Fallout archive   作:Rockjaw

95 / 209
兵は神速を貴ぶ
―――『魏志』郭嘉伝より


Terminus of Mourned Objects

モモイの目的の代物『G.Bible』の話を聞き終え四人はすぐに行動開始。

 

タイムリミットは2週間、ゲームを1から作るとなると余裕はあまりないだろう。

 

善は急げということでベルチバードに飛び乗り廃墟区画へと向かう。

 

「全く…あの場所にそんなのあるなんて知らなかったぞ。」

 

「私も大まかな場所しか知らないけど廃墟区画のその区画辺りにあるっていう噂を教えてもらったの。」

 

「都市伝説みたいなものですけどこの場所には未知の技術が眠ってるらしくて信じる価値はあると思います。」

 

「でも幸運だったね、モモイ。ネイトさんが普段作業している区画とは全く違う場所で。」

 

そう、モモイがこの話を持ち出した時に真っ先に心配したのはネイトの解体事業だ。

 

ネイトにとってこの場所はカイザーから金を搾り取り資材を確保する農場ファームのようなもの。

 

「俺の作業中もたまに電子機器は見つかるがどれもこれも完ぺきに壊れてていちいち気にしてはいなかったんだが。」

 

故に作業中に何か見つかってもよほどのことがない限り解体され資材になってしまう。

 

「そう言う使えそうなの見つからないの?ほら、ネイトさんが贈ってくれたゲームの筐体みたいなの。」

 

「おそらくあそこはオフィス街とかだからそういう感じのはあまりないな。」

 

「ちなみに今から向かう区画はどんなところですか?」

 

「俺の勘だが…研究区画のような場所だろう。そこならモモイが言うような遺物が眠ってる可能性も高い。」

 

「ひょっとしたらまだまだ私たちが知らないものが眠ってるかもですね。」

 

「あり得るな。俺が解体できた区画でもせいぜい3%にも満たない範囲だ。そう言うのが見つかったらユウカたちの世話になるとしよう。」

 

そんな会話を交わしつつ一天号は廃墟街近辺上空に差し掛かり適当な場所で着陸。

 

ヘリから降り身支度を整える一行。

 

「先生、ここから先は危険地帯だ。コートは着ておけよ。」

 

「了解しました。」

 

「あれ?パワーアーマーは着ないの、ネイトさん?」

 

「俺一人が強引に突破するならそれでもいいが随伴者がいるんだ。隠密策で行こう。」

 

ネイトは愛用のシルバーシュラウドの衣装にアーマーを纏う防御と隠密を両立できる組み合わせだ。

 

武装もそれに合わせロボットの有効なレーザーライフルと…

 

「え、ネイトさんって弓矢も使えるんですか?」

 

「以前、出先アパラチアで仕込まれてな。これなら音もなく攻撃ができる。」

 

「へぇ~こんなにゴテゴテした弓初めて見た…。」

 

滑車とカムが装備された近代的な機械式の弓『コンパウンドボウ』である。

 

威力は熊すら仕留めることができ静音性もサプレッサーを装着した銃よりも高い。

 

銃が一般的なキヴォトスではめったに見られないもののためモモイとミドリは物珍しそうに眺めている。

 

「よし、皆。最大限見つからないように静かに行こう。敵の排除が必要な場合は俺がやる。」

 

「もしも見つかっちゃったときは?」

 

「そうならないことを祈るが…その時は出たとこ勝負で突っ切るぞ。先生は後方で指揮を頼む。」

 

「了解しました。」

 

こうして、弓を持った大人とライフル銃を抱えた二人の少女と丸腰の大人という奇妙なパーティは廃墟区画に足を踏み入れた。

 

そして、場面は前話の冒頭へと戻る。

 

「しかし…ここはロボット兵の数が多いな…。」

 

「そうなの、ネイトさん…?」

 

「俺が普段仕事しているところでもこんなに厳重に巡回はしていない…。」

 

「じゃあ、やっぱりここには何か重要なものが眠ってるかもしれないんだね…!」

 

「ここまで厳重に警備してて何もないってことはないはずだよね、お姉ちゃん…!」

 

「でも、ここまで多いと進むのも大変ですね…。」

 

「ッと、待て…!」

 

身をひそめながら進む一行に近づいてくる二体のロボット兵。

 

わき道はなくこのままでは見つかってしまうが…

 

