―――中国革命時のスローガン
「来い!革命の時間だ!!!」
「いぃやあああああ!!!」
こうして幕を開けたチェリノの復権のための大規模クーデター作戦の最終段階。
片手で彼女を引き摺りながら先行した柊姉妹と合流するために屋上を進むネイト。
「チェ、チェリノ会長…!?」
「やはり書記長の座を…!」
それを見てかろうじて意識を保っていた保安委員会の生徒が二人を制圧しようとする。
が、
ビシュシュッ!ビシュシュッ!
「「ぐふ…!?」」
「寝てろ、反乱者ども!」
空いた片手でデリバラーを引き抜き素早く10㎜弾を撃ち込みすぐに意識を刈り取るネイト。
「待たせたな、カイアにサイナ!」
「随分会長の扱いが手慣れてきたじゃないか、дядя!」
「腹ぁ括れ、チェリノ会長!ここまで来たらやるしかねぇんだからよ!」
「なんでお前たちはやる気満々なんだ、柊姉妹ぃ!?」
少々手間取ったがツァーリ隊の四人が集結し屋上から庁舎内に入るための入り口に陣取る。
「よっしゃ、そんじゃ早速マリナの奴をとっちめに行くか!」
新たなドラムマガジンを装填し扉を今にもスレッジハンマーで叩き壊さんばかりに意気込むサイナだが、
「待て、サイナ。」
「дядяの言う通りだ。」
「んだよ、二人して?」
待ったをかけるネイトとカイア。
「そっそうだ!ここは一旦下の皆と合流して…!」
これに乗じて何とか逃げようとするチェリノだが…
「却下だ。言ったろ、誰が書記長の座に着くってな。」
にべもなくネイトはその案を切り捨てる。
「中にゃまだ保安委員会の奴らがいるだろう。階段も抑えられてるはずだ。」
「そんなら真正面からつっこみゃいいだろ、姉ちゃん?」
確かにサイナの言う通り、柊姉妹とネイトならば保安委員会の集団も突破できるだろうが…
「こっちにはチェリノがいる。奴らにコイツを抑えられたらクーデターは失敗だ。」
「あっそっか。」
唯一にして最大のウィークポイントであるチェリノがいるのがネックだ。
連れてきてなんだが彼女はあまりにも前線に立たせるのは心もとない。
「面倒ごとは少ないに限る。だから…。」
そう言い、ネイトが手に取ったのは…ある特異な形状をしたグレネードのようなものだった。
一方、
「急げ、屋上を奪還するぞ!!!」
「まさか航空機まで持ち出してくるなんて…!」
ネイトとカイアの予想通り、屋上目掛け多数の保安委員会の生徒がスクエア構造の階段を駆け上っていた。
如何にレッドウィンター最強の姉妹とはいえ一本道の階段では数が物を言う。
このまま一気に制圧しようと意気込むが…
ガチャ
ポイッ
屋上に通じるドアが開く何かが投げ込まれた。
「!グラナータッ!!!」
それに気づいた一人が叫び全員警戒する。
炸裂すれば無事では済まないだろうが縦に空間が広い階段の構造上、それでも大半の保安部の生徒が回避できる。
…そう思っていた。
パンッ!
「…え?」
彼女たちの耳を打ったのはグレネードの炸裂音にしては大人しいかんしゃく玉程度の破裂音だった。
『不発か?』、そう思う保安委員会の生徒達だったが…
コロコロ…
「痛っ!?」
「なに、これ…?」
階段のあちこちで足下に何かが飛んできた。
見るとピンポン玉ほどの金属の球体だ、
当たっても弾丸に比べれば大したことはないが…と、首を傾げていた次の瞬間、
ズババババババァンッ!!!
『みぎゃああああ!!?』
辺りに散らばった球体が一斉に炸裂。
これにより螺旋階段にいた保安委員会の生徒達は爆発に巻き込まれた。
バァン!
「…クリア、行くぞ!」
「先頭は任せな、дядя!」
「すっげぇ一発かよ!」
爆発後、ドアを蹴破り進路が確保されたことを確認したネイト達は気絶した保安委員会の生徒を避けながら階段を駆け下りる。
「おっとと…!いっ…一体どん手榴弾を使ったんだ…!?」
会談に倒れている保安委員会の生徒を見てチェリノは首を傾げる。
大量の爆薬を投げ込んだのであればまだ説明はつくがネイトが投げ込んだのは一つのグレネード。
たったそれだけでこれほど広範囲を吹き飛ばせるようなグレネードに心当たりはない。
「なぁдядя、さっきのあれはなんだ?」
先陣を切るカイアも警戒しながら疑問に思ったか何を使ったか尋ねると…
「『フラググレネードMIRV』って言ってな。要はクラスター爆弾タイプのグレネードだ。」
「はぁ?!クラスターのグレネード!?」
「またとんでもねぇの作ってんだな、アビドスは…!?」
キヴォトスでも聞いたこともないような小隊に柊姉妹すらも度肝を抜かれた。
『フラググレネードMIRV』、本来の意味のMIRVとは少々違うが一回り大きい親爆弾の中に6つの子弾を内蔵した分裂型のグレネードだ。
この子弾が撒き散らされることにより通常のフラググレネードよりも広範囲を殺傷させることができるのだ。
連邦時代では『ヌカワールド・レイダーズ』の頭目のみが持つ貴重品だったがアパラチア遠征でそのレシピを入手しネイトもクラフト・量産ができるようになった。
「いいな、この手榴弾!いくつかアタシにもちょうだいよ!」
「結構資材使うんだぞ、これ!?それに作れるのは俺だけだ!」
「そう言うのは後にしな、サイナ!」
そんな会話を交わしつつ、一行は階段を駆け下り施設に続くドアのそばに着く。
「サイナ、アンタの出番だ!」
「あいよ、姉ちゃん!」
カイアの指示でサイナは気合を入れて背負っていたスレッジハンマーを取り出し、
「ディンドンディンドン!!!チビ髭をお届けに上がりましたぁッ!!!」
ガッゴォオオオンッ!!!!
