「ここが…廃墟区画…!こんなに近くで見れたの初めて…!」
「すごい…広い…!ホントに今から入れちゃうんだ…!」
眼下に望む廃墟区画を開いたドアから落ちないように気を付けながら眺めるモモイとミドリ。
「ん…ミレニアム生のモモイ達も来るのは初めて?」
「うん、普段ココ連邦生徒会に生徒の立ち入りが禁止されているの。」
「それに警備員まで派遣されてるから忍び込むことも出来ないんです。」
「確かロボット兵が徘徊しているんでしたっけ?」
「う、噂しか、知りませんけど、そう聞かされてます。」
「先生は何か聞かされてないのぉ?」
「私もキヴォトスに来たばかりだからそこまで詳しくは…。」
そんな風に廃墟がミレニアムのモモイ達にとってどんな場所かを聞いていると…
「皆さん、お喋りもいいですけどネイトさんの痕跡も探してください。」
コックピットのアヤネからネイトの手がかりを探すよう要請される。
そう、自分たちは探検に来たのではない。
「そだねぇ。早く跡を追っかけないと…。」
「ん…でもこんなに広いとは思わなかった…。」
「ネイトさん、いったい、どこに、いるんでしょう…。」
全員が目視や双眼鏡を使いネイトがいるであろう痕跡を探す。
いかにネイトでもこの時間差でまだ水没地帯には到達していないはず。
全員がそう予想立てて捜索していた、その時だ。
「…ん?アヤネ、2時の方向のあれは何だろう!?」
いの一番に何かを見つけたのはなんと先生だった。
全員がその箇所を見てみると…途切れ途切れに煙が一直線に立ち上っていた。
「…まさか、ね。」
「ん…でも、状況的には…十分あり得る…。」
「え、まさか…あれネイトさんがやったの…!?」
「と、とにかく近づいてみます!」
そんなはずないという否定と彼なら…という謎の信頼という相反する意見が出る中ベルチバードで接近し様子を確かめると…
「わぁ…ロボット兵の残骸が一直線に続いてますねぇ…。」
「ロ、ロボット兵があんなに壊されてるなんて…!」
「み、見て…!タイヤの、跡が、ずっと、続いてる…。」
ある大通りを一直線に突っ切るようにロボット兵の残骸が点在。
見ると何やら巨大な車両が付けたような轍まで見えるではないか。
しかも、ロボットの残骸から煙が立ち上っているあたり時間もそれほどたっていないはず。
「あの戦いの跡、確実にネイトさんがやった後だよねぇ。」
「ん…たぶんトラックか何かをクラフトで武装させて突っ切っていったと思う。」
「連邦生徒会が残していった物資でも使ったんでしょうかぁ?」
「相変わらず突拍子もないことで事態を解決しますね、ネイトさんは。」
アビドス組の面々は最早慣れたもので淡々とネイトがどうやって通っていったかを詳細に予測する。
一方、
「わッ…わぁ…ネイトさんってあんなことできるんだ、すごい…!」
「一体どうやってあんないっぱいのロボット兵を壊しながら進んでいったんだろう…!?」
「も、もし、追いつけて、無事だったら、ネイトさんに、お話、聞いてみよ。新作の、ヒントに、なるかも…。」
今日初対面でネイトの穏やかな一面しか見ていなかったモモイ達ミレニアム組はその光景に衝撃を受けたりネイトへの興味を強めたりしていた。
そして、
「へ、ヘイローもない人が一人であんなことができるなんて…。」
同じヘイローを持たない自分と違いネイト自身の『実力』で事態を打開していった光景をまざまざと見せつけられ言葉を失う先生。
自分には…あんなマネできっこない。
生徒たちを後ろから指揮するしかできない自分には。
こんなところに一人放り込まれたら一時間でも怪しいだろう。
まだ見ぬネイトの実力にどこか畏怖を抱く先生。
「アヤネちゃん、ともかくこの大通り沿いに飛んで行ってぇ。」
「了解しました。皆さんも周囲の監視をお願いします。」
ともあれネイトの痕跡は見つかった。
その跡を注意深く確認しながら飛行していくと…
「…あ、アヤネ!あそこ!トレーラーが倒れてるよ!」
「うへ~多分あれに乗ってたんだろうねぇ~。」
モモイが周りに夥しいロボット兵や飛行ドローンの残骸に覆われ横転炎上中の『アイアン・グリズリー』を発見。
「ま、まさか、ネイトさんは、もう…!?」
