Fallout archive   作:Rockjaw

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Empty vessels make the most noise.
『空の容器の方が 大きな音を立てる』
―――アメリカの諺


The War of Letters and Voices Part1

アビドス、ゲヘナ、D.U.にわたって繰り広げられたアビドス高校とW.G.T.C.対カイザーコーポレーションの一大戦争。

 

期間にして6日間、戦闘が行われたのは実質1日半という短期間だというのにその衝撃はキヴォトスに激震を走らせた。

 

そしてD.U.のカイザーコーポレーション本社ビルで繰り広げられた最終作戦。

 

前代未聞の『生配信』での作戦遂行も相まって新生アビドス高校の精強さを見せつけた。

 

…そんなキヴォトス全土が注目していた決着の時から二日が経った。

 

「テレビの前の皆様、こんにちは!クロノススクール報道部のアイドルレポーター、川流シノンです!」

 

この日、開戦早々にアビドスの鋼鉄の嵐に巻き込まれたシノンがカメラマンを連れてある場所に訪れていた。

 

クロノススクールだけではない。

 

キヴォトスの大小問わないテレビ局や出版社、さらにはフリーのジャーナリストまでこの場に集結。

 

「今日、私達はミレニアムサイエンススクールが保有する第8ホール前にやってきています!」

 

場所はミレニアム学区、普段は研究発表などが行われる会場だが…

 

「今日、この会場にて先日決着したアビドス高校とW.G.T.C.、カイザーコーポレーションの戦争に関する講和会議が開かれます!」

 

この日、この会場でカイザーへの賠償などを決定する話し合いが行われるのだ。

 

ただし、報道陣は完全にシャットアウト。

 

報道陣も会場の敷地内には入れず周囲はミレニアムの保安部が警備している。

 

「今回、この前代未聞の戦争の講和の調停役として名乗りを上げたのはミレニアムサイエンススクールのセミナーでした!この難題に日々科学の限界に挑む彼女たちは一体どのようにして向き合い…!」

 

シノンのレポートに熱が増し始めたその時、

 

「あぁっと!今、会場入り口にバスが近づいて行っています!」

 

入り口に向かって前後を装甲車に挟まれた窓が全面スモークのマイクロバスが近づいていく。

 

カメラのレンズが一斉にそちらに向くと…

 

「ご覧ください!カイザーコーポレーション社長のプレジデントを先頭にグループ会社の社長が続々と会場入りしていきます!」

 

バスからカイザーコーポレーションの重役たちが重たい雰囲気を纏いホールへ入っていった。

 

「キヴォトス全域に強い影響力を持つカイザーコーポレーション!そんな大企業が敗戦、それも企業基盤を徹底的に破壊されたこの戦争!いまだ姿を見せないアビドス高校とW.G.T.C.は一体どのような要求を…!」

 

キヴォトス全てが注目するこの講和会議。

 

そんな様子を…

 

《関係者のみで行われるこの講和会議!キヴォトス中が固唾を飲んで…!》

 

「なぜ…!あれは私が…!」

 

遠く離れたD.U.のサンクトゥムタワーの一室でカヤは虚ろな目で眺めていた。

 

二日前…カイザーコーポレーションが無条件降伏を受け入れ数時間後のことだ。

 

「ど、どういうことですか…!?」

 

放置されていたカヤはなんとかサンクトゥムタワーに帰還していたが…

 

「ではもう一度伝えます。不知火室長、二週間の謹慎を命じます。」

 

「なっなぜですか、リン行政官!?」

 

彼女を待っていたのは職員に脇を固められリンの執務室に連れていかれての有無を言わさずの謹慎命令である。

 

「なぜ?…不知火室長、貴方が何をしたか理解していないのですか?」

 

「いっ一体何を仰っているか…!」

 

いきなりの処分に当然納得のいかないカヤだが…

 

「そうですか…。では、こちらを見てください。」

 

リンはデスクにあった自らのPCを操作しあるネット記事を見せた。

 

その見出しにはこう書かれてあった。

 

『連邦生徒会防衛室長!戦争中にカイザーコーポレーション・プレジデントと怪しい密会か!?』

 

「こ、これは…!?」

 

「身に覚えがない、なんて言いませんよね?」

 

さらにリンが見せたのは…先ほど配信されていたネイトの動画の一場面。

 

