―――皇帝『ナポレオン・ボナパルト』
「二人とも、左右に展開!!!目の前にいる連中は全員敵だッ、撃って撃って撃ちまくれッ!!!」
「Trick yet Treat♪未払いの報酬分、楽しませてねぇ♪」
「アビドス砂漠のような熱ぅい葬送、味わってくださいね~♠」
いよいよ最終局面、ネイトが率いる突入部隊はカイザーコーポレーション本社に続く道に広がり得物を放ちながら迫る。
「あッアイツだ…!アイツが現れやがった…!」
そんな迫る三人の…いや、X-02を纏ったネイトの姿を見てPMC社員は恐れ戦く。
見紛うはずがない。
あの晩、突如として自分たちの基地に襲い掛かり壊滅させたあの『怪物』が再び目の前に現れた。
「う、うわああああああああッ!!!」
あの恐怖を想起しカイザーPMC隊員はネイトに向け銃を乱射。
恐怖は伝播し、他の隊員もノノミとムツキそっちのけでネイトに向け弾丸を浴びせる。
「ハン、歓迎のクラッカーか!?中国式にしろ、派手さが足りないぞッ!!!」
全身に弾丸を浴び火花を散らすもX-02はびくともせず、お返しと言わんばかりにガトリングレーザーを浴びせかけるネイト。
さらに、
「私たちもいるんですから忘れちゃだめですよぉ♪」
援護としてノノミがマイクロボンバーGを発砲。
ある隊員はレーザーに撃ち抜かれ一瞬のうちに灰となり、またある隊員はエアバーストした25㎜グレネード弾で叩き潰されていく。
と、そこへわき道から車両が飛び出してくる。
どうやら他のブロックを警戒していた部隊が急行したようだが、
「車を撃て、まとめて吹き飛ばしてやれ!!!」
ネイトは武装をミニガンに変更、
「だったら私の得意分野だよぉ♪」
ムツキもバックから集束手りゅう弾を取り出し投擲。
装甲も施されていないような車両にはこの攻撃は致命的だった。
一瞬のうちに車両は爆発、隊員が下りる間もなくまとめて撃破された。
「ど、どうにかしてアイツらを止めろ!!!」
「相手はたった三人なんだぞ、さっさと始末しろっ!!!
前衛が磨り潰されていく中であってもカイザーPMCからの銃撃は止むことはない。
無数の銃口がネイトたちを捉え絶え間なく銃撃を浴びせている。
だというのに…
「なんでッなんでアイツだけじゃなくて二人も倒れねぇんだよ!?」
X-02を纏ったネイトどころか戦場では場違いの恰好をしているノノミとムツキですらその足を止めない。
「すっごいっすっごぉぉぃ!!!ホントに全然痛くない!!!」
最初こそあれほど心配していたムツキだが…今は防弾ゴスロリの性能にご満悦のようだ。
確かに飛び出してから何発も銃弾を受けてはいるが体に伝わる衝撃はせいぜい軽く投げられたボールが当たった程度。
弾丸が当たっても『痛い』程度で済むキヴォトス人の彼女でもこんな感覚は初めてだ。
「アハハハッ!そうとなったら楽しまなきゃ損だね、ネイトお兄ちゃん!」
「その意気だ!手あたり次第にぶっ放せ、ムツキ!!!」
「私だって負けませんよ、ムツキちゃん♠どっちが活躍できるか競争です♠」
意気軒昂の突入チームは弾丸の雨を物ともせずに突き進む。
すると、
《配信見てるけどさすがはカイザーPMC。勢力は激減してもこれは生半可の学校じゃ相手にならないね…。》
現在進行形でカイザーコーポレーションにハッキング中のカヨコから無線が飛ぶ。
《それからプレジデントが脱出用のヘリを手配したようだからペース上げたほうがいいよ。》
「結末は変わらんさ!カヨコ、奴らがすぐには逃げられない様にエレベーターを押さえてくれ!俺達も使えるように頼む!」
《まかせて。皆がエレベーターホールにつくころには終わらせるから。》
この期に及んでプレジデントは往生際が悪いようだ。
一先ずの足止めと自分たちの足の確保をカヨコに要請。
一方、
「ダメです、ライフルや機関銃じゃビクともしません!!!」
生半可な火器ではあの三人を止められないことが明らかになり一人の隊員が泣きそうな声で上官に伝えると、
「もう少しだ!もう少しであれが…!」
上官がまるで何かを待っているような様子で答える。
すると、
《こちら、特殊車部隊!もうすぐ着くぞ!!!》
「来たかっ!」
待ちに待ったその部隊がやってきた。
「ッ!前方に新手!」
ネイトが警告したタイミングでそれらは現れた。
車両そのものは2tトラックだが…問題は荷台に搭載されているものだ。
「げっ!?パワーローダーッ!?」
「まさか残骸を修理して…!?」
そう、アビドスでもさんざん撃破してきたパワーローダーの上半身が乗っけられているではないか。
数にして5台、荷台のパワーローダーは見たところ傷だらけの継ぎ接ぎで組み立てられているようだが…
(巡航ミサイルで攻撃した基地の残骸から引っ張り出してきたな…!)
