Fallout archive   作:Rockjaw

26 / 209
今回はネイト視点での進行です


Connected Fate

カイザーコンストラクション本社からの依頼を受けた翌日未明。

 

「さて…と。」

 

まだ日も登らない作業室内でネイトは思案していた。

 

目の前にはネイトが持つ連邦製火器がずらっと並んでいる。

 

昨日のあの場では快諾したネイトだが…

 

(ただの廃墟…なわけないに決まっている。)

 

馬鹿正直に調査だけで済むわけがないことなど分かり切っている。

 

相手はキヴォトスにおける大企業。

 

十重二十重の策謀を張り巡らせている可能性は高い。

 

(思えば…単独での本格的戦闘は久々になるな。)

 

しかも、今回はネイト単独での仕事だ。

 

装備のバランスは考えなければならない。

 

(一先ずパワーアーマーは確定。アーマー各種も。武器はデリバラーにガトリングレーザーとガウスライフル…ライフル系でもう一本は…。)

 

頭で考えつつ装備をPip-Boyに収納していく。

 

そして最後に手に取ったのは…

 

「周りに危険が大きすぎて使えなかったが…ソロでなら大丈夫か。」

 

コンバットライフルに似た外観の銃だが、口径は12ゲージ。

 

『コンバットショットガン』、セミオートもしくは改造でフルオートにもできるショットガンである。

 

『改良型レシーバー』、『ロングポーテッド・シールドバレル』、『反動吸収ストック』、『クイックイジェクトドラムマガジン』、『グロウサイト』という最高のカスタマイズが施されている。

 

と、コンバットショットガンを収納していると、

 

「ミニガンも持っていきたいが…廃墟街でぶっ放すには少々怖いな…。」

 

一瞬、自らが持つ『ミニガン』にも目を向けるも考え直し今回は補欠と言うことで。

 

代わりにロケットハンマーをPip-Boyに収納。

 

他にもスティムパックなどの各種医薬品、レーションにグレネードなどをどんどん選別していき…

 

「よし、こんなもんだろう。」

 

今回の旅装が整った。

 

一部はバックパックに入れPip-Boyの容量節約を図っている。

 

「ッと、もうこんな時間か。早く出ないと始発に乗り遅れる。」

 

時計を見てそそくさと出発するネイト。

 

ミレニアム郊外までは電車を乗り継いで結構かかる。

 

なのでアビドスの駅から始発に乗らないと到着するのが非常に遅くなってしまう。

 

急いで愛用のオフロードバイクに乗り込み駅へと向かっていった。

 

数十分後…

 

「…電車に乗るのも久々だな。」

 

高速列車(平たく言うと新幹線)に揺られながら車窓から外を眺めるネイト。

 

平日の早朝ともあって車両にはネイトしかいない。

 

およそ270年以上ぶりの電車旅である。

 

とそこへ、

 

「切符と乗車券を拝見します。」

 

車掌の恰好をした女子生徒が車内巡回にやってきた。

 

彼女は『ハイランダー鉄道学園』の生徒だ。

 

キヴォトス内の鉄道関連の業務はこの学校がすべて取り仕切っている。

 

公共事業まで学校が取り仕切っていることには相変わらずなれないが…

 

「あぁ、これでいいかな?」

 

言われた通りに切符と乗車券を差し出す。

 

「拝見します。…はい、問題ありませんね。良い電車旅をお過ごしください。」

 

それを確認し車掌の生徒はスタンプを押し次の車両に向かっていった。

 

(…車掌AIのプロテクトロンみたいな対応は取らないか。)

 

ふと、連邦での思い出がよみがえるネイト。

 

たまにいた地下鉄従業員のプロテクトロンが乗車用のトークンを見せるよう求めてくることがあった。

 

200年たっても職務に忠実なのはいいことだ。

 

いいことなのだが…ほんの数秒の猶予もなくすぐに出さないと腕部のレーザーを撃って襲い掛かってくるのは玉に瑕。

 

駅員にしてはいささか過激なAIであった。

 

なお、戦前でも無賃乗車をした乗客をレーザーで灰にして問題を起こしていた。

 

それに比べるとハイランダーの生徒はちゃんと猶予を持って対応してくれる。

 

「さて、まだ時間もあるしひと眠りでも…。」

 

目的地のミレニアム郊外に一番近い駅まではまだだいぶ時間があるので眠りに付こうとするネイト。

 

が、

 

《4両目で無賃乗車発見!マニュアルBで対応しろ!》

 

と先ほど車内巡回していた生徒の怒鳴り声が車内アナウンスで鳴り響く。

 

さらに、

 

