Fallout archive   作:Rockjaw

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一気に書き上げたかったのですが…一万字超えて長くなり過ぎたので切りのいいところで
次回は割とすぐに上げれると思います


Wrath of the Wolf

「これで全員…だな。」

 

目の前で伸びているヘルメット団幹部を見下ろし改めて周囲を確認するネイト。

 

耳を澄ましてもPipーBoyのレーダーを確認しても今現在、ここに敵はいないようだ。

 

(まだ敵の全滅を確認していないのに話し込むとは…やはり戦闘の勘は少し鈍ってるな。)

 

肩にバットを担ぎつつ自分の体たらくを自省する。

 

床に臥せって数年間、自分は戦うことができなくなっていた。

 

銃を手に取ったのもそれ以来だ。

 

だが、そんなこと実戦では何の言い訳にもならない。

 

(早く実戦の勘を…あの連邦で磨き上げた戦闘スタイルを取り戻すべきだな。)

 

ここは連邦よりも戦闘が発生しやすい世界『キヴォトス』だ。

 

気を引き締めなければならない。

 

「…うぅ…イツツ…。」

 

と、張り詰めていた緊張が緩んだからか背中の鈍い痛みが強さを増してきた。

 

「んんっん~…!あぁ~この痛みも懐かしい…。」

 

「ネ、ネイトさん…!」

 

「おぉ、シロコ。お仲間は無事だったか?」

 

背伸びし痛みを紛らわせているとシロコが駆け寄ってきた。

 

後ろには彼女と同じ制服を着た少女たちもいる。

 

「そ、そんな私たちの心配より早く手当てを!」

 

「大丈夫なの!?あんなにマシンガン撃たれて!?」

 

「あ、あわわわ!死んじゃ、死んじゃだめです!」

 

「…あぁ、そうか。さすがにあれは衝撃が強すぎたか。」

 

自分を心配する少女たちをしり目にのんきな言葉が出るネイト。

 

「えぇっとえぇっと!と、とにかく上着を脱いで傷口を見せてください!」

 

「分かった。だがそんなに心配することはないぞ。」

 

何はともあれとりあえず眼鏡をかけた少女も言う通りにコートを脱ぎ差し出す。

 

すると…

 

「え…!?ど、どういうことですか…!?」

 

「穴が…どこにも開いていない…!?」

 

「嘘ッ、ブラックチップの徹甲弾なのに!?」

 

今度は渡された上着を見て少女たちは驚愕する。

 

背中の表面には全体に痛々しい様子で何発もの弾頭が突き刺さっている。

 

が、裏側にはその弾頭の先端も到達せず表面で食い止められていることが分かった。

 

「ん…背中も出血している様子はないよ…!」

 

「言ったろ、一二発くらいじゃ俺は止まらないって。」

 

「いや、一二発どころか百二百発食らってるじゃない!?」

 

「まぁそれはいいっこなしだ。…さてと。」

 

どこかツンツンしている猫耳の少女のツッコミを軽くいなしつつ、

 

「MINIMIが普通に学生に出回ってるとは恐ろしいもんだな…。しかも予備弾薬もこんなに…。」

 

足元に転がっているヘルメット団幹部や周囲から武器と弾薬にグレネードやらを回収し始めた。

 

「な、何…しているんですか?」

 

「何って武器と弾薬やらの回収。弾だってタダじゃないし武器だってこっちが有効活用させてもらおう。」

 

「そ、そんな追剥みたいな…!」

 

「悪いが言われても止めないぞ。」

 

そんなネイトの行動に猫耳の少女と眼鏡をかけた少女は言葉を失うも…

 

「………ネイトさん、私も手伝う。」

 

「シロコ先輩!?」

 

「じゃあ私も。どういったのを集めるといいですかぁ?」

 

「ノノミ先輩まで!?」

 

シロコと金髪の少女がネイトとともにヘルメット団の武器を回収しようとする。

 

「ど、どうしてですか…?」

 

「今の私達には余裕がない。たとえヘルメット団が持っている一発の弾丸や一丁の武器でも貴重。」

 

「それにこのまま帰しちゃったらまたその銃を持って襲ってきちゃいかねませんもんね。」

 

そう、今のアビドス高等学校の物資は非常に限りがある。

 

弾薬も医薬品も備品も次の補給があるか分からない。

 

そんな崖っぷちの状態で目の前には喉から手が出るほど欲しい弾薬などの物資が転がっている。

 

そして転がっている連中は自分たちの敵だ。

 

罪悪感は正直薄い。

 

しかも、鹵獲さえすれば次の侵攻まで時間を稼げる。

 

