Fallout archive   作:Rockjaw

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抱きしめることは本当に大きな効果をもたらすの。特に子どもたちにはね。
――――ウェールズ公妃ダイアナ


Two Seniors Across the World

《総員に告ぐ。こちら、戦艦『マサチューセッツ』。臨時艦長のネイトだ。これより、対地支援を開始する。》

 

戦艦と言う大きすぎる土産を引っ提げて再び戦場に降り立ったネイト。

 

先生の話を聞いていたが…改めて彼の声を聴けたことで…

 

「ネ、ネイトさん…!生きてた…!生きててくれたぁ…!」

 

「うわあああああ、よかった、よかったああああ…!」

 

ホシノやユズはネイトの生存に歓喜し再び涙を流し

 

「ん…とんでもないの作って戻ってきた…!」

 

「ネイトさん…貴方と言う人は…!」

 

シロコとアヤネも静かだが涙を流しネイトの生還を喜び、

 

「無事で…無事でよかったでずうううううう!」

 

ノノミに至っては大泣きしながら感情を爆発させていた。

 

一方、

 

「せ、戦艦って何!?あのでっかい船ネイトさんが作ったの!?」

 

「あの大きい奴が一撃で破壊なんてどんな兵器が…!?」

 

才羽姉妹はネイトの生還もだが突如として現れた戦艦のほうに注目していたのだった。

 

そして…

 

「ネイトさん…!ご無事で…何よりです…!」

 

いの一番で先生がネイトに無線をつなげる。

 

彼も安堵と重圧から解放され言葉が詰まる。

 

《すまなかったな、先生。今戻った。》

 

「いえ、皆…貴方の生還を信じていました…!」

 

《そうか。…ありがとう、皆を率いてくれて。》

 

「それで、貴方に一体何が…。」

 

その時だ。

 

ホシノ達など目もくれずキャノン砲型ケテルとガトリング砲型ケテルがマサチューセッツに向け発砲。

 

「ネイトさん、危な…!」

 

急いで警告を発する先生だが、

 

《あわてるな、先生。この艦の実力を見せよう。》

 

ネイトは冷静にそう返し、

 

《対空防御、開始!》

 

号令とともに再びマサチューセッツの搭載火器が火を噴いた。

 

放たれたミサイルや砲弾はL-CIWのレーザーと3インチプラズマ砲のプラズマの弾幕によってことごとく破壊。

 

「ほ、砲弾を撃墜してる!?」

 

「レーザーにビーム砲も搭載してるの!?」

 

「ん…なんて射撃精度…!」

 

ミサイルまでなら彼女たちも理解はできる。

 

だが、砲弾まで撃ち落とすその防空性能には舌を巻くしかなかった。

 

ガトリング砲弾に至っては…

 

「お返しだ、主砲連続撃ち方!薙ぎ払え!!!」

 

返す刀で放たれた主砲ガウスキャノンが飛翔の際に発生する衝撃波によって軌道を乱されマサチューセッツまで届くことはない。

 

そして飛来する主砲弾、装弾筒が無くなった関係で8インチになった砲弾だが…もはやその程度は誤差の範疇だ。

 

キャノン砲型もガトリング砲型もまるでティッシュの装甲かと言わんばかりに撃ち抜かれ爆散。

 

対戦車ミサイルを寄せ付けない盾を持つ近接型のケテルも盾を構えるが…ティッシュがダンボールになった程度の違いしかない。

 

盾も自慢のハンマーすらもことごとく撃ち抜かれ粉砕。

 

砲弾の勢いはその程度では収まらず飛翔し続け遠方の水面で超特大の水柱が上がった。

 

「あれだけ頑丈なシールドが一発で…!?」

 

「なんて威力の砲撃なんですかぁ…!?」

 

「い、今の水柱、ミレニアムの、どのビル、よりも高かったですよ…!?」

 

そして、残された支援機型はワイヤーを射出し逃亡を図る。

 

「逃がすな、撃ち落とせ!」

 

だが、そんな支援機型を襲ったのは光速のレーザーの雨だった。

 

ガトリングレーザーを凌ぐ出力を誇る2MW級レーザー砲の弾幕に耐えきれるはずもなく逃亡を図ったケテルは一瞬のうちに灰の山となった。

 

