Fallout archive   作:Rockjaw

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「危機に直面したらまず深呼吸を三回せよ。三回する時間がなければ二回、いや一回でもよい。一回もできないときは、深呼吸をするんだということを考えよ!」
―――戦闘機乗り『坂井三郎』


The Latest vs. the Oldest and Most Advanced

「どうして出撃できないんだ、ノア!!?」

 

「絶対にこんなの大変なことが起こってるって!」

 

「ですから、テツカさんにヨシエちゃん。システムが復旧できない以上、戦闘機の飛行には相当な危険が…。」

 

「そんなの分かんないだろ!?俺等のファントムは機械式だ!!!飛ぶだけなら問題ねぇ!!!」

 

「そうだよ、ノア先輩!飛べるんだったら僕達なら問題ないよ!」

 

突如としてシステムがダウンし戦闘機の飛行できなくなったミレニアム航空隊の基地。

 

航空祭でごった返しているはずだったが観客はすでにシェルターに避難済みでがらんとしている。

 

その格納庫内でノアと言い争う生徒の声が響き渡っていた。

 

食って掛かっているのはフライトジャケットの袖を腰で撒いているなんとも負けん気の強そうな生徒とリボンで結んだツインテールで幼げな印象を受ける生徒である。

 

「セミナーと通信も出来ねぇ!電話も通じねぇ!だったら飛んでって見てくるしかねぇだろ!?」

 

「ファントムの速さならまたすぐに戻ってくることもできるよ!だからお願い!」

 

ヒートアップする二人だが、

 

「現在、ユウカちゃんとシャーレの先生が対処に動いています。ですから、今は待機をお願いします。」

 

「チィッ!おい、『ヒロノ』!!!アンタもなんか言ってやんなよ!!!」

 

「『タケミ』ちゃん!タケミちゃんもなんとか言ってよぉ~!」

 

冷静沈着なノアに分が悪いと感じたかそれぞれ傍らにいた生徒に話を振るが…

 

「落ち着きな、テツカ。ノアの言うことはもっともだよ。」

 

「なぁ!?アンタまでそう言うのか!?」

 

パイロットサングラスをかけ爪にヤスリ掛けをしている冷静な生徒はノアの意見を支持。

 

「レーダーも使えない、メインシティの状況も分かんない。挙句にアビオニクスのレーダーも不調なんだよ?」

 

「『生体アビオニクス』って言われるお前がいるだろ!?」

 

「だとしても、目隠しどころか失明したも同然のままアンタと一緒に空を飛ぶのはごめんだね。」

 

彼女の言うように現在、ミレニアム航空隊の全システムは使用不可になっている。

 

飛び立つこと自体は不可能ではないがレーダーもFCSも使えない状態、つまり目隠しした状態で超音速を飛ぶのも同義なのだ。

 

キヴォトスの空は民間の飛行船や航空機も多数行き交っている。

 

そんな所をこんな状態で飛ばすことなど許されるはずがない。

 

「ノア、今復旧に取り掛かっているんだろ?」

 

「はい、ヒロノさん。」

 

「だったら、私は待つのを選ぶよ。」

 

「ちぃ、相変わらず頭が固い奴だ…!」

 

そんな相棒の言葉に口をへの字にして座る彼女。

 

『神代テツカ』と『栗栖ヒロノ』、ミレニアム航空隊きってのF-4EJ改のパイロットとナビゲーターで『キャッツトースト隊』の隊長機を務めている。

 

『神代テツカ』はF-4EJ改の特性を体で覚え尽くしまるで手足のように操縦することが可能。

 

アクロバット飛行だけでなく空戦能力も秀でており模擬戦闘では3年生が操縦するF-14Aにも勝利するほどの腕前だ。

 

が、余りにも激しい操縦に多くのナビゲーターがギブアップした問題児でもある。

 

そんな彼女の後部座席でナビゲーターを務めるのが『栗栖ヒロノ』。

 

『生体アビオニクス』とも称されるほどの頭脳を有し風防を塞がれた状態でもほぼ誤差なくパイロットをレーダーと航空図さえあればパイロットを目的地に誘導できるほどの技量を持つ。

 

常に冷静沈着で激情型のテツカのお目付け役兼彼女の能力をさらに引き上げる相棒としてコンビを組んでいる。

 

「ヨシエ、貴方も落ち着いて。私だってどうにかしたいけどヒロノ先輩の言う通り、計器飛行も出来ない状態で出撃なんて無茶よ。」

 

「だってだってぇ!ミレニアムが大変なことになってるんだよ?!」

 

「いくら貴方が天才だからってそんな危ない橋を渡らせられないわ。」

 

と、テツカのそれとは違いまるで駄々をこねているような彼女の要求を受け止め冷静になだめるもう一人の生徒。

 

