―――思想家『吉田松陰』
カイザーの侵攻部隊と防衛部隊が接敵し戦闘が勃発する少し前のこと。
「えッ!?ホシノがどこにいるか見当ついていないの、ネイト兄さん!?」
「あぁ。だが、アル達が来てくれたことから一気に作戦が立てやすくなった。」
「ん…これで一気にカイザーの拠点に襲い掛かれる。」
ネイト、アビドス対策委員会、便利屋68はホシノを救出する作戦会議を行っていた。
「カイザーのアビドス砂漠における拠点は三か所だ。便利屋68と俺とシロコがここに武装車両で乗り込み一気に勝負を仕掛けて…。」
「私が操縦する一天号にノノミ先輩とセリカちゃんが搭乗、適宜航空支援を行います。」
「めちゃくちゃシンプルだね?!…だけどそう言うの大好きだよ、ネイトお兄ちゃん♪」
「部隊の分配はどうするのよ、ネイトさん?」
「それは…。」
アビドス砂漠の地図を広げ概要を伝えようとしたその時、
「あ、あのッネイト兄様のスマホがなってますよ。」
「ん?」
突然ネイトのスマホに着信が入る。
時間がないので画面を一瞥すると…
「…すまない、少し席を外す。」
ネイトには珍しく作戦会議を抜け出し電話に出た。
その相手は…
「黒服、こんな時にいったい何の用だ?」
《こんにちは、ネイトさん。火急の事態というのに急な連絡に応じていただき感謝します…。》
神出鬼没を絵にかいたような人物、ゲマトリアの黒服からだった。
無視するには些か…癖がありすぎる存在である。
「それで用件は?今は忙しい、手短に頼む。」
冷静ながらも普段と比べると若干棘を感じる声音で黒服に尋ねると…
《では、結論から…。小鳥遊ホシノさんはアビドス砂漠、カイザーPMC本部キャンプのメインタワー地下に拘束されています。》
「…何だと?」
彼の口から語られる、いま最も求めている情報が発せられネイトも言葉に詰まった。
「…その確証は?」
《あの地下には…私が小鳥遊ホシノさんを『使用する』前提で建造した実験設備がありまして…。》
話はネイトがアビドスに来るはるか昔にさかのぼる。
黒服は以前よりカイザーPMCと与しホシノをこの会社に勧誘していた。
その対価として黒服がアビドス高校の借金の半分を肩代わりするという条件付きで。
しかし、それは表向きの話。
《私の本当の目的は…『キヴォトス最高の神秘』を実験体として研究し、分析し、理解することでした…。》
黒服はホシノをPMCの傭兵にする気などさらさらなく最初から『モルモット』としてしか見ていなかった。
あいにくホシノは最後の最後まで靡かずそこにネイトが登場した影響もあり、黒服はこの計画を破棄。
それからというものカイザーPMCやカイザーコーポレーションとの付き合いはおざなりになっていたとのこと。
「…お前がなぜホシノに毛嫌いされているかは分かった。」
正直、アビドスを愛するホシノの弱みに付け込んだ黒服の提案は腸が煮えくり返る内容ではあるが…もう済んだこととしてネイトは飲み込む。
「ということは今その実験装置が…。」
《はい…私の承認なしで稼働中です…。あの設備は実験を行わずとも小鳥遊ホシノさんクラスの実力者を容易に拘束できます…。》
「…状況から考えてもホシノがそこにいる可能性は高いな。」
カイザーPMCはその設備を『牢獄』として流用。
確かにホシノがただの牢屋程度で拘束できるわけがない。
彼女がそこにいるという理由としては納得できるが…
「一つ答えてくれ、黒服。なぜそれを俺に教える?」
生徒を『モルモット』としか見ていない…延いては自分すら『観測対象』として見ているような存在がなぜ自分に協力するか、ネイトが不審に感じるのも無理はない。
そんなネイトの問いかけに…
《そうですねぇ…。私も…自分にまだ『怒り』という感情が残っていたことに困惑しているのです…。》
「怒りだと?」
《えぇ…私の『友人』をあのような卑賎な存在と喧伝され…久しく血が沸騰するかと思いましたよ…!》
『怒り』という感情的で単純な理由を答える黒服。
普段あった時でさえたまに見せる探求への興奮以外は冷静な彼にしてはらしくない答えだ。
《ネイトさん、確かにあなたも私にとっては『探究』の対象です…。それをいまさら否定するつもりもありません…。》
「………。」
《ですが…『源流』に認められた私の『友人』である貴方を…カイザー如きが…ッ!》
だが、そんな彼らしくない怒りに震える感情的な答えこそ…
「…分かった、黒服。お前のことを…信じることにしよう。」
彼を信じるに足るとネイトは判断した。
《…信用していただき何よりです。》