「す、すごい…!あのロボットたちが一方的に…!?」

 

圧倒的なマサチューセッツの戦いぶりに言葉を失うホシノ。

 

どれもこれも規格外の威力ばかり。

 

このキヴォトスであってもあれだけの威力を出せる兵器がどれだけあるか…。

 

《…脅威の消失を確認。警戒状態に移行する。》

 

ほんの一分ほどの出来事だった。

 

ハイウェイを埋め尽くさんばかりのロボット群団は全滅。

 

原型を保てているロボットのほうが少なく大半が粉々や灰の山がハイウェイを埋め尽くしている。

 

中には蛍光色の粘液になっている残骸すらある。

 

あれだけしつこかった後続は…今のところやってくる気配はない。

 

どうやら今のところはこれで打ち止めのようだ。

 

《アヤネ、後部甲板にヘリポートがある。そこで落ち合おう。》

 

周囲の安全を確認でき、

 

「ハイ!みんな一緒にすぐに向かいます!」

 

「さぁ皆!ネイトさんのところへ行こう!」

 

『ウン(ハイ)ッ!』

 

今度こそネイトの元へ向かうためにホシノたちはベルチバードに急いで乗り込みベルチバードは舞い上がるのであった。

 

こうして、ネイトはパワーアーマーを脱ぎ皆を出迎えるために後部甲板へ向かう際中、

 

「しかし…まさかこの世界でも…お前に乗れるとはな、『マサチューセッツ』…。」

 

サウスダコタ級戦艦の特徴ともいえるコンパクトな艦橋を見上げつつしみじみと語りかける。

 

世界を飛び越えネイトの前に姿を現した戦艦マサチューセッツ。

 

実はネイト、この船に乗るのは初めてではない。

 

マサチューセッツは退役後はマサチューセッツ州フォールリバーの『バトルシップ・コーヴ』で博物館船としてその余生を過ごしていた。

 

ネイトも子供のころ、何度も軍人だった父に連れて行ってもらったことを覚えている。

 

その頃で艦齢100歳を優に超えるお婆ちゃんだった。

 

ネイトが10歳になる少し前に改修のため姿を消してそれっきりだ。

 

活躍こそ軍人時代に新聞などで把握していたが…終末戦争後の動向はさっぱりだった。

 

そんな思い出の戦艦が…今ここに蘇った。

 

「…400年と少し…。眠っているところを起こしてすまなかったな。」

 

どちらも歳を取り過ぎた。

 

そして何の因果か…世界を飛び越え再び第一線へ躍り出ることになった。

 

かつての彼女と同一と言うわけではないが…感慨はとても深い。

 

「だが、もう一働き…お互いに頑張ろう。よろしくな、Big Mamie。」

 

艦橋基部を軽く数回たたき、後部甲板へ向かうネイト。

 

そんな郷愁に浸りながらゆっくり歩き後部甲板に着くころにはちょうどベルチバードもマサチューセッツ上空に到着していた。

 

《こちら一天号、後部甲板に着艦の許可を願います。オーバー。》

 

「こちらマサチューセッツ、着艦を許可する。オーバー。」

 

《一天号、了解。これより着艦…。》

 

そこまですることではないが形式通りのやり取りを交わし徐々に高度を落とすベルチバード。

 

そして高度が5mを切ったその時だった。

 

《ちょ、ホシノ先輩!?待って…!?》

 

無線であわてたアヤネの声が聞こえてきたかと思うと…ホシノが手を広げベルチバードからネイト目掛け飛び降りてきた。

 

「ちょお!?ホシノ!?」

 

これにはネイトも驚きつつも腰を落とし同じように手を広げ片膝をついたもののしっかりと抱きとめた。

 

「ゲホゴホッ…!あ、危ないだろ、ホシ…!」

 

それでもかなりの衝撃だったためせき込みつつ彼女らしくない危険な行為を注意しようとすると…

 

「ひぐっ…えぐっ…!」

 

「…ホシノ?」

 

ホシノはネイトの胸に顔をうずめたまま嗚咽し、

 

「よ、よがっだぁ…!ネ゛イ゛ドざん゛…生゛ぎででよがっだぁぁぁ…!」

 

ネイトが今ここに立ち生きている、そのことをただただ泣きじゃくりながら全身で感じていた。

 

