「ネ…ネイト…さん…?」
ケテルによってまるでボールのように吹き飛ばされたネイトを見てホシノは力なくその場にへたり込んだ。
その目からは涙が零れている。
また…自分は守れなかった…。
守られてばかりで…肝心な時に大切な人を守れなかった…。
あの時もそうだ…。
大切な人はいつも砂漠の砂のように自分の手から零れ落ちて行ってしまう…。
ホシノはその事実に打ちひしがれるしかなかった。
「そ、そんな…!?」
シロコも信じられないといった様子でネイトが飛ばされていった方角を見つめている。
「わ、私の…私のせいだ…!」
ホシノに抱えられたユズは自責の念に駆られ涙を流していた。
「ネイトさん…大丈夫…ですよね…!?」
呆然し力なくリトルマシンガンVを垂れ提げるノノミ。
「う、嘘だ!ネイトさんがそんな…嘘だ!」
「み、ミドリ…!」
そんな事態を受け入れられず声を荒げるミドリを何とかなだめようとするもモモイも言葉が続かない。
「せ、先生…し、指示を…!」
衝撃を受けつつもベルチバードを操縦しているアヤネはなんとか意識を取り直しつつ先生へ指示を乞う。
(ど、どうする…!?どうすれば…!?)
先生は考える。
ほぼ初陣と言ってもいい自らの戦績。
相手は戦力も物量も未知のロボット群団。
自分たちの残された戦力はこのベルチバードと6人の生徒のみ。
そんな中でネイトという非常に大きい存在を失ってしまった部隊は瓦解寸前だ。
(できるのか…!?自分なんかに…!?)
先生は考える。
どうすればこの事態を打破できるかを。
どうすれば生徒たちを守れるかを…。
そして、ネイトは無事かどうかを…。
だが、そんなときに彼の脳内に…
{俺たちの雰囲気はそのまま部隊の雰囲気に直結する。だから、俺達は最後まで戦場に集中してなければいけない。}
ネイトの言葉が響いた。
(そうだ…!私が…私がしっかりしないでどうする・・?!?)
そうだ。
自分はこの場で唯一、彼女たちを『指揮』出来る存在だ。
そんな自分が…動揺してどうする。
それに自分は託されたではないか。
{先生…少しの間…皆を頼む…!}
ならば…自分がやるべきことはただ一つ。
「…皆、聞いてほしい!ネイトさんは…ネイトさんは生きている!」
無線に向かいそう叫ぶ先生。
「う、嘘を言うな!あんな、あんなの受けてネイトさんが…!」
絶叫に近い声でホシノがその言葉を否定する、
信じたい、この場の誰でもその言葉を信じたかった。
だが…あんな攻撃を受けてはたとえキヴォトス人でも…
すると、
「聞いてほしい!彼のPip-Boyと私のタブレットはデータリンクしてある!だから、ネイトさんの状態はリアルタイムで伝わってくるんだ!」
手に持ったシッテムの箱を操作しアヤネに見せつける。
その画面には『Nate』の名前と心電図が表示されていた。
そこには…確かに微弱ながらもしっかりと波打つ心電図が映し出されていた。
「ほ、本当です!ネ、ネイトさんは生きています!」
それを見たアヤネも活力を取り戻しみんなに伝える。
「で、でも水に沈んだらもう…!」
それでもミドリがその言葉を否定しようとするも…
「…いや、ミドリちゃん。そこはきっと大丈夫…!」
「どうしてですか…?!」
「理由は省くけど…ネイトさんは水中呼吸ができるんだ…!」
「え…!?」
先ほど先生の言葉を否定したホシノが先生の言葉を補足する。
「そ、そっか!パワーアーマーなんか着てたら酸素ボンベなんかもあるよね!」
モモイもそれに乗っかり言葉を紡ぐ。
ホシノの言ってることとは少し違うがモモイの言うことも正しくはある。
ほぼ完ぺきなABC兵器対策が整っているパワーアーマー。
その機能の中には着用したまま1週間は生存が可能となる物も備わっている。
水中で呼吸できる機能ももちろん備わっている。
「で、でしたら急いで助けに向かえば…!」