「それはそれとして今度一発殴らせろ。」
何やら物騒な約束を取り付けさせるネイトだが
《おやおや…でしたらカイザーを撃ち破った祝宴の際にでも…。》
黒服もそれも一興というつもりか意外にも受け入れ、
「楽しみにしておく。…情報提供に感謝する、黒服。」
《武運長久を祈ります、ネイトさん。》
ネイトは黒服への感謝を、黒服はネイトへの声援を送り通話は終了。
「…皆、聞いてくれ!」
「どうかしたんですかぁ、ネイトさん?」
「確度の高い情報筋からホシノの居場所が齎された!」
通話を終えるや否やネイトはすぐにその情報を共有。
「ホシノはPMCの本部キャンプの地下に拉致されていることが判明した!よって作戦内容を変更する!」
「ちょ、ネイトさん待ってよ!?それって本当に信じられるの!?」
突然の作戦変更にセリカがその情報の正確さを問うも、
「サンクトゥムタワーの騒動の時と同じ情報源だ!」
「ッ!」
ネイトの言葉を聞き、目を見開いて固まる。
「ちょっとネイト兄、どういうことなの?」
「…その時に騒動が起こる前にネイトさんにそのことを教えてくれたところがあったのよ、カヨコ先輩…!」
「じゃあ信用に足る情報源ってことね!」
「そう言うことだ、兄妹!作戦は至ってシンプル、俺たち全員でそこに殴りこむぞ!」
「ネイトさん、北と東の基地はどうするんですか?」
「同時に『吹っ飛ばす』!すでに測的を終えてるからぶっ放すだけだ!」
「ふっ吹っ飛ばすんですか、ネイト兄様!?」
ネイトらしくない脳筋過ぎる対処方法にハルカが驚愕するも、
「ん…大丈夫、ハルカ。それが可能な手段がうちにはあるから。」
「そ、そうなんですか…!?」
シロコがサムズアップしながら心配するなと言ってのけた。
「説明は以上!行くぞ、お前ら!俺達の仲間を取り戻すぞ!!!」
『了解っ!』
作戦も纏まり一斉に出撃準備に移るネイトたち。
「好きなのを持って行け。弾薬もより取り見取りだ。」
「こ、こんな大きなのまであるの…!?」
「あッ!じゃあ私これにするね♪」
「わ、私はこれを使わさせていただきます!」
「あそこでもこれ程の装備はなかったね…!」
便利屋メンバーも各自が普段の得物のほかに武器庫から追加の装備を選んでいく。
「…うん、ばっちりね。みてなさい、カイザー…!借りはきっちり返してあげるわよ…!」
「わぁ~…本当に私の注文通りに組み合わせてくれたんですね、ネイトさん…♠」
「ん…これさえあればカイザーがどんな兵器持ち出してきても絶対に壊せる…!」
シロコたちも事前にネイトが用意していた『特殊装備』を確認、その仕上がりに唸っている。
そして…
「用意できたか?」
「そう言うネイト兄さんは?」
「俺はもう済んでる。奴らを叩きのめす準備はな。」
ネイトもそのPip-Boy内に…今まで使用を控えてきた装備達をあらん限り詰め込んでいた。
装備も準備し終え…
「こっこれはまただいぶゴツイの用意したね、ネイト兄…!?」
「イイねイイね!カチコミに向かうんならこうでなくちゃ!」
「気に入ってもらえたようでよかったよ。」
これまたネイトが用意した『特別仕様』の車に装備に弾薬などを乗せ込み、
「アヤネ、出鼻を挫くのは任せたぞ!」
「了解しました!ネイトさんやアルさん達もお気をつけて!」
「そっちもね!新生便利屋68の実力、カイザーに見せつけてやるんだから!」
アヤネたちは一天号で飛び立ち、車両部隊の面々はネイトが運転する車両を先頭にアビドス高校を出発。
砂煙を巻き上げ…自分たちの戦場へと突き進んでいった
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――――――――――
―――
「…了解した。直ちに部隊に出撃命令を出す。」
アビドス砂漠のカイザーPMC本部キャンプ指令室でカイザー理事は部下を通じて出撃命令を受けていた。
「部隊の状況はどうだ?」
「はっ!本部キャンプ諸兵科一個旅団並びに東部方面部隊並びに北部方面部隊と同地に編入した『対デカグラマトン大隊』、すべて出撃準備完了しています!」
このアビドス砂漠に展開している部隊はキヴォトス各所のカイザーPMCの拠点の中でもかなりの規模を誇る。
オートマタはもちろん、戦車・戦闘ヘリ・パワーローダーだけでなく…ある『新兵器』も相当数配備されている。
「了解した。各部隊に通信をつないでくれ。」
「少々お待ちを。」
理事は部下に通信をさせている間に…
(本来はゲヘナ・トリニティ部隊と連携して出撃するはずだったが…まさか一時間足らずで叩き潰すとはな…!)