そこには…プレジデントの背後で縮こまっているカヤの姿が鮮明に収められていた。

 

「…不知火室長、貴方は一体何をするためにプレジデントに会っていたのですか?」

 

「…じきに戦闘が再開してしまうのでプレジデントに改めて講和の打診を…!」

 

カヤはそう言い、表向きに伝えていた訪問目的を答えるも…

 

「そうですか。ではなぜ…プレジデントの監視に向かわせていた生徒会職員を退出させていたのですか?」

 

「ッ!」

 

「そもそも、それがアビドス陣営との休戦の条件のはず。しかもプレジデントを含む幹部全員に最低二人監視をつけていたのですが…なぜプレジデントの監視だけあなたの独自の判断で解いたのですか?」

 

「そっそれは…!」

 

それ以前にカヤがやった事について問い詰められる。

 

連邦生徒会は限られた人員を何とか抽出し監視を行っていたのにカヤはそれを独断で解いていたのだ。

 

その証拠に会議室に踏み込んだ際のネイトの映像には怯えて地面に伏せている連邦生徒会の職員の姿が映っているがプレジデントの場面には姿かたちがない。

 

「講和の打診ならば監視の職員がいても問題ないはずです。なのに…貴方はわざわざ監視を解いた。それはなぜですか、カヤ防衛室長。」

 

「………ッ!」

 

言えるわけがない。

 

監視員は全員が防衛室、その中でもカヤのシンパの者たちばかりではない。

 

しかも話す内容がプレジデントに逃走を促すもの、聞かれるわけにはいかない。

 

本来なら話し合いを終えてそそくさと退出し監視員に引き継ぎ自分は別室で待機しているはずだった。

 

…そんな予定をぶち壊したのがネイトの奇襲である。

 

もっとも、これはカイザーPMCの隊員が先走ったのでカヤだけの責任ではないが。

 

「言えませんか?」

 

「け、決してやましいことは…!」

 

「では、胸を張って答えてください。自分がプレジデントと何について話し合っていたのかを。」

 

言えない、言えるわけがない。

 

講和どころかカイザーに廃棄されたものとはいえ連邦生徒会の物資を横流ししようとしていたことなど。

 

だから…

 

「わっ私は本当にプレジデントに講和を打診していただけです!」

 

『嘘』の話を貫き通すしかない。

 

堂々とした態度で言い放ったカヤだが…

 

「…疑わしきは罰せず、とは言いますが…宣戦布告の時と云い今回のことと云い貴方とカイザーコーポレーションの関係を詳しく調査する必要があります。」

 

「リン行政官、私は…!」

 

「その間、予定では二週間の謹慎を命じます。何もなければ職務に復帰を。」

 

調査の間でカヤが手を出せないようリンはにべもなく謹慎を言いつけるのであった。

 

それでもカヤからしてみれば今謹慎となって身動きが取れなくなるわけにはいかない。

 

「で、ですが!今後はアビドス陣営とカイザーコーポレーションの講和会議が控えています!私以外両陣営とコンタクトをとれ調停役ができる人材はいないはずです!」

 

そこで自らがこの戦争の講和会議の調停役ができる唯一の存在だと訴える。

 

確かにネイトのお情けが大いに占めているとはいえカヤは休戦協定をまとめ上げた実績はある。

 

他の連邦生徒会役員にそれができるかというとかなり怪しい。

 

事実、連邦生徒会の中でカヤはこの手の政治的手腕は高い方だと言える。

 

そのことを前面に押し出し講和会議の間だけでも自由な行動を、あわよくば講和会議をまとめた手柄で謹慎の回避を目論む。

 

「ですから、私にお任せください!必ずこの講和会議をまとめ上げて…!」

 

必死に訴えるカヤだが…それはノックという決して大きくない音で打ち切られた。

 

やってきたのは…

 

「リン行政官、アオイよ。お連れしたわ。」

 

財務室長の扇喜アオイであった。

 

「どうぞ、入ってください。」

 

「失礼するわね。」

 

リンに促され室内に入るとそこにいたのはアオイだけでなく、

 

「ご無沙汰です、代行。」

 

「今日はお忙しい中ご足労いただきありがとうございました、ユウカさん。」

 

ミレニアムのセミナー会計であるユウカも一緒であった。

 

