ですが一言
私はこの作品を書きたいように書いていくだけです
以上
ネイトはモモイ達と別れ代替輸送のバスに揺られミレニアム郊外の高速列車の停車駅に到着。
そこからさらにタクシーに乗り換え一時間ほど揺られたところで…
「お客さん、着きましたよ。廃墟区画外郭の検問です。」
「ありがとう。釣りは取っといてくれ。」
ネイトがとうとう目的地であるミレニアム郊外の廃墟都市までやってきた。
走り去っていくタクシーを見送り…
「…確かにあれは廃墟区画…いや最早『廃墟都市』だな。」
眼前に広がる廃墟の海を眺めその異様な景色に見入る。
区画と言うにはあまりにも広大、まるで先ほどまでいたミレニアムの都市がそのまま朽ち果てたような光景だ。
だが…
「…フフッ、変な気分だ。初めて来たような気がしない。」
そんな廃墟の海にネイトはノスタルジーを感じていた。
そう…まるであの街みたいではないか。
2287年から目覚め、まだ復興に着手する前…自分が一番ギラギラしていた頃駆け抜けた…ボストンの街みたいではないか。
「…さてと検問はこっちだな。」
物思いにふけるのもそこそこにネイトは廃墟区画に赴くため検問所に向かう。
が…
「…おーい、誰もいないのかぁー?!」
連邦生徒会のエンブレムが描かれたゲートこそ閉ざされているものの肝心の検問所はまさかの無人。
大きな声で呼びかけてみても人の子一人たりとも姿どころか気配もない。
「…いないなら入るぞ~。」
そう言いながらネイトはカイザーから受け取った立ち入り許可証を近くの機器にかざす。
すると軋むような音を立てて検問所のゲートが開き、検問所内に立ち入るネイト。
しかし、この厳重な検問所だというのにまるで急に人がいなくなったような状況。
「…少し調べてみるか。」
状況を確認しようとネイトは検問所から少し離れた場所にある真新しい建物に向かう。
近づいてみると…
「『連邦生徒会防衛室・廃墟区画保安局』…。」
どうやらこの廃墟区画の警備などを担当する庁舎のようだ。
無論、中はもぬけの殻でまるで夜逃げでもしたかのように書類は散らばりPCなどの機器もそのまま放置されていた。
ネイトはそんなPCの中の一台に近づき、
「さてさて…電源は生きていてくれよ…。」
電源スイッチを入れてみるとどうやらまだ電力は生きているようだ。
「ロックは…まぁあるよな。よし…。」
当然、PCにはロックがかかっているがネイトには大した障害になり得ない。
すぐさまキーボードを操作しPCのバックドアを無理やり構築。
僅か数十秒でロックを突破し入り込むことに成功。
「いいね、ハッキングの腕も鈍ってないようだな。」
そう、ネイトはピッキングだけでなくハッキング技術も習得している。
まぁ、現実のハッカーのように遠隔地のPCを操作したり情報を抜き出したりできないのは大きな差だが。
しかし、ロックがかかったPCを突破することくらいなら朝飯前である。
「…なるほど、サンクトゥムタワーの停止時からここの警備は引き上げたってことか。」
こうして無理やり入った職員用PCのログを確認するとどうやらすでにここは2週間以上前から無人となっているようだ。
連邦生徒会もあの騒動で兵力が足らなくなったのかここの警備部隊まで抽出し事態の収束に努めたのだろう。
「…お、ここの地図もあるな。Pip-Boyに入れておくか。」
ちょうど欲しかった廃墟区画の地図データもあったのでPip-Boyの接続ソケットをPCに接続しダウンロードする。
そして…
「それで…この仰々しい警備の理由は何だ?」
一番知りたい情報、この廃墟区画には何があるかだ。
ログを見るとこの警備隊が保有していた装備や兵器の納入記録もある。
兵士の数も充分な上装備は一流、兵器の数も多数と生半可な相手ではないことは分かるが…肝心の相手の正体が分からない。
「…ダメだ、このPCじゃアクセス制限がかかっている。」
それを調べようとしても弾かれるので…
「お偉いさんのPCを探すか。」
さらに高位の権限を持つ者のPCを求め施設内を散策。
大体、こういう者は奥か高い所を好む傾向があるが…
「あった、ここだ。」
どうやら今回は後者のようで施設の最上階に『室長室』を発見。
目の前にはオートロック式のスライドドアとインターコムが設置されている。
