Fallout archive   作:Rockjaw

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最も危険なことは、敗北よりもむしろ自分の敗北を認めるのを恐れることであり、その敗北から何も学ばないことである
―――革命家『ウラジーミル・レーニン』


Operation: Sperm Whale Opera Part6

9:30、テレビを通じた声明と動画サイトに生配信でキヴォトス全土にW.G.T.C.の意思を広めたネイト。

 

今から約2時間後、11:40にはカイザーが保有する軍需工場に一斉攻撃を仕掛けるのだが…

 

「…さぁどうする、アル?」

 

「…レイズよっ、兄さん!」

 

「じゃあおじさんはコールだねぇ。」

 

「…ダメね、私はフォールドするわ。」

 

「じゃあ私もコールするね、アルちゃん♪」

 

「俺もコールで勝負だな。」

 

格納庫の一角、ちょうど手隙になった面々でテキサスホールデムを興じていた。

 

気を抜くのはよくないがあまり張り詰めすぎてもいいことはないので気分転換がてら少し遊ぶことにしたのだ。

 

ちなみに現金を賭けるわけにはいかないので基地のそこら中に散らばっていた空薬莢がチップ変わりである。

 

「ん…じゃあショーダウン。…ネイトさんがフラッシュ。アルは役無しでホシノ先輩はフルハウス、ムツキがスリーカードだね。」

 

「うへへへ~、儲けさせていただきやしたぁ~♪」

 

「行けると思ったんだけどなぁ。」

 

「さすがにちょぉッと厳しかったねぇ。」

 

「降りててよかったわ…。」

 

結果はホシノの勝ち、ベットされた空薬莢が全部ホシノの元へ行く中…

 

「…で、兄妹。やっぱ役無しだったか。」

 

「なぁんで皆乗っかって来るのよぉーッ!?」

 

この中で唯一役無しで勝負を仕掛けたアルが白目を剥き頭を抱えて絶叫する。

 

「だって、アルちゃんったら完全にムキになってたんだもん。」

 

「あれだと勝負下ろさせたい感がバレバレだよぉ、アルちゃん♪」

 

「ポーカーで一番駄目なのは『感情を露にする』ことだぞ。」

 

「だったらムツキだってずっと笑ってたじゃない…!」

 

「ずっと笑い続けることができるんならそれも立派な『ポーカーフェイス』さ。」

 

「クゥ…も、もうワンゲームよ!」

 

と、悔しいのかアルがもう一番を求めていると…

 

《こちらキヴォトス打通部隊より番長!親分、あと少しで到着するぜ!!!》

 

テーブルの片隅に置いてあった無線機から番長の通信が流れてきた。

 

「こちらネイト、了解した。最後まで気を抜くなよ。…じゃあ俺は出迎えに行ってくる。誰か続きやってていいぞ。」

 

その通信に答え、ネイトは席を立ち正面ゲートへと向かっていく。

 

「…おじさんたちも行こうか、お出迎え。」

 

「…そうね、ここまで夜通しできてくれたものね。」

 

指揮官が向かったのでホシノやアル達もゲームを切り上げネイトの後を追うのであった。

 

その後、正面ゲートに立ちしばし待っていると…

 

「…お、来たな。」

 

甲高いエンジン音が微かに聞こえはじめ地面も揺れ始めた。

 

そして、

 

「おぉやっぱりクルセイダーと比べるとかなり大きいねぇ。」

 

「あれじゃ万魔殿の戦車も手も足も出ないだろうね。」

 

小高い丘の稜線を超えアビドスの戦車『M1A4E2 Thumper』や自走砲に野砲用牽引トレーラーの車列が姿を現した。

 

「よかった。通信では聞いていたが損失は0だな。」

 

「げ、ゲヘナを無傷で突破するなんてすごいです…!」

 

「風紀員会と行動を共にしていたのもあるでしょうね。」

 