「ん…それは無理かも…!」
希望が見えたか明るくなったノノミにシロコが冷静に返す。
目の前には損傷を負いながらもいまだ健在の4体のケテル。
遠距離武装がないため攻撃こそ仕掛けてこないが明らかにこちらの出方を窺っているようだ。
ただ、その警戒は…ネイトが吹き飛ばされた方角にも向いている。
もし、ここで奴らを放置してネイトのもとへ向かえばケテルは確実に追いかけてくるだろう。
つまり…
「ネイトさんを助けるには…アイツらを倒さなきゃならない…!」
シロコの目に鋭い光が宿った。
「それしかありません…!それにロボット兵の後続がそろそろ到達します…!」
今しがた倒し切ったロボット兵が同じ経路で接近中だ。
この状況で真っ先に腹をくくったのは…
「進むしかないよ、先輩たち…!ネイトさんのとこに行くには立ち止まってられないよ…!」
モモイだった。
「私は嫌だよ…!今日できたばかりの友達を失うなんて…!だったら、目の前の邪魔もの全部ぶっ壊して…友達を助けるんだ…!」
「お姉ちゃん…。」
「ミドリも立って…!あいつら、全部スクラップにして…ネイトさんを助けに行くよ…!」
新たなマガジンを装填し薬室に初弾を送り込むモモイを眺めるミドリ。
その表情にいつものお茶らけた様子は微塵も感じられない。
ただただ、友を救おうと立ち上がり勇気を奮わんとする姉の姿だった。
そんな姉が自分を鼓舞している。
「…そうだね。友達助ける邪魔するっていうなら…全部壊しちゃおう…!」
ミドリも腹をくくる。
自分たちに大切なことを教えてくれて、共に遊んだ友を救わんと闘志を漲らせる。
「…フフフッ、モモイちゃんにミドリちゃん…そうですねぇ。全部壊してネイトさんを早く迎えに行きましょう。」
「ん…後輩にそう言われたら私たちも止まっていられない。あいつら、ネイトさん助けた後全部アビドスの設備に変えよう。」
ノノミ、シロコも得物を握り直して気合を入れ直す。
そうだ、ネイトの強さは自分たちが一番知っているではないか。
今日彼にできた友人が信じられて自分たちが恩人の彼を信じきれなくてどうする?
邪魔をするなら容赦はしない。
ケテルに向け殺気を向けるノノミとシロコ。
そして…
「うぐっ…ひぐっ…!」
いまだに自分のせいでネイトが…と思い悩み泣きじゃくるユズに…
「ユズちゃん、泣かないでぇ。」
「ひぐっ…ホ、ホシノ…先輩…?」
そんな彼女の頭をなでてあやすホシノ。
「大丈夫、ネイトさんは強いんだから。きっと大丈夫だよぉ。」
「で、でも…わっ私の、せいで…!」
「誰のせいでもないよぉ。悪いのは全部アイツらだからぁ。」
声音こそは昼行灯の彼女のものだ。
だが、目線だけは『暁のホルス』の鋭さを持ってケテルを見据えている。
「それにネイトさんは先生に言ってたよ?『少しの間頼む』って。ネイトさんは約束を破るような人に見えるぅ?」
「…い、いいえ…!」
「そう、ネイトさんはぁ『約束を守る』ことに関しても一流なんだからぁ。」
そうだ。
ネイトは『約束』を決して違えない。
ユメに託されたからと言って縁も所縁もないアビドスの復興にこれまで尽力し続けてくれた。
投げ出しても誰も文句を言わないような難題を真正面から向き合い打破しようと努力してくれている。
だから…
「だから、ユズちゃんも立って。今度は私たちがネイトさんを助ける番なんだから。」
そういい、ユズの壊れたサンダルを自分の制服のバンドで仮修繕し彼女を立たせた。
「…は、はい…!わ、私も、ネイトさんを、助けたいです…!」
ユズも涙をぬぐいオドオドとしていた目に力を込める。
「んじゃあ、皆行こうかぁ!あの天性の人たらしを助けに!」
そう、ホシノが片手を突き上げ鬨の声を上げる。
『了解!』
全員がそれに気合十分で答えた。
(よ、よかった…!何とか士気を持ち直せた…!)
