―――詩人『アルフレッド・テニスン』
両陣営、悲喜交々な休戦期間だった
だが…ある種『退屈』な準備待機だった休戦期間はいよいよ終わりを告げる。
まだ日が昇らない5:30、格納庫内。
「ん…ノノミ、そこの予備のマガジン取って。」
「どうぞ、シロコちゃん♪私もそっちにあるベルトリンク取ってください♪」
「ハイ、これでいい?」
「う~ん…少しスプリングにオイル挿しといたほうがよさそうね。」
「ドラムマガジンにぃ~火炎放射機用燃料にぃ~C4にぃ~…。」
テーブルの上にずらっと並べられた装具を囲み弾薬を装填したりメンテナンスを行っている対策委員会メンバーとムツキ。
「えぇっと…Flag12にドラゴンブレス弾にテーザー弾…うん、これで準備万端だね。」
ホシノも愛用のベストに各種ショットシェルをホルダーに装着し戦闘準備を整えている。
そしてネイトも少し離れた場所で…
「…よし、X-02も準備万端だな。」
「やっぱり見慣れたこのカラーリングがいいですね。」
アヤネと共にX-02の装甲を塗装し直し普段の真紅のそれに戻っていた。
「って、ワカモさんの仮面も持ってくんですか?」
「なんというかこういう装飾も悪くないかなってな。」
変わったところがあるとすると右側頭部にまるでお祭りの屋台のお面の様にワカモが落としていった狐面の片割れが括りつけてあるところだろう。
「親分、全戦車のメンテナンスと砲弾に燃料の補充も終わったぜ!」
「ベルチバードの武装も準備完了、いつでも行けるぞ!」
「アサルトロン及びセントリーボット、全機ステータスオールグリーン。」
番長やパイロットやロボットソルジャー達からも続々と準備完了の報告が入る。
こうして着々と準備は進んで行き…
「よし、では改めて『Operation: Sperm Whale Opera』の最終作戦の概要を説明する。」
時間は6:00、幹部級の隊員が一堂に会しこの戦争における最後のブリーフィングが始まった。
「…と、以上で概要説明を終える。何か質問は?」
「親分、今日もアイツら来るはずだがよ。」
番長は手を上げあの事を尋ねる。
アイツらとは休戦が決まって早々やってきていた反戦デモ隊だ。
あれからその数も増え入り口にはかなりの人だかりができている。
おそらく休戦が開ける今日も来るはずだ。
「まったくよぉ、ウチ等が手ぇ出さないからって寄ってたかって好き勝手言いやがって鬱陶しいったらありゃしねぇぜ…。」
「避難のために休戦したんだってのにさっさと避難したらいいのに。」
休戦中とはいえこちらはバリバリの武装組織だ。
そこへわざわざ集まってシュプレヒコールを声高に叫ぶ。
こちらがもし気が短い集団だったり噂通りのカルト集団だったら…と1㎜も考えていないのだろう。
確かに今日も来て入り口を占拠しデモ活動されると作戦行動の大きな支障となる。
デモ隊とはいえ一般人なので無暗に排除できないのも頭が痛い問題だが…
「安心しろ、番長。そのために突貫で『アレ』を作ったんだ。戦車や車両部隊はそこを通って基地外に進出してくれ。」
「…なるほど、了解だぜ。」
それに対策を練らないほどネイトも気が緩んでる訳はない。
「さて。他には?」
『………。』
他の質問がないか尋ねるも他の者から手が挙がらないのを確認し…
「よし、では諸君。…決着をつけに行くぞ。」
『了解っ!!!』
ネイトの号令で一斉に各々の持ち場へ向かう生徒たち。
すると、
「あっとホシノ、ちょっといいか?」
「うへ?なぁに?」
ネイトはホシノを呼び止め
「調整は終わったんじゃないの?」
「まぁまぁちょっと待っててくれ。」
彼女の愛銃『Eye of Horus』を借り何かごそごそやっている。
整備こそ普段からホシノ本人がやっているがカスタマイズや本格的なメンテナンスはネイトに任せているので安心して預けたがどうやらそのようなことをやっているわけではないようだ。
「よし、できたぞ。」
物の数分でその作業は終わった。
特にカスタマイズに変化はない。
だが…
「あ…。」
ホシノにはすぐに分かった。
Eye of Horusはカラーリング以外はこれと言った装飾はない。
だが、ネイトが手を加えた愛銃のグリップにはある『絵』が描かれていた。
ライトグリーンの茎と葉に白い6枚の花弁の花だ。
「クチナシの花…。」
「あぁ。」
それはクチナシの花、そしてその茎と葉の色は…あの人の髪の色だ。
「アビドスを取り戻す最後の戦いだ。そして…アビドスが歩み始める最初の一歩の日だ。」
「ネイトさん…。」
「ホシノと…ユメが繋げてきた『奇跡』のゴールで『未来』へのスタートラインを超えるため…一緒に連れて行ってやってくれ。」