「シュー…。」

 

ネイトは冷静にコンパウンドボウに矢を番え…

 

「ッ!」

 

「■■◆…!」

 

まずは一体のロボット兵に矢を打ち込む。

 

鏃には着弾時にプラズマを放出する仕掛けが施されており超高温のプラズマが内部機構を溶解させロボット兵は崩れ落ちる。

 

「ーッ!?」

 

もう一体のロボット兵は音もなく見たこともない『矢』という攻撃の前に硬直するが…頭部に矢が叩き込まれ信号を送る暇なく破壊。

 

「…よし、前進するぞ。」

 

「す、凄い…!本当に弓矢で倒しちゃった…!」

 

「それにすごく静か…!これならロボット兵にもバレませんね…!」

 

「弓矢ってあんなに速く射てるものなんですか…?!」

 

「トレーニングの成果さ。」

 

障害を排除しネイトたちは前進を再開。

 

「それにしても…モモイは一体どこでそんな噂を聞いたんだい…?」

 

道中、先生がモモイに尋ねる。

 

この広大な廃墟区画で大雑把とはいえ目的の物がある場所を絞り込むのは容易ではないはず。

 

一体どこでそんな噂を聞いたのか疑問に思うのも無理はない。

 

「うーん…私もヴェリタスからちょっと聞いただけだから分からないことだらけだけど…。」

 

「ヴェリタスと言うと…モモイ達の友達がいるっていうホワイトハッカーの部活だったか?」

 

「そうだよ。それでそこの部長の『ヒマリ先輩』によるとここは…『キヴォトスから消えて忘れ去られたモノが集まる、時代の下水道みたいな場所なのかもしれない』…って。」

 

「あのRPGの賢者みたいに『何でも知ってますよ』って感じのヒマリ先輩が『かもしれない』って言葉を使うのも珍しいね…。」

 

「ミレニアムにはそんな凄い生徒がいるんだね…。RPGの賢者みたいっていうのがちょっとどんな生徒か想像がつかないけど…。」

 

「あ、そうそう。ネイトさんがあの時頼んだ電波ジャックやってくれたのもそのヒマリ先輩なんですよ。」

 

「それは一度直に会って礼を言わなきゃだな…。」

 

そんな風にモモイがこの場所に来た理由を説明すると…

 

「…ちょっと待って、お姉ちゃんが『G.Bibleはここにある』って言った理由って『キヴォトスから消えて忘れ去られたモノが集まる』って聞いたから…!?それだけの理由で…!?」

 

ミドリが怪訝そうな表情でモモイに尋ね返す。

 

そのヒマリが言うことにミドリも信憑性を感じてはいるが…それだけではこのような危険を冒すのに割に合わない。

 

だが、

 

「それだけじゃないよ。ヴェリタスにちゃんとG.Bibleの捜査を依頼して『最後にG.Bibleの稼働が確認された座標』を教えてもらったんだから…。」

 

そのあたりはモモイも抜かりはない。

 

ヒマリの話だけでなくちゃんと調査を実施してある程度確信を深めている。

 

「その座標が指してたのは…『普通の地図には存在しない場所』だった。」

 

「…なるほど、そのヒマリの言葉と調査結果を掛け合わせると…この廃墟区画に当てはまったということか。」

 

「そゆこと…!」

 

この広大な廃墟区画でモモイがこの場所を選んだかの理由は理解できた。

 

出来たが…

 

「それで…G.Bibleって結局なんだっけ…?」

 

「…そういえば今更ながらいったいどういう代物なんだ?パルス爆撃はしないでって話だったから電子機器だとは推測がつくが…。」

 

目標のG.Bibleというものがそもそも何なのかネイトと先生にはさっぱりだった。

 

ネイトも探し物は得意だがそれがどういうものか分からなければ探しようがない。

 

「あ、そういえばそっちも説明の途中だったね…。」

 

「ちょっとお姉ちゃん…。ここまで二人連れてきといてそれは…。」

 

「うるさいなぁ…。…簡単に言うと昔のミレニアム…というより昔のキヴォトスにはね、伝説的なゲームクリエイターがいたの。その人がミレニアム在学中に作ったのが『G.Bible』。」

 

「それは…そのクリエイターが作ったゲームなのか?」

 

「詳しいことは分からないけど…その中には『最高のゲームを作れる秘密の方法』が入ってるんだって…!」

 

