Fallout archive   作:Rockjaw

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友人の信頼の度合いは人の死や緊急事態、困難の状況の時に分かる。
―――尊王攘夷志士『高杉晋作』


Finale: The End of the Kraken Part5

非常階段を駆け下りプレジデント確保に向かうホシノ達『ダイバーホエール』強襲部隊。

 

カイザーPMC隊員を蹴散らしつつどんどん階段を下り…

 

「ん…この階だ…!」

 

シロコが一番乗りでプレジデントの潜む階に到達した。

 

「よし、半分はシロコ先輩の援護!残りは私とここで増援を食い止めるわよ!」

 

いまだに階段を上って来るカイザーPMC隊員は後を絶たない。

 

狙撃が得意なセリカやMGを持つ生徒がここで足止めの任につき、

 

「いよいよ敵の親玉とご対面か…!」

 

「さっさととっちめて戦争を終わらせよう、姉御…!」

 

「ん…慌てない。中の様子を確かめるのが先。」

 

逸る生徒たちを抑えつつシロコは細いコードのようなものを取り出す。

 

『スネークカメラ』、狭所をのぞき込むための小型カメラだ。

 

シロコのそれはコインの厚さほどの隙間さえあれば通り抜けるような高級品である。

 

それをドアの下に差込み向こうを探るシロコ。

 

だが…手元の端末であちらの状況を確かめた。

 

その時、

 

「~ッ!?総員、階段を上って!!!」」

 

彼女の目が大きく見開かれ指示を飛ばす。

 

血相を変えた彼女の叫びに一も二もなく一斉に階段を駆け上るシロコ達。

 

シロコもスネークカメラを放り捨てドアから離れた瞬間、ドアが粉微塵となった。

 

いや、そのドアだけではない。

 

その上下の階のドアも周囲の壁ごと粉砕され非常階段内の壁が砕かれていく。

 

「走ってッ!もっと上までっ!」

 

「なにッ!?なんなの一体!!?」

 

コンクリートの粉塵を浴びながらとにかく走って階段を駆け上がる。

 

階にして5階ほど登ったところでようやく被害を受けずに済む範囲へ脱することができた。

 

「はぁーッはぁーっ…!」

 

「あ、姉貴!奴らいったい何を用意してたんですかい!?」

 

明らかに携行火器の威力ではない。

 

生徒の一人が唯一その存在を認めたシロコにその正体を尋ねる。

 

「…カイザーPMC、扉の向こうに…!」

 

命辛々逃げ延び顔から血の気が引いたシロコは答えた。

 

カイザーPMC、プレジデントを護る最後の砦となった彼らは…

 

「来やがれ、アビドスのガキども!!!」

 

「『ゴリアテ』の腕がテメェらを待ってるぞ!!!」

 

建物内だというのに分厚い鉄製のバリケード越しに構えられた重厚な3つの銃身を持つ巨大な火器。

 

『M197機関砲』、20㎜砲弾を毎分1500発射可能なガトリング砲だ。

 

なぜこんな重火器がここにあるかというと…ネイトが撃破したトラックに搭載されたパワーローダーと同じ経緯である。

 

量産が始まったばかりとは言えカイザーが誇る最新兵器『ゴリアテ』もある程度の規模のある基地には少数ながら配備されていた。

 

当然、ゴリアテも大破し主砲のビーム砲も損傷し使用不能だったが腕部のガトリング砲だけは何とか修復を終え最後の砦としてこの場に持ち込まれたのだ。

 

「ガトリング砲なんか建物の中に持ち込むなんて何考えてんの、アイツら!?」

 

「そんだけなりふり構ってられないってことでしょ、お嬢…!」

 

「が、ガトリング砲なら電源奪っちまえば…!」

 

「発電機も一緒に持ってきていた…!カヨコに頼んでブレーカー落としても無駄…!」

 

最後の最後でとんでもない隠し玉を用意していたカイザーコーポレーション。

 

キヴォトス人故直撃しても命は助かる。

 

だが、ここは地上数十階の超高層ビルだ。

 

着弾の衝撃で吹き抜けから叩き落されれば…命はないだろう。

 

さらに、これに勢いついたか階下のカイザーPMC隊員もこちらに銃撃を仕掛けてきた。

 

「クッ!とにかくこのことを知らせなきゃ…!」

 