この状況に先生は胸をなでおろす
《せ、先生…本当によかったんですか…!?》
そんな先生に彼にしか聞こえない声でアロナは尋ねる。
《し、指示を受けて見かけは作り出せましたけど…!》
彼女がそういうのも無理はない。
何せ…これまでの話やこの画面のデータはすべて出任せとでっち上げた物ばかり。
全て噓でしかないのだ。
「いいんだ、今はこれで…!」
しかし、それでも先生は覚悟を決めた表情を浮かべる。
《で、でもあんなの受けてあの人が生きているわけが…!》
「かもね。…でもね、アロナ。」
《どうしたんですか…?》
「なんでかな?あの人なら…ネイトさんなら…本当に大丈夫じゃないかって気がするんだ。」
根拠などどこにもない。
確証などあるはずがない。
どう考えてもネイトの生存は絶望的だ。
だが、それでも先生は心のどこかで…ネイトが生きているのではないかと言うぼんやりとした確信があった。
今日あったばかり僅かに言葉を交わしただけだというのに…先生はネイトを信じていた。
《な、何を言って…!?》
先生らしくもない言葉にアロナはまるで先生の正気を問うかのような声を上げる。
すると、オープン回線ではなく先生にだけに届く回線で…
《先生、ホシノだよ。》
「どうかしたかい、ホシノ?」
ホシノが先生に通信を飛ばしてきた。
《…さっきの話、本当だよね?》
「うん、本当だよ。」
そんなホシノの問いかけに先生はすぐに答える。
《…分かったよ、先生。今だけは…貴方を信じる。》
少しの逡巡か、わずかな間を置きホシノはそう答えて通信を終えた。
「ごめん、アロナ。この話はここで終わりだよ。今は…ネイトさんから引き継いだ彼女たちを指揮しなければならない。」
そういい、精神統一するように少しの間目を閉じ、
「…総員、残存した通路を使い突入!アヤネ、移動中はアイツにロケット弾を!全員が渡り次第その場所を破壊するんだ!」
『了解!』
ケテル攻略作戦の続行を命じる。
モモイにホシノたちはわずかに残ったハイウェイの残骸を伝い一気にケテルに迫る。
その間、
「皆さんの邪魔はさせません!」
アヤネはロケット弾をケテルに向け連射。
無論、ケテルは自らと後方の支援機を守るために盾を構える。
だが、グレネード弾をはるかに凌ぐ威力と衝撃に後ずさりする。
「やっぱり!奴は防御重視だ!攻撃をしている間は奴は身動きが取れない!」
先のネイトの戦闘を分析、あのタイプは大火力の攻撃は優先して防御することは判明している。
その習性を利用すれば隙を作ることはできる。
そうこうしているうちにホシノたちは渡橋を完了。
「行きますよ、ホシノ先輩!」
《やっちゃって、アヤネちゃん!》
距離をとったことを確認し、アヤネはハイウェイの残骸をチェーンガンで破壊し完全に分断。
後方から迫りつつあったスイーパーはこれでほぼ無力化できたといってもいいだろう。
《モモイ、ミドリはチェーンソー型を!ホシノ、ノノミはハンマー型を!ユズ、シロコは二チームの支援と適宜曲射で後方の支援型を攻撃!》
「よぉし!ボロボロのアイツなんかすぐにぶっ壊しちゃうよ、ミドリ!」
「うん!あんなの一面のボスなんかよりずっと楽勝だよ!」
「うへ~、同じ盾を持つ者同士負けちゃいらんないねぇ!」
「大丈夫です!ホシノ先輩以上の盾の使い手なんていませんから!」
「ん…ユズ、私の弾を。ユズの方が撃つのが上手だから。」
「は、はい…!精一杯、頑張って、皆を、助けます…!」
すぐさま部隊を再編成、ケテル部隊へ再攻勢を仕掛ける。
チェーンソーケテルに飛び掛かるモモイとミドリ。
既に武装も上部構造物は半壊、あと一息といったところか。
「スクラップは解体だああああああ!」
まずはモモイが上部構造物に向け『ユニーク・アイディア』を掃射開始。
散弾爆撃によって損壊した部位に焼夷徹甲弾が突き刺さりどんどん内部構造を破壊していく。
それを防ごうと圧し折られたチェンソーを降り下ろそうとするケテルだが、
「部位破壊はゲームの基本だよ…!」
ミドリがチェンソー機関部に向け『フレッシュ・インスピレーション』を連続射撃。
パワーアーマーのストンプを食らい無事ではすんでいるはずもなく次々に弾丸は内部まで到達。
さらにミドリはこのタイミングで特殊弾頭を使用。
『トキシックブレット』、着弾の際に有毒物質を標的に叩きこみ中毒ダメージを与える弾丸だ。
その弾丸はむろん機械にも有効、内部機構が溶解しじわりじわりと蝕む。
さらに着弾か所から見るからに有害そうなガスが噴き出し、
「お姉ちゃん!」
「おっけぇい!」
ミドリの掛け声でモモイが同じ個所に向け焼夷徹甲弾を発射。
同じようにモモイの弾丸も外装を貫通、焼夷効果による炎の発生によってそのガスに引火。
グレネード弾ほどではないが爆発が発生。
ネイトによって痛めつけられたチェンソーにとっては…その爆発は致命傷だった。
耐久力の限界を超えとうとうアームからチェンソーが欠落する。
『いやったぁ!』
《ナイスだ、モモイにミドリ!シロコ、ドローンは出せる!?》
「ん…再装填完了。状態良好、行くよ。」
片方の武装が壊れ隙だらけになったケテルに対しシロコがドローンを飛ばし再びケテルの上部構造にむけミサイルを乱射。
「私の恩人を苦しめた罪…資材になって晴らして。」
叩きこまれるミサイルは爆発力を上げたHE弾。
散々痛めつけられたケテルにその爆撃を耐えれるだけの耐久力はなかった。
盾も支えきれずに押しつぶされるように地に伏せヘイローが崩れ落ちた。
一方、
(あいつ、ハンマーに異常をきたしている…?)