心当たりはあり。
5日前の一斉攻撃の際、ガウスキャノンを叩きこんだ基地は三か所。
それ以外の基地にも一か所につき10発の巡航ミサイルを叩きこんだがガウスキャノンに比較して破壊具合は軽微のはず。
そんな基地から何とか使えそうな部品を引っ張り出し共食い整備で組み上げたのだろう。
「二人とも、カバー!あいつらは俺に任せろ!!!」
それでも武装は健在、いかに防弾装束とはいえ…50口径相手はさすがに荷が重い。
「了解しましたぁ♪お任せしますね、ネイトさん♪」
「ちゃっちゃとやっつけちゃって、ネイトお兄ちゃん♪」
指示を受けノノミとムツキは素早く遮蔽物に退避、
「もう一度ガラクタに返してやるよ!!!」
ネイトはその車両隊に向けスプリントを開始。
アスファルトを爆散させながら時速100㎞で駆け抜ける。
「う、撃てぇ!!!奴を何としても仕留めろ!!!」
そんなネイト目掛けパワーローダーはGAU-19を浴びせる。
今までの比較にならない威力と濃度の50口径弾の嵐。
並の装甲車や戦車相手でも無事では済まない弾幕だが…
「はッはッはッ!!!T-51を着ていた頃を思い出す!!!」
「ば、馬鹿な!?」
例えるなら『線香花火』が全速力で突っ込んでくるような光景だ。
いかに50口径弾とは言えその運動エネルギーは最大でも20,000Jを少し超えるくらい。
パワーアーマー相手では…T-45でもないとまるで通用しない。
「Dosukoi!!!」
瞬く間に間合いを潰し真正面にあったトラックにショルダータックル。
時速100㎞の鋼鉄の塊、Perk『Pain Train』も発動し車体がくの字に拉げ、
「グアアアアア!?」
そのまま横転し火花を散らしながら滑走、
「お返しだ、二発で済ませてやる!!!」
右翼に展開する二台の車両目掛けガウスライフルを抜き放ち、後方の荷台にいるパワーローダーにV.A.T.S.で照準しクリティカルで発砲。
二本の蒼い軌跡が放たれPerk『Penetrator』の効果もあって射線上のトラックと手前のパワーローダーも貫き照準していた奥のパワーローダーの燃料タンクを直撃。
少し遅れて二機のパワーローダーは爆散。
「次ッ!!!」
撃破を確認し、次に逆サイドのトラックに向けネイトは突撃。
「ふんぬウウウウウウ!!!」
「ぬおおおおおお!!?」
トラックに張り付きX-02のパワーアシストを活かしトラックをそのまま押し込む。
スキール音を響かせながらトラックの意に反したバック走行を行い、
「ぐおあッ!?」
奥にいたもう一両に強引に追突させ動きを封じる。
「廃車間違いなしだ、スクラップにしてやるよ!!!」
矢継ぎ早に身体を押し付けながらプラズマ放射器を押し付けプラズマを発射。
緑の閃光が一直線に飲み込みトラックごとパワーローダーが溶解し真っ二つにされる。
「いいぞ、前進しろッ!!!」
《ひゅ~仕事が速いねぇ♪》
《分かりました、合流します♪》
迅速に脅威を排除、ネイトはノノミ達に前進を命じつつガトリングレーザーに持ち替え二人が安全に進めるように制圧射撃を行う。
「化け物め、俺達の切り札を!!!」
「くそったれがっ!!!これでもくらいやがれぇッ!!!」
なけなしのパワーローダーがなすすべもなく撃破されるが果敢にもカイザーPMCの隊員はネイトに向けロケット弾を発射。
「ッ!ネイトさん、二階エントランスからパンツァーファウストが!!!」
「甘く見るなよッ!!!」
いかにパワーアーマーでも成形炸薬弾をもろに食らってはただで済まないがそんな経験は嫌というほど積んできているネイト。
迫るロケット弾の群れにV.A.T.S.を照準しレーザーを照射。
元よりヘビーウェポンとしては非常にAP消費が軽量のカスタマイズ、そこにさらにあるPerkが発動。
Perk『Gun Fu』、V.A.T.S.の連続照準でダメージを上昇させる効果を発揮するPerkだ。
中でも最高まで習得した際にその真価を発揮する。
V.A.T.S.で照準する標的が4体以上の場合、4体目以降は強制的に『クリティカル』が発動する。