パワーアーマーもあるので叩き壊して侵入するのもよいが…
「すみません。」
何かあったら怖いので一先ずインターコムを押してみることに。
《いらっしゃいませ、現在室長は退室中です。》
と、こちらも電源は生きているようで電子音声が応対してくれた。
「…私はここの室長だ。仕事があるんだ、中に入れてくれ。」
ネイトも口から出まかせであるがインターコムにそう告げると…
《6桁の入室パスワードを提示してください。》
上手く(?)誤魔化せたようでパスワードの提示を求められた。
その時、
(…あれ、こんなやり取りどこかで…。)
このシチュエーションに既視感を覚えるネイト。
「…まさかな。」
そんなはずないと思いながら…
「入室パスワードは、えぇっと…123456?」
ほぼパスワードになっていないような答えを返すも、
《…………。》
インターコムは何も答えてくれない。
「…だよな。そんな単純なわけないよな。」
そう納得し扉を壊そうと道具を選び始めたその時、
《…ようこそ、『不知火カヤ』防衛室長。お仕事頑張ってください。》
インターコムはそう返しスライドドアが開いた
「えぇ…。」
まさかの当たり、それも防衛室長のパスワードという大当たりを引き当て逆に困惑するネイト。
…連邦生徒会の。それも防衛室長のパスワードがこんなんでいいのかと小一時間この『不知火カヤ』と言う人物を問い詰めたい気持ちをぐっとこらえ室長室に入った。
で、こんな単純なパスワードを設定するだけあり内装も高級な調度品ばかり
「こりゃいかにも権力者って感じだな…。」
人物像が何やら透けて見えるような部屋の中を物色し不知火カヤのものと思われるPCも発見。
ご丁寧にディスプレイ脇に付箋に書かれたIDとパスワードが張られたままだ。
手間がかからないことはいいことなので早速PCを探ることに。
「ふむふむ…所在不明な工場で製造されたロボット兵がねぇ。…美味いなぁ、この茶菓子と紅茶。」
物色中に見つけた茶菓子(高級そう)と紅茶(これも高級そう)をティーカップ(滅茶苦茶高級そう)に入れて楽しみつつ目当ての情報を発見。
どうやら廃墟区画内には無数のロボット兵、ここでいうところの人格がインプットされていないオートマタのような存在が多数徘徊しているらしい。
それがこの区画から外に出るのを防ぐために厳重な警備体制が敷かれていたようである。
「大体分かったが…この単語は一体何だ?」
警備の理由は分かったがネイトにはどうしても引っかかる単語があった。
それには何のリンク先もなくただ一言、こう書かれてあった。
『DECAGRAMMATON』、と。
「どういう意味の文字の羅列だ?」
以前のユメが託してくれたホロテープの文面とも違う。
何かの単語ではあろうがあいにくネイトにそれが当てはまるような物の心当たりがない。
「…頭の片隅には置いておこう。長居は無用だな。」
ご丁寧に茶菓子も平らげ紅茶も飲み干しネイトはこの建物を後にする。
その後、廃墟区画に進入し歩を進めていくネイト。
ここからは完全なアウェー、全身にヘビーコンバットアーマーを纏い手にはコンバットショットガンを携え進んでいく。
だが…
《…■■■、■■ ■。》
《■■■■、■■■■■。》
(…これは確かに多いな。)
行く手に立ちふさがるは多数のロボット兵部隊。
以前のヘルメット団襲撃で見かけたものと違いマッシブなボディラインで白にオレンジのラインが入った装甲と言う姿だ。
見るからに強度も高そうで装備もよく連携も取れていそうだ。
勝てない相手ではない。
だが、いちいち相手にしていたら…
(ここはまだ廃墟区画の端…。そして、水没地帯は…ここからまだ150㎞以上あるのかよ…!?)
目的地の水没地帯にたどり着くまで確実に弾薬が持たない。
さすがキヴォトス、スケールも連邦とはケタ違いでこの廃墟区画だけでおよそ18,000㎢、現実でいうと四国くらいの広さがある。
水没地帯はちょうどその中央付近にありここの広さはおよそ3000㎢、鳥取県を少し小さくした位の面積が丸々水没しているということになる。
もっと簡単なたとえを上げると、廃墟区画と言う場所は4.5倍の広さになった滋賀県のような物である。
…え、一気にしょぼくなった?