このアビドスとの戦争について考えを巡らせる。
確かにアビドスの戦力は驚異的といえる。
どうやってこれほどまでの戦力をそろえたか不思議でならない。
そんなケテルまで動員し理外の戦力を保有するアビドスだが…
(偵察ドローンによるとケテルを含め機甲戦力はすべてで払っている…!今がアビドス高校を占領するチャンスだ…!)
『数の差』というのはどうあがいても覆せない。
今度こそ、文字通り『総力』をもってアビドスは侵攻部隊を排除した。
本拠地のアビドス高校にいるのは最低限の戦力と多数の避難民のみ。
(残念だったな用務員…!戦いはどこまで行っても『数』が物を言うのだ…!)
「理事、通信が繋がりました!」
部下がアビドス砂漠に展開する各部隊に通信を繋げたところで一旦考えを止め、
「アビドス砂漠に展開中の部隊総員に告げる!現在、アビドス勢力は出払っている!今こそチャンスだ!直ちに出撃しアビドス高校を占拠せよ!」
各部隊に檄と出撃命令を下す。
《東部方面部隊、了解!》
東部部隊の指揮官は雄々しい声で答え、
《北部方面部隊並びに北方対デカグラマトン大隊、了解!直ちに出げ…!》
北部部隊の指揮官が鋭い声で返答し…ようとしたが…
《……………。》
「…?おい、北部方面部隊?どうかしたか?」
《……………。》
突如通信が打ち切られ理事が呼びかけてもノイズを垂れ流すのみになってしまった。。
しかも、
「理事!東部方面部隊も通信に答えません!」
「なんだと…!?」
先ほどまで通信していた東部方面部隊も通信が途絶。
仮にも大企業のPMC、通信設備は一級品の物が使われている。
ここ一帯を覆いつくす砂嵐でも起きなければ通信障害など起きないはずだ。
「すぐに調べろ。電話でもいい、誰か連絡を…。」
なにがあったかすぐに理事が調査を指示する。
その時だった。
突如として指令室を大きな揺れが襲う。
「なっなんだ!?地震か!?」
理事は慌てて机上の落ちそうなものを抑える。
周りの部下たちも姿勢を低くしつつ資料を抑え揺れが収まるのを待つ。
その揺れはすぐに収まった。
「珍しいこともある物だ…!キヴォトスで地震などいつぶりだ…!?」
理事も長くキヴォトスで過ごしているが地震の経験など数えるほどしかない。
それがこのタイミングで起こったことに言い知れぬ不安を覚えた。
「(まぁいい…)おい、早く基地と通信を…。」
気を取り直し通信が途絶した各基地への通信を試みようとした。
すると…
《こ、こちら監視班!りっ理事、外を!外を見てください!》
基地の周囲を監視していた隊員から非常に慌てた様子の通信が入ってきた。
「何?おい、モニターに監視カメラの映像を回せ。」
「了解!」
ただならぬ様子に理事もすぐに部下に指示を出しメインディスプレイに外部の様子を表示させる。
それを見た途端、
「な…んだ、これ…は…!?」
理事は言葉を失った。
周りの部下も同様だ。
なぜならアビドス砂漠の『二か所』で…『キノコ雲』が立ち上っていたのだ。
「お、おいっ!?あの座標は!?」
「し、少々お待ちを!!!」
急いで部下がドローンや測量などでキノコ雲が立ち上っている座標を調べると…
「そ、測量完了…!東部方面隊、北部方面隊の拠点の座標と…一致しました…!」
「なっなんだとッ!?」
寸分の狂い無く…アビドス砂漠に点在する各拠点の座標と合致していた。
「何が起こった!?事故かどうかすぐに調べろ!!!」
「は、はッ!」
理事はすぐに状況を把握するために調査を命じた…その時だ。
「しょ、正面監視班より緊急連絡!こちらに所属不明の装甲車が三台接近中!」
「まっまさかッ!?」
新たな脅威がカイザーPMC本部キャンプに迫りつつあった。
