Fallout archive   作:Rockjaw

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何かを学ぶのに、自分自身で経験する以上に良い方法はない。
――――理論物理学者 アルベルト・アインシュタイン



ブルアカ本編にとんでもないスケバン出てきちゃったなぁ…


Resurrection Battleship

戦艦『マサチューセッツ』の頭脳は現在ユズによって再建されつつある。

 

だが…まだこのBig Mamieははっきり言ってネイトがいなければ目を閉じ寝ぼけているような状態だ。

 

なので…それ以外を叩き起こす必要がある。

 

CICを出た一行は艦橋後部のドアを開け中に入る。

 

「ネイトさぁん、暗いよぉ?」

 

「多分非常電源しか来ていないんでしょう。」

 

中は足元をわずかに赤く照らす非常灯しか付いておらず非常に暗い。

 

なので…

 

「待ってろ、今明るくする。」

 

ネイトはその手にフュージョン・コアを一個取り出す。

 

それを入り口近くの壁にあった挿入口に差込み…

 

「さぁ、マサチューセッツ…300年ぶりの目覚ましだぞ。」

 

脇にあったレバーを勢い良く押し上げる。

 

瞬間、バンッ!バンッ!バンッ!という通電音とともに通路の奥側から白熱電球が点灯。

 

計器、配管、運搬用レールなどが張り巡らされたマサチューセッツの通路があらわになる。

 

「よし、寝ぼけ眼だがようやく起きたな。」

 

一先ず最低限の電力が復旧したことに満足げなネイトだが、

 

「うへ~…なんて大スペクタクル…!」

 

「ん…こんなすごいの見たことない…!」

 

「まるで…怪獣の体内みたいです…!」

 

「本当に…生きてるみたいですねぇ…!」

 

「ミドリミドリッ!絶対これ次のゲームのネタにしよ!」

 

「うん!こんな特ダネ見過ごせるわけないよ、お姉ちゃん!」

 

「昔見たアニメでもこんな大迫力シーンはめったになかったなぁ…!」

 

CICに続き、戦艦が目を覚ます様に言葉を失ったり大興奮のホシノやミドリに先生たち。

 

「まだ驚くのは早いぞ。それぞれマークしてる場所に向かってくれ。」

 

そういい、ネイトは用意しておいたマサチューセッツの地図を全員に渡す。

 

「船員のMr.ガッツィーはいるが人手はいくらでも欲しい。…この寝坊助の目を完全に覚まさせるぞ、皆。」

 

――――――――――――――

 

―――――――

 

―――

 

「し、失礼します!」

 

「よぉ、お嬢ちゃん。操舵室へようこそ。」

 

アヤネが向かったのは艦橋中腹にあるマサチューセッツの操舵室。

 

ここで何をするかと言うと…

 

「艦長から聞いてる。腕利きのマルチパイロットなんだって?」

 

「で、でも船…それも戦艦の操艦なんて未経験で…!」

 

「大丈夫、それを今からみっちり叩きこんでやるから。」

 

そう、船の操縦である。

 

現在、主要システムがオフラインになっているマサチューセッツ。

 

しかも、未だに機関は眠ったまま。

 

この状態では有事の際はネイトの神秘を消費し対応することとなる。

 

そうなるとユズのシステム再構築のタイムリミットが減少することとなる。

 

それを防ぐため…システムに頼らない『マニュアル』での操作と襲撃への対応をとらなければならない。

 

そこで『操艦』担当として送り込まれたのがアビドスが誇る操縦手のアヤネだ。

 

いきなりの大型船、それも戦艦の操艦など冗談かと言いたくなるが…

 

「旋回半径がかなり大きいですね…。」

 

「そうだ。コイツはエンジンの馬鹿力で無理やり動かしているから舵の切れが少し悪い。」

 

「と言うことはそれを見越して機関モーターの速度を…。」

 

各速度における旋回半径の変化の早見表を見比べながらタブレットにデータを打ち込み操艦方法をどんどん理解していく。

 

「…やるじゃないか、お嬢ちゃん。新任の海兵よりよっぽど飲み込みがいいぞ。」

 

その飲み込みの速さに操舵担当のMr.ガッツィーも舌を巻いている。

 

「え、えへへ…こういうのだけは得意なんです、私。」

 

「いやぁ、たいしたもんだ。教え甲斐があるってもんよ。じゃあ次は機関の出力の…。」

 