『西森ヨシエ』と『水科タケミ』、1年生ながら『キャッツトースト隊』の副長機を任せられている新進気鋭のファントムライダーである。

 

『西森ヨシエ』は小柄ながら天性の才能でF-4EJ改を踊るように操るテクニックを持ち負けん気の強いテツカにも一目置かれる実力を持っている。

 

そんな彼女を支えるのが『水科タケミ』、天才肌ゆえに無理をしそうになるヨシエを宥めさらに才能を引き出すナビゲーターだ。

 

航空隊入隊時からのコンビで普段からも仲がとてもよく航空隊のマスコット的な存在でもある。

 

「…ごめんなさい、皆さん。私も皆さんの気持ちは痛いほど分かります。私もこの事態をどうにかしたいと思ってます。」

 

そんなヤキモキしているテツカとヨシエに自らも同じ気持ちと明かすノア。

 

「だったら行かせてくれよ…!」

 

テツカがなおも出撃を志願するが…

 

「ですが、機体よりも皆さんのことが大切なんです。機体は壊れてもまた製造できます。」

 

「ノア先輩…。」

 

「でも、パイロットはそうはいきません。貴方達を失うことは…ミレニアムにとって絶対あってはならない損失なんです。」

 

パイロットとオペレーター、それらはかけがえの無い存在であると打ち明け、

 

「ですから…お願いします。システムが復旧するまで待機していてください。」

 

彼女たちに頭を下げ懇願するのだった。

 

それをみて…

 

「…チィ…。」

 

「どこに行く、テツカ?」

 

「燃料と兵装の積み込みだ。…いつ出れるようになってもいいよにな。」

 

「…全く…素直じゃないな。私も手伝うよ、相棒。」

 

「あっ待って!僕も行く!タケミちゃんも行こ!」

 

「ハイハイ。慌てたら危ないわよ、ベスティ。」

 

テツカ達はその時の為の準備をしに向かったのであった。

 

「…ありがとうございます、皆さん。」

 

立ち去っていく4人の背中にノアは再度頭を下げる。

 

一方、

 

「どうだい、シイナ?何か不具合はあるかい?」

 

「ミレニアムと別系統のシステムのおかげで今のとこは問題ないようだね。」

 

「やった!1機だけでも飛べるのが残ってるなら心強いね!」

 

駐機場ではアビドスのF-20Eのコックピットに集まりシイナやミチエ達が状態を確かめていた。

 

シイナの言う通り、F-20Eはミレニアムのシステムではない機体だ。

 

そのおかげもあってか、まだクラッキングの被害は確認されておらず飛行には問題はない。

 

ないが…

 

「今だけこれがウチ所属の機体だったらなぁ…。」

 

「それは無茶な相談だよ、ミキ。そうだとしても…訓練なしにこの機体で出撃なんて無理だからね。」

 

悔しげに呟くミキに首を横に振りながら残念そうに返すシイナ。

 

そう、いかに高性能でこの状況で飛行可能だろうとF-20Eはアビドス航空隊の機体でシイナもアビドス生だ。

 

許可もなしにミレニアムの領空を飛んだり、ましてや出撃するなどもっての外である。

 

「一応、ホシノ委員長から有事の際はそっちの要請と独自の判断で動くのは許可されてるけど…今はこっちも待つしかない。」

 

「兵装はウチのも使えるんだよね?」

 

「うん、ミサイルもうちのと規格は一緒だよ。」

 

「だったらノアに掛け合って用意させよう。」

 

「友軍機は1機でも多いのがいいからな。」

 

ともあれ、味方が1機でも増えることは喜ばしいことだ。

 

その時に備えF-20Eの出撃準備を進めることに。

 

すると…

 

「………なぁシイナ。」

 

「何?」

 

「アイツは…あれでいいの?」

 

ミチエに言われてそちらを見ると…

 

「イッチニーサンッシッ。」

 

自身の機体のそばで体操をしている生徒がいる。

 

一通り体を動かし汗をかいたかと思えば…

 

チュ~…

 

「プハァ!ミレニアムの牛乳も美味しいね!」

 

用意してもらったパックの牛乳を飲み一服する。

 

「あぁ大丈夫だよ。アレがルーティンみたいなもんだから。」

 

「そ、そう?」

 

一見して中々の変わり者だということは分かるがそれでもこの場に派遣されているのだ。

 

ヘボではないはずだが…

 

「機体といいパイロットといい…アビドスはよく分からん。」

 

「こらっミキちゃん。」

 

そんなことを呟くミキだが…

 

(あの体操…どこかで…)

 

ミチエはそんな生徒のことが引っかかっているようだった。

―――――――――――――

 

――――――――

 

―――

そんな出撃準備を整えているミレニアム航空隊基地の一方、

 

ガチャガチャ…

 

ウィーン…ウィーン…

 

バチッバチバチッ!