キヴォトス人でも確実に死んでいるような一撃を受けたのだ。

 

こうしてただの人であるネイトが生きていることは奇跡に等しい。

 

例え先生がネイトの生存を伝えようとも…こうして抱きしめて彼を感じなければ安心できなかった。

 

ユメという大切な人の死を目の当たりにしているホシノの焦燥は筆舌に尽くしがたかっただろう。

 

その身を包む孤独の恐怖はどんな敵より恐ろしかっただろう。

 

何をおいてでもネイトのもとに駆け付けたかっただろう。

 

それでも彼女は踏みとどまった。

 

彼女は…アビドス廃校対策委員会委員長でW.G.T.C.部隊副総代だ。

 

ネイトが不在の間…部隊を引っ張る義務がある。

 

彼に託された使命を投げ出すことはできない。

 

後輩たちや彼の友人を見捨てることはできない。

 

だから、最後まで戦えた。

 

…それももう限界だった。

 

「ネ゛イ゛ドざぁぁぁぁん…!ウエエエエエエ・・・ン!」

 

今はもうその肩書は関係ない。

 

今ここにいるのは『小鳥遊ホシノ』と言う小さな少女だ。

 

のんびり屋だが頑張り屋で寂しん坊で甘えん坊の一人の普通の少女だ。

 

「…一人にさせてしまってごめんな、ホシノ。背中にヘイローが出てきたが…俺はもう大丈夫だ。」

 

そんな泣きじゃくるホシノを安心させるためにネイトは背中を優しく摩りながら優しく抱きしめる。

 

(まるで…出会ったときみたいだな。)

 

キヴォトスに来た初日のころのことを思い出しているとベルチバードが着艦。

 

…した瞬間、

 

『ネ゛イ゛ドざぁぁぁぁん!』

 

「ちょおッ!?ノノミにユズ!?」

 

これまた泣きじゃくりながらノノミとユズが飛び降りネイトに飛び掛かる勢いで抱き着いてきた。

 

咄嗟に左手をフリーにして受け止めると…

 

「よがっだでずううううう!ネ゛イ゛ドざんにまだ会えでよがっだでずうううう!」

 

ノノミはネイトをホシノごと抱きしめ涙とともに再会の喜びを爆発させ、

 

「ごめんなさいッ!ごめんなさいッ!私のせいでッ、痛い思いッ、させてっ、しまって、ごめんなさいッ!」

 

ユズは右腕に縋りつきながら自分のせいでネイトが犠牲になったことに許しを請い続ける。

 

「…心配かけたな、ノノミ。俺も帰って来れて嬉しいよ。ユズも俺がやりたかったからやったんだ。謝らないでくれ。」

 

そんな二人にもまた、ネイトはノノミの頭をなでユズもホシノとともに抱き寄せ自分の健在と行動の真意を伝える。

 

そんな泣きじゃくる三人の相手をしていると、

 

「ん…ネイトさん。無事でよかった。」

 

いつの間にか近くに寄っていたシロコが声をかける。

 

「シロコ、そっちは大丈夫だったか?」

 

「先生が指揮してくれてたから大丈夫。それにネイトさんが弱らせていたおかげで私たちだけでもアイツら倒せたよ。」

 

「そうか。シロコ、よく頑張ったな。」

 

「ん…だから私もご褒美が欲しい。」

 

「え?」

 

そういうや否やシロコはネイトの背中に回り込み抱き着いてきた。

 

「し、シロコ?」

 

「ん…ネイトさんの温かさと匂い…。良かった、ネイトさんは…ちゃんとここにいる…。」

 

そういい、ネイトの存在をしっかりと確かめるように顔を背中に押し付けるシロコ。

 

見ると…微かに肩が震えていた。

 

彼女も自分のことを心から案じてくれていたことがそれだけで伝わってくる。

 

「…俺がいない間、本当に頑張ったんだな。偉いぞ、シロコ。」

 

「うん…うん…ッ!」

 

あいにく手が回らないが優しくシロコを誉めると抱き着いた腕に力がこもる。

 

そして…

 

「ネイトさん!この船凄いね!どうやって作ったの!?」

 

「こんな大きい大砲なんか見たことないですよ!」

 

初めて乗る戦艦に興奮しっぱなしのモモイとミドリ。

 