――――――――――――
数十秒前のこと、
「かかってこい!相手になってやるッ!!!」
砂塵除けのゴーグルをつけたネイトがカイザープレジデントに宣戦布告に対する答えを叩きつけたと同時に砂漠の彼方の二か所に計九筋の流星が降り注いだ。
次の瞬間、その場所から爆音とキノコ雲が立ち上り直後に揺れが砂漠をもはや原形をとどめぬほど重装甲化した車両で駆け抜けるネイトたちにも伝わる。
「アヤネ、アイボットからの弾着観測情報はどうだッ!?」
プレジデントの答えを聞くことなく電話を切り後方を匍匐飛行で追いかけてきているアヤネに『戦果』を尋ねると、
《ハイっ!東部、北方両拠点の壊滅を確認!パーフェクトゲームです!!!》
《こちらセリカ!あれが出張中にクラフトした新兵器の性能なの!?》
《こんなところまであんなのを飛ばせるなんて…すごい射撃性能ですねぇ…!》
「よしッ!ざまぁみろ、カイザーPMC!隠し玉を持ってるのはお前らだけじゃないんだよ!!!」
懸念していたアビドス砂漠のカイザーPMCの基地二か所壊滅の報告を受けガッツポーズをとった。
《ちょっとネイト兄さん!?あの流れ星は何!?》
《うっひゃー!何使ったらあんな爆発起るの、ネイトお兄ちゃん!?》
この現象に心当たりのないアル達は驚愕するが、
「そう言えばアル達には言ってなかったな!紹介しよう!」
こんな芸当ができる代物は…あの『艦』しかない。
アビドス砂漠から1,000と数百㎞先の廃墟区画水没地帯にて…
「アビドスよりモールス信号!…『全弾命中、貴艦の支援感謝す』とのこと!」
「うおおおおおおおおおお!!!」
アヤネから送られてきた報告に戦艦マサチューセッツのCICのクルーたちは歓喜していた。
そう、あのキノコ雲と地震のような地揺れはマサチューセッツの主砲『80口径10インチ三連装ガウスキャノン』による超長距離斉射砲撃によるものだ。
当初は各砲塔が本部キャンプを含めるそれぞれの拠点を砲撃する手はずだったがホシノ救出のことも考え作戦を変更。
東部方面拠点には4発、規模が大きい北部方面拠点には5発が発射された。
まずはコンマ数秒早く『両用フレシェット砲弾』が両拠点に2発と3発ずつ飛来し炸裂。
一発に付き数十万本にも及ぶ高強度合金の雨が極超音速で降り注ぎ地上設備のすべてを貫く。
戦車もパワーローダーも建築物も一瞬のうちに蜂の巣と化したところに…とどめが刺される。
『8インチプラズマ昇華弾』、分厚いタングステン弾殻の中に爆薬の代わりのプラズマ炸裂機構を内蔵したマサチューセッツの『徹甲榴弾』である。
鉄の約2.5倍という単一の物体では最も高い比重と融点を有するタングステン。
その運動エネルギーは…およそ5GJ。
マグニチュード3の地震エネルギーの2.5倍、TNT1t強が炸裂したときのエネルギーの総量を優に超える。
そんな凶悪としか言えないエネルギーの塊が各拠点に2発ずつ着弾。
着弾の衝撃でまずは蜂の巣となり強度が著しく低下した地上構造物がすべて粉砕。
何せ地震級の威力だ。
マグニチュード3といえど地表もしくは地下数十m程度で起きればその揺れは計り知れないだろう。
そして、着発式信管によりプラズマが炸裂。
摂氏数万度の超高温によりタングステンは一瞬で蒸発、『昇華』を起こす。
いわば…『金属の蒸気爆発』が発生。
砂を容易にガラス化させるほどの超高温の爆風が生まれ周囲を焼き尽したことによりキノコ雲が立ち上ったのだ。
《ネイト兄様、戦艦なんか持ってるんですか!?》
《カイザー…ホントに何も知らずに喧嘩売ってきたんだ…。》
「ん…何はともあれこれでホシノ先輩救出に集中できる…!」