 

メインシティでは刻一刻とミレニアム陥落の時が近づいてきていた。

 

インベイドピラーの作用により周囲一体の電子機器や車両が取り込んでいくデカグラマトンの福音によって変質したhubから誕生した新たなる預言者。

 

元々hubがあった場所は取り込まれた物によって瓦礫が覆われ金属と配線が覆う枯山のような状態になっている。

 

しかも、徐々にその範囲が広がりつつあり『ミレニアム全てのテクノロジーを飲み込む』、その予想が決して誇張ではないことを見せつけているようだ。

ズゥン…ッズゥン…ッズゥン…ッ

「………。」

 

そんな己の物になりつつあるミレニアムの街をhその預言者は無機質な巨大なアイセンサーで見下ろしていた。

 

キヴォトス一の科学力を誇るミレニアムサイエンススクール。

 

その『栄光』を奪わんと一切の感情も見せずに淡々と己の躯体を肥大化させ続けている。

ズゥン…ッズゥン…ッズゥン…ッ

「………。」

 

しかし、この預言者はそんなものに目もくれず思考の海に自身の演算機能を委ねていた。

 

つい先ほど福音を受けて顕現した…いわば生まれたばかりの存在だ。

 

己のなすべきこと…この地を己の『栄光』で遍く照らすことは理解している。

 

そのことに何の疑問も抱くことはない。

 

だが、それでもこう思ってならない。

 

『この世はこんなものなのか』…と。

ズゥン…ッズゥン…ッズゥン…ッ

福音を受けて今しがた顕現したこの預言者は…言うなれば最新鋭の存在だ。

 

この地の知識も原則も原型のhubを通じて把握できている。

 

ならば…もうこの世に『未知』はないのか?

 

そんな演算の海に身をゆだねていた…その時、

 

ズゥン…ッ!ズゥン…ッ!ズゥン…ッ!

 

「!」

 

片手間に奪取したセンサーが揺れを検知した。

 

定期的なそれも一定の強さの揺れ。

 

それは自然現象によるものではない。

 

例えるならそう…歩行のそれのようだ。

 

しかも…その強さはデータにあるどんな大型生物であっても不可能なほど。

 

『一体何が?』

 

ズゥン…ッ!ズゥン…ッ!ズゥン…ッ!

 

おそらく顕現してはじめてだろう『好奇心』を抱く預言者。

 

アイセンサーを再起動させその震源地に向ける。

 

そこには…

 

ズゥンッ!ズゥンッ!ズゥンッ!

【挿絵表示】

自身のデータにはない大型の人型ロボットがアスファルトの道路を一歩一歩踏み砕きながらこちらに迫ってきているではないか。

 

「レッドチャイニーズの電子戦兵器を視認しました!!!」

 

ズゥンッ!ズゥンッ!ズゥンッ!

 

そのロボット、リバティ・プライム・ワシントンは預言者が自分を捕らえたことを察知し高らかに音声を発する。

 

「戦略判断:レッドチャイニーズの勝利はあり得ません!」

 

預言者にはリバティ・プライム・ワシントンが何を言っているかは分からないが、自分に対し抵抗する意思を示していることは明確だ。

 

少々驚きこそしたものの…相手もまたロボット。

 

「………。」

 

ヴゥゥゥ…ン…

 

その感覚もすぐに収まりすぐさま預言者はワシントンに対しハッキングを仕掛ける。

 

hubですら一瞬のうちで乗っ取ったデカグラマトンによって顕現された預言者。

 

ハッキング技術も人智を超えたものである。

 

…だが、

 

「………ッ!?」

 

預言者は今度こそ驚愕する。

 

高度なロボットほど外部と繋がりながら様々な情報を集積するものだ。

 

少なくとも外部から指令を伝えるための遠隔アクセスのネット回線は残されているはずである。

 

ドローンにしたってそれこそ『ラジコン』の進化系、アンテナなどで外部からの信号を受け取る必要がある。

 

だが…あのロボットにはそれがない。

 

どこかからネットワークでつながっている形跡も遠隔操縦の信号も見当たらない。

 

「敵対するソフトウェアを検知!」

 

ワシントン自身もセンサーであの預言者が何かしてこようとしていたことを察知するが…

 

「脅威になる確率:0%!!!」

 

一切気に留めることなく歩行を続ける。

 

あり得ない、あり得るはずがない。

 

預言者たる自分が…技術の最高峰にいる自分が支配できない機械などないはずだ。

 

「…~ッ!!!」

 

ヴゥゥゥン!!!