フルスイングで叩き込み蝶番を引き千切ってドアを破壊する。
「フラッシュ!」
すかさず、ネイトが庁舎内にフラッシュバンを投入。
シババァンッ!!!
「ムーブ!」
「オウ!!!」
炸裂後、ネイトとカイアがクロスエントリー。
「こんちは!受け取りのサインはいらないぞ!!!」
ズダダダダダダダッ!!!
「こんなもんか!?俺の知るコミーはもっとしぶといぞ!」
ボシュシュシュ…ッ!
『ぎゃああああ!?』
廊下に集まっていた保安委員会の生徒目掛け互いの得物が火を噴き弾丸の雨を叩きこむ。
「来な、二人とも!」
「チェリノ、書記長室はどっちだ!?」
「えッ!?ひっ左だ!」
「おっ流石元書記長!案内はばっちりだな!」
安全を確保しカイアを先頭に四人は庁舎内を進む。
生憎、内部構造を知る時間はなかったがここで役に立つのがチェリノである。
ここはいわば彼女の居城、自分の部屋への道は誰よりも知っている。
「サイナ、後方を警戒!カイア、引き続きポイントマンを!」
「あいよ!」
「チェリノ、俺の後ろに隠れてろ!」
「うっうん!!!」
道も知ることができ四人は赤い絨毯が敷かれた廊下を前進。
すると、
「…フフッ。」
「ん?どうかしたかい、дядя?」
作戦中というのにネイトから忍び笑いが漏れる。
「いや…ちょっと昔こういうことがあったらなぁ、と思ってな。」
「どッどういう意味なのだ、ラフィアン?」
不思議そうな表情を浮かべるチェリノだがおそらくこの場の誰もネイトの真意に辿り着けないだろう。
(全く因果なものだ…。コミーそのものではないとはいえ…その中枢に元アメリカ陸軍の俺が乗り込むなんてな。)
それは前世の西暦2074年、米中戦争の真っただ中でのこと。
アラスカで激戦をくり拾えていた米中両国だったがこの年に大きな転換点を迎えた。
なんと…アメリカ海兵隊と陸軍を中心とした歩兵部隊とパワーアーマーも含む機械化部隊が中国本土への反抗作戦を開始。
作戦名『ウルトラサイト作戦』とされたこの作戦は当初こそ順調に進行。
これに先立ち大改装を経た戦艦『マサチューセッツ』も投入され中国海軍を粉砕し上陸支援に多大な貢献を果たしている。
だが、汕頭や長江流域に南京、果てにはゴビ砂漠などでも戦闘が繰り広げられる中…アラスカと同様に戦線は膠着。
結局、アラスカを奪還してなお続いた中国本土進攻は双方決め手を欠き最終戦争が勃発したその時まで続いていたとのこと。
ネイトは当初よりアラスカで戦っていた…と言うか作戦に志願しなかったので縁がなかったのだが…
(年月も世界も超えて…まさか俺がこういう施設に踏み込むとは…。)
米陸軍の総力をもってしても実現できなかったことを形を変えて自分がやるk十になるとは因果というほかないだろう。
「…さて、さっさとあのバカを制圧してアビドスに帰るとしよう。」
郷愁に浸るのもそこそこにネイトは意識を集中させる。
すると、ちょうど目の前にある階段から…
ドタドタドタ…ッ!
慌ただしく駆けあがってくる大人数の足音を察知。
「дядя、カバーを。」
「了解。」
一行は壁際で歩みを止めネイトに登り口を警戒させ、カイアがコートの内側から『F1グレネード』を取り出し…
「サプライズだ。受け取りな。」
ッピィン!
ポイッ
スナップを利かせそれを階下に飛んでいくように投げ込んだ。
「カイア、進め。」
ネイトが階段の監視を引継ぎカイアを先に進ませたその時、
ドゴォオオオンッ!!!
「ヒィッ!」
グレネードが炸裂し建物が揺れる。
「サイナ、交代だ。進むぞ、チェリノ。」
「うッうん!」
「オウ!しっかり見張ってるぜ!」
効果を確認し今度はネイトがチェリノを連れて前進、
「よし、次はサイナの番だ。」
「うっし!」
渡り終えて今度はネイトがカバーに着きサイナを招き階段を警戒しながら横切ぎろうとした。
その時だった。
ドタドタドタッ!
勢いよく階段を駆け上る足音が響き、
「こんのぉ!!!」
「んなッ!?」
白いコートを振り乱して現れたのは内務委員会委員長の九城タイガ。
手にはRPD『イスカリニーチェリ』ではなくサイドアームの『スチェッキンAPS』と愛用のラバー警棒を持っている。
「喰らいやがれ、柊妹!!!」
バタタタタタァッ!!!