「無賃乗車だと!?ふざけた真似を!」

 

「拘束しろ!二度と無賃乗車できないようにしてやれ!」

 

「ヒャッハー!キセルは消毒だー!」

 

武器を振り上げ物騒なことを叫びながら通り過ぎるハイランダー生徒たち。

 

(…訂正、やっぱ駅員はどこも過激だ。)

 

ネイトはそんなことを思い空薬莢で耳栓をして眠りにつくのであった。

 

…が、まだ目的地に着くには早い時間でネイトの肩は揺すられる。

 

「ん…?何か…?」

 

耳栓を外し寝ぼけ眼で周りを見ると車掌の生徒がいた。

 

なにごとかと尋ねると…

 

「お客様、実はこの先の線路が爆破されまして…。」

 

「…は?」

 

「申し訳ありませんがこの列車は次のミレニアム中央駅で停車しますのでそこで皆さん降車していただくことになりました。」

 

おおよそ平時では聞かない『路線爆破』というワードに言葉を失うネイト。

 

いや、米中戦争時はネイトも破壊工作で行ったことはある。

 

それが戦争中でもないときに聞くとは思わなかったが…ここはキヴォトス。

 

「…そうか。起こしてくれてありがとう。」

 

「誠に申し訳ありません。ご理解いただきありがとうございます。」

 

そういうこともあると割り切るしかない。

 

聞くとちゃんと払い戻しと目的地ごとに振り替え輸送のバスを手配してくれるというので素直に従うことに。

 

というわけで、さっそく予定が乱れたネイトの出張。

 

「はぁ、ここがミレニアム学区かぁ。」

 

予定には一切なく土地勘も何もないミレニアム中央駅に降り立った。

 

降り立ってみて直後に分かる繁栄具合。

 

いかにも未来的な建造物の数々。

 

人口も一目見ただけでアビドスとは雲泥の差だ。

 

なんとも内なるエンジニア魂が疼く街だ。

 

時間が許すなら散策に繰り出すのだが…あいにく仕事中。

 

振り替え輸送用のバスの到着を待つため近くのベンチに腰掛け時間を潰すことにしたのだが…

 

「…しまった、本を持ってくるのを忘れた。」

 

戦闘の準備に集中したせいか本を一冊も持ってないことを忘れていた。

 

「…そういえば。」

 

だが、そんなことで諦めるネイトではない。

 

Pip-Boy内にあれを入れっぱなしだったことを思い出しインベントリを探ると…

 

「お、あったあった。『レッドメナス』。」

 

一つのホロテープを取り出す。

 

『レッドメナス』、Pip-Boyやコンソールで遊べるゲームソフトだ。

 

さっそくPip-Boyに挿入しプレイを始める。

 

小さい画面で操作は独特だが意外とこれが楽しめる。

 

その時、

 

「急いでよッ、ミドリ!早くしないと初回限定版売り切れちゃうよ!」

 

「だから『早く出発しなくていいの』って言ってたのに。お姉ちゃんがあと5分を繰り返したせいだよ。」

 

「だっていいとこなのにやめられないじゃん!」

 

ネイトのすぐ近くを瓜二つな二人の少女が駅構内に向かって走り抜けていった。

 

違いとするなら服やヘッドホンに銃の基調とした色が緑かピンクくらいか。

 

(おぉ、元気があってよろしい。)

 

そんな平和な光景をしみじみと眺めていると…

 

「ま、待って、二人とも…!は、速い、もう少しゆっくり…!」

 

はるか後方から彼女たちと同じようなジャケットを着た赤髪の少女が走ってきた。

 

どうやら、あの二人の友達のようだが二人と比べると…かなり運動不足気味のようだ。

 

息も上がって足取りもおぼつかなくなっている。

 

(あ、なんかやばそう…。)

 

ふと、嫌な予感がしたネイト。

 

案の定…

 

「キャ!?」

 

その少女はド派手にすっ転んでしまった。

 

「う、うぅ~…!」

 

どうやら打ちどころが悪かったか転んだまま顔だけあげ涙を浮かべる。

 

「…。」

 

一瞬、先に走っていった二人の少女を見やるともうかなり先に行っていて彼女の様子に気付いていないようだ。

 

「…まぁ、これも何かの縁だ。」

 

ネイトは一旦『レッドメナス』のプレイを中断し、

 

「大丈夫かい、お嬢ちゃん?」

 

「うぅ~…えぇ…?」

 

「立てるか?」

 

いまだ地面に倒れたままの少女に近づき声をかける。

 

見ると履いていたサンダルのバンドが切れている。

 