さらにクリティカルゲージを4回までチャージする『Critical Banker』、これを併用することにより…一瞬のうちに放たれたロケット弾を全弾撃墜。
「バッ馬鹿なぁッ!?」
どんな射撃の名手でもこんな『神業』を超えた芸当ができるわけがない。
だが、目の前のあの男はまるで高精度の迎撃システムを搭載した対空砲の如き精度でやってのけた。
「やっるぅ!あれだけのロケット弾撃ち落とすなんてアルちゃんでも無理じゃないかな?」
「お返しをしてやろう!ムツキ、C4を!」
「ハイどうぞぉ♪」
合流したムツキからC4を受け取り取り出した105㎜砲弾弾頭にへばり付け、
「ムツキ、ガラス突き破ったら起爆しろッ!!!」
「まっかせてぇ♪」
パンツァーファウストを発射した者たちがいる二階エントランスに向け投擲。
剛速球…いや剛速弾となった砲弾は狙い通り窓ガラスを突き破った。
「くふふ~ピンポ~ン♪」
ばっちりのタイミングでムツキも起爆スイッチを押し込む。
瞬間、C4の起爆と同時に105㎜砲弾も誘爆。
二階にいた隊員諸共カイザーコンストラクション本社正面エントランスが吹き飛んだ。
「まだまだ行くぞ、お前らが『贈った』分数倍にして送り返してやるよ!!!」
続けて、カイザーPMCの陣地に105m砲弾を手当たり次第に投げ込むネイト。
即製でせいぜい土嚢や備品家具を積んだ程度の防備しかないカイザーPMCの最後の砦だ。
そんなところに砲弾の雨が降り注ごうモノならただでは済まない。
「ノノミちゃん、私のバックも思いっきり投げちゃってぇ!」
「分かりましたよぉ♪じゃあこれはぁ、アビドス高校と便利屋の方々からの『返礼』ですよぉ♠」
おまけと言わんばかりにムツキのバックをノノミがハンマー投げの要領で投げ飛ばす。
元から爆薬やらたまに蠢くナニかが詰め込まれたムツキのバック。
炸薬量だけでいえば…105㎜砲弾を優に上回る。
バックが地面に落ちた瞬間、今日最大の爆炎が発生。
「た、退避ー!ビルの中に後退しろぉぉぉ!!!」
このままでは嬲り殺しにされる。
カイザーPMC隊員は砲弾の遠投から逃れるためにビル内に駆け込む。
「えぇ~皆引きこもっちゃうなんて社員教育行き届いてないんじゃな~い?」
「アポは取りつけてる。さぁ、営業に行くとしよう。」
「そう言うことなら得意分野ですね♪絶対に契約成立させましょう♪」
ネイト達も続き爆砕したカイザーPMC陣地を横目にとうとうカイザーコーポレーション本社ビルに踏み込んだ。
「ひ、怯むなぁ!!!接近しさえすれば奴らの武器は形無しだッ!!!」
『うおおおおおおおお!!!』
これまでネイトたちが使った武器は一部を除き『大火力』。
裏を返すと間合いを詰められると自分を巻き込みかねない危険性がある。
それを狙って大勢の隊員が武器を構えて突撃を仕掛ける。
狙いは間違っていない。
問題は…
「ハンッ、『クリムゾンドラグーン』クラスになって出直してこい。」
「うんうん!半年前なら焦っちゃってましたねぇ♪」
「あははっ!アナタたちもランタンになっちゃうぅ?」
この三人は…CQCも凄腕だということだ。
「ゼラァッ!!!」
「「「ぐべあッ!!?」」」
ロケットハンマーを取り出したネイトはV.A.T.S.による瞬間移動、『Big Leagues』『Rooted』『Blitz』と言った近接攻撃用Perkを活かし一振りで複数のカイザーPMC隊員を粉砕し、
「いっきますよぉ!」
「ゲハッ!?」
「やぁッ!」
「ギャッ!?」
「えぇいッ!」
「ブゲッ!?」
ノノミもスタンスーパースレッジを振り回し彼女自慢の怪力もあいまってネイトほどではないが次々にカイザーPMC隊員を叩き壊していく。
シロコほどではないもののノノミもネイトから近接戦、それもパワーアーマーで行うような戦い方の指南を受けている。
即興で近接戦を仕掛けるカイザーPMC隊員よりも練度は高い。
「アハハハッ火の用心、火炎放射器一丁ビル火災の元ってね!!!」
「あぎゃああああああああ!!?」
「熱いッ熱いいいいいいい!!!」
「あのガキッ銃に火炎放射器を!?」