「そろそろ基地が見える!アヤネ、タイミングは任せた!」
《お任せを!》
《皆、私たちが下りれるように暴れてちょうだいね!》
《ここにいる間も援護はお任せくださいねぇ♪》
電柱や家屋の屋根が所々飛び出した砂原を突破し砂丘を超えたところでとうとうカイザーPMC本部キャンプが見えた。
「行くぞ、シロコに兄妹たち!誰に喧嘩売ったか、奴らに思い知らせるぞ!!!」
「ん…ホシノ先輩を攫ったことをジャンクになるまで後悔させて見せる…!」
《任せて、ネイトお兄ちゃん!ハルカちゃんと一緒に吹っ飛ばしまくるから!》
《は、ハイっ!吹っ飛ばします!ネイト兄様やアル様に皆さんの邪魔をするなら全部吹っ飛ばします!》
《久々の大仕事ねってうわっぷ!?かっカヨコ、フラフラしないで!》
《無茶言わないでよ、アル…!こんなゴツイの運転するなんて久々なんだから…ッ!》
そのまま砂丘を駆け下り正面ゲートに一気に接近する。
「き、来たぞ!!!アビドスの連中だ!!!」
「迎撃用意、絶対に突破させるなっ!!!」
当然、そこにはカイザーPMCの警備部隊が展開し車止めの遮蔽物も設置されている。
ライフルだけでなくさらに大型のオートマタがロケットランチャーを構えネイトたちの接近に備え、
「構えろ、射程まで引き付けるんだ!!!」
避けきれない間合いまで射撃を待機する警備部隊。
だが、彼らの間合いにネイトたちが踏み込む寸前で…
《一天号、航空支援を開始します!!!》
「なッ奴らのヘリだと!?」
今度はベルチバードが砂丘を超えてその姿を現す。
起伏の多い砂漠地帯、そこを地面すれすれに飛行してきたのでレーダーにも捉え切れなかったので彼らにとってはまさに予想外の伏兵だ。
そんな警備部隊に向け、二門の機関砲から…容赦なく高出力レーザーの弾幕が放たれる。
核融合エンジンに換装したことによって復活したいわばベルチバード『本来』の武装だ。
「レ、レーザー!?あのヘリレーザーをグハッ!?」
「か、隠れろ!喰らったら一たまりもなガッ!?」
光速かつ弾丸とは比べ物にならない射程を誇る光の暴力が警備部隊に降り注いだ。
中には車止め用の障害物に身を隠すものもいたがレーザーは容赦なくそれごと貫きオートマタ達を次々と溶解させていく。
そして、
「げ、ゲートが穴だらけに!?」
「鋼鉄製だぞ!?なんて出力してやがるんだ!?」
レーザーは固く閉ざされた分厚いゲートに照射され蜂の巣にしていく。
ところどころが赤熱して崩れ去り、最早ゲートとしての役目は期待できないだろう。
《障害排除、これより基地内防空拠点への対処に移ります!》
アヤネたちの役目の第一弾は終わり、すぐさま次の目標へ。
既にアイボットの偵察によって防空設備の場所は割れている。
そこに多連装ポッドに装填された連邦製のミサイルを降り注がせ次々と無力化していった。
その間にネイトたちの車列は一気に接近、
「来やがれ、ガラクタども!!!」
歩兵機動車『ハンヴィー』を基にフレームや装甲を強化、フロント部分に『Don't Stand in Front.』と描かれたカウキャッチャー状のドーザーブレードを装着したネイトの車両が突入。
車除けの障害物を跳ね飛ばしつつゲートに迫り、
「攻撃開始…!」
天井から身を乗り出したシロコがM2重機関銃を生き残りのオートマタに向け掃射。
既に体勢を崩されたところに強烈な一撃、オートマタ達はなすすべなく粉砕されていき…
「突入!!!」
ボロボロになったメインゲートにそのままぶち当たり…
「げ、ゲートが!?」
「ぶがっ!?」
穴だらけのゲートに車両の突撃を防ぎきる強度はとうに無くなっており粉々に砕け車両が容易に通過できる穴が開いた。