と、順調にマサチューセッツの操艦技術を飲み込んでいくアヤネだが他の生徒たちも絶賛各所で活動中だ。

 

「うわぁ…計器がいっぱい…!」

 

「ここが火器管制室ですか…!」

 

「CICとはまた違いますけどここも迫力満点ですねぇ…!」

 

ノノミに連れられたモモイとミドリが訪れたのは火器管制室。

 

CICは存在するが有事の際はここでマニュアルでの艦砲、対空射撃ができるよう改装時から残されているのだ。

 

「あら、なんとも可愛いお客さん達だこと。」

 

「うわッ!また新しいロボット!」

 

「アサルトロンっていうロボットですよ、モモイちゃん。」

 

「いらっしゃい、お茶は出せないけどよろしくね。」

 

「は、はい、よろしくお願いします!」

 

中にはMr,ガッツィーのほかにアサルトロンが射撃装置の点検を行っていた。

 

「どんな武器使っているかは艦長から教えられてるわ。まずはモモイちゃんって子はだぁれ?」

 

ここにこの三人が派遣された理由は各人の武器の特徴に合わせた射撃管制を行うためである。

 

現状、火器管制システムがオフラインなので人の手による発射が必要。

 

そこで使う銃器に特色あるこの三人が選ばれシステム復旧までマサチューセッツの火器管制を行うことになったのだ。

 

「はいはいはーい!私は何を撃たせてもらえるの!?」

 

「フフッ、元気一杯ね。アナタはレーザーとプラズマ砲とガウスキャノンを任せるわ。給弾や冷却が必要な火器だから撃ち過ぎには注意してね。」

 

「任せて!あのおっきなロボットも撃ち抜いちゃうから!」

 

モモイには両用砲ポジションでもある2MW級レーザー砲にプラズマ砲と1インチガウスキャノン担当。

 

若干、トリガーハッピーの気はあるが複数種の火器を担当させローテーションで対応することに。

 

「ノノミちゃん…はアナタね?ミニガンを使っているんでしょう?」

 

「はい、ネイトさんのもとでマシンガンナーのリーダーをやらせてもらっています~。」

 

「パワフルな子は好きよぉ。じゃあ、ミニガンよりもすっごいL-CIWSをお任せするわ。飛んでくる奴らどんどん落としちゃって。」

 

「分かりましたぁ!この艦には傷一つつけさせませんよぉ!」

 

普段からミニガンを扱うノノミには挙動が近い近接防空用のL-CIWSを任せられる。

 

精度もぴか一なのでミニガンの扱いに秀でたノノミなら十二分に活用できるだろう。

 

そして…

 

「そしてミドリちゃん。アナタは狙撃手らしいわね?」

 

「はっはい!狙って撃つのはお姉ちゃんより得意です!」

 

この三人の中でも精密射撃に秀でたミドリには…

 

「そう、頼もしいわね。じゃあ…世界最強の『銃』を撃つ準備はいい?」

 

「そ、それって…!」

 

「ミドリちゃん、アナタにはこのマサチューセッツの主砲の砲手をお願いしたいわ。」

 

連邦世界そしてキヴォトスにおいても『最強』と称するに値する『銃』たる『80口径10インチガウスキャノン』の射手と言う大抜擢だ。

 

「えぇ―!?いいなーッ、ミドリ!」

 

モモイは何とも羨ましそうに大声を上げるが、

 

「そ、そんな大事な役目が私なんかでいいんですか…!?」

 

非常に重要な役目を任され困惑するミドリだが、

 

「艦長のご指名よ。」

 

「ネ、ネイトさんからの…ですか?」

 

これがネイトの意志だということを伝えられ目から迷いが薄まり、

 

「私から言えるのは艦長は決してできないことを他人に任せたりしないわ。」

 

「ネイトさんが…私に…。」

 

「今日会ったあなたを信頼しているのよ。女は度胸よ、ドンと胸を張ってやって見なさいな。」

 

「…はい、やります!いえ、私に砲手をやらせてください!」

 

アサルトロンからのエールも手伝い、その迷いも消え去った。

 

「それから三人とも、こうも託けされてもいるわ。『最高の武器を三人に預ける。最高の働きを期待する』とね。さ、ちゃっちゃとパーティの準備を始めましょうか、お嬢さんがた。」