右手に持ったスチェッキンAPSをサイナ目掛けフルオートで発砲、
バシシシッ!
「ってぁなぁ、こんにゃろぉ!!!」
放たれた9×18㎜弾のいくつかがサイナの体に命中するもアーマーリグと持ち前のタフネスで耐え『グルービー』を向けるサイナ。
だが…
ズドォンッ!
一発撃てたかと思ったら…
ガチンッ!
「んなぁッ!?」
なんとこのタイミングで動作不良…ジャムが起きてしまった。
「ははッこれでも食らえ!」
その隙にタイガは間合いを詰めラバー警棒を振りかぶりサイナを打ち据えようとする。
そこへ、
「シィッ!!!」
ズドォッ!
「ぐあッ!?」
ネイトが彼女の脇腹に前蹴りを叩きこみ壁に叩きつけ、
スチャッ
素早く『The Problem Solver』を構え弾丸をお見舞いしようとする。
が、
ボシュッ!
ガキッ!
「ッちぃ!」
またしてもジャムによる動作不良が起こり、
スパッ
カチッ
「はぁッ!?」
素早く抜いたデリバラーすらも弾丸が不発になった。
「やりやがったな!」
その隙にタイガは体勢を立て直しAPSを構える。
「甘いッ!」
ドガッッ
「ぐッ!?」
しかし、ネイトが一瞬早くその腕を蹴り銃口をそらせ、
「変な手品使いやがってッ!」
「のわッ!!?」
ゴガァン!!!
サイナがスレッジハンマーを振るうも回避され壁にめり込んでしまう。
「дядяッ?!」
「先に行け、カイア!チェリノを頼む」
「分かった!」
一筋縄ではいかない相手と判断しカイアを先行させる判断をする。
「チェリノ、どっちだ!?」
「つっ突き当りを右だ!」
チェリノの案内で先を進むカイアだったが…
「撃てーッ!!!」
ドゴゴゴゴゴ…ッ!!!
ガギィン!
「のぉわ!!?」
曲がり角を出ようとした瞬間、轟音とともに無数の弾丸が襲い掛かってきた。
その一発が彼女のヘルメットのフェイスガードに直撃した。
「かっカイア、大丈夫か!?」
「あぁッ何だ、一体!?」
何とか身を隠し頭を振るい意識をはっきりさせ片目だけ覗かせると…
「そこまでだ、反乱者ども!!!ここから先は我々『親衛隊』が通さないぞ!!!」
「おいおい…面倒なのが…!」
そこには防弾盾『VANTシールド』と『ShAK-12』や『AS VAL』を構え廊下を塞ぐように陣取っている一団がいる。
以前、D.U.でネイトとミネと相対したレッドウィンターの精鋭部隊『レッドウィンター事務局親衛隊』だ。
しかも、今回はD.U.の時とはわけが違う。
「そっその声はトウカか!?」
身を隠しながらチェリノが呼びかけると、
「やはり貴方か、チェリノ会長!この乱痴気騒ぎを今すぐやめさせてもらおうか!!!」
親衛隊の中の一人がそれに答えた。
「なんだ、知り合いか?!」
「や、奴は『鞍橋トウカ』!保安委員会の副委員長で親衛隊の隊長だ!」
今一度カイアが顔を覗かせると…
「もう諦めろ、柊カイア!レッドウィンター最強の貴様でもこの布陣は突破できんぞ!」
VANTシールドの向こうにベレー帽をかぶり声を張り上げる一人の生徒がいる。
『鞍橋トウカ』、弱冠二年生にして保安委員会内で頭角を現しエリート部隊である事務局親衛隊隊長に登り詰めた精鋭である。
良くも悪くも真面目な性格で『親衛隊隊長』と言うポジションに誇りを持っており全力で現在の書記長を守る任務を遂行する。
今回もその性格ゆえの行動だろう。
愛銃は親衛隊の象徴ともいえる『ShAK-12』、銘は『グローム』。
カイアの防弾ヘルメットやボディアーマーも破壊できる怪物だ。
「諦めろって言われて諦めるほど227号特別クラスはお利口じゃないんだよ!」
ズダダダダダ…ッ!!!
返事とともにブラインドファイアで『ムシチェーニイェ』を発砲するカイアだが…
バゴゴゴゴゴッ!!!
「無駄だ!お前の銃ではこの盾は抜けないぞ!!!」
「チィ…飛び切りの徹甲弾詰めてきたってのに…!」
7.62x54mmR弾の徹甲弾による至近射撃すら防ぐことを念頭に設計されたVANTシールド相手には5.45×39mm弾の弾頭は非力すぎた。
「親衛隊、前進!奴らを制圧せよ!!!」
ザッザッザッ…!
トウカの指示で親衛隊の一団は盾を構えたまま整然と行進を開始。
「どっどうする?!」
「おい、дядяにサイナ!なんとかしねぇとやべえぞ!!!」
牽制射撃を続けながらそう叫ぶカイア。
振り返ると、
「このっいい加減に!」
「やられるわけねぇだろうが!!!」
「ブヘッ?!こんのっあんたたち、絶対ぶち込んでやる!!!」
ドガベキバキッ!!!