その光景に最悪の事態を考えユズの顔から血の気が引くが…
「ん…安心して、ユズ。ロボット兵が周りに倒れてるしドアが開いてる。ネイトさんがやられているならあんなふうになっていない。」
「じゃあ、あの沢山のロボット兵が動かなくなっているのはなんでですか?」
「多分ですけどぉ乗り物が破壊されることは織り込み済みで対ロボット兵用の仕掛けをしていたんでしょうねぇ。」
「じゃあネイトさんは無事ってことなの!?」
「多分、もう水没地帯に入っちゃってるかもねぇ。アレ着てるならこれくらいの距離なら一足だろうねぇ。」
ネイトをまるで心配していない、と言うよりあんなくらいでやられるはずがないと確信しているようなホシノたちの言葉。
「アレっていうのは分からないけど…どうしてそこまで言い切れるんだい、ホシノたちは?」
「ん…なんとなく。ネイトさんなら普段から次善策を用意しているから。」
「ネイトさんって『止まらない人』なんですよぉ。どんな状況でも思考も行動も止まらないんですよぉ。」
「そのおかげで私達でも追いつかないような突飛な作戦とかたまにやっちゃうんですよ、ネイトさん。」
「それにぃたぶんアレ着てるから交通事故くらいどうってことなさそうだしぃ。」
「…アレっていうのが分からないけどネイトさんは無事と判断していいんだね?」
『もちろん。』
さすが半年もネイトと共に過ごしてきたホシノたちだ。
僅かな逡巡もなく力強く頷いて見せる。
「…なるほど、分かったよ。じゃあアヤネ、このまま水没地帯に向かってくれるかい?」
「分かりました、先生。」
まるでパンくずをたどるように徐々にネイトへと近づいて行っている。
ベルチバードはなおも進みとうとう水没地帯上空に差し掛かった。
打って変わって眼下に広がるのは広大な水面。
ところどころからビルの先端が飛び出ていることから相当な水深だと察せられる。
そして…
「こりゃあ派手にやりあってるねぇ。」
「あ、あちこちで煙が上がってる…!?」
「これ、全部、ネイトさんが、一人で…!?」
より如実に伝わってくる激戦の跡。
四方に走るハイウェイのいたるところで多数のロボットが無惨に破壊されていた。
それも一つ二つではない。
キヴォトス人の中でも一人でこれだけの戦場を作り出せるものは何人いようか…。
その時だ。
遠方でまるで稲妻のような閃光が走る。
さらにこの距離からでも分かる赤い光の線とミサイルのジェット噴射と爆発閃光も同じ位置で発生した。
「あそこです!絶対あそこにネイトさんがいます!」
「アヤネちゃん、大至急向かって!武装のスイッチも入れといて!」
「了解しました!急行します!」
とうとう見つけた、ネイトの居場所。
しかも現在進行中で戦闘中だ。
距離はおよそ20㎞先。
ベルチバードは全速力でその場所へと飛翔。
そして、とうとう見つけた。
ハイウェイに縫い付けられた巨大なロボットの残骸を背に立つネイト。
その目の前には縫い付けられているロボットと同じ武装のタイプと大型キャノン砲を携えたタイプの二機。
ネイトは臆することなく二機の巨大ロボットに向け突撃を開始。
「ッ!まったくあの人はッ!すぐに無茶するんですから!」
そんなネイトの姿に口ではそう言うものの無事であることを確認でき笑みを浮かべるアヤネ。
「アヤネ、狙うのはガトリング砲装備の方だ!」
「了解!対戦車ミサイル、発射します!」
先生の指示で標的をロックオン。
こちらも航空機、できるだけこちらの脅威となる標的を潰しておきたい。
スタブウィングから対戦車ミサイル『AGM-114ヘルファイア』を3発発射。
誘導されたミサイルは狂いなくガトリング砲搭載のケテル上部装甲に着弾。
「ネイトさん、やっと見つけたよぉ!!!」
《ホシノッ!?》
無線でそう呼びかけるホシノと驚いたようにパワーアーマーに内蔵された無線機で返答するネイトであった。
―――――――――――――
―――――――
―――
場面は前回の最後までもどる。
ガトリング砲搭載のケテルは装甲を無惨に破壊されダウン。
さらに残されたキャノン砲型にも通り抜けざまにベルチバードの猛攻が襲い掛かる。
降り注ぐ30㎜チェーンガン二基の砲弾幕とハイドラ70ロケット弾の雨。