周辺のオートマタの中にはその破片を食らい破壊されるものも続出。
「撃ちまくれ、シロコ!的はいくらでもいるぞ!!!」
「ん…全弾カイザーにあげるよ、超音速で…!」
『ぎゃあああああああ!!?』
そのまま基地内を駆け抜けながらシロコだけでなくネイトも片手でアサルトライフルを構え周囲のオートマタに向け発砲。
「イエェェェイッこんなド派手なのはッじめてぇ♪」
「い、行きます!大暴れしちゃいます!」
続いて突入したムツキとハルカが乗った車両。
「じ、邪魔するなら死んでください死んでください死んでくださいぃ!!!」
「その調子だよ、ハルカちゃん!んじゃ私のもッ食らえええええ!!!」
ムツキは愛銃の『トリック&トリック』を手あたり次第に撃ちまくりハルカはオートマチックグレネードランチャー『Mk19』をぶっ放しオートマタをフッ飛ばしていく。
「あぁッもう滅茶苦茶…ッ!」
「でもこれでこそアウトローってもんよ、カヨコっ!」
そしてしんがりを務めるカヨコとアルが乗った車両。
「うちらはアルがメイン火力だから気張ってよ…ッ!」
「もちろん、兄さんがくれたコレがあるなら鬼に金棒よッ!」
カヨコはドラムマガジンを挿入したMP5Kを撃ちまくりアルは…巨大な銃を取り出し構える。
『ヘカートⅡウルティマラティオ』、50口径弾を用いるボルトアクション式のアンチマテリアルライフルである。
アルは門を越えてすぐ上にあるコントロールルームに素早く照準を定め発砲。
放たれた弾丸は狂い無く窓を貫き…コントロールルームが爆破された。
(…なななな、なっ、なによこれーーーーーー!!!???)
想像以上の威力に内心で白目を剥きつつ驚愕するアル。
なにを隠そう、アルのヘカートⅡに装填されている弾丸は『通常』に非ず。
『50口径りゅう弾』、12.7㎜弾の内部に連邦製特殊炸薬を詰め込んだ薄殻榴弾である。
今回、ネイトがヘカートⅡ用としてアルに渡したのはすべてこの弾薬だ。
そしてなぜか…アルが使うと彼女の神秘の影響か爆破の威力と範囲が増すという謎の強化が入っている。
「驚くのはあとにして撃ってよ、アル…!」
「…はッ!そっそうね!威力が上がるのはいいことだわッ!」
気を取り直しアルも周囲のカイザーPMCに向けヘカートⅡを発砲。
小口径砲弾もかくやの如くの爆発が50口径弾の衝撃力をもって襲い掛かる。
元よりアルは腕っ扱きのスナイパー、ヘカートⅡだとしてもその技量で巧みに操り撃ち抜いていく。
「HQっHQ!敵は基地内に進入、車両で暴れ回ぐあッ!?」
「うッ撃てッ!ただの装甲車だ、ロケットの一発でもブチ込みゃ終わりだッ!」
次々に破壊されていくオートマタ達の中でもなんとかしようと大柄なオートマタが『パンツァーファウスト3』を発砲。
だが、
「させるかよ。」
V.A.T.S.を起動し索敵を行っていたネイトが素早く察知、即座に照準を定めアサルトライフルを発砲。
5.56㎜弾は吸い込まれるように発射されたロケット弾に飛翔し…
『グアアアアアアアッ!!?』
発射した直後に爆発、周囲にいた同型のオートマタが持つ『パンツァーファウスト3』の弾頭にも誘爆し大爆発を起こした。
「よし、各車別れろ!手筈通りにな!」
《りょ~かいっ、まっかせてよ!》
《ネイト兄さんも気を付けてね!》
と、ここで車列は散開しそれぞれの役目を果たすため基地内を駆け抜けていく。
ネイトもシロコもノノミもセリカもアヤネもアルもムツキもカヨコもハルカもその目に宿す決意はただ一つ。
『ホシノを救う』、その決意の矛先が…カイザーPMCに今まさに襲い掛かる。
Who Dares Wins
危険を冒すものが勝利する
―――イギリス陸軍『特殊空挺部隊(通称:SAS)』の標語