ネイトとサイナを相手に攻撃を打ち込まれながらもなおも反撃の意思は消えないタイガが肉弾戦を繰り広げていた。
(グッ時間がないってのに…!)
ネイトも戦いのさなかで聞いた声で状況は把握している。
なぜかタイガに銃を向けると確実に動作不良を起こしてしまう。
さらに体格も優れ喧嘩慣れもしているからかサイナの大振りの攻撃は当たらない上ネイトの格闘攻撃も耐えるタフネスもかなりのもの。
そんな中、
「喰らえ、イタチヤロウ!!!」
ゴカンッ!!!
「が…ッ!?」
とうとうタイガのラバー警棒がサイナの頭部に命中。
いかにキヴォトス人が振るう警棒と言えどサイナは頭部に装甲版を装着した溶接マスクをかぶっている。
その程度ではびくともしないはずだが…
グラ…ッ
「あぁ…ッ!?」
銃弾にもひるまないサイナの体から力が抜け膝をついてしまう。
「まずは一人!」
「厄介なものを…!」
明らかに不釣り合いな現象にこれも彼女の神秘によるものだと判断するネイト。
「次はテメェだぁ!!!」
ブンッ!!!
返す刀でタイガはラバー警棒をネイトに向けて振るう。
先ほどの攻撃とキヴォトス人の膂力で食らえばネイトの意識は完全に刈り取られるだろう。
だが、
「悪いが…!」
シュパッ!
ネイトの手が翻り…
シュカァン!!!
「え…!?」
「得物の打ち合いは俺も大得意だ…!」
ラバー警棒にディサイプルズ・カトラスを振るい半ばから切り落とした。
まさかの出来事に身を固くするタイガだったが…
「まだまだッ!!!」
ガバァッ!!!
「ちょおッ!!?」
振り抜いた状態のサイナの右わきと股下に腕を通し『アンダー・クリンチ』の形を取り彼女を抱え上げ…
「シィッ!!!」
ドッゴォンッ!!!
「ガァッ!!?」
キヴォトス人には劣るとはいえ常人換算でも怪力の部類の腕力でもって思い切り床に投げつけた。
さらに、
「らっラフィアン!これを使え!」
ポイッ!
チェリノが『チーストカ』をネイトに投げ渡し、
「すまん!」
パシッ!
それを受け取りタイガに銃口を向ける。
「バッバカめ…!さっきアタシに向けた銃は全部…!」
思い切り打ち据えられたせいか、苦しそうな声ながらも不敵に笑うタイガ。
彼女の手には未だにラバー警棒の残骸が握られている。
絶対に撃てない、タイガは確信めいていたが…
「バカはお前だ、チェーカー…!」
ネイトは一切動じることなく…
タタタタタタタァンッ!!!
「ぐはぁッ!!?」
『チーストカ』に装填されていた7発の7.62×38mmRナガン弾をタイガに叩きこんだ。
「な…何…で…!?」
小口径弾とはいえこれほどの速射で急所に叩きこまれてはタイガも耐えきれず意識を失う。
「覚えておけ…!リボルバーにはジャムはないんだよ…!」
どういう仕組みかは不明だが銃の動作不良を起こさせるような神秘が彼女にはあるのだろう。
だが、オートマチックならいざ知らずリボルバーは最低でもジャムには無縁の信頼性を誇る。
不発を起こす可能性もあったので半ば賭けであったが…
「みっ見たか、ラフィアン!これがわが愛銃の実力だ!」
「…あぁ助かったよ、チェリノ。」
自慢げに胸を張るチェリノに浅く笑みを返しながら『チートスカ』を返すネイト。
「дядяに会長!!!ソイツ片付いたのなら早くこっちどうにかしてくれ!!!あと、その伸びるバカ妹をさっさと起こせ!!!」
ズダダダダダ…ッ!!!
「おっとすまない、カイア!」
が、親衛隊に応戦しているカイアに怒鳴られ…
ブスッ
プシュゥ
「ハウワッ!!?дядя、アンにゃろうは!?」
「そこで代わりに伸びてるよ、サイナ。」
すぐにスティムパックを打ちサイナの意識をはっきりさせる。
「カイア、親衛隊の位置は!?」
「まだあるが余裕もそうない!アタシの弾も尽きそうだ!」
「なんだって!?姉ちゃんでも倒せねぇのか!?
「ど…どうしよう、捕まったらおいらは絶対に牢屋行きだ…!」
今なお鳴り響く親衛隊の得物の銃声をBGMに状況を確認し、
「………。」
ネイトはすぐに思考をめぐらす。
この場所は角度的にルマやセリカの狙撃支援は有効になり得ない。
援軍を待つ余裕もない。
では、『The Problem Solver』を撃ち込みまくって単発威力を極限まで上げるか?
確かに有効だが『猛烈』は連続攻撃が前提の効果だ。
正直言って防御陣形を取った多数の相手には相性が悪い。
必要なのは大多数を相手取りVANTシールドをもものともしない手数と大火力を両立した武器が必要だ。
だが、元よりここまで大規模な戦闘を想定していなかったのでX-02も整備のためにアビドスに置いてきている。
『爆発』のレジェンダリー武器やプラズマ放射器は留守番な上ガトリングレーザーは単発威力で考えると大人しい部類だ。
それを実現できる武器は手持ちには…
「…ッ!」
「クッソォスラッグでも駄目か!?」
「дядя、どうすんだ!?」
かわるがわる応戦する柊姉妹の声を受け…
「30秒だ、30秒時間を稼いでくれ!」
「30秒だな!?分かった!」
「任せろ、それくらい持たせてやっからよ!」
ダッ!!!