「いやぁ~まさか風紀委員長が直々にお墨付きで同行するとは予想外だったねぇ。」

 

「いろいろありましたけどおかげで後方の安全は確保できましたから感謝ですねぇ♪」

 

色々治安が終わっているキヴォトスの中でもかなり『連邦』に近いゲヘナを突破できたことに一先ずは胸をなでおろす一同。

 

そうこうしているうちに先頭の戦車、つまり番長が操るM1A4E2 Thumperが目の前までやってきて…

 

「待たせたな、親分!キヴォトス打通部隊、ただいま到着したぜ!」

 

操縦席のハッチを空け番長がネイトに到着を報告する。

 

「無事なようで何よりだ、番長。ここまでご苦労だったな。」

 

「やぁやぁ番長、昨日は心配かけてごめんねぇ。」

 

「ホシノの姉御も無事でよかったぜ!」

 

「ん…そういえばゲヘナの風紀委員長は?」

 

「ゲヘナ学区を出るあたりで別れたんだ、シロコの姉貴。カクカクヘルメット団の連中の後始末は引き受けてくれるってさ。」

 

「…なんだか今までのヒナとは似ても似つかないわね…。」

 

「そりゃ同感だったぜ。なんか…聞いてたより物腰柔らかでしたたかな奴だったなぁ…。」

 

「分かった。一先ず駐機場は基地をはいって右だから進んで行ってくれ。点呼が終わったらひとまず休憩だ。」

 

「了解ッ!じゃあまたあとで、親分に皆!」

 

報告を終えた番長はそのまま指示された駐機場へと向かう。

 

「親分、こんな基地一人で落としちまったのか!?」

 

「なぁに、現役時代はもっとデカいのを落としてたから余裕はあったさ。」

 

「オジキ…アタシらの時って加減しててくれたんだな…。」

 

「無意味に叩き壊すのが好きじゃないだけさ。」

 

「アニキ~、朝飯何~?」

 

「すまないがレーションだ。ミスター十六夜にあとで連絡して食材を届けてもらう。」

 

すれ違っていく戦車や自走砲にトレーラーの生徒たちとそんな会話を交わしながらキヴォトス打通部隊はどんどん基地内に入っていく。

 

こうして着々と最終作戦への準備が着々と進むW.G.T.C.部隊。

――――――――――――――

 

――――――――

 

―――

そんな今のところは万事順調なアビドス陣営に対しキヴォトス某所のカイザーインダストリーの軍需工場では…

 

「退けッ!!!こんなあぶねぇとこにいられっかよ!」

 

「早く作業に戻れっ!!!作業を続けろッ!!!」

 

「なんでだよッ!?早く逃げねぇとフッ飛ばされんだぞ!?」

 

「俺達に死ねってのかよ、あぁ!?」

 

「うるさいッ!!!この工場の兵器がこの戦争の…!」

 

作業員と警備のオートマタとの間で最早暴動一歩手前の様相を呈していた。

 

昨日の開戦から一気に配備されていた兵器が消滅したカイザーPMC。

 

その補充のために昨日から夜通しフル稼働していたのがここのようなカイザーグループが保有する軍需工場だ。

 

普段からブラック気質極まりないカイザーインダストリー。

 

そんなお達しがあっては普段よりもさらに過酷なノルマが課され疲労困憊の作業員たち。

 

そんな作業員の僅かな休憩中に目の当たりにしたネイトの声明映像。

 

さらに直後のライブ配信によって通告された軍需工場への一斉攻撃。

 

その情報はいっせいに作業員たちの間に広がり、

 

『ここにいたらヤバい!』

 

と、当然の結論を出し脱出しようとしたところで警備に当たっている『カイザーセキュリティ』の社員がそれを阻み現在に至っている。

 

ただでさえカイザーPMCの拠点は壊滅状態。

 

そこへ来て迫る軍需工場の破壊へのタイムリミット。

 