彼女の登場にカヤは首をかしげるも、

 

「…先日書面にてお伝えしましたが…アビドスとカイザーの講和会議の調停役をミレニアムにお願いしたいといった件ですが…。」

 

「なっ…!」

 

リンの口から自分がなろうと提案していた講和会議の調停役をミレニアムに依頼すると言われ目を見開いた。

 

そんなカヤを無視するように、

 

「話は聞きましたが…なぜ我々に?」

 

ユウカはそんな役目を自分たちに任せるか尋ねる。

 

この手の交渉ごとの調停役など面倒の権化のような仕事を任されようというのだ、当然ともいえる。

 

「普通、あの戦争を承認したも同然の連邦生徒会が行うべき役目では?」

 

「確かにそうです。ですが、我々はアビドスとW.G.T.C.に対する外交チャンネルがなく仲裁を持ち合わせておらず…。」

 

「…そんな状況で宣戦布告を承認したのですか?」

 

あまりにも体たらくな連邦生徒会の状態に呆れ気味にユウカは尋ね返す。

 

いかにアビドスが連邦生徒会での発言権は失われて久しいとはいえ酷過ぎる有様である。

 

「もし、カイザーが勝利した際はどうするつもりだったのですか?」

 

「それは…。」

 

「完全にカイザーを支持していた連邦生徒会が調停役をやっていたのですか?それとも…カイザーにいいようにやらせるつもりだったのですか?」

 

「…返す言葉もありません。」

 

ユウカの指摘にリンは一切反論することができないが…

 

「そ、それは私が責任を持って…!」

 

カヤが声を上げてその場合でも調停役を買って出ると言ってのけたが…

 

「防衛室長?連邦生徒会で最もカイザー側に立っていたあなたがフェアな立場でまとめ上げれたのですか?」

 

「うぐッ…!」

 

「ニュース見ましたよ。あれほどカイザーのプレジデントとすぐにコンタクトが取れるような方がそんなことができるとは思えないんですが?」

 

「そ、それは私が調停役になるので講和の打診を…!」

 

「では、そのことをアビドス側とすり合わせを行いました?アビドスは講和をカイザーから断られていたと言ってましたけど知らないわけないですよね?」

 

「………ッ!!!」

 

「第一、講和は双方の合意がないとできないことは知ってますよね。敗色濃厚なカイザーよりもアビドスとW.G.T.C.に交渉するべきだと思いますが違いますか?」

 

外部の人間だからこそ、ユウカの容赦ない指摘が突き刺さり何も言えなくなっていく。

 

「…防衛室長、発言を控えてください。話が進まなくなります。」

 

「で、ですが…!」

 

「もう一度言います。…カヤ、静かにしてください。」

 

「~ッ!…申し訳ありませんでした…!」

 

「…申し訳ありませんでした。話を戻しましょう。」

 

そんなカヤをリンは黙らせ本題に移る。

 

「ユウカさんのおっしゃる通り、これは我々の体たらくが招いた事態です。カイザーが勝利していた場合、我々はカイザー側もしくは不干渉を貫かざるを得なかったでしょう。」

 

「キヴォトスを管理運営すべき組織とは思えませんね。…それで、アビドス側が勝利し調停役をやるにも『誰か』さんが中立なんて言えない立場に連邦生徒会を立たせてしまい調停なんてできる立場にない…と?」

 

「お恥ずかしながら…。」

 

「事情は分かりました。…それで、なぜミレニアムにその話を?」

 

なんともずさんな話だがそこはいい。

 

連邦生徒会の評判などユウカにはあまり関係ないのだから。

 

問題はそのお鉢がなぜミレニアムに回ってきたかということだ。

 

「…財務室長。」

 

「ハイ。ユウカさん、私たちは休戦が始まった直後よりアビドス…もといW.G.T.C.とカイザーとの契約関係を調査させてもらったわ。」

 

「…それで?」

 

「そんな中でW.G.T.C.とカイザーコンストラクションとの『廃墟区画解体事業』の契約にミレニアムセミナーが関わっていることが判明したの。」

 

「えぇ確かに。お陰様でカイザーコンストラクションともW.G.T.C.とも良好な関係を築けていますね。」

 

明かさなかっただけで別段隠すような内容でもないのでユウカもあっさりその事実を認める。

 