と、ここまで自信満々に騙るモモイに…

 

「…それ、どこかのゲームクリエイター学校の広告じゃなくて?」

 

なんとも冷めた様子のミドリが冷静にツッコんだ。

 

これがモモイとミドリの『普段通り』のやり取りだった。

 

だが…

 

「違うよ!G.Bibleはあるって!読めば最高のゲームを作れるようになる『ゲームの聖書』は絶対にある!!!そのG.Bibleを読めば最高のゲーム、『テイルズ・サガ・クロニクル2」』が作れるはず!」

 

「ちょ、モモイ…ッ!?声を…ッ!」

 

悪い意味で普段通りだった。

 

ネイトが落ち着かせようと声をかけるが…

 

「ヴェリタスからもらった子の座標に向かっていけばそこにきっとG.Bibleが…!」

 

「………■■■ ■■■■!!!」

 

一歩遅かった。

 

「あ、あれって!?」

 

「ロボット!」

 

「ちぃッ!!」

 

これまでなら探知されなかった距離のロボットに察知されてしまった。

 

素早くネイトが矢を放ちそのロボットを沈黙させるがすでに周囲に自分たちの存在を知らせてしまった。

 

「■■■■■■■■■ッ!!!」

 

機械音声の怒号と共にこちらにどんどん集まって来る足音が廃墟中に響く。

 

「な、なんだかすっごく狙われてない!?こっちの方に集まってきてるし!このままじゃ包囲されちゃう!!!」

 

「うわわわッどうしよう!?」

 

パニくり始めるモモイとミドリ。

 

だが、

 

「モモイ、その座標はどっちだ!?」

 

「え!?あ、あっちだよ!」

 

「よし、私がそっちの様子を探るよ!」

 

「モモイ、先生の直掩に付け!ミドリ、俺と一緒に時間を稼ぐぞ!」

 

「はっはい!」

 

ネイトと先生の素早い指示が飛び防御陣形を形成。

 

「盾持ちは俺に任せろ!撃て!」

 

遮蔽物に身を隠しネイトとミドリは射撃を開始。

 

ミドリのフレッシュ・インスピレーションとネイトのレーザーライフルが迫りくるロボット兵に襲い掛かる。

 

「ミドリ、水没地帯の戦いを思い出すな!」

 

「ですね!あの時よりも私強くなってますよ!」

 

その言葉の通り、ミドリはロボット兵がこちらに向けて構えるバズーカ砲の銃口に照準し発砲。

 

距離こそそこまで離れてないが弾丸は銃口に飛び込み内部の弾頭に命中、弾頭が爆発し周囲のロボットも巻き込んだ。

 

「その意気だ!これは俺も負けちゃいられん!」

 

ネイトもV.A.T.S.強化の恩恵を活かし一気に何体ものロボットを撃ち抜いていく。

 

盾持ちであろうとレーザーの出力とPerk『Penetrator』によって盾ごと蜂の巣にされた。

 

さらに連続撃破によってPerk『Grim Reaper's Sprint』も発動、途切れなくV.A.T.S.によるレーザーの射撃を浴びせていく。

 

「せ、先生どう!?それっぽいとこあった!?」

 

一方、先生の直掩を任せられたモモイはユニーク・アイディアで制圧射撃をロボットに放つ。

 

ミドリ程の正確さはないがドラムマガジンの大容量を活かし弾幕でロボット兵を絡めとっていく。

 

さらに、

 

「あぁもう!こっちに来るなぁ!」

 

大きく腕を振りかぶってある物を投擲。

 

小さな体のどこにそんな力があるのか、剛速球で投げられたそれは一体のロボット兵の顔面に直撃。

 

そして…爆発を起こした。

 

「ネイトさん、いいねこれ!すっごい投げやすいよ!」

 

それが気に入ったのか再びそれを取り出しロボット兵に向け投げつけるモモイ。

 

手に持ったそれは…野球ボールだった。

 

その名も『野球ボール・グレネード』、文字通り野球ボールを用いた接触起爆型のグレネードだ。

 

フラググレネードのように破片ではなく爆風のみで攻撃する『攻撃型グレネード』という分類のため加害範囲こそ狭いもののよりピンポイントで攻撃できる利点がある。

 

これが意外にモモイと相性がいいようで狙った場所にどんどん投げ込んでいく。

 

廃墟区画の一角で突如始まった銃撃戦。

 