「………はい…!」
まるで…宝物を差し出すようにネイトが差し出したそれをホシノもしっかりと受け取った。
握り心地は何も変わらない、よく整備された自分の愛銃そのままの感覚だ。
だが…ホシノにはしっかりと伝わっていた。
どこか懐かしい風と心の底から湧き上がる勇気を。
「じゃあホシノ、君の息災を祈る。次に会うときは決着の時だ。」
「ネイトさんもお気をつけて。新たなアビドスの門出で会いましょう。」
最後に短く言葉を交わし二人は互いの役目を果たすために行動を開始するのであった。
――――――――――――――――――
―――――――――
―――
8:10、休戦の終了まで一時間を切った頃…
『戦争はんたーい!』
『カルト教団は即刻立ち去れー!』
『D.U.の平和を乱すなー!』
今日も今日とてやってきたデモ隊。
だが今日はいつもと様子が違う。
互いが互いに腕を組み合いまるで鎖のように繋がりあっている。
『人間の鎖』、読んで字のごとく人が繋がりあって行われるデモ活動の一種だ。
それが基地を取り囲むように広がっている。
まるでここからネイトたちを出さないぞという決意の表れのようだが…。
ちょうど同時刻、カイザーコンストラクション本社の一室にて
「ふぅ~…。」
「プレジデント、お疲れのようですね…。」
憔悴しきったプレジデントとカヤは対面し会談を行っていた。
表面上は取り繕っているが…彼女の顔色も相当疲労の色が濃い。
「こんなところに直接来てもいいのか…?」
「はい、今回は表向きは『講和の再打診』という名目ですので。」
「いいのか、そのようなことを言って…?」
「えぇ、人払いは済ませています。ここでの会話は完全にオフレコです。」
カヤはそう言いカップのコーヒーを一口含み、
「W.G.T.C.の部隊は今私が息のかかったものが『派遣』した有志が行く手を遮っています。」
いま元カイザーPMC本部基地にいるデモ隊はカヤの指示によるものだ。
本当なら『専門家』を派遣したかったがあまりに大々的な動きは怪しまれるため見送られた。
「やはりあのデモは…。しかし連邦生徒会にも…。」
「えぇ…避難を促しているというのに連日多くの市民団体が抗議デモを…。」
なお、連邦生徒会はそう言ったものではなく本物の抗議デモが連日連夜通じて行われている。
本来デモの槍玉にするべきはカイザーとW.G.T.C.のはずだが…この二組織の脅威は思い知らされている。
いかに弱体化したとはいえカイザーには自前のPMCが。
そしてW.G.T.C.にはそんなカイザーをここまで痛めつけた部隊と未知の兵器がある。
『普通』の神経なら好き好んで抗議デモなどしないはずだ。
そこで槍玉にあげられるのが…連邦生徒会だ。
「毎日毎日…『戦争反対』と『賠償請求』の大合唱…。ただでさえ各地で事件が起こっているというのに…。」
先のサンクトゥムタワーの騒動の際も治安維持に失敗した影響も相まって市民からの批判は大きい。
防衛室はその対処に連日奔走しカヤは多忙すぎる休戦期間を過ごしていた。
「我が社のローンも頻繁に強盗が来るようになった…。」
「ヴァルキューレからも報告が上がっています。」
一方、カイザーグループも休戦期間とは名ばかりの多忙な日々を送っていた。
カイザーPMCの弱体化、すなわちカイザーを護る矛も盾も弱まったことに他ならない。
そんな状況で日々犯罪が絶えないキヴォトスでなら何が起こるか…想像に難くないだろう。
各学区に存在する金融部門『カイザーローン』は様々な不良集団や犯罪組織、武装集団から襲撃されるようになってしまった。
これにはヴァルキューレやカイザーセキュリティが対処に当たっているが…正直芳しくない。
そんな状況で休戦終了間際にこの二人が会談した理由とは…
「プレジデント、単刀直入に申します。有事の際は…ヘリで脱出を。」
「なっなんだと…!?」
「おそらく…いえ、この戦争はもう勝てません。」
「防衛室長、貴様っ!」
カヤに脱出の要請とこの戦争の敗北を確実視されプレジデントは憤慨し立ち上がる。
だが…
「では勝ち筋は?相手は最早弱小校とは呼べない兵力と猛将を有するアビドスです。」
「だが我々にはまだ兵力は…!」
「歩兵のみの一個連隊?機甲戦力を保有していたアビドス砂漠の部隊がどうなったかお忘れではないですよね?」
「ぐッ…!」
カヤにアビドスの戦力とカイザー理事が率いていた部隊の顛末を指摘され言葉に詰まる。
戦車も戦闘ヘリもない、まともな重火器や対戦車火器も数少ない。
そんな状況で機甲戦力も砲兵も有するアビドスの部隊に敵うのか?