ホシノは敏感にハンマーケテルの異常を感じ取っていた。
先ほどネイトを弾き飛ばしてから…どうも動きがぎこちない。
例えるなら手が痺れて握力が失われた状態で必死にそれを掴んでいるような状態だ。
見ると関節部やサスペンションからオイルが噴出している。
「ッ!そうだ、Perk!」
そして、思い至った。
かつての近接戦闘訓練の折…
『いったぁ…!手が痺れちゃったよぉ…!』
ネイトに攻撃を仕掛けた自分の手がまるで正座の痺れを数倍にしたかのような状態に襲われたことがある。
『すまないな、Perk効果はON/OFFが効かないんだ。』
『何なのぉ?まるで電柱思い切り殴ったみたいなんだけどぉ?』
『『Rooted』って効果だ。確率で…。』
(そうだ、あの時『Rooted』が発動してたんだ!)
Perk『Rooted』、近接攻撃に対し自発的な『移動』状態でない場合に発動。
物理ダメージとエネルギーダメージの耐性上昇、素手・近接武器の威力上昇などの効果はかつて説明した。
だが、もう一つの効果が残されている。
それは…確率で近接攻撃を仕掛けてきた敵の武装を無力化させるというものだ。
土壇場の土壇場で…ネイトはこの置き土産を残していってくれたのだ。
「うへへへ…やっぱりネイトさん、貴方は最高です…!」
段取りは決まった。
「ノノミちゃん、奴のハンマーのシャフトに向かってぶっ放しちゃってぇ!」
「わっかりましたぁ!」
ホシノはノノミに射撃標的を指示、彼女も素早くそれに答えリトルマシンガンVを発射。
案の定、ハンマーを振るいたくても言うことを聞かないアームの操作に苦労しているようなケテルは対応ができずこの弾雨をまともに食らう。
それによりさらに損傷は拡大、アームの各所からオイルが霧状となって噴き出す。
「龍の吐息はくらったことないよねぇ!」
目論見通り、ホシノはチャンバーにその弾薬を装填しアームに向け発砲。
瞬間、Eye of Horusの銃口から炎が放たれる。
『ドラゴンブレス弾』、マグネシウムとアルミニウム混合のペレットを発砲の高温で着火し標的を焼き払う特殊弾である。
この組み合わせはテルミット反応を起こし燃焼温度は2000℃に達する。
いかに燃焼温度が通常の油類に比べ高い機械オイルとはいえそんなものを浴びせられてはそんなことは些細なことだ。
瞬く間にオイルに引火し火柱を噴き上げ、サスペンションや関節部が完全に使用不能となりハンマーが力なく路面に横たわった。
こうなってしまってはあのハンマーを完全なデッドウェイトとなりケテルの動きを完全に阻害。
前衛一機は破壊、もう一体も武装と機動力を喪失。
となれば…
《ユズ、支援機を!》
「これ以上…バフは…与えさせません…!」
その間隙を突きユズが後方で今まで身を隠していた支援機型ケテルに向けパルスグレネード弾を発砲。
ガードも間に合わずさえぎるものが無くなったグレネード弾はそのまま飛翔。
ネイトが作ってくれたサイトで定めた着弾地点は…支援機二機のちょうど間。
照準のままグレネード弾は落下し炸裂、支援機二機を巻き込むEMPを解き放ち飲み込んだ。
元より電子機器の塊の支援機型だ。
そこに内部機器を焼き切るほどの高濃度EMPが効かないわけがない。
今までの期待よりもより顕著に全身から火花を噴き上げ地面に倒れ伏した。
これによりハンマーケテルを強化していた信号も途絶。
明らかにその動きは鈍くなった。
「今までの借り…利子付けて返すよ。」
ホシノは駆ける。
その先は撃破されたチェンソーケテルの盾、それを一気に駆け上がり背面飛びでハンマーケテルの上部まで跳躍。
「ネイトさんの…仇だ…!」
チューブ内にあったパルススラグ弾をすべて連射。
薄い装甲によりEMPはより深部まで浸透しケテルの回路を焼き尽くす。