やはりオタク、このロマンあふれる戦艦に興味津々のようだ。

 

…だが、ネイトにはすぐわかった。

 

「…モモイ、ミドリ。我慢してないで二人も来い。そんな風に仮面かぶらなくていいんだぞ?」

 

既に4人に抱きしめられながらも二人にそう呼びかけるネイト。

 

すると…今まで元気一杯の笑顔だった二人の表情が崩れ目から一気に涙があふれ…

 

『ネイトさああああああん!!!』

 

その小さな体を活かしネイトの両肩に取りつき…

 

「よかったです!生きてて…生きててくれて本当によかったですっ!」

 

「いなくなっちゃやだよ、ネイトさん!もっと一緒に遊んだり冒険したいのに!」

 

『友達なのにいなくならないでよ(下さい)ッ!』

 

ネイトの今日教わった『友の大切さ』と『友を失う』ことの恐怖。

 

その恐怖をこの二人はネイトが吹き飛ばされたとき心底思い知った。

 

だが、ネイトは…友達は今こうしてここに帰ってきた。

 

限界だった。

 

特にモモイは『妹』であるミドリのため一層気を張っていた。

 

それが一気に決壊したのであった。

 

「そうだな、ごめんな。友達なのに急にいなくなるようなことしてしまって…。」

 

友の大切さを教えたというのにその恐怖を真っ先に味合わせてしまったことに謝罪するネイトだが、

 

「いいの、そんなのっもういいの!謝らないでよ、ネイトさん!」

 

「だって…ネイトさんはちゃんと帰ってきてくれたからもういいんです!」

 

謝らないでほしいと二人から返される。

 

そこへ、

 

「そうですよ、ネイトさん。こうしてまた戻ってきてくれたんですから…謝るのは違いますよ?」

 

ベルチバードのエンジンを止めアヤネもやってきた。

 

先生からの情報で生存は把握できていたので冷静だが…その目には涙がうっすら浮かんでいる。

 

「アヤネ…皆を支援してくれてありがとう。」

 

「ハイ、それが私の任務ですから。それで…ネイトさん、皆に言うべき言葉を忘れていますよ?」

 

再会のあいさつもそこそこにアヤネはネイトにその言葉を催促する。

 

ならば、ネイトが返す返事はただ一つだ。

 

「…そうだな。じゃあ…ただいま、皆。」

 

6人の生徒に抱きしめられながらネイトはそう声をかけた。

 

そのネイトの言葉に、

 

『お帰りなさい、ネイトさん!』

 

ホシノ達は涙を浮かべた笑顔でネイトの帰りを迎えるのであった。

 

「…。」

 

そんな光景を先生は少し離れた場所から眺めていた。

 

(本当に…愛されているんだなぁ、ネイトさんは…。)

 

ホシノ達や今日あったモモイ達にさえ深く思われる彼を見て、

 

(…彼女たちの日々を守っていけるようにもっと精進しなきゃな。)

 

より一層自らを高める決意と…

 

(そして…ネイトさんのように…私も頼られる大人にならないと…。)

 

心から慕われ愛されているネイトという目指すべきその姿を胸に刻むのであった。

 

一方、彼に抱えられたシッテムの箱越しに今のネイトの姿を目の当たりにしたアロナは…

 

(そんな…!あのヘイローは…!)

 

ネイトがその背に背負うヘイローの形状に驚愕していた。

 

(ありえない…?!なぜ…なぜあの力がここに…!?)

 

あのヘイローの意味を知る者は今や限られた者のみだ。

 

もはや、おとぎ話や伝説の類と言ってもいいだろう。

 

(どうして…貴方が…神秘も何もない貴方が…その力を託されたのですか…!?)

