―――小説家『サマセット・モーム』
場面は10日前に遡る。
「そ、そんな!?なぜですか、カイザー理事!?」
《聞こえなかったか?》
場所はカタカタヘルメット団本部のある廃工場。
そこでカタカタヘルメット団を仕切るリーダーが愕然としながらカイザー理事からの連絡を受けていた。
だが、無理もない。
《ではもう一度言ってやろう。貴様らには失望した。援助は取りやめ…いや、ここ半年分の援助金を耳をそろえて返してもらおう。》
突如としてカイザー理事からこれまでの援助を返金するように命じられたからだ。
「だからなぜ…?!」
あまりに突然の要求に困惑するヘルメット団リーダーだが…
《知らないと思っているのか?排除対象と随分仲良くやっているようではないか。》
「~ッ!?」
カイザー理事のこの言葉に返答が詰まる。
《私は貴様らにアビドス対策委員会を排除しろと言ったのだぞ?それに見合った大金や武器を支援してきたはずだというのに…これは裏切り行為ではないか?》
「そ、それは…!」
《しかも、武器をアビドス高校の連中に度々盗まれていた…。こんな報告一度もなかったぞ?》
カイザー理事の言うことは悔しいが事実だ。
ここ半年の襲撃は軒並み失敗。
時には戦車すら支援されて行われたがすべて叩き壊されてきた。
いや、襲撃が失敗していたのは半年よりも前からだ。
武器が盗まれていたのも確かに黙っていたが…カイザー理事が言っているのはこれらではない。
《それに…貴様らW.G.T.C.のもとによく働きに行ってるそうではないか?これがどういう意味か…説明しなくても分かるだろう?》
「そ、それはうちの者が食うに困って…!」
《知った事か!これは完全な利敵行為ではないか!?しかも、その仕事が我がカイザーグループにどれほど損害を与えているか、分かっているのか!?》
そう、問題はヘルメット団がW.G.T.C.で働いていたことだ。
今や、カイザーにとってW.G.T.C.は不倶戴天の敵だ。
そんな企業で働き、さらに自分たちの懐を荒らす手助けをしていた。
カイザー理事が激怒するのも無理はない。
《役立たずならまだ許せる!だが、こちらに弓を引く愚か者だけは許せん!》
「それはあんまりです!少なくとも理事からの指令はちゃんとこなしていた!それ以外の時間まで指図されるいわれは…!」
《そんな言い訳が通じると思ったか、この裏切り者め!!!こんな奴らならさっさと乗り変えたほうが正解だった!!!》
「~!まさかッ!?」
怒号紛れに出たカイザーの言葉にリーダーはハッとした。
「理事、アンタか!?ゲヘナのカクカクヘルメット団にウチのシマで好き勝手やらせたのは!?」
《…ふん、いまさら気付いたか。そうだ、貴様らがふがいないから別の連中に支援することにしたのだ。》
悪びれることなく、カイザー理事は支援先をカクカクヘルメット団に変えアビドスでの行動を容認していたことを明かす。
一月前のセリカとネイトに対する対空砲まで用いた誘拐未遂事件。
あの後、ヘルメット団の上層部を交えた話し合いになったがカクカクヘルメット団はなぜか悪びれることなく上層部もなし崩しにあの件をあやふやにして終結させた。
だが、この理事の言葉で全てが繋がった。
カクカクヘルメット団だけではない、上層部までカイザー理事の力が及んでいることは確実だ。
この状況でカイザーに支援を打ち切られるということは…同じヘルメット団であっても完全に孤立することを意味している。
「どういう事か分かっているのか、アンタ!?私ら悪党にも規範ってのがある!それを外野が破って…!」
《破ったらどうなるというのだ。我々に歯向かうとどうなるか、分からない貴様らではないだろう?》
「クゥ…!」
すごんでみたが…カイザー理事の言う通りだ。
所詮自分たちは数が多いだけの不良の徒党。
相手は最新の武器で固められた傭兵を擁する大企業だ。
幾ら反発しても…勝てる見込みはない。
《ここから先のアビドスへの襲撃は奴らが担当する。それが済めば…アビドスの奴らの縄張りにしてもいいという条件付きでな。》
「理事…アンタ…!私らを…!」
言われなくても…理解してしまった。
もし、カクカクヘルメット団が仕事を完遂した時…それが自分たちの最期の時なのだと。
《ふん、それが嫌なら支援金を返してもらおうか?そうだな、ざっと2億でいいぞ。》
「そんな大金、うちが払えるわけ…!」
《だったらそこでお前らは終わりだ。愚か者に掛ける情けなど我々にはないのだからな。》
そう言い、カイザー理事は電話を切った。
なんとか仲間を守ろうとリーダーは掛け続けるが…着信拒否にされてしまった。
「り、リーダー…!」
周りには部下のヘルメット団団員が心配そうな表情を浮かべている。
「し、心配すんな…!これくらいどぉってこと…!」
気丈にふるまうリーダーだが…現実はどうしようもない。
部下を守るためには2億円をカイザーに返済しなくてはならない。
だが…
(無理だ…!どう捻出したって1000万もないのに…!)