 

『なにか、何かあるはずだ…!』とさらに信号を強めワシントンを支配しようとする。

 

「再度目標よりさらに強力な敵対するソフトウェアを検知!」

 

しかし、ワシントンは一切意に介すことなく頭部を持ち上げ…

 

「共産主義のターゲットを捕捉しました!」

 

ズビュアンッ!!!

 

そこに備えた5GW級アイ・レーザーの一門を照射。

 

ほんのコンマ数秒にも満たない照射だが…

 

ズバゴォンッ!!!

 

「~ッ!!?」

 

その光速の一撃は正確に預言者の信号照射箇所を貫き赤熱した風穴を穿った。

 

「共産主義による干渉:断絶!リバティ・プライム・ワシントン、稼動システム:全システム異常なし!!!任務妨害確率:0%!!!」

 

照射される信号がワシントンは再び進攻を開始する。

 

ハッキングを一切寄せ付けずに自らの躰を一撃で貫いた。

 

預言者は改めてリバティ・プライム・ワシントンを見つめる。

 

あれは敵だ、それも…間違いなく自身の脅威になりうる存在だ。

 

それと同時に…

 

「………ッ。」

 

言いようのないモノが預言者自身の中に生まれつつあった。

 

そんなやり取りの様子を見つめる一基のドローン。

 

「先生、リバティ・プライムと奴が交戦を開始したよ!」

 

「了解、ウタハ!ネイトさん、今です!」

 

《こちら『モール1』『モール2』、了解。これより地下に潜る。》

 

そこから送られてきた映像を受け先生が指示を飛ばし作戦が開始される。

 

「まさか…一撃でダメージを与えるなんて…!」

 

「これでワシントンの脅威はあちらも把握できたはずです…!」

 

傍らで画面を食い入るように見つめているチヒロとヒマリ。

 

そう、ワシントンはあくまで陽動。

 

「部長!インベイドピラーの信号が若干弱くなりました!」

 

「向こうも本気じゃないとやられるってわかったみたいだね…!」

 

「あとはネイトさんやモモたちがうまくいけば作戦成功だね!」

 

「そうですね、皆さん…!」

 

本命はミレニアムを侵食しつつあるインベイドピラーの破壊作戦だ。

 

スタッ!

 

「ここがミレニアムの地下網…!」

 

「うッわぁ…雰囲気滅茶苦茶あるじゃん…!」

 

「本当に、地下のダンジョン、みたい…!」

 

預言者の動揺に乗じてネイト達は直近の地下共同溝に潜入。

 

目の前にはパイプがまるで血管のように張り巡らされた共同溝が続いている。

 

「よし途中までは一緒の道だ。行くぞ、皆。」

 

「ん…早く行ってインベイドピラーを壊そう。」

 

「依頼はばっちりこなさなくちゃね…!」

 

「時間は残り二時間半くらい、効率的に遂行しよう。」

 

「はい!潜入クエスト開始です!」

 

その無機質な空間をネイト率いるインベイドピラー破壊チームは進んでいくのであった。

 

場面は戻り、地上指揮所。

 

「ふ、普通は数㎞も先の物体にレーザーを照射した場合は大気によって威力が減衰するはずなのですが…!?」

 

「それであの威力を維持できるなんて…!いったいどれくらいの出力のレーザーなんだろう…!?」

 

先ほどのワシントンの一撃はあの預言者の巨体を容易く貫いた光景を信じられにと言った様子で思い返すコトリとヒビキ。

 

連邦世界製の理外の範疇のロボットと言えど物理現象からは抗えない。

 

レーザーというものは大気だけでなくそれ自体の高温など様々な要因で遠距離では威力は減衰するものだ。

 

エンジニア部である彼女達がそのことを理解していないはずがない。

 

…だというのにあれほどの威力。

 

「当然だろう…!あのビナーの胴体すら切り飛ばすほどのエネルギーなのだからね…!」

 

如何にリバティ・プライムのレーザーが規格外の出力かが伺える。

 

「う~ん…!これでも他の三機のリバティ・プライムよりも低性能だなんて信じられないね…!」

 

「レーザーやコンピュータに駆動系…!どれもこれも私達にとっても未知なことばかりです…!」

 

天を衝く巨体やレーザーだけではない。

 

地面を踏み砕きながらも決してぶれない姿勢制御、かなり思想に偏りはあるが状況を的確に判断する思考サブルーチン。

 

ミレニアムにおけるハードウェア方面における大家であるエンジニア部の彼女たちから見てもその完成度は細部にいたるまで間違いなくキヴォトスの中でも最高峰と言っても過言ではないだろう。

 

「流石は連邦世界で戦争を終わらせる最終兵器として生み出されたロボットということか…!」

 

あのビナーとの戦いを現地で自らの目で見たウタハも改めれリバティ・プライムがどんな存在かを思い出す。

 