これほどの警戒がこちらの非常階段だけに注がれているわけがない。

 

ホシノ達にも危険を知らせるため無線を入れようとしたその時だった。

 

《こちら、フロートホエール。会議室を制圧。ダイバーホエール、そちらは…。》

 

会議室の幹部たちを確保したネイトから通信が入ってきた。

 

「こ、こちらセリカ!プレジデントがいる階とその上下階にアイツらガトリング砲配置して身動きが取れなくなったわ!援護を!」

 

事態の打開には別動隊の力が必須。

 

セリカのその返信は…

 

「いぃっ!?皆バックバック!!!」

 

あと一歩で突入だったホシノも踏みとどまらせた。

 

が…その声によってホシノたちがいる南非常階段の前にも設置されていたガトリング砲も轟音を立てて発砲を開始。

 

「あっ姉御にアサルトロン、無事か!?」

 

「損傷無し、戦闘に支障はないわ。」

 

「なんとかね!そっちは!?」

 

「うちらも平気だ!」

 

間一髪ホシノとアサルトロンは直撃こそ避けられたが…

 

「くそ、階段が…!」

 

「待ってろ、今ロープを…!」

 

「ダメ!こっちはいいから警戒を!」

 

ガトリング砲は階段を破壊、先行していたホシノとアサルトロンはかろうじて残った踊り場部分に取り残されてしまった。

 

救出しようにもガトリング砲は未だ火を噴いている。

 

下手に動くとそちらの方が危険だ。

 

「さぁ…どうしようかしらね、ホシノちゃん…。」

 

「…ねぇ、アサルトロンちゃん。頼みがあるんだ。」

 

靴ひもをきつく結び直しつつ、ホシノはある決断を下す。

 

――――――――――――――――

「はッはぁッ!ガキどもめ怯えてやがるな!」

 

「おい、どうした!?あとちょっとでゴールだぞ!?」

 

ホシノ達を待ち構えていたガトリング砲部隊は迫ってきていた気配が退けてなお弾幕を絶やさない。

 

認めたくはないが…アビドスの生徒達は優秀だ。

 

そんな連中が馬鹿正直にエレベーターを使うはずがない。

 

一切油断することはできない。

 

口では嘲るようなことを言ってはいるが彼らの内心にあるのは恐怖以外の何物でもない。

 

「よ、よし!その意気だぞ、お前達!」

 

一方、プレジデントはというと動かないエレベーターのそばでホシノ達を退けたことに気をよくしていた。

 

おそらく、この戦い始まって以来のいい報告だろう。

 

「でっでもこの後どうするんですか。プレジデント!?」

 

その傍らで砲声に怯えて小さく縮こまっているカヤは尋ねる。

 

ここにきている確保部隊を抑え込めても自分たちが袋の鼠だという事実に変わりはない。

 

対症療法であって根治療法ではないのだ。

 

そんなカヤに対し、

 

「分からんか!?今ここにきているのは十中八九奴らの精鋭部隊だ!奴らを退ければ連中の勢いもそげるはずだ!!!」

 

自信満々で答えるプレジデント。

 

確かにプレジデントの判断は間違っていない。

 

ここにやってきているのは外部傭員のムツキや追従する生徒たちに至るまでアビドスの仲では最精鋭と言ってもいい布陣だ。

 

彼女らを仕留めればアビドス側の士気が下がることは確実。

 

「しかし、下からはネイトが来ているのですよ!?」

 

「来るなら来るといい!!!20㎜が貴様を待って…!」

 

この布陣ならばネイトも敵ではないと意気揚々と語る。

 

その時、ビルの窓がガタガタ震え始めた。

 

先ほどネイトが砲弾を投げていた時と違い持続的に揺れ続ける。

 

「な、なんだ一体…!?」

 

不審に感じたプレジデントだが…次の瞬間には先ほどの銃声に負けず劣らずの爆音がビル内に轟く。

 

そう、先ほどのセリカの無線に答えたのはネイトだけではない。

 

「こちら一天号、了解!援護します!」

 

ホシノ達を下ろした後上空で待機していたアヤネの駆る一天号、

 

「こちらジェロニモ1、作戦空域に到着。ジェロニモ2と共に敵兵器を排除する。」

 

速度の関係で少々出遅れたアパッチ・ロングボウ部隊『ジェロニモ』も合流。

 