「怪我してるか?どこか痛いところはあるか?」

 

「あ、足が…足が痛いんです…!」

 

「分かった。あそこのベンチに運ぶために触れるぞ、構わないね?」

 

「は…はい…。」

 

どうやらすぐには起きれないようなのでサンダルを拾い彼女を抱えてベンチへと運ぶネイト。

 

外見上は膝をすりむいているだけだが…

 

「怪我を確かめるために足を触るけどいいね?」

 

「は、はい…。」

 

「痛かったら教えてくれ。」

 

簡単な診察のために少女の足を軽く触ったり捻ったりしていく。

 

どうやら捻挫などはなく擦り傷だけのようだ。

 

「待ってろ、救急用具があるから手当をしよう。」

 

「そ、そんな…悪いですよ…!」

 

「けが人がそんなことで遠慮するんじゃない。」

 

そう言い、バックパックを漁り救急キットを探していると…

 

「あ、ユズ!あんなとこにいた!」

 

「あれ、怪我しちゃったの!?」

 

「あ、モモイにミドリ…!」

 

先ほど走り去っていった二人の少女が戻ってきた。

 

「やはり友達か。」

 

「あ、あのユズちゃんは大丈夫なんですか…?」

 

「膝を結構擦りむいたがそれだけのようだ。消毒してガーゼと包帯を巻けば大丈夫だ。」

 

「よ、よかったぁ。」

 

と胸をなでおろすモモイと呼ばれた少女に、

 

「よかったじゃない、二人とも。」

 

「「え…?」」

 

怪我の洗浄をしながらぴしゃりとミドリと呼ばれた少女も含め警めるネイト。

 

「友達なんだろう?それなのに二人とも転んだ彼女を置き去りにしていくとはどういうことだ?」

 

「そ、それは…。」

 

「その…買いたいゲームがあって…。」

 

「…いくら急いでいても友達や仲間は大事にしろ。ゲームなんかいつでも手に入れられるが…友達は失うと二度と戻ってこないぞ。」

 

「うぅ…はい…。」

 

「ごッごめんなさい、ユズちゃん…。」

 

「ごめんね…。置き去りにしちゃって…。」

 

諭すように語るネイトの言葉に二人はユズと呼ばれた少女に謝罪する。

 

「う、ううん、私は、気にしてないよ、モモイにミドリ。」

 

「…よし、オッサンのお説教は終わりだ。ユズだったな?」

 

「は、はい。」

 

「ちょっと沁みるぞ。」

 

しっかりと謝罪し和解したことでネイトも声音を柔らかくしユズの傷口に消毒液を吹きかける。

 

「ん”~!!?」

 

「よし、頑張ったな。」

 

沁みる痛みに悶えるユズを誉めながら手早くガーゼと包帯を手早く巻いて処置を終える。

 

「えっとモモイだったか?」

 

モモイに声をかけ

 

「う、うん!」

 

「これで適当に飲み物買ってきてくれ。おつりはやるから三人で分けるんだぞ。」

 

財布から5000円札を適当に取り出しモモイにお使いを頼む。

 

「え、いいの!?」

 

「説教をちゃんと聞いてくれた礼だ。」

 

「やったー!行ってきまーす!」

 

「あ、お姉ちゃん!?」

 

思わぬお駄賃に喜びながらモモイは駅の売店へと駆けて行った。

 

「あ、あの。すいません、お姉ちゃんが…。」

 

「俺がいいって言ったんだ、気にしなくていい。それで…。」

 

「あ、私は『才羽ミドリ』って言います。お姉ちゃんは『才羽モモイ』でその子は『花岡ユズ』ちゃんです。」

 

「は、花岡ユズです…。」

 

「ミドリにユズ、そしてモモイだな。俺はネイトだ、よろしくな。」

 

遅ればせながら自己紹介をするネイトやユズたち。

 

「それでなんであんなに急いでたんだ?」

 

「今日発売のゲームがあってその初回限定版を買いに行ってた途中なんです。」

 

「そ、それで、私も一緒に、ってことでついてきたんですけど…。」

 

「予約とかはしてないのか?」

 

「それが…お姉ちゃんったら予約期限をすっかり忘れてて…。」

 

「…だから店舗に並んでるのを買いに急いで行ってたってわけか。」

 

「そういうことです。」

 

自己紹介も終え、三人はベンチに腰掛けモモイの帰りを待っている。

 

どうも、モモイはミドリに比べてそそっかしくて抜けているところがあるようだ。

 

「す、すみません…。怪我の手当てまで、してもらったのに、サンダルも直して、貰っちゃって…。」

 