 

誰も答えることのない問いかけを自問し続けるアロナであった。

 

―――――――――――――

 

―――――――――

 

―――

 

しばらく後、ようやくホシノたちも落ち着きネイトから離れたタイミングで…

 

「でも…ネイトさん。本当に大丈夫なの?」

 

いまさらながらホシノは改めてネイトに問う。

 

無理もない。

 

ネイトは自分たちの頭に頂いているものとは比較にならないほど巨大なヘイローを背負っている。

 

「いや、これと言って体に変化はないな。」

 

一方。当のネイトにそれ以外にこれと言った変化は見られない。

 

キヴォトス人並みに頑丈になったか?というわけでもない。

 

力も全く変わった感じはない。

 

「ん…つまりただヘイローが出てきたというだけ?」

 

「そういうことになるな。クラフト能力がとんでもなく強化された以外は元のままだ。」

 

「いやいやいや…こんなでっかい船を一瞬で作るなんて聞いたこともないよ?」

 

こともなげに言ってのけたネイトにモモイがツッコむが確かにこれだけでも破格と言う以外ない能力だ。

 

「Pip-Boyに何か変わったこととかはありましたかぁ?」

 

「ちょっと確認してみるから待ってくれ。」

 

ノノミの提案を受けPip-Boyを確認してみると…

 

「…あれ、減ってる。」

 

「減ってるって何がですか?」

 

「ほらここ、EMVって数値だ。」

 

見てみるとあれだけ減る様子がなかったEMVの数値が37%まで減少していた。

 

「なんですか、この値?」

 

「あのデカブツの攻撃を受けるたびに蓄積しててな。多分ハンマーを受けた時に100%に到達したはずなんだが…。」

 

「…って、まさかたびたびあのロボットの攻撃を受けたたびに片膝ついてたのって…。」

 

「…どうも神秘の攻撃はパワーアーマーでは防げないみたいでな。それで度々ダメージを食らってたんだ。」

 

サラッととんでもないカミングアウトに全員顔が蒼くなる。

 

「そ、そんな…!大丈夫なんですか…ッ?」

 

「治療してるから平気だ、アヤネ。で、その数値が何やっても減らなかったんだがそれが減ってるんだ。」

 

そんな風にアヤネをなだめ全員の顔色を戻しつつ減少した理由を考えていると…

 

「…あ、あの、ひょっとして、ですけど。」

 

「何か思いついたか、ユズ?」

 

「げ、ゲームみたいな、例えで、分かりにくい、かもですけど…それって『MP』、みたいなもの、なんじゃ…。」

 

『………あぁ~。』

 

ユズのその説明に少し間を置き腑に落ちたような声を上げる一同。

 

ならば、納得できることも多い。

 

100%に到達するまではこのヘイローが展開せずこんな効果を発動はできない。

 

そして100%に到達すると受けたヘイローが展開、神秘を消費し『マサチューセッツ』を建造したから数値が減った…と。

 

まさにユズの言う『MP』と言うたとえがぴったりではないか。

 

「…あの、ネイトさん。」

 

「ん?どうかしたか、先生?」

 

「ひょっとして…神秘使い切ったらこの戦艦が消滅する…なんてことないですよね?」

 

と、そんな何気ない質問を先生がした。

 

再びホシノたちが蒼くなり今すぐにでもベルチバードに飛び乗れるように身構える。

 

すると、

 

「その心配は無用だよ、お嬢ちゃん達。」

 

突如として機械音声の声を掛けられ一斉に振り返るとそこにいたのは…

 

「この艦は既に存在が確立されている。例え、艦長の力が消失してもこの艦は浮かび続ける。」

 

「あ、貴方は?」

 

「自分は本艦にてレーダー技師を務めるMr.ガッツィーであります。」

 

ボディカラーがマリンブルーのMr.ガッツィーがそこにいた。

 

ご丁寧に米海軍の制帽をかぶっている。

 

どうやら『マサチューセッツ』クラフト時に一緒にクラフトしていたようだ。

 

「臨時艦長、お迎えに上がりました。至急CICへ出頭を願います。」

 

何やらネイトに用があって呼びに来たようである。

 

「す、すっごーい!ロボットの水兵さんだ!しかも浮いてる!」

 

「ミレニアムでもこんなに流暢に話すロボットいませんよ!?」

 

「い、いい…!この、レトロな、感じのフォルム、堪らなくいい…!」

 

「ハハッ。ありがとう、お嬢ちゃん達。」

 

初めて見るロボット、しかもなんともレトロな雰囲気を醸し出すMr.ガッツィーに大興奮のゲーム開発部。

 

Mr.ガッツィーもまんざらではないようだ。

 

「ネイトさん、ホントにロボットが船員さんをやってたんだね。」

 

「省人化と乗員教育コストの削減の一環だ。むろんこれだけデカい艦艇だと人の手はそこそこあったがな。」

 