 

『了解!』

 

こうして火器管制室の面々も気合を入れ各々の役割を全うしようと意気込む。

 

一方、ホシノとシロコの二人はと言うと…

 

「ホシノの嬢ちゃん、第一リアクターはどうだい。」

 

「全燃料棒に異常はないよ~。いつでも起動できるみたい。」

 

「了解。第二リアクターはどうだ、シロコ嬢ちゃん。」

 

「ん…こっちも異常なし。いつでも動かせるよ。」

 

マサチューセッツの心臓部、機関室でそこにいる機関士のガッツィー達とともに機関の最終点検を行っていた。

 

最重要区画たるここは舷側装甲だけでなく700㎜複合装甲で守られた艦内でも最も頑強な場所。

 

そこに鎮座するは六角形で構成された球形の物体。

 

これこそ、マサチューセッツの力の源『5GW級常温核融合炉』である。

 

これ一基で大都市を優に賄えるだけの発電量を有する。

 

それが二基、これによりマサチューセッツは理外の威力ともいうべき搭載火器すべてを全力で運用できるのだ。

 

「よし、二人ともこっちに来なさい。」

 

機関士長のガッツィーは異常はないがそれでも安全のため二人をこちら側に呼び寄せ、

 

「良いか、これで耳を塞いでろよ。」

 

聴覚を保護するためにイヤーマフを差し出すも、

 

「こんなすごいのが起動しようとしてるのに聞かないと損でしょ?」

 

「ん…私も聞いてみたい。この船が目覚める音を。」

 

ホシノもシロコもそれを断りどこか楽しそうに起動を待っている。

 

「…フフッ、物好きな嬢ちゃんたちだ。腰抜かすなよ?」

 

ガッツィーも浅く笑い、イヤーマフを引っ込め…

 

「目覚めろ、『海軍の役馬』!仕事の時間だ!!!」

 

勢いよくリアクターの起動スイッチを押し込んだ。

 

瞬間、腹の底に響くような重低音のあとまるでジェットエンジンのような甲高い駆動音が機関室に鳴り響く。

 

「ハハッ!また走れるってご機嫌に嘶いてるぞ!」

 

「ん…ホントに喜んでいるみたい…!」

 

「うん、生きてるうちにこんな不思議なのなんかい聴けるか…!」

 

その科学が織りなす鼓動に静かに興奮する二人。

 

が、

 

「機関士長、電力は安定しています!」

 

「あぁ、我が愛しのBig Mamieが機関士の私に愛をささやいている!」

 

「世界を飛び越えてまたこの声を聴けるとは…光栄です!」

 

『万歳!艦長、万歳!マサチューセッツ、万歳!我が海軍、万歳!!!』

 

その背後でホシノたち以上の大興奮を見せる機関士のガッツィー達。

 

三本のアームを目一杯上げて拍手や万歳をしている。

 

「…いや~オートマタなんか目じゃない位個性が強いロボットたちだねぇ。」

 

「ん…でもいい人たち。私たちにも整備のやり方教えてくれた。」

 

「腕は保証するから大目に見てやってくれ。」

 

そんな彼らに二人と一機は若干引きながらも…

 

「ともかく、これでマサチューセッツは艦長無しでも動くようになった。ブリッジに知らせるとしよう。」

 

機関士長のガッツィーは壁にある艦内電話を手に取り、

 

「機関室よりブリッジ、リアクター全機起動!いつでも走り出せるぞ!」

 

準備完了の連絡を入れる。

 

そして、のこるネイトと先生は…

 

「航行可能時間はどれくらいだ?」

 

「兵装全力稼働でも50年は動き続けられます。」

 

「弾薬は十分か?」

 

「北京を5回瓦礫の山にできるくらいたっぷりと。」

 

「よし、機関も生き返った。すぐに出発だ。」

 

「Aye,Sir!」

 

マサチューセッツの状態をガッツィーに尋ねつつ艦内巡回していた。

 

電力の復旧も先ほど確認、神秘の時間経過消費もだいぶ緩慢になった。

 

と、その背後では…

 

「はぁ…はぁ…はぁ…。」

 

「…先生、大丈夫か?」

 

「い、いえ、これくらい、なんとも…!」

 

息も絶え絶えでついてくるのがやっとのような先生がいた。

 