閑話休題。
まともな方法ではたどり着くのは無理だ。
パワーアーマーで走り抜ける案もあるが…できるだけ体力も温存していたい。
カイザーもおそらくあれを自分にぶつけることで契約不履行もしくは排除を画策したのだろう。
「…だったら、まともにいかなければいいか。」
ここは一時撤退、ネイトは作戦を練り直す。
先ほどの保安局の資料が正しいとするなら…
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――――
ロボット兵は今日も廃墟街をパトロールしていた。
意志などない彼らには代わり映えの無い日常だろうと関係がない。
これが自らにインプットされた使命なのだから。
それ以外の感情やデータなどは不要。
その時だ。
彼らのセンサーが振動を検知した。
ビルの崩落などではない、弱いながらも連続した振動。
侵入者、彼らはそう判断し迎撃態勢をとる。
徐々に近づいてくる振動。
だが…データにある戦車の振動にしては…『速過ぎた』。
そして、彼らの前に現れたのは…『鋼鉄の猛獣』だった。
データにはない存在に一瞬ロボット兵たちはフリーズ。
次の瞬間、その猛獣から放たれる無数の弾丸。
弾幕の前に一瞬にしてハチの巣にされるロボット兵。
それだけに飽き足らず、猛獣はロボット兵を粉砕。
意に介さず道を爆走していくのであった。
「…もったいないなぁ。絶対良いジャンクが盛りだくさんなのに…。」
その猛獣の体内…いや運転席でパワーアーマーを纏い残念そうにつぶやくネイト。
そう、これは猛獣などではない。
連邦生徒会はここを去るとき相当慌てていたのだろう。
装備や車両の多くを破棄して引き上げていった。
戦車などはさすがになかったが…その中には大型トレーラーもあった。
ネイトはそのトレーラーの正面に楔形の鉄板をクラフトで装着し防御力を強化。
ご丁寧に鉄板にはペンキでシャークマウスが描かれている。
さらに残されていた重機関銃や機関銃とそこら辺の廃墟から集めた電子機器でクラフトを行いタレット化。
それを荷台や車体上部に装着し増大した重量にへこたれないよう過給機も増設と言うもはや原形が分からないほどの改造。
高速移動とロボット兵の排除を両立、『アイアン・グリズリー』と名付けられたモンスターマシンが誕生した。
さらにもう二つ、ある『サプライズ』が積まれている。
そんなジャンクと男のロマン満載の武装トレーラーは廃墟区画を爆走。
立ちふさがるロボット兵や建物や車両の残骸を押しのけ水没地帯へ一直線で駆け抜ける。
「今度解体に来た時はこの道沿いの掃除からやってやる…!」
現在進行形で生成されていくロボット兵の残骸を諦めきれないのかそんなことを決心するネイト。
そんなもったいない精神の塊のような心理状態ながらも運転は非常に安定している。
さすがのロボット兵もこんな強引な手段で街を突破するのは想定外だったか部隊の召集が間に合わず反抗も散発的だ。
それでも弾丸は車内に飛んでくる。
「えぇっと、さっきのビルがこの辺りだから…あと三分の一くらいか。」
弾丸を浴びながらナビを確認する姿はさすがに豪気と言うほかないがそれでも1時間ほどで道のりは順調に消化。
このまま順調にいけばあと30分ほどで水没地帯に到着する計算だ。
…しかし、そうは問屋が卸さないのがこのキヴォトス。
その時、『アイアン・グリズリー』の周囲に着弾する無数のロケット弾。
そのうち一発が運転席の屋根をフッ飛ばしオープン車仕様になってしまった。
「くそ、やっぱり飛行ドローンもいるか!」
広がった空に視界を向けるとこちらに砲口を向ける多数のドローンが飛来。
タレットも応戦し撃墜するがそれを上回る数のドローンが投入され続ける。
徐々にはがされていく『アイアン・グリズリー』の装甲に破壊されていくタレット。
「最後の悪あがきと行こうか!」
だが、ここでへこたれるネイトではない。
手元に置いてあった起爆装置を作動。