軍においていつの時代ももっともコストがかかるのが人材の育成だ。

 

専門知識の塊の艦艇勤務の人員ともなればそのコストは破格である。

 

なので、『USSコンスティテューション』の例の通りネイトの時代の海軍はこのように積極的にロボットの船員を動員していたのであった。

 

「さて、艦長。そろそろ向かいましょう。少々話しておかなければならない問題もありますので。」

 

「分かった。みんなも一緒でいいか?」

 

「もちろん、艦長の同胞であるなら既に我が艦の乗員であります。」

 

と言うわけで一行はMr.ガッツィーの案内の元マサチューセッツの頭脳ともいえるCICへと赴いた。

 

軍艦特有の急な階段を降り厳重に守られた扉を超えると…

 

「艦長、入られます!」

 

『お待ちしておりました、艦長!』

 

薄暗い室内でレーダーや周辺地形を表示した無数のディスプレイが輝きそこで勤務する十数体のMr.ガッツィーがネイトに向け海軍式の敬礼をとった。

 

「…陸軍式で申し訳ない。よろしく頼む。」

 

ネイトもそんな彼らに敬礼をもって返す。

 

「うわぁ…こんなとこ初めてです…!」

 

「ん…でもなんだかワクワクする…!」

 

「帰ったらセリカちゃんにも教えてあげないとですね♪」

 

「うへ~…おじさんにはハイテクすぎて何が何やら…。」

 

続けて入ってきたホシノたちは初めて見るCICの内装に圧倒される。

 

それでも興奮を隠せていないが…

 

「わぁー!なにこれ何これ!ゲームの中に入っちゃったみたい!」

 

「『ヴェリタス』の部室よりもずっとすごい!これが船の中なんて信じらんない!」

 

「い、いい…!このハイテク、だけど、レトロを感じるの、とても、いい…!」

 

モモイ達ゲーム開発部はレトロフューチャーの顕現とでも言わんばかりのCICの内装に興奮しっぱなしだ。

 

「三人とも、興奮するのはいいけど走り回っちゃだめだよ?」

 

『ハーイ!』

 

と、モモイ達を落ち着かせる本当に引率に来たかのような先生だが…

 

「…でも、これはテンションが上がるのが分かるなぁ…!」

 

やはり先生も男の子の血が騒ぐのか少々テンションが上がっている。

 

そして、伝えられた内容と言うのが…

 

『射撃管制システムと防空システムが使えない?!』

 

非常に拙い事態だということだった。

 

「ど、どうしてですか?現にさっきは…!」

 

「言葉足らずでした。正確には艦長不在ではこの艦は『不完全』なのです。」

 

「ん…つまり、ネイトさんの神秘のおかげでさっきは攻撃できたということ?」

 

「そういうことになります。」

 

さすがはネイトが作った船、と言ったところか。

 

ネイトが自由に動かせるのはいいがはっきり言って使い手を選ぶ兵器はナンセンスだ。

 

「じゃあ、ネイトさんが乗ったまま指揮すれば…。」

 

と、モモイがごくごく普通に取れる案を出すも、

 

「モモイ、俺の神秘は上限付きだ。もし尽きた時、『マサチューセッツ』はただの浮船になるぞ。」

 

「そういえばEMVって今どうなってます、ネイトさん?」

 

「…36%強ってところだ。時間経過でも徐々に減っていくみたいだな。」

 

上限のあるネイトの神秘が原動力の現状、余り得策とは言えない。

 

「どうしてそういうことになったんですかぁ?」

 

「何分、急ごしらえで生み出された船です。システムのバグや抜けが多く…。」

 

「じゃあそれを直せばいいんじゃないの?」

 

エンジニアならここにいると言わんばかりにネイトを見るホシノだが…

 

「…すまないな、ホシノ。さすがに世界最高のシステムをどうこうできる知識は俺には…。」

 

今回ばかりは相手が悪すぎる。

 

何せ、相手はアメリカ最高の頭脳を持つMr,ハウス。

 

ネイトもそこそこのシステム構築の知識があるとはいえ到底かなう相手ではない。

 

「あ、じゃあ私のシッテムの箱で…。」

 

ならば、先生が自らが持つハイテクデバイスでの修正を提案するも、

 