そして倒れ伏して…まだ終わらない。
「邪魔な外側、剥いじゃいましょうねぇ♪」
伏した先にいたノノミがスーパースレッジを降り下ろしケテルの外装を叩き壊し、
「私の大好きな人をぉ殴り飛ばした罰です♠」
その破壊箇所にリトルマシンガンVをねじ込み発砲。
M61徹甲弾がケテルの内部を跳ね回り蹂躙。
まるでもがく様に足をばたつかせたかと思うと力なくケテルは動かなくなりヘイローも粉々になった。
これで障害は完全にいなくなった。
「アヤネ!とどめだ!」
「了解しました!支援機を排除します!」
満を持して、支援機型ケテルに向け攻撃を仕掛けるアヤネ。
ヘルファイアミサイルが、ロケット弾が、機関砲弾が一斉に二機のケテルに襲い掛かる。
耐久力では最弱と言ってもいい支援機型ケテルに戦車部隊を容易く粉砕する猛攻を防ぐことはできずなすすべもなく爆散。
「よし、これで障害は排除できた!」
《アヤネちゃん、急いで降下して!今のうちにネイトさんのところへ!》
「分かりました、ホシノ先輩!」
ケテルは全機排除、スイーパーも現状分断しこちらには来れない。
チャンスは今しかない。
直ちにベルチバードを着陸させホシノたちを収容しようとする。
…だが、諦めないのは向こうも同じだった。
レーダーに現れる…無数の反応。
そして…こちらに迫るロボット兵に飛行ドローンにスイーパー。
さらに…ハイウェイを壊さんばかりの衝撃とともに降り立つケテル総勢10機。
ガトリング砲、キャノン砲、近接武装、支援機…今日戦ってきた機体が勢ぞろいだ。
迫りくる鉄の軍団を前に…
「ハハッ、どうしてもネイトさんのところに行かせるつもりはないってことね…。」
ホシノはそうつぶやいたかと思うと…
「上等…来るんだったら容赦しないよ…!」
スピードローダーで一気に弾薬を装填しロボット群団に対峙する。
「ん…これ以上邪魔するっていうなら全部壊していこう。」
シロコも、
「はい、みんなみんな…スクラップにしちゃいましょう♠」
ノノミも、
「うわぁ…これ帰ったら凄いゲームのネタにできそうだね。」
モモイも、
「うん。ひょっとしたら賞をとっちゃうかもね、お姉ちゃん。」
ミドリも、
「そんな、ゲームの、プログラミング、大変、そうだなぁ。」
ユズも、
「残弾は…まだ余裕があります。ミサイルとロケットは残り僅か…ですか。」
アヤネも。
誰一人としてこの状況に絶望せず前だけを向いている。
「…分かったよ、皆。最後まで…諦めずに行こう。」
そして、先生もしっかりと前を向く。
生徒たちが諦めていないのなら…自分が諦めるわけにはいかない。
全員の心が一つとなり迫るケテル達をにらみつける一同。
彼我の距離が50mを切った。
その時だ。
真紅が、閃緑が、白藍が…ロボット群団に襲い掛かった。
瞬く間に殲滅されていくロボット兵にドローンにスイーパー。
「…え?」
ホシノが呆けたような声を上げた。
この場の全員が呆然としていた。
ケテルでさえも状況を飲み込めず足を止めた。
そんなケテルに襲い掛かるのは…雷霆の一撃だった。
あれだけ頑丈だったケテルがその一撃で粉砕。
そして、
――――――――――――――――――ッッッ!!!!!
それはこの水没地帯一帯に轟き渡った。
まるで産声のように。
まるで鬨の声のように。
思わず耳を塞ぎながらそちらを見ると…それは聳え立っていた。
それは黒鋼の要塞だった。
それは水に浮く城塞であった。
それは…かつて『海戦の王者』と呼ばれた存在だった。
「せ、戦艦…!?」
先生はかつて本で読んだその艦種を呟く。
艦首に描かれた略号は…BB-59。
付けられた愛称は…Big Mamie。
その艦の名は…改サウスダコタ級戦艦3番艦『USSマサチューセッツ』。
やっと出せた…