カイザーが出した結論は限界まで兵器製造を続け兵力を立て直すことを決定。

 

そのために作業員を逃がすわけにはいかない。

 

「下がれ、下がらないと撃つぞッ!」

 

「こんな工場に命を賭けろってか!?」

 

「ザけんなよッ、そんな給料も払ってねぇくせにっ!!!」

 

「知ってんだぞ、工場長とかはもう逃げだしてるってなぁッ!!」

 

銃口を向けても一切怯まない作業員たち。

 

「たっ隊長、指示を!」

 

最早言葉での説得は不可能と言っていいだろう。

 

こちらには銃があるが人数差が圧倒的だ。

 

それでも…

 

「えぇいっ構わん!発砲許可は出ているんだ!」

 

騒ぎを収めないことには始まらない。

 

「撃てぇッ!!!」

 

隊長の指示で警備員は迫る作業員に向け発砲。

 

「うぐッ!?」

 

「グハッ!?」

 

「や、奴ら撃ちやがった!!!」

 

「持ち場に戻れ、二度目はないぞッ!!!」

 

さすがはキヴォトス人、弾丸の1~2発では死にはしないものの気絶する者も続出。

 

それでも仲間が撃たれたことで一旦はその勢いは衰える。

 

「安心しろ、ギリギリになったら逃がしてやる!だが、それまでは仕事を続けてもらおうかっ!!!」

 

警備隊長がなおも銃口を作業員たちに構え仕事に戻るように命じる。

 

だが、警備員たちは完全に見誤っていた。

 

『生存』に対する生命体の貪欲さを。

 

その時、エンジン音が周囲に鳴り響く。

 

「なっなんだ…!?」

 

不審に思った警備員たちだが正体はすぐにわかった。

 

作業員の群衆の背後から…

 

「お前ら、退けぇッ!!!そんな奴ら吹っ飛ばしてやらぁッ!!!」

 

「せ、戦車だとぉッ!!?」

 

「俺らが作ってんだ、動かせねぇ訳ねぇだろうがよ!!!」

 

この工場で製造された戦車…いや、砲塔も機銃もなくエンジンだけ搭載された車両部分が轟音を上げて警備隊に迫る。

 

そう、ここは軍需工場。

 

武器ならいくらでもあるうえ自分たちが作っているので操り方も熟知している。

 

それもその一両のみではない。

 

「やってみたかったぜ、こうやってテメェらを吹っ飛ばすのをよぉ!!!」

 

「今までちょろまかしてきた給料分、楽しませてくれよぉっ!!!」

 

「い…行けぇ、やっちまえっ!!!」

 

建物の壁を突き破りさらに未完成の戦車が複数台合流し作業員たちの声援を受け突撃する。

 

「うッ撃て!!!なんとしても止め…ッ!!!」

 

警備員たちは何とか戦車を止めようと射撃するも所詮は警備に使われる程度の火器だ。

 

拳銃やライフルの弾丸は未完成の戦車の装甲を貫けず…

 

『グアアアアアッ!!?』

 

立ち塞がれるわけもなく警備員たちは吹き飛ばされてしまった。

 

「行くぞッ、とっととこんなとこおさらばだ!!!」

 

「「「「「うおおおおおおおっ!!!!!」」」」」

 

脱出の障害は排除された。

 

作業員たちは一斉に工場の出口に向かって駆け出す。

 

作業員たちの中には、

 

「今まで世話になったな!!!退職金代わりに製品は貰ってくぜ!!!」

 

「どっかの学校にもってきゃいい値段で買ってくれるだろうからな!」

 

この工場で作られた戦車や車両、銃器や果てには弾薬まで価値のありそうなものを抱えて出ていく者たちもいた。

 

と、こんなことが各地の軍需工場で巻き起こり作業員は大暴れをして工場を脱出完了。

 

攻撃の一時間前にはもぬけの殻となり、

 