「W.G.T.C.は新興の企業、アビドス外部との関りがあまりにも少なすぎる中…ミレニアムだけが唯一あの会社との契約に至っている。」

 

「…。」

 

「他はカイザーコンストラクションとセイント・ネフティス社のみ。カイザーは敵側、セイント・ネフティス社はアビドス側に立っている状況で…ミレニアムのみが中立に立てる存在だったわ。」

 

「それで私たちに調停役を?」

 

「はい、引き受けていただけますか?」

 

確かに提案は理解できる。

 

単に一契約のみ、それでも両者とかかわりを持ち間に立てる中立性を持つことは何物にも代えがたい調停役の条件に合致している。

 

真剣なまなざしで見つめるリンだが…

 

「話は分かりました。…問題は調停役を引き受ける私たちにどんなメリットがあるかです。」

 

「………ッ。」

 

「云わばこれは連邦生徒会の尻拭いをミレニアムに押し付けるも同然。交渉の難易度もさることながら…ミレニアムの負担もかなりあります。」

 

調停役を引き受けることとなれば相応の準備がいる。

 

会場のセッティングだけでなく警備人員の配置やその間の業務の振り分け、スケジュール調整など費用も相応にかかる。

 

それを上回るメリットがあるかとユウカはリンに尋ねる。

 

「しかも今回の戦争はキヴォトス全土に多大な影響が波及した事態です。相応の見返りがなければ…ミレニアムも引き受けるのはためらいますね。」

 

「…無論です。引き受けていただけた場合には相応の見返りをミレニアムに与えることは確約します。」

 

「ではどのような?」

 

「具体的にはこの会議での費用の補填、助成金の増額、減税措置、連邦生徒会への登用人員の増加…などを…。」

 

正直言ってかなりの優遇措置だ。

 

経済面は元よりミレニアムの発言力も増すことができる。

 

費用も負担してくれるとなるとミレニアムの負担も軽くすることができる。

 

リンの出した見返りを聞きユウカは脳内で素早く算盤を弾き…

 

「…良いでしょう。それほどのメリットを得られるのであればそのお話、お引き受けします。」

 

大いに利があると判断し調停役を引き受けるのであった。

 

「ありがとうございます。では、細かな内容はまた後日取り決めましょう。」

 

「そうですね。それでは私はこの後、カイザーとアビドスの両陣営に調停役となったことと講和会議の日時などを伝達に向かいます。」

 

話も一応まとまったのでユウカは直ちにカイザーとアビドスの元に向かうため退出。

 

幸い、どちらも現在はD.U.にいるので負担は少ない。

 

「では行政官、私もそろそろお暇するわ。」

 

「ありがとうございました、アオイ財務室長。」

 

続いてアオイも退出し、室内には再びリンとカヤだけになり…

 

「…防衛室長、先ほど伝えた通りです。自室にて謹慎に入ってください。」

 

「り、リン行政官…!」

 

「決裁が必要な業務に関しては職員に運ばせますので。」

 

「………失礼します…!」

 

最早取り付く島がない彼女に肩を落としカヤは退出するのであった。

――――――――――――――

 

――――――――

 

―――

《衝撃的なライブ配信も記憶に新しい中、わずか二日でこの場をまとめ上げたミレニアムの政治手腕は非常に高いものと…。》

 

テレビはなおも講和会議の仲裁役を務めわずか2日で会議の開催にこぎつけたミレニアムを称賛する報道が流れている。

 

「なぜ…!誰も彼も超人である私を忘れたかのように…!」

 

その言葉の一言一言がカヤの精神をすり減らしていく。

 

開戦後、初めてW.G.T.C.とコンタクトをとり休戦交渉をまとめたのは自分だというのに…。

 

自分のおかげでD.U.の市民は安全に避難できたというのに…。

 

誰も自分のことを称えないどころか疑惑の目を向けてきている。

 

常人である大衆が…超人である自分を…。

 

「私は…超人なのですよ…!?こんな…こんな扱いを受けていいはずが…!」

 

自分一人だけの部屋で自分を蔑ろにする者たちへの怨嗟を独り言ち続けるカヤ。

 

その時、

 

《あぁっと!今度はアビドスの校章を掲げた車両とW.G.T.C.と書かれた装甲車がホールエントランスに向かって行っています!!》

 