一見資金はあるようだが…かつてのアビドス高校と違い構成員の数がまさに桁違いのカタカタヘルメット団。
もとより日々の食事にも困り徒党を組むことで何とかしのいでいたのが彼女たちだ
カイザーからの支援もあってようやく装備などは整えられていたが…。
正直言って…『彼』がいなければ今も食費すら困窮していただろう。
そんな状況で2億という違約金の支払い。
(どうする…!?今のアビドスがカクカクヘルメット団にやられるとは思えないが先にウチらは干上がってしまう…!)
今のアビドスはそこらのヘルメット団が総力を挙げてもはじき返すだけの戦力を有している。
しかし、それはつまり自分たちがカイザーから婉曲的な兵糧攻めを仕掛けられていることと同義だ。
力が奪われてしまえば…結末は火を見るより明らかだ。
それに万が一アビドスが敗北しても末路は変わらない。
処刑人が同胞のカクカクヘルメット団かカイザーかの違いしかないだろう。
(どうすればいい…!?どうすればこいつらを守れる…!?)
自分一人のことなら逃げることはできるだろう。
だが、自分はこの『カタカタヘルメット団』を率いている身だ。
苦しくもこれまで共にやってきた仲間たちを見捨てることはできない。
たとえ悪党でも…いや、悪党だからこそその一線を越えることを魂が拒否した。
その時だ。
「り、リーダー!大変だ!」
「どうしたッ!?」
一人の部下が慌てて部屋に駆け込んできて…
「今、ネイトのオジキがリーダーに会いたいって一人で来てます!!!」
「なッ!?」
まるで見計らったように因縁深い男、ネイトがやってきたのだった
数分後、
「じかに会って話すのは初めてか?」
「…部下がいつも世話になっているな…!」
厳重警戒の中、ネイトはリーダーのいる部屋に通された。
ここに至るまでにもう10回ほどはボディチェックとPip-Boyの中身を調べられ丸腰だというのは確認されているが…
「突然の訪問なのに歓迎感謝するよ。」
「アンタが相手だ…!これでも足りない位さ…!」
ネイトの周囲にはいつでも撃てるように銃を構えたヘルメット団が20人控えている。
明らかに過剰な警備体制だがネイトの実力を文字通り『身に染みて』知っている彼女たちだ。
リーダーの言うように包囲しているヘルメット団はこの状況であっても汗をかき恐怖している。
この程度の人数なら素手のネイトでも一瞬で制圧できる、それをこの場の全員が理解できているからだ。
「それで…何の用だ?あいにく…もうアンタらが盗めるような武器が来るようなこともなくなっちまったよ…。」
そう皮肉交じりにネイトに告げるリーダーだが…
「あぁ、しっかり『聞かせて』貰ったよ。」
隠すでもなくそうあっさり答えるネイト。
「…盗聴してやがったな?」
「これも一応敵対組織だからな。」
「いつからだ…?」
「先月、ちょっと情報が入ってな。」
ネイトは多く語らないが先月の闇銀行襲撃で入手した情報を基にこのカタカタヘルメット団本部に盗聴装置搭載のアイボットを忍ばせ情報収集していた。
「…だが、聞いてた割にはずいぶん早いじゃないか。」
「なに、そこは山張って予測だ。うちはこの前で借金完済したからそろそろか、と思ってな。」
「で、何の用だ…?笑いにでも来たのか?」
盗聴していたことはさておいてカイザー理事から連絡が来たのはついさっきだ。
つまり、それ以前にネイトはここに向かってきていたということになる。
正直、丸腰でここを尋ねてくる意図を図りかねている。
「いや、俺もさっきの連絡聞いて少し要件というか額が変わった。」
「なんだと?」
「今から荷物を取り出す。銃じゃないから撃たないでくれよ。」
そう言うなり、ネイトは細長い紙の束とペンを両手に出現させる。
