネの淹れてくれたものともまた違った華やかさだな。」

 

「ッ!…お口に合われたようで幸いです、皆さん…!」

 

ホシノ達も素直にその紅茶の美味さを称賛する。

 

「さっ遠慮なさらずにお茶菓子なども召し上がってください。」

 

幾分か緊張がほぐれたかナギサもお茶菓子を進めてくる。

 

「…うへぇ~おじさんこういうの初めてだからなぁ…。」

 

「ネイトさん、どう食べればいいの?」

 

「ケーキスタンドは基本下から上に行くように食べていくんだ。ちゃんと自分の分を取り皿にとるんだぞ、シロコ。」

 

「ん…分かった。」

 

あまりこのような場に慣れていないホシノ達もネイトのアドバイスを受け舌鼓を打っていく。

 

「いや…ホントに詳しいですね、ネイトさん…。」

 

自分すら未知だったお茶会の楽しみ方をテキパキ教えていく師の姿に改めて生きてきた時間の違いを実感する先生。

 

そんな少し賑やかな三人の様子をナギサも微笑ましそうに眺めている。

 

そして、

 

「うん、このロールケーキとっても美味しい。」

 

ホシノが特に気に入ったのはロールケーキだった。

 

柔らかいきめ細やかなスポンジに重さを感じない生クリームが合わさり今まで食べたことがないような味わいだ。

 

いったいどこのお店の商品かとホシノは思っていたが…

 

「お気に召したようでよかったです、ホシノさん。腕によりをかけて作った甲斐がありました。」

 

ナギサの表情が華やいだ笑みを浮かべてお手製のロールケーキが褒められたことを喜ぶ。

 

「ん…このロールケーキってナギサ先輩が作ったものなの?」

 

「えぇ、皆さんをお招きするためにロールケーキだけでなくここにそろえたお菓子や軽食は私が手作りしました。」

 

「ほぉ…とても女子高生の手作りとは思えないクォリティだ…。」

 

さらにクッキーやサンドイッチにスコーンなども手作りしたというではないか。

 

正直、どこかの高級店で揃えてきたと言っても通用するほどの出来である。

 

「どうぞ、こちらもお茶に合うように焼いたスコーンです。」

 

「ありがとう。あ~…。」

 

ナギサからスコーンを勧められホシノが手に取ってかじりつこうとすると…

 

「ホシノ、スコーンは齧り付くんじゃなくて最初に割るものだぞ?」

 

「うへぇ!?」

 

「ほら、こうやって。」

 

ネイトが食べ方を実演するためにスコーンの割れ目に沿って割り、

 

「こ、こう?」

 

「そう。で、いったん自分の皿においてからジャムやクリームを自分の皿にとって…。」

 

「ふむふむ…シロコちゃん、ジャム取ってくれる?」

 

「ん…どうぞ、ホシノ先輩。」

 

「この生地なら…一口大に千切ってもいいな。そして、皿に置いた状態で自分のナイフでジャムを塗ってから手で摘まんで食べるんだ。アムッ。」

 

「ほうほう…あ~んむ。」

 

「…うん、俺が知っているものよりソフトな食感だ。甘さ控えめでジャムの味が引き立つ。」

 

「優しい味だねぇ。これは紅茶が進むよぉ。」

 

彼の指導に沿ってこの場にのっとった食べ方を実践した。

 

「私も食べてみよっと。」

 

「へぇ~…スコーンってそう食べるんだ…。」

 

「簡単なマナーくらいは憶えておけ、先生。社交場に出るのは俺より多いだろうからな。」

 

「精進します…。」

 

「フフッ、確かに作法はありますがあまり堅苦しく考えないでくださいね?」

 

そんな少ししょげた先生を横目に見つつナギサはネイトを観察する。

 

カップの持ち方、食器の使い方から各種お茶菓子の食べ方。

 

(ただの強者…ではありませんね。例えトリニティでも十二分に通用するお作法をみにつけていらっしゃる…。)

 

幼少から上流階級の礼儀作法を叩きこまれたナギサから見ても彼女の目に見合ったものだった。

 

その後もネイトやナギサに教えてもらいながらホシノとシロコもお茶とお菓子や軽食を楽しんでいき…

 

「…ナギサ。三人とも、ナギサのお茶とお菓子をすごく喜んでるよ。」

 

「はい、とても喜ばしい限りです。」

 

その様子を先生とナギサは見つめつつ…

 

「――さあ、そろそろ話を聞かせてもらってもいいかな。」

 

「…ッ。」

 

先生は意を決して切り出した。

 

この茶会はただの交流の場ではない。

 

「…スゥ~フゥ~…。」

 

ナギサは深く呼吸する。

 

(大丈夫、桐藤ナギサ…。そう、包み隠さず…ちゃんと…。)

 

心の中で今から行うことについての最終確認をこなう。

 

だが…

 

カタカタカタ…ッ

 

緊張と恐怖からか少し震えだしてしまう。

 

すると…

 

ソッ

 

「ッ、先生…?」

 

そんなナギサの手に先生は自分の手を重ね…

 

「大丈夫、私がついているからね。」

 

安心させるように微笑んで見せた。

 

「…はい。」

 

少しだけ…勇気がわいた。

 

そして、ホシノとシロコとネイトを見渡し…

 

「…皆さん、まずは私のおもてなしを受け入れてくださりありがとうございます。」

 

このお茶会を楽しんでくれていることに感謝を伝える。

 

「うん、ご馳走させてもらってるよぉ。」

 

「美味しいお菓子や紅茶をありがとう、ナギサ先輩。」

 

「何時ぶりかの本格的なお茶会を思い出させてもらって感謝する。」

 

それに対して三人は礼を述べ…

 

「さて…そろそろ本題か?」

 

カップをソーサーに戻しネイトは姿勢を正してナギサに視線を向ける。

 

ホシノとシロコも同様だ。

 

「…ハイ。皆さんがお茶会を楽しんでくださっている中、大変心苦しいのですが…。」

 

これを受けナギサも一層気を引き締め…

 

「トリニティ…いえ、この私…桐藤ナギサがアビドス対して働いてしまった数々の不義理と無礼…。」

 

例え、それが蒸らしすぎた紅茶よりも苦渋に満ちた話であったとしても…

 

「そして…私の独善によってアビドスの日常を脅かそうとしてしまったことについて…包み隠さずお話しさせてください。」

 

彼女は覚悟をもって話し始めるのであった。




オリジナル生徒紹介
【挿絵表示】
ヘイロー
【挿絵表示】
名前 イヅル
フルネーム 松萩まつはぎイヅル
役割 STRIKER
ポジション Middle
武器種 SMG:スターリングMk5『クレインチャイム』
【挿絵表示】
クラス サポーター
攻撃タイプ 爆発
防御タイプ 軽装甲
学園 トリニティ総合学園3年生
部活 ティーパーティー、フィリウス分派秘書官
年齢 17歳
誕生日 4月28日
身長 168㎝
趣味 ティーセットや文房具の収集、軽食作り
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