ネイト曰く片方の国ですらキヴォトス丸ごとを凌駕するという二大国家の大戦。

 

そんな戦争に終止符を打つべくして生み出された存在、それがリバティ・プライムだ。

 

その戦力は単機で一つの自治区を容易に殲滅できるほどだろう。

 

さて、現在進行形で送られてきているリバティ・プライム・ワシントンの勇士だが…

 

「それにしても…まさかこんなアナログな方法で現地の様子を確認する日が来るだなんて思わなかったね。」

 

その送信方法にウタハは内心苦笑していた。

 

指令室のモニターには…部屋の外に続くコードが伸びている。

 

現在、ミレニアム全域で通信障害が起きている。

 

それはドローンの操縦も例外ではなく遠隔操作は不可能なのだ。

 

ならばどうするか?

 

「でも、『有線で操縦する』だなんてシンプルなことで解決するなんてね…!」

 

「光ファイバーのロールがラボにあって助かりました!」

 

原点回帰、有線操縦をすれば解決だ。

 

光ファイバー接続によって通信障害などの妨害には極めて強く通信のラグも少なく映像も難なく送れる。

 

だが、高い技術力を有するミレニアム生からすればこれもすでに枯れた技術に入りかけた技術の一つだ。

 

エンジニア部にかかればBluetoothなどを利用し無線操縦でもこれとほぼ同等の性能を実現できる。

 

「いやはや…アナログを極めたネイトさん故の発想だね…。」

 

だからこそ、ネイトという彼女たちに匹敵しベクトルの違うエンジニアとしての視点が必須だった。

 

ロマンとスマートさを求める彼女たちにはこの方式はすぐに思いつかなかった。

 

実用性と信頼性を重視するネイトだからこそすぐに思い至った方法だと言えるだろう。

 

そして、

 

「よし、映像記録と自動追尾も問題がないようだ。じゃあ、私達もネイト社長のサポートに移るとしよう。」

 

「はい!地下通路の機材の解説ならお任せください!」

 

「いざとなったらバラして進む方法もばっちりだよ。」

 

自分達も志を同じくする技術者集団、エンジニア部だ。

 

地下道を進みミレニアムを救おうとしているネイトたちをサポートすべく準備を整え始めた。

 

一方、

 

「あの音声ログ…アイツ絶対ハッキング仕掛けてたよね…!?」

 

「hubが仕掛けるハッキングに耐えきれるシステムなんてあるんですか…!?」

 

「ううん、コタマ…。耐えるというよりも…まるで効いてないみたいだった…!」

 

ヴェリタスの面々はリバティ・プライムのハッキングに対する耐性、『抗堪性』に目を見張っていた。

 

相手はミレニアムが誇る超高性能演算機関『hub』だ。

 

もし、その性能がハッキングに用いられた場合に発揮される威力な筆舌に尽くせないだろう。

 

あの怪物はそんな性能を十全に用いてワシントンへハッキングを仕掛けたはずだ。

 

だが、ワシントンは全く意に介さないどころかハッキング元をレーザーで撃ち抜いて見せたではないか。

 

物理的破壊という報復は別にして自分たちにミレニアムの技術の粋の攻勢を防げるか?

 

その答えは…

 

「古い技術というものも…馬鹿にはできませんね。」

 

「だね、ヒマリ部長…。しかも私達が知るものとは別格となると…。」

 

元部長にして全知のヒマリと同じく優れた頭脳を持つハレは気付いていた。

 

「どういうことですか、部長…?」

 

「異世界のコンピュータを搭載してるとはいえ原理そのものは変わらないはずだけど?」

 

「えぇ二人とも、その通りです。ですが…その方式が肝になりますね?」

 

「方式が肝ってどういう…。」

 

「忘れちゃったの、マキ?ネイトさんの作るロボットや持ってるデバイスは…。」

 

疑問に思う面々だがハレのこのヒントで…

 

「…ッ!そうか!ネイト社長関連のロボットやデバイスのコンピュータの方式は例外なく…!」

 

「キヴォトスではもう姿を消した『真空管方式』!しかもそれで私たちの技術に匹敵するもの!」

 

「あぁ!ネットワーク通信なんかないからアクセスポイントみたいなのがないんだ!!!」

 

自分達の中の前提がずれていたことに思い至った。

 

思い出してほしい。

 

Pip-Boyに始まり簡単なラジオに始まりアサルトロンとやセントリーボットのロボットソルジャーにオーパーツクラスのデバイスであるPip-Boy、果てには戦艦マサチューセッツ。

 

その全て、キヴォトスには存在しないネイトの世界生まれのコンピュータは全て真空管を用いたものだ。

 

性能こそキヴォトスでも十二分に通用するものの機能には大きな乖離があり、その最たるものが外部アクセスの有無だ。

 