マサチューセッツ…と言うかサウスダコタ級戦艦全部に言えることだが設計時にかなり無理したせいでかなり内装が狭い。

 

そのうえ水密ハッチが無数にあるため慣れないと歩き回るのは一苦労だ。

 

そんなところを上って降りて行ったり来たりしていたらばてるのも無理はない。

 

「もう少し体力付けなきゃな。ともかくブリッジに行くぞ。」

 

「は、はい…!」

 

その後、ヒーコラ言いながら先生もネイトたちについていき艦橋へと向かい、

 

「艦長と先生、入られます!」

 

「お待ちしておりました、お二方。」

 

専任士官が待つ指揮所に到達。

 

「専任士官くん、準備はできているか?」

 

「はっ、先ほど機関室からリアクターが起動したと報告がありました。」

 

「各種レーダーは使えているか?」

 

「電力復旧によりこちらも復旧、CICより現在敵機影はなしと報告を受けています。」

 

「了解した。すぐに出発しよう。」

 

「では、号令をどうぞ。」

 

「分かった。」

 

専任士官からそう言われネイトが号令をかけようとする。

 

と、

 

「…先生。」

 

「は、はいなんですか?」

 

「君が号令をかけてみないか?」

 

その号令の役目を先生に任せると提案してきた。

 

「…え?」

 

「一生にあるかないかの戦艦発進の号令だ。やってみてくれ。」

 

「で、でもこの船はネイトさんの…。」

 

当然、そんな重大な役目をポイッと任された先生は困った表情を浮かべすぐには承諾できないが…

 

「なぁに、不在の間ホシノたちを引っ張ってくれた礼と新指揮官への祝いだ。気兼ねなくやってくれ。」

 

ネイトはそういい、肩を軽くたたき自分の一歩後ろに下がってしまった。

 

その顔はあの時のような浅い笑みを浮かべている。

 

「…分かりました。謹んで拝命します。」

 

ここまで言われて断る男はいないだろう。

 

先生の顔から困惑が消える。

 

「専任士官、いいな?」

 

「はっ!初々しい指揮官の号令を聞くのも我々の楽しみであります!では先生、号令を!」

 

「では…おっほん。」

 

気合を入れなおすためか、先生は一度咳ばらいをし…

 

「…マサチューセッツ、発進!」

 

高らかに発信の号令をかける。

 

「Aye,Sir!機関両舷原速!」

 

専任士官がそれに答え、

 

「機関両舷原速!」

 

通信士がそれを操舵室に伝達、

 

「全機関前進原速!Aye,Sir!」

 

アヤネが答え、操作すると…マサチューセッツが300年ぶり近い時を超えて前進を開始した。

 

「おぉ…!す、すごい…!」

 

水面を白波を立て掻き分けながら進むその姿に圧倒される先生。

 

だが、こちらがアクションを起こしたことにより…

 

《CICよりブリッジ!レーダーに感アリ!敵工業地帯より飛行ドローン及び大型ロボットが発進しました!》

 

どうやらあちらも動き出したようだ。

 

双眼鏡で確認すると…

 

「やはりきやがったか…!」

 

工業地帯から無数の飛行ドローンとケテルが展開をはじめていた。

 

《ブリッジより火器管制!お客さんのお出ましだ!歓迎してやれ!》

 

「了解、艦長。さぁお嬢さんがた、仕事の始まりよ!対空防御開始!」

 

ネイトの発令を受け、火器管制のアサルトロンが三人に号令をかけ、

 

「待ってましたぁ!これでもくらえぇぇぇッ!」

 

「ノノミ、行きま~す!」

 

ガンカメラとリンクしてあるHUDを装備したモモイとノノミが眼前のトリガーを引いた瞬間、プラズマ砲とL-CIWSが火を噴いた。

 

75口径3インチプラズマ連装砲、文字通りプラズマ炸裂弾を使用する両用砲である。

 

砲弾に内蔵された近接信管は問題なく作動。

 

摂氏数万度の緑の閃光と急激な気圧の変化によって生じる衝撃波が広範囲に襲い掛かりドローンを絡めとっていく。

 

その範囲は野砲が破片を撒き散らして発生する加害範囲に匹敵する。

 

この砲の加害範囲に入ったドローンは緑の粘液に溶解するか衝撃波によって爆散か墜落の三択だ。

 