だが、さすがに大重量のキャノン砲を乗せているだけあり相当頑丈のようだ。
榴弾仕様のどちらもキャノン砲搭載のケテルを撃ち抜くには至らない。
怯ませるのがせいぜいだ。
「頑丈ですね…!ロケットも成形炸薬弾にしてくるべきでした…!」
「アヤネちゃん、もう一度対戦車ミサイルを!」
装備選択をミスしたことを悔やむアヤネにホシノがそう指示するが…
「ダメだ、アヤネ!直線で動き続けるとキャノン砲が飛んでくる!」
《アヤネ、高低差をつけつつ間合いをとれ!ミサイルを叩きこめる隙は俺が作る!》
「は、はい!」
先生とネイトがそう指示し一旦間合いの確保に映る。
次の瞬間、砲声とともにベルチバードの後方を巨大な砲弾が通り抜けた。
見るとキャノン砲型ケテルはベルチバードを最優先排除脅威としたのか照準を定めようと砲煙を上げる砲口が追いかけてきている。
「ノノミ、モモイ!ドアガンで彼の援護を!」
「お任せください!」
「分かったよ、先生!」
さらにノノミとモモイにドアガンによる援護射撃も指示。
5㎜弾とは言え夥しい弾丸の雨はキャノン砲型ケテルの処理に大きく影響を与える。
だが、なおもキャノン砲型ケテルの砲口はベルチバードを追尾。
幸い狙いはまだ正確ではないが合わせられるのも時間の問題だろう。
さらに、その時ベルチバードのミサイルアラートが鳴り響いた。
「ま、まさかまだ動けるんですか!?」
顔を青くするアヤネ。
見ると対戦車ミサイルを叩きこんだガトリング砲搭載のケテルが地に伏したまま後部のVLSを展開。
いかに重装甲なベルチバードでもミサイルを何発も叩きこまれると撃墜は必至だ。
すると、
「おいおい、俺を忘れてもらっちゃ困るな!」
地上にいるネイトもミサイル発射の兆候を察知。
VLSにV.A.T.S.照準しコンバットショットガンを発砲。
先ほどの対戦車ミサイルに負けず劣らずの散弾爆撃を叩きこみVLSを破壊。
だが、弾丸到達前に5発のミサイルは飛翔しベルチバードを追尾。
「やらせはしませんよぉ!」
「うわーッ!こっち来ないでえええ!」
さすがに直撃はまずいと思いノノミとモモイは目標をミサイルに変更しミニガンを発砲。
その弾幕の前に3発のミサイルは撃破されるものの残り二発のミサイルが迫る。
だが、
「やらせるか!」
ガトリングレーザーに持ち替えたネイトがミサイルに対しV.A.T.S.を発動。
『Concentrated Fire』によって強引に命中率を上げ発射。
光速のレーザーがミサイルを貫きベルチバードのはるか手前で爆散。
「す、スゴッ!?ミサイル撃ち落としちゃった!!!」
「レーザーガンなんてうちでも見たことないのに!?」
「う、うん、エンジニア部も、まだ、開発できてない武器…!」
自分たちの知る技術をはるかに上回る武器に湧き上がるモモイ達。
《助かりましたぁ、ネイトさん!》
「いいってこと!機銃掃射は元の目標に浴びせてくれ!俺はガトリング砲の奴を片付ける!」
いうが早いかネイトは進撃を再開。
いまだ地面に伏しているケテルに対しガトリングレーザーを浴びせる。
いかにキヴォトスの戦車よりは頑丈と言えど食らうのは核融合バッテリーの大電力で生み出された強力なレーザーだ。
身動きも取れずガトリング砲も射角の影響で使えないケテル。
なすすべなくそのままレーザーの照射を浴び続けとうとう縦に真っ二つに両断されてしまった。
ヘイローも砕け散ったことにより撃破を確認。
「あんなロボットを真っ二つにするなんて…!?」
ネイトの戦いぶりに本当に同じ外部の人間かと疑いたくなる先生。
だが、彼が驚くのはここからだ。
さらにネイトは真っ二つにしたケテルに駆け寄り、
「フンヌウウウラァッ!!!」
ケテルの持つ23㎜ガトリング砲をパワーアーマーの怪力任せに捥ぎ取った。
何をするかは…語るまでもないだろう。
「お仲間の攻撃だ!お前にも分けてやるよ!!!」
ガトリング砲にあった直結電源を押し込み、キャノン砲型ケテルに対し23㎜砲弾の雨霰を浴びせるネイト。
装填されているのは徹甲焼夷弾、口径こそ小さいものの貫通力でなら30㎜にも負けない。
掘削機のごとくキャノン砲型ケテルの装甲を削り飛ばし穿っていく。
「あ、あんなガトリング砲を一人で!?」