現代のコンピュータはネットワーク通信で外部と繋がることでアクセスの利便性を高めている。

 

一方、ネイトの世界のコンピュータには…そのネットワーク通信というものがそもそも存在していない。

 

さらに言うと有線であってもLAN接続はできない。

 

あるのは精々ロボット間の無線信号によるやり取り位。

 

通信ばケーブルを用いた物理的な接続のみのほぼ完全なスタンドアローンだ。

 

つまり…あちらからもネットワーク通信を介したハッキングは一切受け付けないということに他ならない。

 

「最新技術ばかり目を向けてきたけど…。」

 

「古さゆえの…まるで『恐竜』のような強みもあるのですね…。」

 

「恐竜…言い得て妙だね、ヒマリ。」

 

自分達は今までソフト面で『抗堪性』を向上させてきた。

 

対するネイトはハード面でそもそも外部からのアクセスのハードルを上げるというあまりにも力づくな方法で圧倒的な『抗堪性』を確保。

 

その結果は…見ての通りだ。

 

「単純にセキュリティやファイアウォールが強力って訳じゃなく…!」

 

「そもそも外から繋がりようがないからハッキングのしようがないってことかぁ…!」

 

あのhubが変質した預言者のハッキングすらまるで羽虫に泊まられた程度にしか感じていない。

 

「…さぁ、皆さん。遠くの世界からお越しになった戦士が道を切り開いてくださいました。」

 

何はともあれ…これであの規格外のハッキング能力を持つ預言者に付け入る隙ができた。

 

「電子の世界において…やられっぱなしは『ヴェリタス』の名が廃ります。」

 

「5人が勢ぞろいしてる私達があんなのに負けるわけにはいかないね、部長。」

 

「一矢…いいえ、相手をクラッキングするくらい報いないときが済みません。」

 

「どんな学校に手を出したか…最後の1Bまで思い知らせてやるんだから…!」

 

「インベイドピラーがモモ達に壊される前に全部終わらせちゃうんだから!」

 

ならば、ミレニアムを代表する自分達はこの世界の戦い方を見せよう。

 

「参りましょう。ここからは…私達の戦場です。」

 

『うん(はい)!!!』

 

ハッカー集団『ヴェリタス』、その矜持のために難攻不落のhubへ電子の戦いを挑む。

 

そんなミレニアムきっての技術者集団が各々のすべきことのために動く中…

 

「あぁ…路面の修繕費、いくらになるのかしら…?!」

 

ユウカは痛み始めた頭を押さえながらモニタの中のワシントンを見ていた。

 

確かにあのhubが変質した怪物相手にはこれ以上ない対抗策だろう。

 

だが、なんせ総重量が優に200t近いリバティ・プライムだ。

 

一歩一歩踏み出すごとに道路は陥没し足跡が刻み込まれる。

 

しかも、あれだけの衝撃だ。

 

地上だけでなく地下を走る配線や構造物の被害も馬鹿にはできないだろう。

 

しかも、脅威であるとは言えワシントンはお構いなしにミレニアムの結晶である『hub』にレーザーを叩き込んだ。

 

hubが預言者になった時点ですでに経済的打撃は相当なものだが…

 

「どうか…どうか今期の予算内で決着がついてちょうだい…!」

 

やはりセミナーの会計のサガか、出費が必要最小限になることを祈るしかない。

 

そんな財布と学校の未来にユウカが苦悩している一方、

 

「………!」

 

この非常時に先生はモニタのワシントンの姿を目を輝かせながら見つめていた。

 

「凄い…!凄いなぁ…!」

 

彼にとってはそれはまさに子供の頃から夢見た光景である。

 

敵ロボットに立ち向かう巨大ロボット。

 

それはテレビの中だけの…夢物語でしか見れない光景のはずだった。

 

だが…

 

「がんばれ、リバティ・プライム・ワシントン…!」

 

それが今、現実で…それも自分の目と鼻の先で繰り広げられているではないか。

 

かつてのビナー討伐作戦では記録映像でしか見ることができなかった彼にとっての夢の光景。

 

無論、この状況を望んでいたわけでは無いしあの預言者をどうにかしなければならないことも重々承知している。

 

だが…

 

「そうだ、行けっ…!そこだ…!」

 

彼の中の『9歳児の自分』が先ほどからそこら中を駆けずり回って仕方なかった。

 

「…せい…。んせい…!…先生ッ!」

 

「うわっ?!なっ何、ユウカ?!」

 

「しっかりしてください、ミレニアムが乗っ取られるかどうかの瀬戸際なんですからね?!」

 

が、あまりに食い入りすぎてユウカの声も聞こえなくなっていた方に気づき、

 

「そっそうだね!あっちはワシントンに任せてネイトさん達をサポートしよう!」

 