さらにそこにノノミのL-CIWSが次々にドローンを貫いていく。

 

熱量500kw、現実に存在する『戦術高エネルギーレーザー』が32Kwであったことを考えるとその威力のほどが分かるだろう。

 

弾速も光速、発射レートも毎分12,000発という『ファランクス』を上回る性能だ。

 

夕闇に染まりつつある水没地区を緑と赤の閃光と爆炎の炎が染め上げる。

 

そして…

 

「第一主砲、照準完了!いつでも撃てます!」

 

主砲は移動中のケテルに向け主砲を指向、

 

「艦長、ミドリちゃん準備完了よ!」

 

《よし、目標2時の大型ロボット戦列先鋒!第一主砲右砲にて撃ちー方始め!》

 

「第一主砲右砲、発射します!」

 

ネイトの号令とともに第一主砲右砲用のトリガーを引き絞る。

 

瞬間、稲光のような閃光が瞬き稲妻を濃縮したかのように宙に引かれケテルを貫いた。

 

《次、同戦列最後尾!左砲でねらえ!》

 

「了解です!撃ちます!」

 

すぐさま次の目標を指定し発砲、最後方のケテルもこれで潰せた。

 

通常ならこれで行き足が止まるが…相手はケテルだ。

 

すぐさまワイヤーを射出し立体的な軌道でなおも接近。

 

《ミドリ、第二主砲中砲で『フレシェット砲弾』を使え!装填手、信管は早発に調整!》

 

《信管調整完了!火器管制、どうぞ!》

 

「了解です!撃ちます!」

 

ネイトの指示と装填手の調整も終えすぐさま発砲。

 

放たれた砲弾は…少し進んだところで爆発。

 

すると一本だった光の線が前方を埋め尽くす無数の細い線になった。

 

見かけはまるで花火のようだが…その範囲にいたケテルが『崩れ去った』。

 

その範囲内にあったビルもハイウェイも同様に崩壊する。

 

『10インチフレシェット砲弾』、砲弾殻内に数十万本の『2㎜EC』の弾頭が詰め込まれた対地対空用の砲弾である。

 

マッハ15まで加速された砲弾が指定されたタイミングで炸裂、前方広範囲に2㎜EC弾を撒き散らすというなんとも単純な仕組みだ。

 

だが、2㎜EC弾の威力はガウスライフルで放たれるときのそれを優に上回るモノ。

 

つまり、一発一発が戦車を優に貫く弾丸が広範囲に襲い掛かるのだ。

 

砲弾サイズの都合上、炸薬量に限界がある10インチ砲弾の性能をさらに向上させるために開発された砲弾である。

 

現役時代も弾道弾を含む対ミサイル防衛、対航空機、より広範囲の対地攻撃など幅広く用いられた。

 

「大型ロボットの全滅を確認しました!」

 

《パーフェクトゲームとはやるな、ミドリ!》

 

「ありがとうございます、ネイトさん!」

 

たとえキヴォトス人でも普通に暮らしていては経験することはあり得ない戦艦主砲の発射管制。

 

ミドリはネイトの期待に十二分に応えて見せたのであった。

 

「モモイだよ!こっちもドローン全部撃ち落とせたよ!」

 

「こちら、ノノミです!後続は確認できません!」

 

《二人とも、よくやった!マサチューセッツ復活を飾るにふさわしい100点満点の成果だ!》

 

すぐさまモモイとノノミもドローンを全機撃墜を完了。

 

いまだ完全とは言えずともかつて太平洋で勇名を轟かせたマサチューセッツの初陣は堂々たる勝利だった。

 

「まずは上々だな…!」

 

防空指揮所に上がり炎上するケテルやドローンの残骸を眺めつつネイトは呟くが、

 

「しかし、また後続が出てくるかもしれませんね…。」

 

ついてきた先生もその様子を眺めつつそう懸念を呟く。

 

これまでのパターンからするとこれでロボット群団が引っ込むとは限らない。

 

時間をおかずに再び攻勢を仕掛けてくるやもしれない。

 

ネイトもそれは理解している。

 

なので…

 

「…少し脅かしてみるか。」

 

「脅かす?」

 

不敵な笑みを浮かべたネイトが、

 

「火器管制、工業地帯上空を掠める弾道にて主砲斉射。各砲装填手、工業地帯上空通過後に炸裂するように時限信管セット。」

 