二人にそう頼みネイトは駆けだした。
「らっラフィアン、どこへ行くんだ!?」
「気にする暇があるならオメェも撃てよ、チェリノ会長!」
「こっちだって弾が切れそうなんだからな!」
ズダダダダダダダッ!!!
ズドドドドドドォッ!!!
呼び止めようとするチェリノを制し柊姉妹は最後の意地と言わんばかりに親衛隊に弾丸を浴びせかけ始めた。
一方、
「無駄だと言っているだろう、柊姉妹!どれだけ撃ち込んでもこの盾は抜けんぞ!!!」
ドゴゴゴゴゴ…ッ!!!
『グローム』を放ちながらにじり寄るように歩を進めるトウカ達親衛隊。
その距離はもう10mを切っているだろう。
「隊長、そろそろ突撃しますか!?」
「油断するんじゃない!相手はレッドウィンター最強だ!確実に仕留めるぞ!!!」
圧倒的優位にもかかわらず陣形を崩すことなく間合いを詰めていく。
それほどまで『レッドウィンター最強』という看板は脅威なのだ。
「ちぃ弾切れ…!」
「あたしもだ…!」
「どッどうしよう…!」
対する、柊姉妹やチェリノ達も後がない状態になってしまっていた。
長物の弾薬はカンバン、残るは拳銃とサイナのスレッジハンマーだけとなってしまった。
「気合入れな。サイナ…!」
シャッコン!
「オウよ…!大暴れしてやろうぜ、姉ちゃん…!」
ガシャッ
最後の抵抗と言わんばかりに得物を構える柊姉妹。
その時だ。
「カイア!スモーク持ってただろ!!!」
ネイトが廊下を全力ダッシュで戻ってきた。
約束通り…30秒ほどの間であった。
「ッあぁ行くぞ!!!」
ギュンッ!
彼の姿を見て思わず声が弾むカイア。
懐からスモークグレネード『RDG-2B』を取り出しピンを引き抜き投擲。
「グラナータッ!!!」
投擲物を警戒しトウカ達は行進を中断し防御態勢を取る。
が、
ブシュウウウ!
それは爆発するのではなく黄色い煙を噴出し視界を覆う。
「煙幕ッ!?」
「総員警戒!姿が見えたらハチの巣にしてやれ!!!」
これに対し、トウカ達は防御態勢を維持し銃口を煙幕の中に向ける。
破れかぶれの相手が最後に問えう手段は決まっている。
(この煙幕に乗じ突撃するつもりか…!)
相手はあの柊姉妹だ。
近接戦闘でも生半可なキヴォトス人など容易く倒してしまう腕っぷしと喧嘩の強さは持っている。
切り込まれてしまえばたとえ親衛隊と言えど無事では済まない。
だが、トウカ達はカイアとサイナに警戒を裂きすぎた。
彼女達ともにいたチェリノは無理もないが真に警戒すべき…彼女たち以上の強者の存在を把握できていなかったのだ。
ガシャンガシャンッ!!!
「ん?なんだ、この音は…?」
煙幕の中から響いた聞き慣れない…機械の起動音のような音。
「窓を撃て!!!煙幕を晴らすんだ!!!」
「了解!」
バリィン!
ビュオウ!!!
視界確保ために手近な窓を割ると寒風が一気に屋内に流れ込み黄色い煙幕を押し流していく。
煙幕が晴れていき…
『…え?』
顕わになったそれを目の当たりにして精鋭と謳われる親衛隊ですら絶句した。
先ほどまでそこはただの廊下だったはずなのに…
「あぁー重かったぁ!」
目の前にはクサビ形に設置された軍用バリケードとその間に大口径の銃口がこちらを睨んでいた。
桁違いに大型で武骨なフォルム…トウカ達には嫌というほど見覚えのある銃だ。
「これならその盾でも防げんだろ!?」
ジャッコンッ!
そして、その背後にコッキングレバーを引いて狙いを定めるネイトもいる。
「~った、退避ーッ!!!」
「わああああああッ!!?」
煙幕が晴れたら室内に…しかも重機関銃陣地がいきなり現れるなど想定できるはずもない。
トウカも血相を欠き親衛隊は全員逃げ出そうとするが…
「さぁダッシュしろ、Кобаのデュシーカども!!!」
ドゴゴゴゴゴ…ッ!!!
彼女たちの銃声をも凌駕する大音響の銃声が廊下を支配した。
放たれるのは対空・対装甲車両を念頭に設計された『12.7x108mm弾』。
同じ50口径でもShAK-12の『12.7×55mm弾』とはサイズも威力も桁が違う。
この銃を前にしては…
バガガガガガァ…ッ!!!