もう見慣れた光景なのでヘルメット団たちも驚かない。
その紙に何かを書き記し…黙ってそれをリーダーに差し出した。
「こっこれは…!?」
リーダーはそれを見た途端目を見開き驚愕する。
無理もない。
差し出されたのは…3億円と額が記された小切手だった。
「現金主義だが生憎手持ちがなくてな。小切手で済まないが受け取ってくれ。」
「な、何の冗談だ!?アタシらに情けをかけたつもりか!?」
と、突然こんな大金を、それも敵の総大将に渡されリーダーも訳が分からず怒鳴り返す。
「情けなんかじゃない。これは…依頼料みたいなものだ。」
「い、依頼料だと!?」
「まだ計画の準備段階だが伝えておこう。俺たちアビドス高校とW.G.T.C.は…カイザーに戦争を仕掛けさせる。」
『ッ!?』
ネイトの口から語られるアビドス自治区奪還作戦の概要。
あのカイザーから戦争を仕掛けさせて土地を奪い返す。
どう考えても荒唐無稽で無謀な作戦だ。
だが…ネイトは本気だ。
この場の全員がそれを感じ取った。
「…って感じだ。」
「………じゃあ、この金は何だってんだ…!?」
だとしても理解に苦しむのがこの小切手だ。
今更自分たちにこんな大金を渡すメリットが理解できない。
「簡単な話だ。その金でカイザーの違約金払ってしばらく大人しくしといてくれるだけでいい。」
「…は?」
「この先の戦いは正直言って…いつものようにそっちを気遣った戦いはできないからな。把握してるだろうが…この前の風紀委員会との戦いよりも容赦をなくして戦うことになる。俺だけじゃなく、アビドス生全員がな。」
何のことはない。
自分たちはこの戦いに参加するな、ネイトはそう言っているのだ。
そのためだけに…ネイトは自分達なんかにこんな大金をポンと支払ったのだ。
「残り1億は好きに使え。もっといいとこに住むために使ってもいいし今後俺達と戦うための弾代にしても構わない。じゃ、用件が済んだから俺は帰る。」
それだけ言い、ネイトは席を立ち退室しようとする、
部下たちは状況が呑み込み切れず固まってネイトを制止しようともしない。
だが、
「まッ待ちやがれ!どういうつもりだ、テメェ!?」
リーダーだけは椅子を倒す勢いで立ち上がりネイトを呼び止める。
「テメェ、馬鹿なんじゃねぇか!?アタシら、テメェらの敵なんだぞ!?」
「そうだな。」
「そんな奴らを助けて1億もくれてやるなんて信じられるか!?」
「俺は信じなくていい。だが、そこの小切手の額は信じろ。金は嘘を付かないからな。」
「…なんでなんだよ…!なんで、テメェは…!」
訳が分からない。
なんで何度も戦った自分たちを助けるような真似をこの男はするのか。
それだけでなくどうしてこんな大金を自分たちに渡すのか。
だが…
「なんでだよ…!?なんでアンタ…アンタはなんであたし達を気にかけんだよ…!?」
ネイトは自分たちを心配してくれている、これだけは痛いほど伝わってきた。
今までこれほどまで自分たちを心配してくれた存在はいなかった。
会ってきた大人たちは自分たちを食い物か都合のいい道具としか見ていなかった。
カイザーだってそうだ。
金払いがいいから今まで言うことを聞いてきたにすぎない。
だが…ネイトは違う。
敵だというのに…自分たちを働かせてくれて給料までくれた。
時には社員達と一緒にご馳走してくれることもあった。
果てには具合が悪ければ社員待遇で病院代までくれたこともあった。
例え戦っても被害を回復すればそこですべてを忘れたような態度になる。
損得勘定抜きで…一人の人間として接し続けてくれた。
こんなに…気にかけてくれた存在は今までいなかった。
そんなリーダーの問いかけに…
「俺の務めを果たすため…とでも言っておこうか?」