《火器管制了解、方位仰角を調整中。》

 

《こちら主砲装填手、時限信管セット完了!》

 

《こちら火器管制、全砲指向完了。発射命令を願います。》

 

全主砲をあえて当てないような角度に向け発射準備を整えさせ、

 

「全主砲、斉射!てぇッ!」

 

初の全主砲一斉の号令をかける。

 

瞬間、目がくらむ閃光とともに9本の蒼白の光の尾が夜空を切り裂き飛翔。

 

砲弾は指定通り工業地帯構造物をギリギリで掠める超低空で飛びぬけていく。

 

そして、工業地帯を通過後に時限信管が狂いなく作動し夜空に蒼い炎球が炸裂した。

 

「さて、どうなる…?」

 

再び双眼鏡を構え工業地帯の様子を探るネイト。

 

するとどうだ?

 

一分、二分…十分と経とうと工業地帯は再攻勢の動きどころかドローンの一機すら出てこないではないか。

 

先ほどの規模ならこれほどの時間があれば再投入してきてもおかしくはない。

 

「ど、どういう…!?」

 

これに困惑する先生だが、

 

「機械の奴等でも理解できたのさ。主導権がすでに逆転していることにな。」

 

ネイトはしたり顔で先生の疑問に答えて見せた。

 

「主導権、ですか?」

 

「そう、これまであちら側は機械の戦力を逐次投入してでも俺達を退けさえすればよかった。攻めるのも様子を見るのも向こうの自由だった。」

 

と、ここまでネイトが説明すると…

 

「ッ!そうか、現状はこちらが敵戦力を寄せ付けずあちらの本拠地を一方的に攻めるカードを握っている…!マサチューセッツが盤面をひっくり返したんだ…!」

 

「…やるじゃないか、先生。そういうことだ。」

 

ネイトが言わんとしていることをぴたりと言い当てる先生。

 

これまでネイトたちはケテル達を排除できる火力は持っていても工業地帯に対する戦力は無に等しかった。

 

いわば攻め手に欠いていた状態だ。

 

なので、ロボット群団もいつ攻めるかいつ退くかの選択の自由があった。

 

だが、そこに来てマサチューセッツの登場だ。

 

ケテルでさえ一蹴する大火力。

 

その火力をもし意地でも守りたかった工業地帯に向け放たれたら…。

 

「普通、機械に『意地』はない。あるのは計算からはじき出される損得勘定込みの結果だけだ。」

 

「今の一撃でもし下手に手を出せば工業地帯が更地にされる結果をあちらははじき出された、と言うことですね。」

 

「だったらあとは簡単だ。あちらはこれ以上こっちが手を出さないことを祈るしかないということさ。機械が祈るってのも変な話だがな。」

 

そう皮肉交じりでこともなげに言うネイトだが…

 

(機械…それも未知の相手に脅迫を仕掛けて相手の動きを封じるなんて…!)

 

戦力と相手の動向や思考を分析し、わずか二度の交戦で敵から主導権を奪い去った戦術眼に目を見張るしかない先生。

 

(いったいどれほどの修羅場を超えたらこんな思考に達するんだ…!?)

 

いまだ底の見えないネイトの実力。

 

改めて追いかけるべき背中の遠さと大きさを思い知るのであった。

 

と、そんな先生の思考を読んだか、

 

「…慌てなくてもいい、先生。俺なんかを見て学べる部分があるならどんどん吸収していけ。」

 

双眼鏡を覗きながら意識だけを彼に向けるネイト。

 

「ッ!」

 

「昼間に言ったろ、経験が足りてないってな。センスなら俺よりあるんだ、じっくり育っていけばいい。」

 

「…はい。」

 

今日二回目の温かい激励。

 

(全く、敵わないなぁ…。でも…必ず追いついて見せますよ、ネイトさん。)

 

いまだ遠い背中の彼がセンスがあると言ってくれたのだ。

 

だったら、その期待にこたえ追い抜かなければならない。

 

見なくても伝わってくる彼の意気込み。

 

「…んじゃ、先生。この艦の指揮を一時預けるぞ。」

 

「…え?」

 

ネイトは知ってか知らずか…いや、確実に知ってて持ち場を先生に任せてどこかへと行こうとする。

 

「ど、どちらへ?」

 

「なに、彼女の道作りにさ。」

 