いや、そんな部隊がいなかったとしてもあの男を食い止められるか?
認めたくない、認めるわけにはいかないが…
「逃げてどうなるというのだ…!?最早打つ手は…!」
どうしようもないことなど…プレジデントもすでに気付いている。
だが、事ここに及んで逃げてもどうにもならないことは火を見るより明らかだ。
すると…
「…ミレニアムの廃墟区画。」
「は…!?」
「あそこなら人目もあなた達の兵力も隠すことができるでしょう。」
カヤは避難先としてミレニアムの廃墟区画を提案。
「だがあそこは…!」
無論プレジデントも苦言を呈する。
あの場所は今やネイトの庭だ。
見つかるのも時間の問題な上そんなところに逃げてなんになるというのだ?
しかし、カヤには考えがあった
「そこに我々が同地を警備するために用意していた防衛室の装備群が放棄されています。」
「…何?」
「それを用い…再起を。PMCの社員も時を見てそちらに集結させてください。」
「しかし私がいなくなったとしてその後は…!」
「私が貴方から委任を受けたとして彼らと講和交渉を行います。アビドスは失陥と多額の賠償は請求されるでしょうが…今いるPMC社員は無事を保証させます。」
古くからカイザーコーポレーションと防衛室は裏で繋がっている。
ここでカイザーがW.G.T.C.に打倒されては今後の防衛室の活動に大きな支障が出る。
自らの野望を成就させるためにもカイザーコーポレーションには生き残ってもらう必要がある。
ならば、ここでプレジデントを何とか逃がし大きな痛みが伴うが講和し戦力を温存することが最善とカヤは判断。
「…それをやる貴様のメリットは…!」
「私も今回の一件で連邦生徒会内部から疑念の目を向けられています。そこで…。」
「休戦交渉の成功だけでなくこの講和交渉の成功の手柄も手に入れて民意を味方に付けようと…?」
「その通りです。貴方方が復活する際に私もこの地位にいたほうが色々都合がよいでしょう?」
カヤの言い分ももっともだ。
この関係が続く方がプレジデントとしても勢力の立て直しに好都合である。
しばし考えこみ…
「………分かった、貴様の提案を飲もう。」
今は出血を強いられるが延いては将来、アビドスを奪還するための決断を下したプレジデント。
最早意地を貫き通す段階はとうに過ぎてしまっている。
頭では分かっていたが…あらゆる物事がその事実を考えさせない様にし続けてきた。
だが…それも限界だった。
ならば…今は逃げてでも未来をつなぐほうが懸命だ。
「では、9時になり次第ヘリが到着するように手配を。」
「今すぐ…というのは無理なのだな。」
「それがW.G.T.C.との約束なので。逆に言えばW.G.T.C.もその時間までは大胆な行動は…。」
その時、カヤのスマホに着信が入る。
「…出てもよろしいですか?」
「構わん。」
「失礼します。もしもし?」
断りを入れて電話に出ると…
「…なっなんですって!?」
カヤの表情が驚愕一色に染まる。
「お、おい何が…!?」
その豹変ぶりにプレジデントも驚くが…
「ちょ、ちょっと待ってください!」
カヤは通話をスピーカーにしプレジデントにも内容を聞かせると…
「も、もう一度お願いします!」
《で、ですから!W.G.T.C.の機甲部隊が基地を飛び出してD.U.に向かっています!》」
「な、なんだと!?」
プレジデントもカヤ同様に驚愕する。
確かに休戦期間中の部隊の移動は何ら制限を設けていない。
カイザー側もPMC社員を集結させているのだ。
W.G.T.C.側がそれをやって責められる謂れはない。
問題は…
「まさかデモ隊を突破したのですか!?」
今基地の周囲には多くのデモ隊がいる。
彼らをまさか、と最悪の状況を思い浮かび顔を青くするカヤだが…
《ちっ違います!W.G.T.C.は…!》
数分前、
『戦争はんたーい!』
『カルト教団は即刻立ち去れー!』
『D.U.の平和を乱すなー!』
カヤからの依頼を受けたデモ隊はいつもの様にデモ活動をしていた。
今日の依頼はW.G.T.C.の部隊の足止めだ。
相手には戦車はあるがもし強引に突破しようものならW.G.T.C.が世間から批判の目にさらされることは免れない。
さらにネイトは一般人には『甘い』というカヤの評価だ。
それらを勘案し、強引に打って出る可能性はないと判断されている。
…カヤの評価は間違ってはいない。
一般人を巻き込みたくないという考えも一切間違っていない。
キヴォトス人ではない彼が手も出されていないのに強硬手段に出ないことも正解だ。
しかし…カヤのネイトの分析は『甘かった』。
ドオオオオオオォォォォォ…ンッ…!!!