少し考えてからネイトは答えた。
「アンタの…務めだと…?」
「俺はアビドスを立て直すためにやってきた。だから、俺はこの地をカイザーから取り戻さなきゃならない。」
「だから…それとこれがどういう…。」
「お前たちだってアビドスの一員だろ?」
「え…?」
「だったら、俺はお前たちも守らなきゃならない。例え敵だったとしてもな。」
今まで幾度となく戦ってきた。
なのに…自分たちもこの地の一員と言ってくれた。
守るべき対象だと言ってくれた。
「ちなみに、その一億はカタカタヘルメット団全員がやり直すためのチケット代にしてもいい。」
キヴォトス独特の文化だが不良集団や犯罪者には懸賞金がかけられている。
ホシノ達もこう言った連中を捕縛して返済金を稼いでいた。
それと同じように『手配解除金』というものも存在している。
これをヴァルキューレに納付すれば手配が解かれる。
カタカタヘルメット団、総勢300名近くの総額の手配解除金が…ちょうど1億くらいなのだ。
「どう使うかは俺は指図しないが…これだけは知っておいてもらいたい。」
ネイトは周りにいる彼女たちを見まわしリーダーをしっかりと見つめ…
「この生活から抜け出して『普通』の生活を送りたいっていうなら…俺が最後まで面倒見ることを誓おう。」
「…~ッ!」
彼女たちがこれまで聞いたこともないほどの重い覚悟をもって宣言するのであった。
「じゃあな。お前たちが後悔の無い選択をすることを祈ってるよ。」
それだけ言い残し、ネイトはヘルメット団本部を後にしていったのであった。
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そして10日後の今、ネイトとカタカタヘルメット団はアビドス高校で対峙していた。
「どうするか決めたのか?」
「…あぁ、皆で話し合って決めた。」
リーダーが一歩前に出てネイトと言葉を交わす。
「私たちはアンタ…いや、ネイトのオジキと一緒にカイザーと戦うよ。」
その決断を胸を張ってネイトに伝えるヘルメット団リーダー。
「カイザーともヘルメット団とも縁を切ってきた。私らはもうアンタのとこしか行く場所がない。」
「…全く、物好きな連中だ。自由の身になったんだからわざわざ戦場に飛び込まなくてもいいのに。」
「やめたとはいえ元はワルだ。あんな連中に舐められっぱなしだと新しい一歩も踏み出せねぇ。」
「それに物好きなのはアタシらを引きいれようとしたオジキもだろ?」
「違いない。」
誰が言ったかは分からないが彼女たちからそんな言葉も飛び出しネイトも浅い笑みを浮かべる。
「それに…。」
「どうした?」
「最後に一度だけ…アンタなら信じてもいいかと思ったんだ。」
あの日、ネイトにあぁ言ってもらえて…リーダーは本当に嬉しかった。
だれも見向きもしなかった自分たちを信じて決断を託してくれたネイトという大人の存在が。
そして、全員に意思を確認し…満場一致で今日この場に赴いたのだ。
そして…
「すぅ~…。」
リーダーは息を吸い込み…
「元カタカタヘルメット団一同総勢280名、ネイトのオジキの恩義に報いるべくアビドス高校に合流しカイザーとの戦争に助太刀いたします!!!」
『よろしくお願いします!!!』
自分たちのシンボルだったヘルメットを投げ捨てアビドス高校生徒として今回の戦争に参戦することを宣誓した。
「…W.G.T.C.社長として君達の助太刀、心の底から感謝する!」
ネイトも彼女たちに対し敬礼をもって彼女たちの決断に感謝を示した。
「さて、来て早々悪いが付いて来てくれ。」
そのままネイトは彼女たちを引き連れVault Abydosに進む。