先生の質問にそう短く答えたのち、

 

「…こちらネイト。進路を確保した、前進していいぞ。」

 

ベルチバードに乗り込み進路上のハイウェイに降り立ち路面を解体していくネイト。

 

《こちら操舵室、了解。微速にて前進します。》

 

その通信を受けゆっくりと前に進むマサチューセッツ。

 

ハイウェイが張り巡らされている水没地帯。

 

いかに頑丈な戦艦と言えどハイウェイに何度もぶつかっていては絶対に持たない。

 

なので、ネイトがベルチバードで先行しつつ進路上の障害物をいち早く解体。

 

ハイウェイだけでなく、

 

《こちらCIC、ソナーに喫水線を超える障害物を探知。至急解体願います。》

 

水中に飛び出していない高層ビルも搭載されたソナーで探知、それも水中にもぐって解体する。

 

こうして徐々にではあるがマサチューセッツは目的のポイントまで歩を進めていき、日付を跨いだあたりで目的地に到着。

 

さらに周辺のハイウェイと障害物を解体し十二分なスペースを確保後、ネイトも帰艦。

 

プログラミング中のユズを除いた面々は一同艦橋に集結。

 

「さて、夜遅くにすまないな。」

 

学生の彼女たちにこんな深夜に集合をかけたことをいったん詫びるネイトだが…

 

「ん~ん!ほのくりゃいにゃらいちゅおおきちぇるかりゃだいじょうりゅ!」

 

「…このくらいならいつも起きてるから大丈夫って言ってます。」

 

ガロンサイズのアイスクリーム缶を抱えアイスで口いっぱいにしながらモモイは気にするなと答える。

 

「モモイちゃん、食べながらしゃべるのはお行儀悪いですよ~。」

 

「でも、まさかアイスにソーダまで完備されてるなんて思わなかったよぉ。」

 

「こんな大きなアイスクリームの容器見たことないです。しかもとても美味しいです、ネイトさん。」

 

「ん…疲れているところに甘くて冷たいものは助かる。」

 

「深夜に食べるのは明日の体重計が少し怖くなりますが…止められませんね、これは。」

 

他のみんなも特大サイズのアイス缶からアイスを掬いソーダを飲み楽しんでいる。

 

「軍艦にこんなのまで積まれてるんですね…。」

 

「俺の現役時代の標準装備みたいなもんだ。…久々に食べると来るものがあるなぁ。」

 

ネイトも古き良きアメリカの味を懐かしく感じている。

 

アメリカ軍と言えばアイスとソーダである。

 

ある艦の建造時には砲塔を一つ撤去するからアイスクリーム製造機を積めという要望が出るほどアイスに対する執念が強い。

 

閑話休題、

 

「食べながらで構わないから話は聞く様に。作戦を説明する。」

 

「作戦って…このまま砲撃すれば終わりなんじゃないんですか?」

 

ミドリの言うようにこのまま艦砲射撃を浴びせ工業地帯を完全に破壊すればこれ以上ロボット群団は出てこないはず。

 

その後ゆっくりここの調査をすればネイトの任務も終わりだ。

 

が、

 

「確かにそれは手っ取り早いが…勿体ないだろ?」

 

なんともワルい顔を浮かべるネイト。

 

「も、勿体ないって?」

 

初めて見るネイトのそんな表情にミドリは困惑する。

 

が、

 

「ミドリちゃぁん。こうなったネイトさんは止めらんないからあきらめた方がいいよぉ。」

 

「ん…この後にネイトさんが何を言うかもう分かるよ。もちろん、私も賛成。」

 

「はい♪ここまで働いたんですからボーナスくらいは頂かないとですね♪」

 

「はぁ全く…くれぐれも無茶はしないでくださいよ。特に昼間みたいなことは絶対に。」

 

付き合いの長いアビドス組はネイトが何をしようとしているかすでに理解しているあたりさすがであろう。

 

「ッぷはぁ!何々、ネイトさん何するつもりなの!?」

 

「何…調査を終えれば晴れてここの仕事はわがW.G.T.C.が請け負うことになる。カイザーもそうなれば手を出せない。…つまりここで好き放題できるってわけだ。」

 

「…まさか!?」

 

そこまでネイトの言葉を聞き、先生もネイトが何をやろうとしているか理解できた。

 

そして、ネイトの口からとうとう明かされる。

 