そして、ネイトたちが時間を稼いでいる隙に…

 

「…!皆、あっちの方に工場みたいなのが見えるよ!」

 

先生が目的地と思わしき場所を発見。

 

「やった!で、でもどうやってあそこまで!?」

 

「前にもあんなにいっぱい!」

 

「ともかく応戦だ!3人とも、俺に続け!」

 

『了解!』

 

行く手にも多数のロボット兵が展開しているがネイトを先頭に突撃開始。

 

「モモイ、左右の敵に制圧射撃を!ミドリは後方のロボット兵を足止めして!ネイトさんはそのまま動線の確保を!」

 

先生もシッテムの箱を操作しつつ三人に指示を飛ばす。

 

「あぁもうッやっぱ出たとこ勝負になっちゃったぁ!」

 

「でも先生とネイトさんがいるんだから負けっこないよ、お姉ちゃん!」

 

「パルスグレネード、行くぞ!」

 

その指示を忠実にこなし四人はロボット兵の包囲網を食い破り…

 

「行け行け行けっ!しんがりは任せろ!」

 

「絶対あそこだ!おやつ賭けたっていいよ!」

 

「じゃなかったら本当にお菓子没収するからね!!!」

 

「ともかく建物の中へ急いで!!!」

 

目的地であろう工場に到着。

 

モモイ達三人が建物内に避難したのを見て、

 

「悪いがそこから先は通行止めだ…!」

 

ネイトはコンパウンドボウに持ち替え矢を構える。

 

狙う先はロボット兵たちではなく…道の傍らで朽ちているタンクローリーだ。

 

引絞られたコンパウンドボウは番えてある『火矢』を猛スピードで放つ。

 

熊をも一撃で仕留めうる威力を誇る矢は金属製のタンクを穿ち…内部に残っていた物質に引火。

 

大爆発を起こしロボット兵ごと周囲を火の海に変えた。

 

それを物陰から見届けネイトも工場内に侵入。

 

「大丈夫ですか、ネイトさん?!凄い爆発音でしたけど!?」

 

「タンクローリーを吹き飛ばしてきた。これで時間が稼げるはずだ。」

 

「相変わらず無茶をしますね。師匠…。」

 

出迎えてくれたミドリと先生がネイトを心配したりあんぐりしていたりする中…

 

「…あれ?」

 

「どうかしたか、モモイ?」

 

「あのロボット達…急に襲ってこなくなったよ…?」

 

「なに?」

 

モモイが外を窺い不思議そうにつぶやく。

 

確かにあれだけ襲い掛かってきたロボット兵の攻撃がぴたりとやんだ。

 

「…確かにレーダーにも反応がない。退却したのか…?」

 

その証拠にPip-Boyに内蔵されている対人レーダーにも先生たち以外の反応が無くなっている。

 

「なんだか分かんないけど…とにかくラッキー、でいいのかな?」

 

「良くないよ!うわあああああん、もういやぁッ!いったいなんでこんなところでロボット達に追っかけられなきゃいけないの!?」

 

能天気なモモイと対照的にとうとうミドリの感情がオーバーフローを起こす。

 

「落ち着いて、ミドリ!生きてればいつか良い日が来るって!」

 

「私は今日の話をしてるの!うわあああん、ネイトさあああん!」

 

「おっとっと!?…あぁ~よく頑張った、ミドリ。射撃も上手になったな。」

 

そのままミドリはネイトに抱き着き、ネイトも彼女を落ち着かせようと戦闘を誉めながら背中をさすったり頭を撫でる。

 

「ミドリばかりずるい!私も頑張ったのにー!」

 

と、そんな彼女を羨ましがるモモイに…

 

「………♪」

 

「あぁーッ!いま笑った!ミドリ、いま笑ったよね!?」

 

「そんなことないよーだ♪」

 

勝ち誇ったような笑みを向けるミドリなのであった。

 

「先生ぇー!ミドリがぁ!」

 

「モモイもよく頑張ったね。君のおかげで私も助かったよ。」

 

お返しにと言わんばかりにモモイも先生に抱き着き、彼もそんなモモイの意図を察してかネイトと同じように彼女をあやしてくれた。

 

その後、モモイとミドリは互いに相手を変えてしばしの間ネイトと先生に甘え…

 

「とにかく…ここは何をするところなんだろう?」

 