素早くM197が設置されているフロアと同じ高さに滞空。

 

「お、おい奴らのヘリが…!」

 

それに気付いたガトリング砲の操作隊員が対処しようとするも…

 

「チェーンガンを食らいやがれ!」

 

南北を挟み込むように位置どったアパッチ・ロングボウが機首の『M230 30mmチェーンガン』がM197を粉砕し、

 

「レーザー砲、照射!」

 

ビルの窓に用いられる『倍強度ガラス』すら容易に貫くレーザーの雨が要員ごとM197二基をどろどろに溶解させた。

 

「こちら一天号、上下階の脅威は排除!監視任務に戻ります!」

 

目的も果たせヘリコプター部隊は再びビルの周囲を回り始める。

 

このままプレジデントのいる階にも攻撃を仕掛けたいがなんとしてもプレジデントは『生け捕り』にする必要がある。

 

奴に傷を負わせずにガトリング砲のみを排除することはできるだろうがリスクは冒せない。

 

図らずともプレジデント自身がアビドス側のブレーキになっているのだ。

 

「プ、プレジデント!上と下の階の奴らが…!」

 

「クゥ…!だ、だがまだだ!貴様たちさえいれば奴らはここに踏み込めない!」

 

プレジデントの言うことも一切間違っていない。

 

二基のM197は確かに侵入口が限られたこの状況ではいまだ脅威である。

 

「来るなら来い、全員叩き落してこのビルの文字通り礎に…!」

 

極度の緊張と興奮状態で半ばトリップしかかっているプレジデント。

 

しかし、この期に及んで…彼の予想は『甘かった』。

 

「準備いいわよ、ホシノちゃん。」

 

踊り場にて片膝をついてホシノに合図を送るアサルトロンに、

 

「大丈夫、あの人ならもう…!」

 

身軽となる為に盾を下ろし彼女にしては珍しく『祈る』しぐさをするホシノ。

 

そして…

 

「…行くよ!」

 

意を決し駆けだした。

 

それと同時に銃撃によって拡張された非常口に向けスモークとスタンという二種類のグレネードを投げ込み、

 

「てぇりゃあああああ!!!」

 

アサルトロンの肩を足場に跳び上がった。

 

突入の数瞬前、投げ込んだ二種類のグレネードが炸裂。

 

「ぬああああッ!?」

 

突然の耳を劈く大音響と目を焼く強烈な閃光にガトリング砲の操作要員が怯み射撃が止んだ。

 

刹那、ホシノがフロア内に着地。

 

チューブに装填してあったFLAG12を速射。

 

薄い鋼板程度なら容易に貫くショットガン用グレネード弾だ。

 

「「「「ガベッ!?」」」」

 

ボディの装甲を貫きメタルジェットが内部回路を焼き尽くしこと切れる隊員たち。

 

数秒足らずで単身ガトリング砲の制圧に成功したが…

 

「来やがったぞ!ぶっ放してやれ!!」

 

まだあと一機、ガトリング砲は残っている。

 

距離にして約30m、

 

(間に合え!!!)

 

一か八か、自分が速いかガトリング砲が自分を捉えるのが速いか…ホシノは駆けだした。

 

…………数十秒前、北非常階段にて。

 

「追い立てろ!奴ら身動きが取れなくなっているぞ!」

 

シロコたちを制圧せんと迫る多数のカイザーPMC隊員。

 

その時、ある階層のドアが吹き飛んだ。

 

その轟音に隊員が振り向くと…

 

「あと20階か…!」

 

「「「「「「ヒィッ!?」」」」」

 

今や彼らにとっての恐怖の象徴がそこにいた。

 

ネイトは先ほどのセリカからの通信を受け即行動開始。

 

エレベーターを動かすとプレジデントが活用しかけないので階段をチョイス。

 

眼前には多数のカイザーPMC隊員がいるが…

 

「退かなきゃ…突き飛ばす!」

 

シールドユニット『スカラベ』を展開、トップスピードで階段を駆け上がる。

 

その姿はまさに野牛を撥ね飛ばし線路を爆走する『蒸気機関車』。

 

ある隊員は弾き飛ばされ吹き抜けに落下しまたある隊員は壁とスカラベに叩き潰されまたある隊員は踏み潰される。

 

凄まじい勢いで階段を駆け上がり…

 

「ここだな!」

 

ネイトは目的の階層にたどり着いた。

 

そこはプレジデントがいる階層の一つ下のフロアだ。

 

既にアヤネによってガトリング砲の破壊は確認されているが…

 

「カヨコ、上のガトリング砲の正確な位置を!」

 

《もうちょい奥!そこから一歩右!》

 

ネイトは上の様子を覗けるカヨコに一階上のガトリング砲の正確な位置を尋ね…

 

「戦いは三次元で考えないとな…!」

 

天井に向けガウスライフルを構えた。

 

なぜこの階で、しかも迷うことなく北のガトリング砲の破壊を実行しようというのか?