「ッ!?え…?!」
突如としてデモ隊の後方…およそ2㎞程の距離で突如爆発が発生。
いきなりの出来事に身を屈め一気に振り返るデモ隊。
事態が呑み込めず様子を窺っていると…
「お、おいこのエンジン音は!?」
この距離まで轟く甲高いエンジン音が耳に届き…
《デモ隊諸君、朝早くからご苦労さん!そして、見送り感謝するぜ!!!》
基地内のスピーカーから番長の声で皮肉交じりの感謝の声が響いたかと思うと…なんと地面の中から続々と戦車が飛び出してきた。
『ええええええええええええっ!!!?』
度肝を抜かれたデモ隊をしり目に自走砲や牽引トレーラーに輸送トラックも後に続く。
「と、とにかく連絡だ!カヤ防衛室長に連絡を!!!」
そして、
《W.G.T.C.は…地下トンネルを使って我々を通り越して出撃しました!!!》
「ちっ地下トンネルですって!?」
「そんな設備造った覚えはないぞッ!!?」
《でッですが戦車3台並んでも余裕で通れるくらいの広さの地下トンネルがあるんです!!!》
現地の者が慌ててカヤにこのことを連絡したということだ。
プレジデントが言っているので間違いはないだろう。
しかも、地下トンネルを作るならもっと長く作るはず。
たった2㎞の地下トンネル…まるでこのデモ隊を避けるために作られた様にしか思えない。
問題は…おそらくこの5日でどうやってこんなものを掘り抜いたかということだ。
それも周囲にいたデモ隊に一切感知されることなくだ。
「い、一体どうやって…!?」
人間技では有り得ない。
こんな所業はまるで…
(~ッ!わ、私は何を考えて…!?)
自分が思い至ろうとした結論を頭を振るい霧散させるカヤ。
だが、事態は待ってくれない。
《あぁッ!ヘリが!W.G.T.C.のヘリやアパッチが飛び立ちました!!!》
さらに駐機場からはベルチバードやカイザーPMCが所有していた戦闘ヘリが飛び立ちD.U.へと向かっていくと報告が入る。
「こ、このままでは!」
プレジデントは焦る。
ベルチバードや戦闘ヘリがD.U.に来てしまえば脱出用ヘリを呼ぶことができない。
「す、直ぐにヘリを手配…!」
プレジデントは脱出しようとするが…
「プ、プレジデント!それはだめです!」
カヤはそれに待ったをかける。
「なっなぜ…!?」
「ま、まだ休戦期間中です!今あなたが逃走すれば…!」
そう、W.G.T.C.の行動は未だ『部隊の移動』で戦闘行為には当たらない。
この状況でプレジデントが本社ビルから脱出することは一方的な協定の破棄に他ならない。
つまり…
「では何か!?奴らが迫っていると言うのに私は9時までここに拘束されるということなのか!?」
それだけではない。
「も、もしあなたが今逃走すれば連邦生徒会も責任を…いえ、下手をすれば利敵行為とみなされ攻撃の対象にされかねないんです!!!」
この休戦協定は連邦生徒会の責任によって結ばれたもの。
その責任が果たせなかった場合…ネイトがどんな行動をとるかは想像に難くない。
ヘリは元よりクルセイダー以上の快速と報告が上がっている戦車ですら30分もあればD.U.の都心区画に進入できるだろう。
「そ、そんな…計画が…!私が返り咲く計画が…!」
「ね…ネイト…!あの大人は一体どこまで…!」
一手、たった一手で計画が瓦解した。
崩れ落ちるプレジデントに怒りに震えるカヤ。
その時…今度はプレジデントのスマホが震え始めた。
「ま…まさか…!?」
この感覚、既視感がある。
震える手でプレジデントが通話に出ると…