「そろそろだな…。最後にド派手なモン見れると思うと楽しみだぜ。」

 

「カイザーに喧嘩売るなんてどこの馬鹿野郎かと思ったがこりゃキヴォトスがホントにひっくりかえるな…!」

 

工場を見渡せ安全を確保できる距離まで離れその時を待つ従業員たち。

 

そして、時計が11:40を差したその時…約束された破壊が工場に降り注いだ。

 

ある工場には流星の如きガウスキャノンの砲撃が。

 

またある工場には雨の如き10発近い巡航ミサイルが。

 

丹念に念入りに徹底的に破壊しつくされた。

 

これで…カイザーは兵力面だけでなく兵站をも奪われたのであった。

――――――――――――――

 

――――――――

 

―――

11:50、すでにモモッターやニュースなどで軍需工場の壊滅がキヴォトス中に知れ渡った頃、

 

「まさかお前さんから連絡が来るとは意外だったぞ。」

 

管制塔でネイトが電話に出ていた。

 

その相手は…

 

《キキキッ大暴れしているようだな、ネイト社長。》

 

ゲヘナを統べる万魔殿議長のマコトだった。

 

《昨晩の演説は久々に心が躍ったよ。まさかあのような方法でキヴォトス中に貴様の存在を知らしめるとはなぁ。》

 

「そりゃどうも。いろいろやってきたがあんなのは初めてだったがな。」

 

《だいぶ手馴れているようだったぞ?どうだ、今度我が万魔殿の演説の原稿でも…。》

 

「そう言うのはそっちの宣伝相にでも頼んでくれ。」

 

《キキキッつれないな。》

 

そんなジャブのような世間話を繰り広げつつ、

 

「で、ホントは一体何の用だ?」

 

ネイトはこの電話の本当の意味を尋ねるため切り込むと、

 

《なぁに…『ゴング』の件だ。》

 

マコトも両者で通じる通称の話題を切り出した。

 

「あぁ、あの事か。話は聞いてるぞ。」

 

《我々も『無関係』ではないからな。独自にやらせてもらったぞ。》

 

「それは動くよな。で、色々分かったのか?」

 

《さぁ?それをタダで話すわけにはいかんなぁ?》

 

電話越しだというのに口角が吊り上がっていることが分かるマコト。

 

《これほどの詳細な物を手に入れるのは貴様らの助けになると思うがなぁ?》

 

どうやら今回コンタクトをとってきたのはある情報をネイトに売りつけるためのようだ。

 

マコトは確信していた。

 

ネイトは情報を非常に重要視している。

 

それは受信する側であっても発信する側であっても同様だ。

 

マコトが言う情報はネイトにとっては喉から手が出るほど欲しい物のはずだ。

 

W.G.T.C.の財務状況は知れ渡っている。

 

この戦争にゲヘナはあまり絡めないが少しは美味しい思いをしたいのだろう。

 

だが…

 

「う~ん…別にいいかな。」

 

《…何?》

 

意外にもネイトはそっけなく断った。

 

《いっいらないとはどういうことだ…?!》

 

まさかの回答に想定外だったのか言葉に詰まりながら再確認するマコトに、

 

「………ははぁ~ん、そう言うことか。」

 

ネイトはあることに勘付いた。

 

《なっなんだ?!何を知っている!?》

 

「さぁ?それをただで話すわけにはいかんなぁ?」

 

《クッ、もったいぶりおって…!》

 

仕返しと言わんばかりに先ほどと全く同じ言葉で返されマコトの口元がゆがむ様子が目に浮かぶようだ。

 

「冗談はさておき。売るならもう『片っぽ』にでも売りつけたらどうだ?あっちの方がいい値段で買ってくれるだろ?」

 

《…無論そのつもりだ。貴様からも『気持ち』を受け取りたかったが仕方ない…。》

 