歩兵火器に圧倒的な防御力を誇っていたVANTシールドも最早紙同然と言わんばかりに強化セラミックと装甲版のかけらを撒き散らし粉砕。
「あんぎゃあああああ!!?」
貫通した弾丸はその背後にいた親衛隊たちにも襲い掛かる。
親衛隊の隊員たちもボディアーマーで防御を固めていたものの大型弾の前には役に立たない。
シュ~…
数秒後、用意していたベルトリンクの弾丸を吐き出し終えDsHKは銃口から硝煙を上げ動きを止め、
ピク…ピクピク…
「そ…そんなのぉ…反則ぅ…。」
トウカ達親衛隊は意識を刈り取られ廊下に臥せていた。
ガシャンガシャンッ!!!
「クリア!先に進むぞ!」
即席の機銃陣地を収納しつつ軽く言ってのけたネイトだったが…
「クリアってдядяよぉ…?!」
「それ取りに行ってたのか…?!」
「無茶苦茶もいい所だぞ…!?」
これには柊姉妹もチェリノも言葉を失っている。
あのDsHKは先ほど屋上に設置されようとしていたものでネイトはPip-Boyの収納機能でまだ無事だったものとベルトリンクを回収。
カイアが煙幕を張った隙に軍用バリケードをクラフトし据え付けたのだ。
原理を知っていればなんということはないが三人には正に魔法としか思えない光景である。
「ほら、カイアにサイナ!上で転がってたやつから予備弾を拾って来たぞ!」
「おっオウ!サンキュ!」
「これでまた暴れられるってもんだ!」
最大の障害を排除し終え残るは…
「チェリノ、案内を頼む!」
「うっうむ!書記長室はすぐそこだ!おいらについて来い!」
この大騒動の発端のみとなった。
ちょうどその頃…
「いっ今の音はなんだ…!?」
書記長室ではマリナが愛銃の『バラライカ』を抱え震えていた。
一応、手近な机を倒し遮蔽物は作っているがあまりにも心もとない。
「チェ、チェリノ会長は絶対に起こっている…!こっこのままでは絶対に粛清を…!」
十中八九、このクーデターはチェリノが起こしたものだ。
つまり、いの一番にここに向ってくるのはチェリノ本人のはず。
「いっいや…まだだ…!まだチェリノ会長を捕まえて反乱分子を抑え込めば…!」
それでもまだ一縷の望みを捨てず最後まで抵抗する意思は捨てていない。
来るであろうチェリノを待ち構えてその時を待つ。
すると…
「ここだ、ここがおいらの部屋だ!」
「いやぁ全く長かったぜ!」
「あとはあのバカとっちめるだけだな…!」
「きっ来た…!」
ドアの向こうからチェリノと柊姉妹の声が聞こえ銃口を向けるマリナ。
が、
「おっおいдядя!?何をする気だ!?」
「ん?ノックは必要だろ?」
「いやっそりゃノックどころじゃねぇ!」
「ストップ、ラフィアン…いや、ネイト!!!ここはレッドウィンターで最も重要な部屋でもあるんだ!!!」
「なっなんだ…?」
ドアの向こうから今度は何やら口論をする声が聞こえてきた。
「あとで直してやる。俺はサッサとアビドスに帰りたいんだ。」
「まっ待ってく…!」
口論をそこそこにチェリノの制する声も無視し…
ドゴゴゴゴゴ…ッ!!!
「うわあああああッ!!?」
大音響とともにドアがはじけ飛んだ。
書記長室内をドアの破片と高速で通り抜ける風切音が頭上を通り抜けマリナは悲鳴を上げて伏せるしかない。
ほんの数秒間、破壊の嵐が吹き荒れ…
「あ゙ぁ゙ー腰がぁ…!!!」
「だから言わんこっちゃない…。」
「アンタ、キヴォトス人でもないのに…。」
「おっおいらの部屋がぁ…。」
「いっ一体何が…!?」
声が鮮明に聞こえたので浴びた瓦礫を振り払うことなく起き上がったマリナが見たものは…
「やっぱアパラチアの連中は頭がおかしかったんだな…!」
「そこがどこか知んねぇけどдядяも同類だと思うぞ…?」
「DsHKの腰だめ撃ちとかレッドウィンターでも聞いたことねぇぞ…?」
「ひえええええ?!」
重機関銃DsHKを抱え腰を抑えて苦悶の声を上げるネイトがいて度肝を抜かれた。
その傍らには彼の腰を擦る柊姉妹に絶句した表情のチェリノがいる。
ブスッ
プシュゥ
「フゥ~…楽になった…。」
スティムパックを打ち腰痛を治してから姿勢をしゃんとし、
「…で?まだやるか、バカコミー?」
ジャキンッ!
改めてDsHKを構え直し銃口をマリナに向け尋ねた。
「おっと今回は悪いがдядяの味方だからな?」
「やろうってんなら相手になるぜ?」
得物を突き付けながら柊姉妹もフェイスガードを上げ不敵な笑みを覗かせ、
「諦めろ、マリナ!貴様の負けだ!」
チェリノも堂々とした態度で降伏を勧告する。
かつて一周されたネイトにレッドウィンター最強の二人にすごまれ…
「こ…降参します…!」
流石のマリナも涙目になり両手を上げるしかなかった。
「よし、こちらツァーリ2。『ミハイルは退位した』、繰り返す『ミハエルは退位した』。」
それを聞き、外で戦闘中の先生に無線を飛ばした瞬間…
『わあああああッー!!!』
事務局の外から割れんばかりの歓声が沸き上がるのであった。
―――――――――――――
――――――――
―――
数分後、
ガシャンガシャンッ!!!