《やぁ、プレジデント。良い朝だ、決着をつけるにはもってこいの日和だ。》
「き、貴様ネイト…!」
「なっ…!?」
やはり電話の相手はネイト、こちらの気など知った事かと言わんばかりの軽い口調で挨拶をする。
「き、貴様まだ休戦中のはずでは…!?」
《まだ一発も撃っていないぞ?よって休戦協定は破られていない。第一…そっちも部隊をかき集めておいて俺がダメとは言わんよな?》
プレジデントの指摘もどこ吹く風、カイザー側の行動を挙げそれを封殺する。
《教えてくれ、プレジデント。残りの兵力はどのくらいだ?》
「この…貴様が何をやったか…?!」
《お前が伸ばした足を全て粉々に切り刻んでやった。あとは…お前たちを叩き潰してやるよ。》
痛烈な皮肉とプレジデントへの勝利宣言を叩きつけたネイト。
「いいだろう…!早くここまで来い、用務員…!」
「ちょ、プレジデント…!?」
最後のプライドかプレジデントはその宣言に真正面から切り返す。
すると…
《心配するな。…もう来ている。》
「…は?」
ネイトが意味深な答えを放った瞬間、
《車両から降りて来い!!!》
《さもなくば発砲するぞ!!!》
電話の向こうから遠くの方からネイトたちに呼び掛けるような怒号が響く。
《ねぇ、ネイトお兄ちゃん!こんな服でちゃんと防いでくれるの!?》
《耐久性は折り紙付きですよ、ムツキちゃん♪私がいつも着ているものと一緒ですから♪》
さらに二種類の少女の声まで聞こえ始めた。
《カヨコ、システムの侵入準備は?》
《やってるよ、ネイト兄…!でもパス有りとはいえこんなデカいとこに入り込むなんて初めてでね…!》
さらに無線機越しかくぐもったような少女の声が聞こえたかと思うと…
《構わん、撃てぇ!!!》
遠くから聞こえていた怒号が発砲命令を下した瞬間…本社ビルの眼下から響き渡る無数の銃声。
「まっまさかッ!?」
「そんなッ!?」
すぐに窓際によって確認すると…ビルの警備にあたっていたカイザーPMCの部隊が一台のバンに向け発砲しているではないか。
さらに…
《うひゃぁ!私達だって気付いてないのぉ!?》
《みたいですねぇ♠あ~ぁ、さきに撃ってきちゃいましたねぇ~♠》
電話越しにも聞こえる銃声と硬い着弾音。
そして…二人は…いや、高所から見下ろせる二人だからこそ気付けた。
バンのルーフ部分には…アビドス高校の校章が描かれていることに。
《…ヨシッ入り込めた。監視カメラの映像だよ。重役たちは会議室、プレジデントは上階の執務室に…防衛室長と一緒にいるみたいだね。》
そんな中、くぐもった少女の声がそんな言葉を発する。
二人は一斉に振り返ると…部屋の角にある監視カメラがこちらを見ているように感じた。
《了解した。各員に告げる。決着をつけよう、ここを奴らの蛸壺にしてやれ。》
ネイトがそれを聞き、おそらく無線で部隊に号令を発し、
《二人とも、準備はいいか?》
《フゥ~ッ!こうなったらド派手に暴れちゃうよ!》
《オペラのフィナーレは豪華と相場が決まってますからね♡》
その場にいる者に最終確認をとり、
《さぁ、出撃だ。This is for Abydos.》
そう宣誓するように言葉を発した次の瞬間、ドアの破壊音が鳴り響く。
それと同時に…パワーアーマーと重火器を携えた二人の生徒がカイザーPMC部隊の前に躍り出た。
The Only Easy Day Was Yesterday. It Pays to be a Winner.
『楽できたのは昨日まで。勝利することで全てが報われる。』
―――アメリカ海軍特殊部隊(Navy SEALs)の標語