それでも尻込みする二人に対し、

 

「気になるなら二人はホシノ委員長を見てて。私たちでやっておくから。」

 

シロコが二人の背後を指さしそう告げる。

 

その指を追って背後に視線を向けると…

 

「………。」

 

『ホシノ委員長』と呼ばれた少女がバリスティックシールドも銃も傍らに落とし呆然としているではないか。

 

怪我をしている様子はないがどこか様子が変だ。

 

「ん…じゃあ二人ともよろしく。」

 

そういい、世話を任せシロコは別のヘルメット団の装備の鹵獲へ向かった。

 

「…あぁ~もう!アヤネちゃん、アンタはホシノ先輩のお世話よろしく!」

 

「えぇ!?セリカちゃんまで!?」

 

そんな三人の行動に猫耳の少女は頭を掻きむしって自らも鹵獲作業に参加。

 

残されたメガネの少女はどうしていいか分からずとりあえず言われた通りの世話を行うのであった。

 

十数分後。

 

「ライフル30丁、サブマシンガン8丁、ショットガン6丁、バトルライフル4丁にLMGが2丁ッと。」

 

「弾薬やマガジンはそれぞれに対応したのが結構ありましたぁ。」

 

「ん…グレネードも少しあった。」

 

「これで少しは物資に余裕が生まれたわね。」

 

一先ず転がっていたヘルメット団の身ぐるみ(服はそのまま)を剝ぎ終わった一同。

 

用がないヘルメット団の本体はエビぞり状態で手足を縛り校外に放り捨ててある。

 

「皆さん、お疲れさんでした。」

 

「ん…アヤネ、ホシノ先輩はどこ?」

 

「はい、今は落ち着いて委員会室で待機してます。」

 

「分かった。ノノミ、ネイトさんを保健室に連れてってあげて。」

 

「はいは~い♪じゃあ、ネイトさん。私についてきてください。」

 

「おい、シロコ。俺は平気だって…。」

 

と、なおも自分は元気であると主張し説得するネイトだが…

 

「ダメ。さっきは貴方の言うことを聞いた。だから今度は貴方が私たちの言うことを聞く番。」

 

「いいから行ってきなさいよ。あとから倒れられると私たちが迷惑なんだからね。」

 

「上着は預かっておきますので行ってきてください。あまりお薬は…ありませんけど。」

 

「と、言うことです。じゃあれっつご~♪」

 

珍しく説得に失敗、半ば強引に『ノノミ』と呼ばれた少女に手を取られ保健室へ連れていかれるネイト。

 

(力強ッ!?え、本当にこの子女子高生なのか!?)

 

彼女本人は決してそんなつもりはないだろうがネイトを引っ張る力は到底この細腕から出力されている物とは思えない怪力だった。

 

「ちょっ!分かった!行く、行くから手を放してくれ!手が痛い!」

 

「あっごめんなさい…。」

 

正直背中よりも手が痛かったので途中から手を放してもらい彼女のあとをついていくネイトであった。

 

保健室にはそう時間がかからず到着。

 

「はい、じゃあ背中を見ますんでシャツも脱いじゃってください。」

 

「はいはい…あんまり驚かないでくれよ?」

 

「大丈夫です!子供のころお父さんとよく一緒にお風呂入ってましたから!」

 

備え付けの椅子に座らされ下に着ていたYシャツを脱ぎ背中をノノミに向けるネイト。

 

ガーゼと消毒液を持って微笑むノノミだが…

 

「ッ!」

 

ネイトの背中を見た途端に言葉を失った。

 

先ほどの怪我と思われる痣のようなものは背中に結構出ているが一見してさほど重症ではなさそうだ。

 

問題は…それ以外の怪我、もとい古傷の痕だ。

 

背中のいたるところに刻まれた切創、裂傷、火傷、そして銃創の痕。

 

普通の弾丸を食らっても痕も残らないキヴォトス人の彼女からしてみれば初めて見る衝撃的なものだった。

 

「……すまないな、やはり君みたいな女の子に見せる物じゃなかったな。」

 

固まるノノミの内心を察し、背中のことを謝罪するネイト。

 

「あっ…す、すみません…!その、驚いちゃったりしちゃいけないことなのに…!」

 

「いいさ。それが普通の反応だ。」

 

「あの…その怪我は…?」

 

「戦争さ。ここまで傷跡があるのに生き残れたのは幸運だったけどな。」

 

「外の世界の…戦争…ですか…。」

 

「知る必要はないさ。すまなかったな、手当の準備もしてくれたのに。あと、俺の治療にはこれがあればいい。」

 