「規格が違いすぎる上、未登録の外部端末の操作は受け付けません。」

 

『マサチューセッツ』は米軍最高の軍事兵器だ。

 

当然、情報流出防止の対策は念入りにされている。

 

「と言うことは…ネイトさんの神秘が尽きる前に…。」

 

「この場でシステムを再構築する必要があるってことですねぇ…。」

 

「そういうことになります。」

 

「…君達は再構築はできるか?」

 

「可能な限り復旧に努めますが…。」

 

「俺も手伝う。神秘が尽きる前に…。」

 

ここで話し合っていても事態は好転しない。

 

早速システム復旧に取り掛かろうとした時…

 

「あ、あの…!」

 

「どうかしたの、ユズちゃん?」

 

「し、システムの中身、見れますか?」

 

ユズがおずおずと手を上げシステムの開示を求める。

 

「…。」

 

「見せてやってくれ。」

 

「了解しました。では嬢ちゃん、そこの席についてくれ。」

 

目くばせでネイトの許可をとりMr.ガッツィーはユズを席に座らせそこのディスプレイにシステムの内容を表示する。

 

「…………………うん、これなら。」

 

ユズは一通りシステムの現状を確かめたかと思うと…

 

「操作は、このキーボードで、できますか?」

 

「そうだよ。」

 

「じゃあ…。」

 

Mr.ガッツィーに操作を尋ねたかと思うと…

 

「…ッ!」

 

『…え?』

 

表情がゲームをプレイ時の鋭いものに変わり恐ろしい速度でキーボードをたたき始める。

 

すると、

 

「レ、レーダー長!システムの再構築とバグ取りが進んでます!」

 

「なんだと!?」

 

他のディスプレイで確認するとどんどんシステムが通常のものに…いやさらに強化されたものに書き換わりつつあった。

 

「え、ユズ…!?」

 

「ど、どうしてそんなことが…!?」

 

あまりの豹変ぶりとやっていることにネイトはもちろん、アビドス組の面々や先生は唖然とする。

 

だが、

 

「フッフ~ん!これが我がゲーム開発部部長兼プログラミング担当の実力だよ!」

 

「多分、『世界最高のシステム』ってネイトさんが言っちゃったから火が付いちゃってますね。」

 

ゲーム開発部の同胞たるモモイにミドリは当然と言わんばかりの反応だ。

 

そう、ユズはハイエンドゲーマーだけでなく凄腕のプログラマーでもある。

 

かつてはゲームを一人で作った経験もある。

 

まぁ、超絶ゲーマーの彼女基準で作ってしまったので…

 

閑話休題。

 

さて、そんなハイエンドゲーマーのユズ。

 

つまるところ、彼女はとんでもない負けず嫌いだ。

 

そんな彼女の前に『世界最高のシステム』が出てくるとどうなるか?

 

答えは簡単、対抗意識むき出し『UZQueen』モードとなってその解析と修復、改良を始めるのであった。

 

しかも抜けだらけとはいえ今回はすでにモデルタイプが存在している。

 

1から作るより修正、改良はやりやすいのだ。

 

「…ユズ、いけるか?」

 

ネイトの質問に、

 

「ハイ、時間は、いただきますけど、できる、と思います。締め切りは、どれくらいですか?」

 

ユズは顔を上げずに答え制限時間を尋ねる。

 

EMVの減り具合、敵の妨害を計算し…

 

「…10時間、明日の朝5時がリミットだと考えてくれ。」

 

制限時間を伝えると…

 

「分かり、ました。間に合わせ、ます。」

 

より一層、キーボードをたたく勢いが増しながらそう答えるユズ。

 

「…頼んだ、ユズにすべて任せる。レーダー技師くん、彼女のサポートを頼む。」

 

「了解しました。我々が全力で彼女をサポートいたします。」

 

想定外だが…これで反抗への準備が取れるようになった。

 

「よろしく頼む。さて…俺達もできることをやろう。」

 

『了解!』

 

ネイトと残りのメンバーはCICを後にし各々が最終作戦への準備に向かう。

 

作戦開始まで…あと11時間50分。




『勝つ意欲』は大して重要ではない。そんなものは誰でも持っているからだ。重要なのは『勝つために準備する意欲』である。
――――インディアナ大学バスケットコーチ ロバート・モンゴメリー・ナイト
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