「こんなものでどうだ?」
「おぉ…本当に直った…。」
「こりゃすげぇ…。」
「一体どんな神秘だ…?」
重機関銃でぶち抜いた扉やらのクラフトを用いた修繕なども終えたタイミングで…
「チェリノ会長、ご無事でしたか!」
「廊下凄いことになってましたけど!?」
道中の惨状に驚きを隠せないトモエと先生が到着。
「おぉ、トモエにカムラッド!」
ようやく荒くれ者ではない人物たちの登場に…
「どうだ!来たッ!見たッ!勝ったぁッ!!!」
チェリノはいつもの調子を取り戻し胸を張って成果を報告する。
「どうだ!見たか?!おいら達が完璧な作戦で敵を粉砕するところを!」
「はいっ本当に勇壮な戦闘でした、チェリノ会長!」
「ったくピーピー言ってたのに調子になってまぁ…。」
「まっあの警棒ヤロウを倒したのはチビのお手柄だわな。」
「ネイトさん、お疲れさまでした。怪我とかはしてませんか?」
「重機関銃を抱えて撃って腰をやったが今はもう治ってるよ、先生。」
合流でき互いに無事や成果を確認し、
「さて…マリナ委員長。クーデターについてのいいわけでも聞こうか?」
「ううッ…。」
五人の視線が後ろ手に拘束され床に座らされたマリナに注がれた。
「マリナ、おいらが今までお前をどれほど大切にし信頼していたか…。」
このような事態となり悲しみを湛えながら言葉を漏らすチェリノ。
だが…
「…それなのによくもおいらの昼寝の時間を狙ってクーデターを起こしたな!!?許さないぞッ!!!」
すぐに目くじらを立ててこのクーデターについて問い詰め始めた。
「面目次第もございません、チェリノ会長…。」
「おっ?意外に素直…。」
「なんやかんやコイツ、チェリノのことは尊敬してるみたいだしな。」
その言葉にショックを受け項垂れるマリナ。
「うむうむ!」
彼女の反省している姿を見てチェリノは満足そうに頷き、
「…それでおいらに反旗を翻した本当の理由はなんだ?」
この大騒動を起こした発端を尋ねる。
先ほどまではさておきマリナのチェリノに対する忠誠心の高さはベクトルが少々おかしいながらもこの場の全員が知るところ。
そんな彼女がいきなりクーデターを起こしたとは考えられない。
考えられるのは…
「…やっぱりおいらがあの時にマリナのプリンをこっそり盗み食いしたことで腹を立てたのか…?」
「………ん?」
「それとも…マリナが大事にしているくまのぬいぐるみをこっそり枕に使ったからか…?」
「お、おいチェリノ会長…?」
日々降り積もった不満が今日爆発したのかと思いおずおずと心当たりを明かし始めるチェリノ。
正直…あまりにもしょうもないので柊姉妹もあんぐりしているが…、
「プリン?熊のぬいぐるみ?何のことでしょうか…?」
それはどうやらマリナも同じのようだ。
「おっ思い出せないならそれでいいのだ!」
「えぇっと…言っちゃったら手遅れなんじゃ…。」
「先生、ここはもう少し様子を見ましょう…。」
「オッホン!それではプリンでもクマのぬいぐるみでもないなら…一体どんな理由でクーデターを起こしたのだ?」
そんな先生のツッコミも意に介さずにチェリノはさらに問いかける。
彼女からすればこれ以外は非常にマリナとの関係は良好だと思っているつもりなのだろう。
そして…
「あの…それは…。」
マリナは一瞬言い淀み…
「じ…実は…チェリノ会長の石像を不注意で割ってしまって…。」
マリナにとってのクーデターを起こした理由を明かすのであった。
「石像?何の石像だ?」
「し、新館の廊下にある会長の石像です。先月、新館の増築を記念してチェリノ会長の謹厳なお姿を石像にしてあそこに設置しました。」
さらにどこにある物か詳細に明かされるが…
(そ、そんな石像あったか…?確かにあったような気もするけど…?)
当の本人であるチェリノはいまいちピンときていない。
何しろ目立ちたがり屋のチェリノは今までいくつもの石像やら銅像を建ててきている。
その一つ一つをいちいち覚えていないのも無理はない。
「しかし…不注意でその石像にぶつかって…お顔の髭の部分が割れてしまいまして…。私の手で会長の権威を失墜させてしまいました…。」
マリナはというと未だに恐縮しその石像に何があったかを説明し…
「故意ではなかったとはいえ…きっと会長にはお許しいただけないだろうと思いそれで…。」
その末のクーデターだったと明かすのだった。
「…え?そんな理由でチビにクーデター起こしたのか、お前?」
「…言いたいことは分かるけどちょっと黙ってな、サイナ。」
無遠慮なサイナをカイアが制するがおそらくこの場の全員が同じ気持ちだろう。
「う、うむ。柊妹の言うのは一理あるな。」
「え?」
気を取り直しチェリノもマリナの事情をそう判断し…
「マリナ、お前はレッドウィンター連邦学園における事務局の保安委員長であり我が忠実な右腕として今まで沢山の仕事をこなしてきた。…ちょっとおバカなところはあるけど。」
彼女の普段の働きや、
「いくらおいらが有能だとしてもお前がいなかったら今のこのざまで登れなかっただろう。お前を失うことに比べたら…石像の髭が割れるくらい些細な問題だ。…この前は洒落にならなかったけど。」
「チェリノ?ちょくちょく本音が漏れてるよ?」
これまでの彼女の功績を感謝しつつ…
「おいらは寛容だからな。そんな些細なことでは粛清は下さないのだ!ハハハハハッ!」
マリナの石像破壊に関してはさして気にしていないと笑って言ってのけたのだった。
「会長…!」
マリナも許されたと思い表情が明るくなった…
「…と言うとでも思ったか!!?」
「えッ!?うわッ!?」
かと思ったらチェリノは眉を吊り上げマリナに飛び掛かる。
あまりの急変っぷりにマリナも追いつかずにマウントを取られてしまい、
「お前のせいでこの数時間どれだけ苦労したと思う!!?昼寝も出来ないしあちこち歩きまわされて生徒達にはチビと言われる話無視されるわ!!!おまけに殺気はとっても恐い思いもしたんだぞ!?」
ポコポコポコ…ッ!