「はい!」

 

先生は気を取り直して周囲に目を配り、

 

「ウタハ、モール隊の様子は分かる?!」

 

「地下にある非常用電話で定時連絡は来てるよ…!ちょうど二班に分かれたところらしい…!」

 

「了解、引き続き連携を密にしてネイトさん達をサポートして!」

 

インベイドピラー破壊に動くネイトたちの支援、

 

「ヒマリたちは引き続きシステムの奪還を進めて!最優先は通信の復旧でお願い!」

 

「了解しました、先生…!最低でも無線回線はすぐに取り戻して見せます…!」

 

「頼んだよ!大丈夫、皆ならアイツにきっと勝てるはずさ!」

 

「ユウカは上がってきた情報の精査と私のサポートを!」

 

「分かりました!いつものように私に任せてください!」

 

奪われたミレニアムのシステムの奪還をユウカを副官として指揮し始める。

 

「あぁっとそれからそのモニターをこっちに!リバティ・プライム・ワシントンの様子も見ながら作戦を…!」

 

「せ・ん・せ・い?」

 

「なっなぁんて冗談だよ、ユウカ!うん、ワシントンを信じて私たちのできることをしよう!」

 

一気に動き出した地上部隊の一方、

 

シュパパパパパ…!

 

ズダダダ…っ!

 

「よし、前方クリアだ!進むぞ!」

 

「ちびっ子たち、ついてきてぇ~!」

 

ネイト達ゲーム開発部とムツキとともにインベイドピラーの破壊に向け地下共同溝を進行中。

 

やはり一筋縄ではいかないようで先ほどから地下を警備するドローンやロボットに襲撃を受けている。

 

どうやらセキュリティシステムも預言者は手中に収めているようだ。

 

「こ、これであとどのくらい?!」

 

「この先で地下鉄のトンネルに出るだよ、お姉ちゃん!」

 

そこそこの距離を走ってきたがやはり入り組んだ地下道。

 

道のり的にはまだ半分も来ていない。

 

そこへ、

 

「パパっ!後ろからも警備ロボットが来てます!」

 

ズバババ…ッ!!!

 

追撃を仕掛けてきたロボットに向けアリスがガトリングレーザーを浴びせかける。

 

背中には光の剣こそあるものの地下では威力過剰で嵐の弓は手数が稼げないのでネイトが彼女に貸与したのだ。

 

「あぁもうしつこい!弾が持たないよ!」

 

「グレネードランチャーも、そんなに使えないし…!」

 

「アリス、皆と先に行け!俺はタレットを設置してから追いかける!」

 

「ネイトお兄ちゃん、パルス地雷は?」

 

「閉鎖空間で使ったら俺達も巻き込まれる!しばらくは無しだ!」

 

ロボットには無類の殺傷能力を誇るパルス系武器。

 

しかし、ここは地下共同溝。

 

狭所かつ電磁波を通しにくい鉄筋コンクリートに覆われているため想定外の被害も生じかねない。

 

ガシャンガシャンッ!!!

 

なので、ネイトは通路にレーザータレットをクラフト。

 

電源はそこら辺の電線から失敬し…

 

ズバババ…ッ!!!

 

迫りくるロボットに向けレーザーが浴びせかける。

 

「よし、これでしばらく持つはずだ!」

 

「ユウカにあとで起こられるかもしれないよ、ネイトさん?!」

 

「電気代でミレニアム守られるなら安いもんだろ!」

 

そんな一幕もありつつ一行は徐々に地下道を進行。

 

「ちょ、ちょっと休もう…!」

 

「わ、私もちょっとばてちゃって…。」

 

「はぁ~…はぁ~…!」

 

「パパ、モモイ達のスタミナゲージが赤くなっています!」

 

「…よし、三分間だけ休憩にするぞ。」

 

いくつか超えた地下鉄のホームに差し掛かった段階で小休止を取ることに。

 

流石にネイトやアリスにアクティブなムツキに合わせていくにはインドア派なモモイ達には少々酷だったようだ。

 

すると、

 

「あ、自販機!喉カッラカラだったんだぁ~!」

 

モモイがホームにある自販機を発見。

 

「おっお姉ちゃん…!今は非常時…!」

 

「いいじゃん、ミドリ!水分補給は必要だよ!」

 

「そ、それはそうだけど、我慢しなきゃ…。」

 

「モモイちゃんったらいいこと言うねぇ~!」

 

「パパ、アリスもジュースが飲みたいです!」

 

まるで砂漠の中のオアシスを見つけたかのようにテンションが上がるモモイを諫めたり乗っかったりする面々。

 

それを見て、

 

「…まぁいいか。ほら、モモイ。好きなのを買うといい。」

 

ネイトも少し表情を和らげモモイに小銭入れを渡す。

 