すると車体前面の鉄板の内側からモウモウと白い煙幕が放出され『アイアン・グリズリー』の車体を覆い隠す。
『発煙装置』、オイルを加熱し蒸発させそれを外気に冷却されることによって大量の煙幕を発生させる。
たかが煙幕、されど煙幕。
可視光を遮る煙幕は副次的に『赤外線』をも遮る効果がある。
さらに効果を高めるため備品庫にあったえんぴつの芯、つまり黒鉛の粉末を添加されている。
これによりドローンの照準を機能させなくし攻撃の手を緩めさせることに成功。
だが、見えなくなるのはネイトも同じ。
手元の地図も見えなくなる煙幕の中必死にそこから10㎞程操縦するが…それにも限界が訪れる。
視界が無くなったことによりトレーラーの馬力でも排除できないほどの瓦礫にぶつかり横転、とうとう行動不能になってしまった。
横倒しになったトレーラーの残骸に群がるロボット兵やドローンたち。
先ほどまでの暴れっぷりを警戒し発砲などしないが夥しい物量が集結しつつある。
次の瞬間、
「間抜けどもめ。」
少し離れた物陰でパワーアーマーを脱いだネイトがアルミシートに身を包んで最後のサプライズである起爆装置を起動し、荷台に積んであった金属ケースが炸裂。
しかし箱の大きさの割には小さな爆発。
だが…周囲にいたロボット兵やドローンは例外なく沈黙、破壊された。
「…よかった、成功だな。」
効果を確認しアルミシートを脱ごうとすると、
「いてっ!やっぱ静電気は帯びるよな…!」
乾燥した冬場のように手に静電気が走った。
『EMP爆弾』、内部に大量のコンデンサとコイルを突っ込み少量の爆薬で炸裂させることにより周囲数百mに電磁パルスをまき散らす。
やはり連邦より電磁パルス対策が乏しいキヴォトスのロボット兵。
これにかかればイチコロだろう。
「さて、一先ずは相当奥地までやってこれたが…。」
再びPip-Boyからパワーアーマーを取り出しつつ現在位置を確認すると…
「…お、あと10㎞か。だったらこれ着ていけばすぐだな。」
あと一息の場所まで来れていた。
幸い、パワーアーマーも目立った損傷はなく任務の遂行に問題はない。
時速100㎞の快速に物を言わせ、数分後…
「…ここが、水没地帯か…。」
海かと見紛うばかりの広大な水没地帯にたどり着いたのであった。
―――――――――――――――――
――――――――――
―――
――
ところ変わってミレニアム学区。
「ホシノ先輩たちまだかなぁ…!」
「落ち着きなよ、お姉ちゃん…。」
「必ず、来てくれる。だから、待とう?」
モモイ・ミドリ・ユズの三人は近傍で見つけたヘリポートでホシノたちの到着を待っていた。
かれこれもう一時間半、せっかちなモモイはウロチョロしながらホシノたちの到着を待つ。
「でも、あのトラックは何だろう?」
そう言いつつ、ミドリが目線を向けた先にあるのは…
「あれ、セイント・ネフティスの、トラックだよね?」
セイント・ネフティスの社章が描かれたタンクローリーが待機していた。
しかも、ヘリポートの入り口は同社のセキュリティが防備を固めている。
「私達…ここにいて大丈夫なのかな?」
非常に場違いな状況に心配になるミドリだが、
「何言ってんの、ミドリ!守衛さんに名前伝えたら入れてくれたんだから問題ないよ!」
いつものように自信満々のモモイが心配いらないと言い切って見せるが、
「でも、なんで、こんなに厳重な、警備を?」
「う、う~ん…それはちょっとわかんないかなぁ。」
とユズの疑問には首をかしげて見せる。
すると…
「…あ、ヘリの音だよ!」
モモイ達の耳にもヘリ特有の飛行音が聞こえてきた。
つまり、もう近くまでホシノたちがやってきているということに他ならない。
「補給車、急げ―!」
「警備隊、一人も中に入れるなよ!」
セイント・ネフティスの社員達も俄かに騒がしくなる。
そしてとうとう…ヘリポートの上空をベルチバードが駆け抜ける。
「す…すっごおおおおおおい!何あのヘリ!?」
「ネイトさんってあんなの持ってたの!?」