 

…ネイトは信じていた。

 

(ホシノは確実に一人で乗り込むはず!だったら俺にできることは…!)

 

その強さも行動力も…これまでずっと見てきた。

 

彼女なら…絶対そうするはず、そう信じていた。

 

きっと彼女も自分の行動を信じているはず。

 

ならば…その信頼にこたえるまで。

 

ネイトは一切の躊躇なくガウスライフルからマガジン一杯の2mmECを連射。

 

30㎝近い厚さの圧延鋼材を容易に貫く弾丸。

 

20㎝程の鉄筋コンクリート造のスラブ材など意に介さず、床ごと上の階のガトリング砲とカイザーPMC隊員を貫き破壊した。

 

「ッ!」

 

駆けだそうとした矢先、ホシノの目の前のガトリング砲が床から伸びた青い曳光に粉砕された。

 

(やっぱり、来てくれたんだ…!)

 

確信はなかったが…信じていた。

 

こなくてもどうにかできる自信はあったが…彼は自分の想いに答えてくれた。

 

《…こちらフロートホエール1。ダイバーホエール、無事か?》

 

「…こちら、ダイバーホエール1。当該フロアを制圧。」

 

ネイトからの無線に静かに答え…

 

「…これより、カイザープレジデントを確保します。」

 

チューブに新たなシェルを装填しそちらを見やる。

 

視線の先には…

 

「ひ、ヒィ!」

 

腰砕けになってへばっているプレジデントと部屋の隅に縮こまっているカヤがいた。

 

「………。」

 

ホシノは一歩一歩をかみしめるように歩みを進め…

 

「…アビドス廃校対策委員会委員長兼生徒会副会長『小鳥遊ホシノ』だ。カイザーコーポレーション社長、『プレジデント』だな?」

 

あくまで冷静、それでもプレッシャーを込めて言い放つ。

 

「無条件降伏し直ちに配下の戦力に武装解除を伝えろ。これ以上は無駄な犠牲が出るだけだ。」

 

この戦争を終わらせるため銃口を突き付けながらそう要求するが…

 

「ふっ…ふざけるな!!!」

 

プレジデントはわずかに残った『プライド』だけで反論する。

 

「きっ貴様ら何様のつもりだ!?今までずっと我々の動きすら察せられなかったくせに今になってこんな…こんな暴挙を!!!」

 

「………。」

 

「お、お前たちのような馬鹿な連中は我々の食い物になっていればいいんだ!!!たかが小規模な学校のくせに我々に歯向かうなど身の程を弁えろ!!!」

 

「………。」

 

「お、思い知るがいい!!!我々は負けなどしないっ!!!か、必ず貴様らはこの報いを受ける!!!」

 

事ここに至りなおも恨み骨髄でホシノやアビドスを罵るプレジデントに対し、

 

「…はぁ~、見苦しいったらありゃしない。」

 

「なっ…!?」

 

彼の言葉などどこ吹く風で面倒くさそうにホシノは呟く。

 

「いくらお前が叫ぼうと状況は変わらない。私たちの牙はすでにお前を食い千切った。後お前にできるのは…少しでも『残骸』を残す以外ないんだよ。」

 

「き、きさっ…!」

 

お前の言葉など負け犬の遠吠えだ、と暗に言われてもなお食って掛かるプレジデントだが…そのタイミングでエレベーター到着のチャイムが鳴り響く。

 

そして…エレベーターの扉が開き…

 

「お待たせ、ホシノ。」

 

「~ッ!?」

 

「援護ありがとうございました、ネイトさん。」

 

真紅の威容を見せつけるようにエレベーターを降りるネイト。

 

「…プレジデント、いまさらだが…引き際は今だぞ。」

 