「気にしなくていいぞ、ユズ。手先は器用なんだ。」

 

「でも、ネイトさんってお裁縫もできるんですね。」

 

「いろいろ自分でやらなきゃいけない生活だったからな。」

 

と、ネイトが携帯の裁縫キットでユズのサンダルを修理していると、

 

「お待たせ、おじさん!買ってきたよ!」

 

「おっありがとう、モモイ。」

 

大きな袋を抱えたモモイが帰ってきた。

 

どうやら飲み物だけでなくお菓子も買ってきたようである。

 

「お姉ちゃん、おじさんじゃなくてネイトさんだよ。」

 

「そうなんだ!ネイトさん、お駄賃ありがとう!」

 

「ちゃんと三人で分けるんだぞ。それからおじさん呼びは気にしなくていい。君達からしたらおじさんに変わりないんだからな。」

 

そんなこんなでようやく三人が揃い、

 

「ねぇねぇ、ネイトさんはどうしてミレニアムにやってきたの?」

 

「仕事でな。ちょっと現地視察に行く途中なんだ。」

 

「お仕事って何をしてるんですか?」

 

「まぁ、何でも屋みたいなものだ。三人はどんな関係なんだ?」

 

「わ、私たちはミレニアムサイエンススクールで、『ゲーム開発部』、っていう部活、やっているんです…。」

 

「へぇ~、ゲーム作ってるのか?まだ高校生だろ?凄いな。」

 

サンダルの修理も終え買ってきたお菓子や飲み物をつまみながらお喋りをする一行。

 

ゲームを買いに行かなくていいのかと思われるだろうが…

 

『え、電車なら止まってるぞ。』

 

『えぇー!?』

 

そもそも電車が止まっているのでどっちにしても間に合わないので開き直ることにしたようだ。

 

「いや~それほどでも~♪」

 

ネイトに褒められて照れるモモイに対し、

 

「…まぁ、ちょっとヤバい状況なんですけどね…。」

 

どうやら何か訳ありなようで遠くを眺めながらつぶやくミドリなのであった。

 

「そ、そうか。まぁ、今度機会があったら何かやらせてくれ。」

 

「ネ、ネイトさんも、ゲームって、やるんですか…?」

 

「それなりに。さっきもやってたし。」

 

「ひょっとしてその腕のゲーム機で?!」

 

ネイトもゲームをやると知りモモイが目を輝かせながらPip-Boyを見つめる。

 

ミドリとユズも興味深そうに見ている。

 

「これはゲーム機じゃないぞ。ウェアエアブルコンピュータの『Pip-Boy』っていうんだ。」

 

「Pip-Boy?聞いたことないですね。」

 

「無理もないな。…やってみるか?」

 

「い、いいんですか?」

 

「別に減るもんじゃないしな。」

 

そういうとネイトは左腕からPip-Boyを外しモモイに渡した。

 

「わーい!ありがとう、ネイトさん!」

 

「電源はそこで操作方法は…。」

 

「お姉ちゃん、やられたら交代ね。」

 

「わ、私は、ミドリの次…。」

 

初めて見るコンピュータ機器にゲームという組み合わせに興奮気味な三人。

 

やはりミレニアムの生徒、こういう機材には目がないようだ。

 

そして、

 

「あぁ違う!それとったらはしご登れないんだって!」

 

「ちょっと静かにしてよ、お姉ちゃん!集中できないじゃん!」

 

彼女たちからすれば非常に古めかしいゲームなのに思いのほかヒートアップ。

 

「…意外だな。最近の子なら古いゲームはウケないと思ってたんだが。」

 

「わ、私達が、作るゲームは、あんな感じの、ドットゲームが、多いんです…。だから、モモイ達もあぁいうゲームが、大好き、なんです。」

 

「へぇ、ユズも好きなのか?」

 

「わ、私も、あぁいうゲームや、古いゲーム機が、好きです…。」

 

と、ネイトとユズがゲーム開発部の趣向について話していると、

 

「あぁーやられちゃった!」

 

ミドリがゲームオーバーとなったようだ。

 

「へへーん、スコアだと私の勝ちー!」

 

「グヌヌ…珍しく勝ったからってぇ…!」

 

「じゃあ、ユズに交代だな。」

 

「…はい、ユズちゃんの番ね。」

 

「あ、ありがとう、ミドリ。」

 

と、順番通りにミドリからPip-Boyが渡されると…

 

「………。」

 

(…おぉ?)