「か、カッコいい…!」
その独特なフォルムと見るからに重武装な装備にオタク心がくすぐられ目を輝かせる三人。
その後、ローターを垂直に戻したベルチバードがヘリポートに着地。
側面のドアが開くと、
「やぁ~やぁ~、君たちがゲーム開発部のモモイちゃんにミドリちゃんにユズちゃんだねぇ?」
「うん!じゃあ、貴方がホシノ先輩?!」
「そだよぉ。今日は連絡ありがとねぇ。」
いの一番にホシノが下りてゲーム開発部に挨拶を交わす。
その間に素早くセイント・ネフティスの社員がベルチバードに燃料を補給していく。
「ん…私は砂狼シロコ。ネイトさんのピンチを教えてくれてありがとう。」
「十六夜ノノミです。よろしくです、三人ともぉ♪頑張りましょうねぇ♪」
「奥空アヤネです。ネイトさんのご友人に会えて光栄ですよ。」
続いてシロコたち対策委員会メンバーもおりて自己紹介を行う。
そして…
「やぁどうも、初めまして。」
「え、えっとこの人は?」
「私はシャーレの先生だよ。今回は皆が廃墟区画に入れるようについてきたんだ。」
「し、シャーレの先生ってあの!?」
「たまたまアビドスに来ててねぇ。」
今を時めく有名人でもある先生の登場。
「ど、どうして先生まで来てくれたんですか?!」
「う~ん…理由は主に二つ。一つはホシノや君たちのため。」
「も、もう一つは?」
「私もネイトさんがどんな人か気になった、からかな?」
ここにつくまでの間、機内で先生はホシノ達からネイトに関しての情報は聞いていた。
曰く、単身で敵部隊を制圧する兵士。
曰く、共に戦場に立ち自分たちの力を何倍も引き出す指揮官。
曰く、共に戦い同志を鍛え上げる教育者。
曰く、神秘の力で物を生み出すエンジニア。
曰く、アビドス高校復活の大黒柱。
曰く、大企業を手玉に取るネゴシエーター。
どれもこれも自分にはできないであろうことばかり。
それをわずか半年でやり遂げたネイト。
「…彼は私が持っていないモノをたくさん持っている人みたいなんだ。だから、一度会って少しお話してみたいなと思ってね。」
キヴォトスに来たばかりの先生が興味を抱くのも無理はない。
「そ、そんなにすごいんだ…!」
「うん、すごいよぉ。この前のサンクトゥムタワーの騒動の時は一人で戦車50両以上撃破してたんだから。」
「せ、戦車を50両を一人で!?ヘイローも持ってないのにですか!?」
「ん…一人で。私たちの中で一番壊してた。ボーナスも山分けしてくれたからとてもうれしかった。」
「そ、そんな、強い人、には、見えませんでした…。」
「そうですねぇ。普段はとても優しい人なんですよぉ。私たちもいっぱい優しさを貰ってますぅ♪」
「うん、それは分かってる!ネイトさんって優しくてなんというか…ずっと見ていたい人だよね!」
「ふふっ、そうですね。たまに突飛なこともしますけどとても人を引き付ける不思議な人です。」
背後でセイント・ネフティス社員がベルチバードにジェット燃料を給油し終えるのを待っている間、ネイトの話に花を咲かせる対策委員会メンバーとゲーム開発部。
ずっとともに活動してきたホシノたちはともかく初対面のゲーム開発部にもこの好かれよう。
「…本当にすごい人なんだね、ネイトさんって。」
先生はそんな周りを惹きつけてやまないネイトと言う人物にさらに興味がわいた。
「あ、そういえば。ホシノ先輩、なんでセイント・ネフティスの車が来てるの?」
「それは私が呼んだんですよぉ。ネイトさんを援護しに行くと伝えたら補給用の車両を送ってくれたんですぅ~。」
「そうなんですか。と言うか、ネフティスを動かせるノノミ先輩って一体…。」
「じゃあ、ゲートの、警備員さんは、どうして…?」
タンクローリーが来た理由はまだわかるがあの厳重な警備の理由が分からないユズ。
モモイとミドリも不思議そうに見ているが、
「ん…ここはミレニアムだよね、モモイ。」
「そうだよ、シロコ先輩。それが?」
「そんなところにあんな航空機が来たらどうなると思う?」