「え、ちょッチェリノ会長!?」
そのままチェリノが思いのたけをぶちまけながら全く力を感じさせない打撃を彼女に打ち続ける。
「オーやれーやれー!」
「こりゃ滅多に見れないもんが見れたな!」
「ちょッカイアにサイナ、止めなくていいの!?」
「ですがまぁ…チェリノ会長の言うことももっともですので…。」
「トモエまで!?」
囃し立てる柊姉妹に困った表情を浮かべるトモエと場の空気はさらにカオスになっていく。
「石像のことはこの際どうでもいいがクーデターを起こしたことについては許さない!!!」
「ちぇッチェリノ会長、どうかお許しをぉー!!!」
》「ダメだ、絶対に許して堪るものか!!!トモエ、今すぐマリナや親衛隊に内務委員会の連中を連れていき一か月間トイレ掃除の刑に処す様に!!!」《
勢いそのままにクーデターの際に反抗してきた組織全員を処分する旨を伝え…
「さぁそれでは粛清のパレードを始めるとしよう!!!」
会長に返り咲いたチェリノは高らかにそう宣言するのだった。
しばらくし、マリナを筆頭に廊下で伸びていた生徒達はクーデターに関わっていなかった生徒達に連れていかれた。
「いやー、一時はどうなる事かと思ったが…。」
「改めて書記長への復帰、おめでとうございます。」
「カムラッドも陽動作戦の指揮、実に見事だったぞ!」
「ううん、私だけの力じゃないよ。生徒たちみんなが頑張ってくれた結果さ。」
書記長室に残ったチェリノとトモエに先生は改めて政権奪還までのたがいの労をねぎらっていた。
「そう言えば他の生徒達はどうしたのだ?」
「チェリノが勝ったと聞いたらすぐに解散していったよ。あ、ちゃんと約束は守る様にって伝言を頼まれたね。」
「うむ、勇敢な働きには感謝をもって労おう!」
「すぐに手続き関連の準備をいたしますね。」
と、話題は協力してくれた生徒達に関するものに移り…
「っと忘れていたな!ラフィアン、此度はよく戦ってくれた!」
チェリノはネイトの働きについても満足気に述べ始める。
「『熱砂の猛将』、正に聞きしに勝る戦いぶりだった!どうだ、そちらさえよければレッドウィンターの名誉ギラニールに推挙しても…!」
と、ネイトに遠回しなスカウトを持ち掛けるため室内を見回すと…
「………あれ?ラフィアンは?」
彼の姿はどこにもなかった。
「そう言えば…チェリノがマリナを問い詰め始めた時にはもう…。」
「一体どちらに…。」
先生とトモエも首を傾げていると…
ドドドドドドドッ!!!
「こっこれは!?」
「ベルチバードのエンジン音?!」
室内にベルチバードが発する特徴的な重低音が響き始めた。
屋上では…
「はぁ~…チョコを届けるだけかと思ったら…。」
「とんだ小旅行になっちゃったわね…。」
「二人ともお疲れさまでした。帰りの操縦はお任せください。」
セリカを拾ってきたアヤネが操るベルチバードのキャビンに乗り込み背もたれに体を預けるネイトがいた。
「で、カイア先輩たちはなんて?」
「準備ができたらまた来るって言ったら楽しみにしてるってさ。後はチェリノが約束を果たしてくれるだけだな。」
「大丈夫ですよ、きっと。」
「さぁ、アビドスに帰ろう。寒くて柴関ラーメンが恋しい。」
「では離陸しますね。」
そう言い、アヤネが操縦桿を引き上げベルチバードは離陸。
すると、
「ラフィアーン!!!」
屋上にチェリノが姿を現した。
「チェリノ、約束忘れるなよ!資材の詳細な内訳は追って連絡する!」
「まて、このままアビドスに帰るつもりか!?」
「契約に則っての活動だ!別にあれ以外の礼はいらん!」
エンジンにかき消されないよう互いに大声で言葉を交わし、
「それじゃあな!今度はもう少し長期政権になるように頑張れよ!」
ネイトなりに彼女への激励の言葉を投げかけベルチバードは白い空の中へ飛び立っていく。
「全くアイツと来たら…!」
何も言わずさっさと帰るネイトを薄情に思いつつも…
「…任せろ、約束は必ず守る。」
そう笑みを浮かべて庁舎内に戻っていくのであった。