「うへ~相変わらず無茶苦茶やってるぅ~♪」
驚く先生と対照的にホシノは何とも愉快そうだ。
「さすがにあれは私でもできませんねぇ~。」
「おぉ~…あぁいうのもシナリオに使ったら面白そう…!」
口径こそ違えどミニガンを使っているノノミは少し苦笑し、モモイはネイトのロマンあふれる戦い方に目を輝かせていた。
一方、喰らっているケテルからしたらたまったものではない。
たまらず目標を変更、砲口をネイトに向け砲撃を放とうとする。
その時、
「さ、させない…!」
ユズが自らの得物グレネードランチャーM320『にゃん's ダッシュ』を構え発砲。
放たれた40㎜グレネード弾はケテルの足元に着弾。
瞬間、先ほどネイトが使用したような青白い波動と稲妻が発生。
キャノン砲型ケテルは全身を震わせ機能を停止し地面に伏せた。
『40mmグレネード・パルス』、その名の通りパルスグレネードと同じように着弾地点にEMPを発生させロボットに大ダメージを与えるグレネード弾だ。
「や、やった…!」
小さくガッツポーズをするユズに、
「ユズちゃん凄い!」
「ん…ナイス、ユズ。」
《今のはユズか!?ナイスショットだ!》
ミドリ、シロコ、ネイトから一斉に称賛の声が届けられ…
「は、はわわわわ…///!」
慣れない称賛の声にキャパオーバーになったか真っ赤になって顔を覆ってしまった。
「アヤネ、今だ!」
「了解しました!」
何はともあれ決定的な隙ができた。
アヤネはベルチバードを安定させ照準をロックオン。
今度は二発の『AGM-114ヘルファイア』が放たれる。
身動きが取れないケテルに避ける手段はない。
後右脚部とキャノン砲根幹部に命中。
この攻撃により後右脚部は吹き飛ばされ砲根幹部も破壊。
「よし、やった!」
これでもう動けないはず。
先生は勝利を確信し歓声を上げた。
ベルチバード内の一同も同様の空気が流れる。
…だが、相手は未知のロボット。
その証拠に…ヘイローは砕けていない。
次の瞬間、ケテルは再起動。
崩れ行く身体を無理やり動かし、ベルチバードに砲口を向ける。
「か、回避…!」
先生が慌てて回避を指示するもベルチバードはすぐには飛行モードには戻せない。
来るであろう衝撃に身を固めたその時だ。
蒼い流星がケテルの砲薬室部分を貫き装填されていた砲弾が誘爆。
それによりヘイローも砕けキャノン砲型ケテルは今度こそ沈黙した。
「え…!?」
言葉を失う先生。
そこへ…
《…そこに乗っている7人以外の誰かは知らないが、油断したな。》
ネイトからの無線が入った。
見ると、ガウスライフルを肩に担ぎベルチバードに視線を向けていた。
「ッ!」
ヘルメットをしているので分かるはずもない。
だが、彼には分かった。
ネイトは今…非常に鋭い視線を向けていると。
「…説教はあとにしよう。ホシノ、なんでここまで俺を追っかけてきたか説明してもらえるか?」
《分かったよ、ネイトさん。とりあえず合流を…。》
一先ずなぜ彼女たちがここまで自分を追いかけてきたかを知る必要があるため合流を図ろうとするネイト。
…そうは問屋が卸さないようだが。
「ッ!?皆、またアイツが来てる!今度は三体も!」
『ッ!!?』
ドアガンについているモモイが真っ先に見つけた。
少し先の島からハイウェイ伝いに迫る三つの巨大な影を。
「一時撤退!アヤネ、飛行状態で構わないから吊り下げウィンチを下ろしてくれ!」
今のようなありきたり行き当たりばったりな戦術では危険と判断。
ネイトは即座に戦術的撤退を決定。
だが、ベルチバードに降りて自分を回収してもらう猶予はない。
「分かりました!」
アヤネもネイトの意図をくみ取り、アヤネはネイトのいるハイウェイ上空に移動し機体下のウィンチを下ろす。
「ネイトさん、急いでください!」
《よしっ足をかけた!出してくれ!》
ベルチバードにつられて移動するフックにネイトが飛びついたのを確認し、
「行きますよ!」
アヤネも操縦桿を引き上空へ舞い上がる。
すぐ背後では遠ざかっていく自分たちを眺める三体のケテルが…。
(待ってろ…!すぐに戻ってきて次こそは…!)
そう遠くない再戦を心に誓いネイトを吊り下げたベルチバードは一路水没地区外へ退避していった。