 

先ほどまでおどおどしていた彼女の雰囲気が変わった。

 

そして…プレイを始めると目まぐるしく手元が動き凄まじい速度でステージをクリアしていく。

 

しかも単純にクリアするだけでなくスコアもほぼパーフェクトに稼ぎながらだ。

 

「…モモイ、ミドリ。彼女ってゲームの時はあんな感じなのか?」

 

相当集中しているようなので小声でモモイとミドリに尋ねると、

 

「うん、ネイトさん。実はね、ユズって超一流のゲーマーなの。私たちが二人束になっても勝てないんだから。」

 

「特に格闘ゲームとリズムゲームは負けなしでプレイヤー名の『UZQueen』はその界隈だと知らぬ者はないってくらいなんです。」

 

「それはすごい。どんなことでもトップになるのはすごいことだ。」

 

先ほどまでの彼女からは想像もつかない正体にネイトも思わず感心する。

 

「おぉ凄い。もう二週目に入っちゃった。」

 

「初めてプレイするゲームとゲーム機なのに…。」

 

「いやはや、どこの世界にも…天才ってのはいるもんだな。」

 

と、その時だ。

 

《ミレニアム郊外方面へ行かれるお客様、おられますかー!?》

 

駅からハイランダーの生徒が出てきて拡声器で呼びかける。

 

「おっともう時間か。」

 

どうやら自分の番の振り替え輸送のバスが来たようである。

 

「ユズ~。」

 

「ヒャッ!?は、はい、なんですか!?」

 

集中していたので肩に手を置きながら呼びかけると驚きぴょこんと跳ね上がるユズ。

 

「どうやら俺はもう行かなきゃいけないんだ。プレイしてるのにすまないがそれを返してくれるか?」

 

「あ…はい、どうぞ…。」

 

と名残惜しそうにしながらもネイトにPip-Boyを返してくれた。

 

「悪いな。…お詫び代わりにこれはやるよ。」

 

そう言い、ネイトはPip-Boyから『レッドメナス』のホロテープを取り出しユズの手に乗せる。

 

「え、そんな!?悪いですよ!」

 

「いいから、楽しんでくれる子のところにあったほうがそれも幸せだろう。」

 

元より暇つぶしくらいしかゲームをしないネイト。

 

その暇つぶしも最近は読書に取られてホロテープのゲームはほぼ死蔵していた。

 

「多分、そのゲームが君達との縁を結んでくれたんだ。だったら、次の縁を結ぶために君たちに託すよ。」

 

「ネイトさん…。…分かり、ました。その、ありがたく、いただきます。」

 

ネイトの言葉を聞き、ユズもレッドメナスのテープを大事そうに受け取るのであった。

 

「でも、これプレイするにはどうすれば…?」

 

「今度エンジニア部に持って行ってみようよ!ひょっとしたらPip-Boyみたいなのを作ってくれるかもよ!」

 

「フフッ、それはどうかな?」

 

「どういう、意味ですか?」

 

「気にしなくていい。それじゃ、俺は行く。じゃあな。」

 

時間もあまりないので短く別れを告げバス乗り場へと走って向かうネイト。

 

「…あ、そうだ。」

 

とモモイが何か思い出したように、

 

「ネイトさーん!ミレニアム郊外に何しに行くのー!?」

 

ネイトの背中にここに来た目的を問いかける。

 

「廃墟地区に行くんだー!そこの水没地帯の調査にな―!」

 

バスに乗り込みながらそう答えるネイトに…

 

『…え!?』

 

三人はいっせいに青ざめる。

 

ミレニアムにいる者にとって…あの地は…。

 

「だ、ダメ!待って、ネイトさん!」

 

「あそこはヘイローのない貴方じゃ!」

 

「い、行かないで!待ってください、ネイトさん!」

 

必死の形相でネイトの後を追う三人だが…無情にも扉は締まりバスは発進。

 

追いかけようにもバスの速度に追いつけるわけがない。

 

「ど、どうしよう!あのままじゃネイトさんが!」

 

「おッ落ち着いて、ミドリ!ここは冷静にならなきゃ!」

 

「い、嫌だよ!ネイトさんが!ネイトさんがぁ!」

 

「ユズもパニくらない!私たちが焦っちゃどうにもならないよ!」

 

ネイトに迫る危機に焦るミドリとユズを一喝し落ち着かせるモモイ。

 

「で、でもどうしたら…!私達だけじゃあそこには…!」

 

「…そうだ!ユウカ!ユウカなら!」

 

とモモイはこの事態の対処策としてある人物に連絡を取り始める。

 

『ユウカ』、本名『早瀬ユウカ』。

 

ミレニアムサイエンススクール生徒会『セミナー』の会計担当の生徒である。




次回はアビドス側のお話です
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。