一方ムツキは弾幕を叩きこみつつ『ファンシーウィルオウィスプ』を発射。
いかに射程は短くとも室内という至近距離、さらには急に噴き出す火炎が次々にPMC隊員たちを絡めとっていく。
おおよそキヴォトスではなかなか見られない戦闘風景が繰り広げられていると、
《ネイト兄、エレベーターを押さえたよ。エントランスホール奥の乗り場に行って。あと、びしょ濡れは嫌だろうからスプリンクラーも止めといたよ。》
「さすがカヨコ、いい気配りだ!二人とも、エントランスを突っ切るぞ!」
カヨコからエレベーターハッキングの報告が入る。
しかし、目の前には大挙して押し寄せるカイザーPMC。
「カーリングしようか、カイザー!」
それに対処すべく、ネイトは手近にあったベンチを固定されているボルトなど意に介さず掴み上げ…
「そぉらっ!!!」
「「「「「のああああああああああッ!!?」」」」」
眼前の一団に向け投げつけなぎ倒し進路を確保。
「オールテイクアウトだ!ノノミにムツキ、エレベーターまで突っ切るぞ!!!」
「オッケェイ♪」
「商談に行きましょう♪」
すぐにその突破口を三人は通過、
《真ん中のエレベーターがもう来てるよ。》
「ノノミ、扉を!」
間合いが取れたので再びネイトはミニガンに持ち替え制圧射撃で時間を稼ぐ。
「開きましたよ、ネイトさん♪」
「ムツキ、時限装置とC4!!!」
「りょーかいっ!」
エレベーターに乗り込みつつムツキから受け取ったそれを105mm砲弾弾頭にへばり付かせ時限スイッチを起動、
「手土産は置いてくぞ!」
エレベーターが閉まる寸前でエントランスに向けそれを投げ込んだ。
重い金属音を響かせ床に落ちたそれを見て…
『うわああああああああああ!!!』
カイザーPMC隊員は一目散に逃げだした。
エレベーターが閉まりエレベーターがしばし上昇したところでエレベーターまで爆音と振動が届いた。
「ネイト兄、そのエレベーターは中階までしか行かない。上階に行くには乗り換えが必要だよ。」
「了解した。乗り換えるまでの通路に戦力はまだいるか?」
《わんさかいるよ。プレジデントたちがいるところと比べると少ないけどね。》
「了解した。プレジデントと6カウントはどうだ?」
《エレベーターホールでお冠だよ。こっちで止めてるんだから無理ないんだけどね。》
「状況は随時伝えてくれ。」
しばしできた猶予でハッキング中のカヨコを通じて状況の確認と、
「ネイトさん、弾薬バックパックをお願いします♪」
「私にも火炎放射器の燃料をちょーだい♪」
「よし来た。」
Pip-Boyからノノミ達の弾薬を取り出し得物の装填を行い準備を整えていると…
《ッ!ネイト兄、連中のヘリが二機接近してるよ!》
「こちらでも確認、武装したヒューイが接近中!」
カヨコからの通信が来たと同時にネイト達も本社ビルに迫る二機の汎用ヘリ『UH-1 イロコイ』が見えた。
スタブウィングにはミニガンとロケットランチャーの『M21サブシステム』が搭載されている。
二機のうち一機は高度を上げ屋上へと向かうが…
「一機こっちに来るぞ、構えろッ!」
一機は機首をこちらに向け突っ込んできている。
何をやろうとしているかは明白だ。
三人は銃口を構え狙いを定める。
…その時、宙を引き裂く対空ミサイルがヒューイに叩きこまれ爆散。
さらに高度を上げたヒューイはレーザーでハチの巣にされる。
「来たか!」
ネイトがヘルメットの下で浅く笑みを浮かべると同時に、
《こちら一天号、到着しました!》
《こちら『ダイバーホエール1』!これより屋上からプレジデント確保へ向かいます!》
アヤネと戦意漲るホシノからの通信が入る。
「こちら『フロートホエール1』ッ!了解した、仕上げと行こうか!!!」
その通信にネイトも意気軒昂で返信した。
マッコウクジラとは群れで連携し狩りをする海獣だ。
最早胴体だけとなったクラーケンにその牙が打ち込まれるまで…あとわずかであった。
2000mの深海まで容易に潜り1時間以上無呼吸で活動可能
反響定位で群れの家族と会話し狩りを行う
―――マッコウクジラの生態