「工場跡ってのは分かるが…それらしい製造設備もないな…。」

 

一先ずこの工場内部の探索を開始。

 

内部はかなりがらんとしており相当長い間放置されていたことがうかがえる朽ち具合だ。

 

「それにしてもあのロボット達、まるでここに近づけさせないような感じでしたよね。」

 

「そうだね。だとするとここに何かあるのは間違いないはずなんだけど…。」

 

「うーん、何か引っかかってるんだよね…。大事なことを見落としてるっていうか…。」

 

「だが、ヴェリタスが算出した座標はあってるんだろ?」

 

「そのはずだよ、ネイトさん。それに…。」

 

四人で固まり警戒しながら内部探査を進めある扉の前に立った…その時だ。

 

『接近を確認。」

 

「えっな、何!?」

 

突如として謎の声が聞こえてきた。

 

「部屋全体に音が響いてる…?」

 

「ここの警備システムですかね…?」

 

「構えろ、モモイにミドリ。何が出てくるか分からんぞ…。」

 

突然の事態に警戒する一行だが…

 

「対象の身元を確認します。………才羽モモイ、資格がありません。」

 

「え!?どうして私のことを知ってるの!?」

 

その音声はモモイのフルネームをぴたりと言い当て何かの資格がないと伝える。

 

驚く彼女をしり目に、

 

「対象の身元を確認します。………才羽ミドリ、資格がありません。」

 

「私まで…?!なにがどうなってるの…?!」

 

続いてミドリが呼ばれてやはり何かの資格がないと言われる。

 

「対象の身元を確認します。………□□□先生。」

 

続いては先生の名前が呼ばれ、

 

「…………。」

 

「ど、どうかしたんですかね…?!」

 

しばしの沈黙の後…

 

「資格を確認しました。入室権限を付与します。」

 

「えぇッ!?」

 

「どういうこと!?先生、ここに来たことあるの!?」

 

「い、いや今日が初めてだしなにがなんだか…!?」

 

「じゃあなんでこの建物と仲良しなの!?」

 

ここに始めてきたはずの先生にこの声は入室権限を付与した。

 

予想外のことに先生も戸惑っていると…

 

「対象の身元を確認します。………。」

 

「つ、次はネイトさん…かな?」

 

機械は残る一人であるネイトの判断を下すようだが…

 

「………………。」

 

「あ、あれ?」

 

音声はしばし沈黙してしまった。

 

どういうことかと顔を見合わせていると突然、

 

「………エラー発生エラー発生。直ちに自己修復プログラムを起動します。」

 

「えぇ!?」

 

「え、エラーってどういう…!?」

 

先ほどと打って変わって何やら誤作動でも起こしたのか音声はエラーの発生を申告。

 

そして…

 

「…修復プログラムの作動を確認。」

 

修正が終わり…

 

「対象の身元を確認します。………『The original』……………資格を確認しました、入室権限を付与します。」

 

「オリジナル…?」

 

「オリジナルって…何がネイトさんはオリジナルなの…?」

 

いままでとは全く違う文言を発しネイトにも入室許可が下りた。

 

「才羽モモイ、才羽ミドリの両名を先生の生徒として認定。同行者である『生徒』にも資格を与えます。承認しました。」

 

続けてモモイとミドリにも資格を与えると発し…

 

「下部の扉を解放します。」

 

そう機械の音声は告げて言葉を発しなくなった。

 

「…下部の扉?この目の前の扉じゃなくて?」

 

ミドリが不審そうに言う。

 

普通、この場合は目の前にある扉が開くはずだろう。

 

「それよりも下部ってもしかして…。」

 

それが『下部』、つまり…

 

「…いやいや、まさかぁ。」

 

自然と全員の目線が足元に向かう。

 

「さすがに違うでしょ、お姉ちゃん。どこからどう見てもただの床―――。」

 

面白くない冗談を言ったモモイにミドリが冷静にツッコんだ…次の瞬間。

 

ブレーカーが落ちたかのような音と共に…

 

「ゆ、床が無くなッ…落ちる!?」

 

「うわわわッ!?」

 

「そんなまさか!?」

 

「なんなんだよ、一体!?」

 

『ワアアアアアアアアアアアアアああ!!!?』

 

床が消失し…四人はなすすべなく落下していくのであった。




汝の足下を掘れ、そこに泉湧く
―――詩人『フリードリヒ・ニーチェ』
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。