現状、ネイトの意思を変えることは不可能と判断しマコトは名残惜しくはあるが諦めることに。

 

するとタイミングを見計らったように、

 

「おっとすまない、キャッチが入った。おそらく奴らだから切るぞ。」

 

電話のボタンが点灯し、新たに通話があったことを知らせる。

 

《社長、我々が売りつけるまで終わらせるなよ?》

 

「それは向こう次第だな。あぁそうだ、最後に一言。」

 

《なんだ?》

 

「…部下への指令はちゃんと注文付けることをお勧めするぞ。」

 

《なっなんだと?どういう…。》

 

「詳しくは赤毛のお嬢ちゃんたちにでも聞いてくれ。」

 

《はぁッ!?アイツいったい何を…!?》

 

「んじゃ切るぞ。」

 

《まっ待てしゃ…。》

 

意味深なアドバイスの意味を問い詰めようとするのも待たずにネイトはマコトとの通話を切った。

 

ちなみにその後…

 

「な…何ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃッ!!?!??」

 

目をかっぴらいて万魔殿中に響き渡る絶叫を上げるマコトなのであった。

 

閑話休題

 

「フンッ俺を出し抜こうなんか20年は早いぞ。」

 

ネイトはマコトに対して少し口角を吊り上げるも、

 

「はい、もしもし?」

 

すぐに調子を元に戻しキャッチの入った通話に出ると…

 

《やってくれたな、若造…!》

 

「よぉタコ野郎、帰ってきたか。」

 

相手はプレジデント、声だけで腸が煮えくり返っているのが手に取るようにわかる。

 

ネイトの容赦ない暴言でさらに怒るかと思ったが、

 

《…今はいい、互いに紳士として振舞おうではないか…!》

 

何とか飲み込んで話を進める。

 

「紳士、ねぇ?で、内容は?」

 

《講和についてだ…!》

 

「ほぉ、考える気になったのか?」

 

カイザー側からの講和の申し出にネイトは少々姿勢を正す。

 

《飲もう…!》

 

「何をだ?」

 

《貴様が昨日話したアビドスの自治区の主権譲渡、それを飲もうと…!》

 

どうやら昨日のネイトが出した講和の条件を受け入れようというのだ。

 

が、

 

「話にならん、脳みそもタコ並みならもう少し進化してから連絡して来い。」

 

ガチャンとネイトは受話器を置いた。

 

「さぁてアル達が昼飯作ってくれてるらしいから食べに…。」

 

プレジデントからの電話などなかったように席を立ち昼食を食べに行こうとするがすぐさま着信が入る。

 

「ハイ、もしもし?」

 

《きっ貴様どういうつもりだ!?》

 

相手は当然プレジデント、先ほどまで抑え込んでいた怒りを隠そうともせずぶちまけるが…

 

「それはこっちのセリフだぞ、プレジデント。」

 

《なんだとッ!?》

 

「この世のどこに…一度断られた講和条件で納得する奴なんかいる?」

 

《なっ…!?》

 

呆れたようなネイトの言葉にその勢いも急に衰える。

 

「しかも俺はな…もう二度手を差し伸べてるんだぞ?」

 

《二度だと…!?》

 

「一度目はコンストラクションとの取引、俺は約200億近い収入を捨ててまでそれで手をひこうとしたのにお前らは戦争を吹っかけてきた。」

 

《それは貴様が強引に…!》

 

「二度目は昨日の講和だ。あれを受け入れてくれたらそのほかのことは別にどうでもよかったのにお前らは戦争を続ける意思を見せた。」

 

ただただ淡々とこれまでのカイザーとの構想について語っていき…

 

「二度、慈悲は見せた。…三度目の慈悲を貰えるとでも思ったか、あぁ?