そういいつつ手に金属製の注射器を取り出すネイト。

 

その注射器を勢いよく腕に差し薬剤を体内に注入すると…

 

「えっ痣が…消えていく…!?」

 

見る見るうちに先ほどまであった痣が消えていくではないか。

 

「…よし、楽になった。」

 

「そ、その注射って…?」

 

「これは『スティムパック』、俺のいたとこじゃメジャーな治療薬だ。」

 

治療も終えたのでYシャツを着直すと、

 

「んじゃ、シロコたちのとこに案内してもらえるかな?」

 

「は、はい!じゃあまた私についてきてください。」

 

シロコたちが集まっているであろう『委員会室』へ向かう。

 

「と、いまさらではあるが自己紹介しておこう。ネイトだ、よろしく頼む。」

 

「あ、ご丁寧にどうもです。私はアビドス高校二年『十六夜ノノミ』と言います~。よろしくお願いしますねぇ~、ネイトさん。」

 

その前に改めてネイトと少女『十六夜ノノミ』は互いに自己紹介をして握手を交わすのであった。。

 

「へぇ~、それでシロコちゃんと一緒にやってきたんですかぁ。」

 

「ここに用があったんだが道のりが分からなくてな。」

 

「でもその人も不親切ですね~。お仕事を頼んだのなら詳細な場所くらい教えてもいいのに。」

 

「…それもそうだな。というかノノミ、君が持ってるその銃って…。」

 

「はい、M134ミニガンの『リトルマシンガンV』っていいます~。」

 

「…やっぱり?いやぁ、キヴォトス人はすごいんだなぁ。」

 

「ネイトさんも使ってみますかぁ?」

 

「いや、人間の俺にはそいつは荷が勝ちすぎる。もっと小さくて小口径の奴なら持ってるけど。」

 

「へぇ~そんな銃が。今度見せてくださいね♪」

 

「いいぞ。で、ノノミ。シロコから軽く聞いてるんだが…ここの全校生徒って…。」

 

「はい、あそこにいた五人で全員ですね。」

 

「そ、そうか…。」

 

「あ、あはは…。詳しい事情は皆がそろってから説明しますね?」

 

と、世間話をしながらシロコたちが待つ部屋に向かうネイトとノノミ。

 

話しているうちに目的の場所に到着した。

 

教室の表札には『アビドス廃校対策委員会』という貼り紙がある。

 

「じゃあ、改めてネイトさんをみんなに紹介しましょうか。」

 

「なんか転校生みたいな気分だな。」

 

「あはは♪転入生って響き、素敵ですね♪」

 

何やら自然と背なかが伸び襟もとをただすネイトにノノミは微笑ながら、

 

「みなさ~ん、ネイトさんをお連れ…。」

 

扉を開けた先は…

 

「許さない…!それ以上、あの人への侮辱は許さない…!」

 

「し、シロコ先輩!暴力はッ暴力はだめです!」

 

目じりを吊り上げ怒りの表情を浮かべるシロコを抑え込む長い耳の眼鏡をかけたの少女と、

 

「…………。」

 

「大丈夫、委員長!?口から血が…!」

 

猫耳の少女が心配するのをしり目に口から血を流しながらうつむく桃色の髪の少女というなんとも混乱した状況だった

 

「え、シロコちゃ…ん?」

 

「シロコ、どうした…?」

 

さすがのこの状況にはノノミとネイトも絶句するのであった。

 

―――――――――――――――

 

――――――――

 

――――

 

――

場面はノノミとネイトが分かれたあたりにさかのぼる。

 

「それにしても…見れば見るほど訳が分からないコートねぇ…。」

 

「生地の手触りは本当に普通の布のコートなのに…。」

 

ネイトから預かった『シルバーシュラウドの衣装』のコートを二人の少女は本当に摩訶不思議という様子で眺めている。

 

どこからどう見てもそれは普通のコートだ。

 

造りこそしっかりしていて値は張るであろうが自分たちでも手に入れられるかもしれない。

 

そんなただのコートが自分たちの意識を容易に刈り取る弾丸を大量に受け止めた。

 

しかも、ネイト自身はほぼ無傷の状態で。

 

「ミレニアムが開発した新素材かしら?」

 

「ん…ネイトさんは外から来た人ってさっきも言った。」

 

「それにミレニアムがそんな技術を流出させるとは思えませんよ。」

 

「それだけじゃないわ。ヘルメット団を一撃で気絶させるレーザー銃。全くもって理解不能だわ。」

 

考えれば考えるほどネイトという存在が理解できない三人。

 

「…これはもうノノミ先輩と戻ってきたら全部話してもらわなくちゃ!」

 