「「「あ!」」」
シロコの話を聞き納得がいき顔が青ざめる。
その時、
「ここは現在ネフティスとアビドスが使用しています!」
「直ちに立ち去りなさい!繰り返す、立ち去りなさい!」
ゲートを警備するセキュリティの怒号が響き、
「何あのヘリ!?ちょっとばらしてもいい!?」
「エンジンは何馬力!?航続距離は!?最高速度は何㎞!?」
「武装を見せてくれないか?!大丈夫、変な改造は…!」
「どこのメーカー!?いくらで買えるの!?」
「C&Cだ!その機体を臨検させてもらうぞ!」
そこに殺到するミレニアムの生徒たち。
ここは科学技術の総本山。
そんな場所に見たことない高性能の航空機が飛来すれば…騒動が起こることは確実。
「あぁいうのを見越して用意してくれたんだってぇ。」
「「「なるほど…。」」」
同学生のあの狂乱具合を見せられて納得するしかないモモイ達。
このままではあのセキュリティも突破されるのは時間の問題だろう。
それを見越してか、
「燃料補給終わりました!いつでも飛べます!」
このタイミングで燃料補給が完了。
「皆さん、急いで乗り込んでください!」
『了解!』
あんな群衆が押し寄せられてはたまらないと素早くベルチバードに乗り込む一同。
「ドアガン、誰かついて!」
「ハイハイ、私がやる!」
「ん…ユズはグレネードランチャー持ってるならこれ使って。」
「は、はい!」
「先生、もしもの時は撃つからね。」
「うん、私が許可するよ。」
エンジン始動までの間、ドアガンにモモイが付きシロコとユズがそれぞれグレネードランチャーを構え非常事態に備える。
その時、
「逃がすか!」
「あ、こら!」
ミレニアムの生徒の群衆の中からスカジャンを着た小柄な生徒が飛び出しこちらに迫ってくる。
「え、あれって!?」
その正体に見当がついたモモイだが、
「悪いけど乗員オーバー。」
シロコが容赦なくグレネードランチャー『チャイナレイク』を発砲。
狙うはその生徒…ではなく目の前の地面。
着弾した瞬間、猛烈な閃光が放たれた。
「ぐあ!?」
まともにその閃光を食らい視界を奪われ大きく怯む。
「モモイ、ミニガン。」
「う、うん!」
「アダダダダダ!!?」
さらにダメ押しと言わんばかりにミニガンを発射するモモイ。
5㎜口径なのでダメージは少ないがそれでも彼女を拘束するには十分だ。
「よし、エンジン起動!離陸します!」
アヤネもエンジン起動を完了、浮かび上がるベルチバード。
さすがに浮かべば追って来れない…はずだった。
「こ、こんチクショウがあああ!!!」
「あぁ!?抜けられた!?」
気合でその少女はミニガンの弾幕を脱出、なんとも身軽な動きで跳躍し、
「落ちろ、テメェら!」
二挺のサブマシンガンを構えベルチバードを狙う。
が、
「落ちるのは君だよぉ。」
ぬるりと腕を伸ばしたホシノがEye of Horusを発砲、
「アグググググググ…!?」
着弾と同時に少女は痙攣をおこし地面へ落下していった。
「アヤネちゃん、脅威は排除したよぉ。」
「了解しました!」
こうして障害をすべて排除しベルチバードは発進。
こうなってしまってはミレニアムの生徒はもう追いつけないだろう。
「ホシノ、今撃ったのは?」
「テーザーシェルだよぉ。キヴォトス人でもこれ喰らっちゃったら一発だからねぇ。」
「す、すごい…!あの人を完封しちゃった…!?」
「あ、あとで、怒られない、よね…?」
「大丈夫、私がちゃんと説明するから。」
「うぅ~…かッ快感だったぁぁぁぁ…!」
「あらぁ?モモイちゃんもミニガンの魅力に目覚めちゃいましたかぁ?」
一先ずの危機を脱し少し余裕が出て賑やかになったベルチバード機内。
「皆さん、このまま廃墟区画に向かいます!」
そしてそれから一時間半後…眼下にはネイトがいるであろう廃墟区画が見えてきた。
「…いよいよだよ、皆!気合入れていくよ!」
『了解(うん)!』
ネイトまであと少し。
ホシノの号令に全員が気を引き締めるのであった。