 

《~ッ!?》

 

おどろおどろしい口調になったその声にプレジデントの喉が引絞られるのが伝わってくる。

 

「あの時言ったよな、『嘗めるなよ』と。じゃあ俺も言おうか…嘗めるなよ、ポンコツ…!」

 

《ぽ…ポンコ…ツ!?》

 

「二度差し伸べた手を叩いておいて…その程度でもう止まるわけがないだろ?」

 

《き、貴様は何を望むんだ…!?》

 

今まで聞いたこともない、別人としか思えないネイトの声に慄きながらもプレジデントは尋ねるも、

 

「そんなこと聞かなきゃわからないのか?だったら直接教えに行ってやる、俺達の部隊を引き連れて…貴様らを食い散らかしてやるよ…!」

 

ネイトはその問いに答えず…D.U.突入作戦の決行をその答えの代わりにした。

 

「じゃあな、ポンコツ。…最後のチャンスをふいにしたな。」

 

「まっ待ってく…!」

 

再び、プレジデントを無視するように電話を叩き切り素早く着信拒否の登録を行った。

 

先ほどの番号だけでなくこの基地に登録されていた番号は前もって着信拒否にしてある。

 

これで…カイザーがネイトたちと交渉するチャンネルは完全に断たれたといってもいいだろう。

 

「さぁて改めて飯に行くか。」

 

背伸びをして改めてネイトは昼食をとりに向かうのであった。

 

「というわけで、カイザーとの交渉は打ち切りになった。」

 

「なんというか…いろいろ甘すぎない、カイザーの社長…。」

 

所変わって格納庫、昼食を受け取ったネイトの周りに幹部クラスの生徒たちが集まりカイザーとの先ほどの電話内容を話していた、

 

「んじゃ、親分。飯食ったら乗り込んどくか?」

 

「いや、まだいいだろ。のんびり整備でもしててくれ。」

 

意気込んでいる番長にネイトは待機命令を出す。

 

「どうして?ネイトさんが納得しなかったからD.U.に突入するんでしょ?」

 

「そう急がなくても…3時になっても連絡がなければ作戦は実行するさ。」

 

「ネイト兄さん、連絡っていってもカイザーはもうここに電話を掛けることなんてできないんでしょ?」

 

この期に及んで何を待つのかと首をかしげるアルだが、

 

「おじさん分かったよぉ~。確かにあそこがかけてこないと大変なことになるもんねぇ~。」

 

「…あぁ、そっか♪このままだと確かにとんでもないことになっちゃうもんね、ネイトお兄ちゃん♪」

 

いち早くホシノとムツキはネイトの狙いが分かったようだ

 

「ちょ、ちょっとどういうことなのよ?」

 

「アル、今朝の俺の行動をよ~く思い返してみろ。」

 

「今朝の兄さんの…?」

 

ネイトがそんなヒントを出すと…

 

「…あぁ、そう言うことね!」

 

アルもようやくネイトの狙いが分かった。

 

そして、そんな会話をどこかで聞いていたかと言わんばかりに…

 

《マスター、『6カウント』からお電話よ。》

 

電話番を任せていたアサルトロンがネイトに電話があったことを無線で伝える。

 

「食事中だ、待たせていてくれ。」

 

《了解したわ。》

 

アサルトロンにそう返信しネイトはゆっくりと昼食をお替りまでして済ませてから…

 

「ふぃ~食った食った。」

 

「マスター、6カウントがお待ちよ。」

 

「あぁ、分かった。」

 

歯磨きも済ませお茶片手にゆっくりと管制塔まで戻ってきた。

 

そして、

 

「もしもし、どちら様で?」

 

椅子に腰かけ電話に出るとその相手は…

 

《どうも、ネイト社長…。私は連邦生徒会防衛室で室長を務めております、『不知火カヤ』と申します。》

 

この戦争においてもう一つの主要関連組織である『連邦生徒会防衛室』の長、不知火カヤであった。




ヤギには前から近づくな。
馬には後から近づくな。
愚か者にはどの角度からも近づくな。
―――ユダヤの格言
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