「ほ、本人が話したくないことまで聞き出しちゃだめですよ、セリカちゃん。」

 

と、ネイトの正体を解き明かそうと意気込んだりそれをたしなめる二人の少女。

 

すると、

 

「…ん?」

 

「シロコ先輩どうしました?」

 

「ちょっとコートの胸のあたりを見せて。」

 

シロコが何やら不審な点を見つけた。

 

今まで弾丸がめり込みまくった背中にしか注目していなかったが…

 

「これ…00バックのペレットですね…?!」

 

「ちょっと、どういうことよ…?!」

 

コートの前側、ちょうど胸の位置…もっと言えば『心臓』の位置に集中して散弾のペレットがめり込んでいた。

 

それも一発や二発分では済まない多さだ。

 

「ヘルメット団の銃で…?」

 

「で、でも回収したショットガンは全部ポンプアクションでしたよ?」

 

「そ、それもそうよね!第一あんなに動ける人が一方的にそんな長い時間棒立ちでいるわけないもの!」

 

これほどまで密集した着弾を行うにはポンプアクションでは速射性が足りない。

 

「…じゃあ一体誰がどうやってこんなに散弾を…?」

 

「そ、それは…。」

 

となると…いよいよ結論は近づいている。

 

二人もうすうす気づいているがそれを口には出せない。

 

が、

 

「…ポンプアクションじゃない。それはセミオートショットガンの仕業。」

 

「し、シロコ先輩!?何を!?」

 

「それに私は聞いていた。ネイトさんが委員長をかばう前…委員長の銃が速射する銃声が響いていた。」

 

にべもなく、シロコがその結論を口にした。

 

こんなことが可能な銃、そしてその使い手は…あの場では彼女しかいない。

 

「ん…委員長を問いただそう。」

 

「あ、ちょっとシロコ先輩!?」

 

「と、問いただすって何をするつもりですか!?」

 

いうが早いかシロコはコートをひったくり委員会室へ速足で向かう。

 

二人が追い付き制止されるよりも早く、

 

「あ、シロコちゃん。」

 

「………。」

 

シロコは委員会室にたどり着き彼女と対面していた。

 

「うへー、作業任せちゃってごめんねぇ。いや~おじさんなんだか疲れちゃったみたいで~こりゃ歳…。」

 

さきほどの呆然としていた雰囲気から一変、まるで普段のように軽い調子で話す彼女だが…

 

「小鳥遊ホシノ委員長。聞きたいことがある。」

 

そんなごまかしは許さないと言わんばかりの鋭い口調と目線でシロコは問いただす。

 

「これ、いったいどういうこと?」

 

コートを長机の上に広げ件の部分を指さしながら尋ねると、

 

「あぁ~これぇ?いやぁ、いきなり声をかけられてびっくりしちゃって思わずって奴ぅ~?」

 

なおも調子を崩さず少女はシロコの問いかけに答えるも…

 

「…やむを得ない誤射だった、と言いたいの?」

 

「そ~そ~、あの人にはすまないとは思って…。」

 

「残弾を全弾発射することを『やむを得ない誤射』とは呼べない。」

 

「……あ~。」

 

それはあまりにも無理がある弁明だった。

 

普段の彼女は決して誤射なんかやらない、やったとしてもこんな徹底的にやるはずなんかない。

 

そんなことは付き合いの長いシロコがよく理解している。

 

「委員長、どういうつもり?なんでこんな…『殺す』つもりでネイトさんを撃ったの。」

 

「またまた~そんな人聞きの悪い。第一あの人は無事だったんでしょ?だからもうこの話はおしまいにしようよ~。」

 

「…それは本気で言ってるの?」

 

あまりにも無責任な返答にとうとうシロコの眉間に深いしわが刻まれ無表情がデフォだった顔に怒りが現れる。

 

「しっシロコ先輩、ちょっと落ち着きましょう…!」

 

「委員長も先輩が真面目に聞いてるんだからちゃんと答えて…!」

 

遅れて室内に入ってきた二人も緊迫した空気に飲まれつつも何とかこの場を鎮めようと声をかける。

 

「ダメ、しっかり納得できないと安心できない。委員長は何か変。」

 

「へ、変って失敬だなぁ~。」

 

「じゃあなんでこんなことに?ネイトさんが何かした?」

 

「…初対面じゃん。なにもされてないよ…。」

 

「だったら、どうして?ヘルメット団と間違えた、なんて言い訳は通用しないから。」

 

「………。」

 

なおも続くシロコの追及に徐々に少女は口数が少なくなって行き…

 