ホシノに加わりネイトもプレジデントに降伏を宣告するが…

 

「だ、黙れっ!貴様などに…!」

 

いまだ、諦めないプレジデント。

 

すると、

 

「そうか。…まだ痛めつけられたいか。」

 

「え…?」

 

「こちらフロートホエール1、タコの親玉は嫌だと。巣穴をフッ飛ばしてやれ。」

 

どこかへネイトが無線を飛ばした途端、遠雷のような音と微かな地揺れが伝わってきた。

 

「な、何…!」

 

「外見てみろ。」

 

促されてプレジデントが外を見ると…ある場所からモウモウと煙が巻き起こっていた。

 

「そ、そんな!?あそこは!?」

 

それを見た途端、プレジデントは叫ぶ。

 

そう、あの場所は…

 

「こちら、アウトロー1。巣穴を粉微塵にしてやったわ。」

 

「また腕上げたみたいだね、ハルカ。」

 

「や、やっとあの時の借りを返せました…!」

 

アル達が潜り込みハッキングを仕掛けていたカイザーPMC本社だ。

 

無論、ハッキングのためだけに潜り込ませたわけではない

 

『交渉が難航』した際の手段としてハルカにありったけのC4を渡していたのだ。

 

彼女はそんなネイトの期待に応え全力で任務を遂行。

 

今までにない完璧な『発破』を実行しカイザーPMC本社ビルを瓦礫の山に変えたのであった。

 

ちなみに、守衛の人員は退避済みである。

 

「…で、降伏する気になった?」

 

「き、貴様等どういうつもり…!?」

 

「選べ、立ち上がる心臓を残すか…それすらも俺らに喰われ尽くすか。それ以外の選択肢はない。」

 

無論、これで終わりなわけがない。

 

D.U.各地に散った航空機兵隊とアパッチ・ロングボウ部隊は交渉がこれ以上難航した場合の暴力装置としての役割を帯びている。

 

ベルチバードは全機爆装、アパッチ・ロングボウも対地攻撃装備をフル搭載だ。

 

「3分だ。3分回答が遅れるごとにお前のグループ会社の本社を叩き潰していく。」

 

「その次は支社だ。安心して、砲弾もミサイルもたんまりこっちにはあるから。」

 

冗談などではない。

 

この二人は確実にそれを実行する。

 

降伏しなければ…カイザーコーポレーションという『存在』そのものをキヴォトスから抹消することもいとわないだろう。

 

最早…虚勢を張る猶予すら与えられなかった。

 

「…する。」

 

「ん?何?」

 

「降伏…する…!直ちに武装解除も…通達する…!」

 

ついに…クラーケンが屈した。

 

これ以上ない苦々しい声音で放たれたプレジデントの降伏の言葉を聞き、

 

「…聞きましたね、ネイトさん?」

 

「あぁ、しっかりと。」

 

「それじゃ拘束して運び出しましょうか。」

 

「了解。」

 

ネイトは手早くプレジデントを後ろ手で拘束し搬送の準備に取り掛かる。

 

すると…

 

「あ、あの…!」

 

「ん?」

 

「わ、私は連邦生徒会防衛室の…!」

 

今まで隅で縮みあがっていたカヤが声をかけてきた。

 

が、

 

「あぁ、アンタは勝手に帰っていいよ。」

 

「え…?」

 

「特に『今』はアンタに用なんかないし。」

 

ホシノは一切興味を持たずにカヤに帰るように言う。

 

「できたぞ、ホシノ。行こうか。」

 

ネイトもまるでカヤがいないかのようにそそくさとプレジデントを拘束しエレベーターに乗り込む。

 

「じゃ、行きましょうか。」

 

ホシノもさっさと乗り込んで…エレベーターは下っていった。

 

「…………。」

 

たった一人その場に残されたカヤは茫然とするしかなかった。

 

…その後、他の幹部たちと合流しプレジデントが全部隊に武装解除を命令し無条件降伏を承認したことを告げた。

 

しばらくして到着した機甲部隊と歩兵部隊により素早く武装解除を実施。

 

こうして6日間に及んだアビドスとカイザーコーポレーションの戦争は…キヴォトス各地にあらゆる意味の衝撃を与えて幕を閉じたのであった。




来た、見た、勝った
―――共和政ローマの将軍『ガイウス・ユリウス・カエサル』
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