「よぉ、ヘルメット団!ってもう辞めたんだったな。何はともあれ歓迎するぜ!」
「あぁ。よろしく頼むぜ、先輩方。」
「はっはっはっ!とうとうアンタたちまで絆したか、親分!」
先に集合していた生徒たちも彼女たちの参戦を快く受け入れる。
「ん…こんな光景…本当に半年前には考えられない。」
「はい、不良の方々やヘルメット団の方々がアビドスのために…。」
「フフッ。本当にネイトさんったら人たらしなんですねぇ♪」
「でもこれでだいぶ戦力も増やせたわね。」
感慨深くそんな光景を眺めるシロコたち対策委員会メンバー。
まさか敵対していたヘルメット団も自分たちの味方になってくれる日が来るとは思いもよらなかった。
「これが…アビドスの総意なんですね、ネイトさん。」
先生もそんな一致団結している生徒たちを決意の籠った眼差しで眺めている。
これからこの生徒たちをネイトと率い…アビドスを取り戻すための戦いに身を投じるのだ。
気が引き締まるのは当然だろう。
「嬉しいもんだね、まったく。」
ネイトもそう呟き全員の前に立つ。
「シロコ、号令を頼む。」
「ん…総員、気を付け…!」
シロコが号令をかけるとこの場の全員がお喋りを辞め気を付けの姿勢をとる。
「…改めておはよう、皆。」
『おはようございます!』
「この場の全員、かつては因縁を抱えている者たちもいるだろう。だが、その因縁を踏み越え、今日この場に集まってくれたことに感謝する。」
今一度、この戦いに参加を決めてくれた生徒たちに頭を下げ感謝を述べる。
「我々はアビドス…いや、キヴォトス史上最大であろう作戦をスタートすることになる。」
『………。』
「今日というこの日より『アビドス』という存在は新しい意味を持つことになるだろう。」
一旦言葉を区切り、生徒たちを見渡し
「不良、スケバン、ヘルメット団、対策委員会…立場の違いを乗り越えて―――君たちはアビドスのためという目的のために一つに結ばれた。」
『………。』
「俺の国はかつて最強だった大国から独立するために戦いを挑んだ。この地でまたそんな戦いを行うのも何かの運命だ。君らは今日、自由のために戦う。」
かつてのアメリカも、自分たちの自由を手に入れるために戦った。
そして今日…もう何世代も前の先祖が行ったような戦いをネイトが…この場の生徒全員が行う。
「奴らが求めるのは金でも権利でもない。俺達の尊厳とこのアビドスだ。…この地で営々と生き続けるために戦おう…!」
『………。』
「この地、アビドスで存在する権利を守るために…!勝利を手にしたのなら…今日という日は忘れられることのない日となるだろう…!」
ここまで冷静に話していたネイトのトーンが徐々にボルテージが上がっていき…
「アビドスが再び立ち上がり断固たる意志を示した日としてキヴォトスの歴史に永遠に記憶されるだろう!」
『………ッ!』
ヒートアップし続けるネイトの言葉に生徒たちの目もさらに見開かれその表情に闘志がみなぎり、
「俺達は決してあのクラーケン共の餌食に大人しくなったりしない!!!俺達は決して戦わずしてこのアビドスを奪わせはしない!!!みんなで守るんだ、取り戻すんだ!!!戦いに勝利したとき!!!アビドスが再び『独立』することを祝おう!!!」
彼らしくない、感情むき出しのこの演説が…
『うおおおおおおおおおおお!!!!』
アビドス全生徒の心を揺さぶり大きくこぶしを突き上げ腹の底から声を張り上げる。
「よし、準備にかかれ!長い戦いになるぞ!!!」
「了解!!!」
こうして…のちに『アビドス独立戦争』とも呼ばれる日々が幕を開けるのであった。
宣戦布告まで…残り5時間
人生における真の喜びは、偉大だと思える目的のために生きることである。
―――小説家『ジョージ・バーナード・ショー』