「…あの工業地帯を占領するぞ。」

 

――――――――――――――――

 

―――――――――――

 

――――――

CIC内、

 

「……………。」

 

あれから7時間ほど経っているがユズは未だ集中しキーボードをはじいている。

 

その時だ。

 

「ユズ~。」

 

「ひゃあっ!?」

 

突然冷たさが襲い、意識が引き戻された。

 

「ね、ネイトさん!?」

 

「差し入れ持ってきたぞ。少し休憩したらどうだ?」

 

見上げるとアメリカンLサイズのドリンクカップとサンドイッチを持ったネイトがいた。

 

キリもいいのでユズもネイトの提案を受け休憩することに。

 

「あ、シェイク、なんですね。」

 

「俺特製だ。味は保証できないがな。」

 

「そんな、味も、美味しいです。」

 

「そうか、ありがとう。」

 

集中していて気付かなかったがやはり疲労していたようで疲れた体に優しい甘さと冷たさが染み入るユズ。

 

サンドイッチもハムとタマゴマヨと言うシンプルなものだが食べると活力がわいてきた。

 

「で、捗り具合はどうだ?」

 

「システムの構築は、ほぼ終わりました。あとは、改良のコマンドを、入力するだけです。」

 

「そんなにか。早いな。」

 

予定よりも早い段階でもう作業に終わりが見えていることに驚くネイト。

 

「この、システムを作った人、ハウスさん、でしたっけ?」

 

「そうだ。間違いなく『天才』と言っていい人物だろう。」

 

「…だと、すると、かなり、狡賢い、人です。」

 

と、システム構築者のMr,ハウスをそう評するユズ。

 

「と、言うと?」

 

「このシステム、全体的に、一見して分からない、プログラムの冗長性が、不必要なほど、持たされていたんです。」

 

「つまり、従来の状態でも…。」

 

「まだ、未完成、だったんだと、思います。」

 

今までシステムのプログラムを見てきたユズが言うのだ、間違いはないだろう。

 

つまり、Mr,ハウスはわざと性能を落とした防衛システムを開発、マサチューセッツに搭載していたということに他ならない。

 

「…なぜだと思う?どうしてそんなリスクの高いことを?」

 

「私の考え、ですけど、ここはテストベット。この船で、性能を確かめて…。」

 

「自分個人で完成させたシステムを使おうとしていた、と言うことか?」

 

ネイトに知る由もないがユズの推理は当たっている。

 

Mr,ハウスは米中戦争勃発のはるか前にすでに数学的シミュレートから最終核戦争の勃発を予期していた。

 

彼はその破滅から生き延びるための極秘計画に着手。

 

そんな時に舞い込んできたのが…このマサチューセッツの防空システム構築の依頼だ。

 

彼はこの依頼を承諾したと見せかけて彼の最愛の地『ラスベガス』の都市防衛システムのサンプルに利用。

 

ここで構築したシステムと成果を基により洗練されたシステムを作るためわざと『未完成』の状態で搭載したのだ。

 

結果、マサチューセッツはMr,ハウスの期待通りの大戦果を挙げる。

 

未完成でこれなのでさすがは天才と言ったところか。

 

なお、本来はハッキングによってミサイルを無力化することが前提で兵器を用いた防空はその予備であった。

 

閑話休題。

 

「目的は、分かりませんが、手を抜いて、人の命がかかったものを、作ったこの人は、嫌いです…。」

 

「フム、そこはいっぱしのエンジニアの俺も同意見だな。…話を戻すが、その冗長性を通常まで減らして向上する性能は?」

 

「えぇっと、まだ詳しくは、まだはっきり言えませんが…3割は確実に、向上すると、言っていいです。」

 

「…よし、時間にはまだ余裕がある。思う存分にやってくれ。」

 

それだけの性能向上が見込めるのであれば十分改良のし甲斐がある。

 

ネイトはユズの思うようにシステムの改良を任せるのであった。

 

「分かり、ました。頑張ります。」

 

「その意気だ。邪魔したな、ユズ。」

 

会話も終え、CICを後にするネイト。

 

最終作戦開始まで…あと4時間25分。




もし、木を切り倒すのに6時間与えられたら、私は最初の4時間を斧を研ぐのに費やすだろう。
――――第16代アメリカ合衆国大統領 エイブラハム・リンカーン
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