テレビを見るとこれまた厳重に警護された二台の車が映し出され…

 

《ご覧ください!今まさにこの戦争の勝者ともいえるアビドス高校の生徒二名とW.G.T.C.の社長のネイト氏が下りてきました!》

 

車両から降りたネイトたちの姿がとらえられた。

 

「…貴方は…ッ貴方はいったいなぜ…!」

 

キヴォトス中が敵となってなお立ち上がった男。

 

キヴォトス中を手玉に取りすべてをひっくり返した男。

 

自分たちをはるかに上回る兵力を相手取り勝利した男。

 

自身も大軍勢を前にたった一人で挑み撃ち破った男。

 

そして…常識では図り切れない手段で数々の難局を乗り越えた男。

 

自分と同じ…いや、それ以上の苦境であっても一切ひざを折らなかった男。

 

「………!」

 

カヤはいつしか…ネイトの姿に釘付けになっていた。

―――――――――――――――――

 

―――――――――

 

――――

「さぁいよいよだな。」

 

場面はミレニアムに戻り、講和会議が行われる会場前に降り立ったネイト。

 

この八日でジンクスで蓄えていた髭もしっかり生え揃い何時になく野性味あふれる顔になっている。

 

そして、服装も普段から商談などで用いているものよりも数倍上等そうなスーツを着ている。

 

二日前の晩、どこからか講和会議の日程を知った十六夜社長が…

 

『講和会議に出るならビシッと決めなきゃ!』

 

ということで行きつけのテーラーで仕立ててくれたのだ。

 

(…なんでサイズ知ってたんだろうか?)

 

些か疑問もあるがしっかりと着込んでこの場に臨むことにした。

 

「うへ~…やっぱ気が引き締まるねぇ…!」

 

その傍らには珍しく制服のブレザーにそでを通したホシノと、

 

「こ、こんな大きな会議は初めてですが…がっ頑張ります…!」

 

緊張で表情が硬くなっているアヤネも並び立っている。

 

「緊張するな、二人とも。ようは一昨日の延長戦だ。」

 

そんな二人の緊張を解く様に砕けた口調で語るネイト。

 

「物騒なこと言わないでくださいよ、ネイトさん…。」

 

「今日はドンパチしようってんじゃないんだからさぁ。」

 

話し合いだというのにまるで撃ち合いでも始まるかのような物言いに軽くツッコむホシノとアヤネだが、

 

「一緒さ。構えるのが書類になってぶっ放すのが弾丸から言葉に変わっただけで…結局、『講和会議』も『戦争』なのさ。」

 

襟元を正しながら経験を感じるような言葉を発し…

 

「それに…今を生きている生徒の中だとキヴォトスで一番の戦場を経験したんだ。今更、怯えることもないだろう?」

 

不敵な笑みを浮かべて二人を見るネイトに…

 

「…そうですね。そう考えると…少し気が楽になりました。」

 

「弾は飛んでこないしアビドスウチがめちゃくちゃ有利だから楽なもんだねぇ~。」

 

アヤネとホシノの緊張もほぐれたようだ。

 

「さて、じゃあ…大タコを料理しに行きますか。」

 

「「了解!」」

 

そして、ネイト達もホール内に足を踏み込む。

 

その後控室に通されしばし時間を潰したのち…

 

「お待たせしました。本日、司会進行を務めます『早瀬ユウカ』です。」

 

「書記を務めさせていただきます『生塩ノア』です。本日はよろしくお願いします。」

 

調停役を引き受けるミレニアムのユウカとノア、

 

『………。』

 

テーブルをはさみ向かい合う、暗く重い雰囲気を纏うプレジデントを筆頭としたカイザーコーポレーションの幹部たち、

 

「「「………。」」」

 

彼らとは対照的に真剣な表情ながら余裕を醸し出すネイト・ホシノ・アヤネのアビドスの代表者たち。

 

そんな者たちが一堂に会し…

 

「これよりアビドス高校並びにW.G.T.C.とカイザーコーポレーション間の戦争に関する講和会議を開催いたします。」

 

この戦争を真の意味で終わらせるための戦いが始まった。




外交というものは、形を変えた戦争の継続状態である
―――中華人民共和国初代首相『周恩来』
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