確かに今は非常時だが詰め込み過ぎてはミスが誘発される。

 

幸い、追手もいない様なのでここくらいはモモイのわがままも許すことに。

 

「やったぁ!じゃあ私オレンジジュース!」

 

「アリスはコーラが飲みたいです!」

 

「皆も好きなのを選んでくれ。飲みすぎて動けないとかはなしにしろよ?」

 

「分かってるってぇ、ネイトお兄ちゃん♪」

 

「そ、それじゃあ…ご馳走になります。」

 

「ネ、ネイトさんは、何がいいですか…?」

 

「じゃあ、俺はコーヒーを頼む。」

 

ネイトが周囲の警戒に当たりモモイ達が和気あいあいと自販機に近づいていき…

 

「いやぁ正に天の恵みってやつだね!」

 

チャリン

 

自販機に小銭を投入した。

 

その時、

 

バツンッ!

 

「ひゃあああ!!?」

 

「わッ何っ!?なにが起こったの!?」

 

「真っ暗です!?盲目のデバフですか!?」

 

「お姉ちゃん!?一体何したの!?」

 

「ちょっと!?それは心外だなぁ!?」

 

地下鉄ホームの電灯が音を立てて消灯し周囲が暗闇に包まれる。

 

ピカッ!

 

「皆落ち着け。パニックが一番危ない。」

 

ネイトは素早くPip-Boyのライトを灯す。

 

「…ネイトお兄ちゃん、これって…?」

 

ムツキは先ほどまでの小悪魔的な表情を引っ込ませ真剣な表情で声をかける。

 

「…待ってろ。モモイ、小銭入れを返してくれ。」

 

「うっうん!」

 

ネイトはモモイから小銭入れを受け取り…地下鉄構内にあった公衆電話に近づく。

 

チャリン

 

PiPiPi…

 

小銭を投入し番号を入力。

 

「え、でも今は停電…。」

 

「こ、公衆電話は、停電でも使えるよ…!」

 

「おぉ~セーブポイントみたいですね…!」

 

そう、公衆電話は電話線で電源を引いている。

 

停電になっても通話が可能な可能性が高いのだ。

 

Prrr…Prrr…

 

「よし、通じた…!」

 

その予想通り、ネイトが入力した番号に接続され…

 

ガチャ

 

「もしもし、俺だ。一体何が…。」

 

出た電話の相手に何があったかを尋ねる。

 

そして…

 

「………なっ…!?」

 

答えを聞いた瞬間、ネイトの表情が固まった。




オリジナル生徒紹介
【挿絵表示】
ヘイロー
【挿絵表示】
名前 テツカ
フルネーム 神代こうじろテツカ
役割 SPECIAL
ポジション BACK
武器種 HG:SIG P220『ファトム・ブレイカー』
【挿絵表示】
クラス T.S
攻撃タイプ 爆発
防御タイプ 軽装備
学園 ミレニアムサイエンススクール2年生
部活 ミレニアム航空隊年齢 16歳
誕生日 6月8日
身長 163cm
趣味 人形劇 アクロバット飛行

オリジナル生徒紹介
【挿絵表示】
ヘイロー
【挿絵表示】
名前 ヒロノ
フルネーム 栗栖くりすヒロノ
役割 SPECIAL
ポジション BACK
武器種 HG:SIG P230『アウン・プレシジョン』
【挿絵表示】
クラス T.S
攻撃タイプ 貫通
防御タイプ 特殊装甲
学園 ミレニアムサイエンススクール2年生
部活 ミレニアム航空隊
年齢 16歳
誕生日 4月8日
身長 154cm
趣味 ソフトウェア開発

オリジナル生徒紹介
【挿絵表示】
ヘイロー
【挿絵表示】
名前 ヨシエ
フルネーム 西森にしもりミチエ
役割 SPECIAL
ポジション BACK
武器種 HG:S&W M38『スリーツー・ガーディアン』
【挿絵表示】
クラス T.S
攻撃タイプ 貫通
防御タイプ 軽装備
学園 ミレニアムサイエンススクール1年生
部活 ミレニアム航空隊
年齢 15歳
誕生日 3月2日
身長 142cm
趣味 ダンスゲーム

オリジナル生徒紹介
【挿絵表示】
ヘイロー
【挿絵表示】
名前 タケミ
フルネーム 水科みずしなタケミ
役割 SPECIAL
ポジション BACK
武器種 HG:S&W M3913『スリーツー・アナライザー』
【挿絵表示】
クラス T.S
攻撃タイプ 貫通
防御タイプ 特殊装甲
学園 ミレニアムサイエンススクール1年生
部活 ミレニアム航空隊
年齢 15歳
誕生日 9月4日
身長 148cm
趣味 ダンスゲーム
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