「委員ちょ…。」

 

「…うるさい。」

 

「何?」

 

「…うるさい。ウルサイウルサイウルサイ!」

 

「ほ、ホシノ委員長!?」

 

「あいつは『大人』だ、大人なんだ!大人の声が聞こえたから撃ったんだ!悪い!?」

 

 

「どッどうしちゃったのよ、委員長…!?」

 

とうとう少女は耐えきれなくなったのか怒鳴るようにシロコに食って掛かる。

 

普段の穏やかな雰囲気しか知らない少女たちはあまりの豹変ぶりに固まる中、

 

「…大人だから?たったそれだけでネイトさんを?」

 

シロコだけが一歩も退かずに彼女と対峙する。

 

「そうだよ!あんな訳の分からない奴、撃っても問題ないんだよ!」

 

 

「…その言葉は取り消してほしい。撃っても問題ないなんておかしい。」

 

「取り消すもんか!シロコちゃんだって今まで見てきたでしょ!?私たちに手を差し伸べると見せかけて食い物としか見ていない『悪い大人』を!」

 

 

その言葉に後輩二人の顔も曇る。

 

入学して日が浅いが…それでもそんな大人を見る機会はいくらかあった。

 

ましてやこの少女はこの中で最上級生。

 

今までいやというほどそんな『大人』を見てきている。

 

それでも、

 

「ネイトさんは『悪い大人』じゃない。今までの『大人』とは絶対に違う。」

 

同じくらいそのような経験をしてきたであろうシロコはきっぱりと否定した。

 

「どうしてそんなにはっきり言えるの!?第一、シロコちゃんにアイツの何がわかるっていうの!?」

 

 

「ん…分かる。」

 

「どうして!?」

 

「ネイトさんと組んだ時、とても安心できたから。」

 

「~ッ!?」

 

その一言で怒鳴っていた少女は一気に言葉に詰まる。

 

「凄く…安心できた。ネイトさんが私を見ていてくれている、導いてくれる。だから、さっきも普段より力を発揮できた。」

 

「そ、そんなのただの勘違いじゃないの!?シロコちゃんはもともと強いでしょ?!」

 

「違う。いつもよりもっと『余裕』があっただけ。それもネイトさんがいたからもてた。」

 

「そ、そうだとしてもなんで『悪い大人』じゃないって断言できるの!?」

 

「ネイトさんはここに来たばかり。私たちの事情なんて全く知っていない。でも…それでも私たちと協力してこの学校を護ってくれた。」

 

「そんなの…ただの成り行きでしょ…?!」

 

「成り行きだけじゃ普通はそんなことできない。何の見返りもないはずなのにネイトさんは一緒に戦ってくれた。ただ誰かにここに来てほしいと言われただけなのに。」

 

「そ、それはきっとそうしないとアイツの都合が悪い…そう報酬とかが減っちゃうから…!」

 

「報酬?誰が?そんな奇特なことするのはこのキヴォトスにもいない。それに依頼なんてネイトさんは言われてない。ただ頼まれた、それだけ。」

 

「じ、じゃあヘルメット団とかここを狙ったやつらからの刺客…!」

 

「だったら…なんで委員長をこのコートで包んで護ったの?私達なんかよりずっと脆い『人間』のネイトさんが。」

 

「それは…!」

 

淀みのないシロコの言葉、先ほどまでの少女の勢いはどんどんなくなっていく。

 

そして…

 

「ホシノ委員長だって分かっているんでしょ?委員長も…普段より生き生きしていた。」

 

「!」

 

とうとうとどめが刺された。

 

自分でも分かっていた。

 

あの時、ネイトが自分をかばって弾丸を受け止めていた時…とても安心できたことを。

 

共に盾を構えながら進んだ10m足らず、それがかつてないほど頼もしかったことを。

 

「…違う、そんなことない。」

 

だが、認めたくなかった。

 

認めたら…今まで必死に堪えてきた何かが壊れるような気がしたから。

 

「むしろ…あんな大人に守られて…虫唾が走っ…!」

 

だから、あえて自分の心に噓を付きネイトを愚弄する言葉を発そうとした。

 

次の瞬間、

 

「ーッ!!!」

 

「「シロコ先輩!?」」

 

シロコが満身の力を籠めて少女の頬に平手打ちを放った。

 

これにはさすがに固まっておられず眼鏡の少女がシロコを羽交い絞めにして抑え猫耳の少女が少女の様子を診る。

 

と、ちょうどそのタイミングで

 

「みなさ~ん、ネイトさんをお連れ…。」

 

ネイトを引き連れたノノミが部屋にやってきたのであった。

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