Fallout archive   作:Rockjaw

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ダイアモンドや金貨は、人の心を大きく動かす。けれどもやさしい言葉は、もっと力があり、もっと大きな価値がある
―――詩人『シャルル・ペロー』



La fille ruinée qui dort.

「ゆ、床が無くなッ…落ちる!?」

 

「うわわわッ!?」

 

「そんなまさか!?」

 

「なんなんだよ、一体!?」

 

突如床が消失する、長く生きたネイトであっても未体験の現象だ。

 

だが、足下が無くなり起こる現象は重力があるのならどこの世界も変わりない。

 

『ワアアアアアアアアアアアアアアア!!!?』

 

四人はぽっかりと開いた開口部になすすべなく落下。

 

「お姉ちゃんッ先生ッネイトさん!!!きゃああああッ!」

 

下は真っ暗で底が見えない。

 

このまま落下してしまえばただでは済まない可能性が高い。

 

だが、

 

「三人ともじっとしてろ!!!」

 

この男、ネイトは最後まであきらめない。

 

落下して直ちにV.A.T.S.を起動。

 

「キャッ!」

 

「ネイトさぁん!」

 

「ぐへッ!?」

 

モモイとミドリを脇に抱え先生は肩車の要領で自らに固定し体勢を背中から落ちる形に変え、クラフトモードを起動。

 

(まだだ…!まだだ…ッ!)

 

いつでもクラフトができる準備を整え…

 

(…今っ!)

 

地面が見えた瞬間、『ソレ』をクラフト。

 

そして…

 

「「ぎゃふんッ!!?」」

 

「わッぷッ!?」

 

「グハッ!?」

 

四人はネイトがクラフトした物体の上に落下。

 

硬いものに落ちたとは思えない柔らかい衝突音を周囲に響かせる。

 

「全員、無事か…?」

 

「あ…あれぇ…生きてるぅ…?」

 

「し、死んじゃうかと思ったぁ…。」

 

「い、一体全体何がどうなって…。」

 

何はともあれ全員の無事を確認、体を起こし状況を確認すると…

 

「あれ…?どうして柔らかいの…ってこれ…?!」

 

「た、体育館とかにある大っきなマット…?!」

 

「どこでこんなクラフトを覚えたんですか…?!」

 

「アビドスの体育館の補修の時にな…。何かに使えるんじゃないかって覚え込ませておいた…。」

 

四人が寝転んでもまだ余裕がある分厚く巨大なマット、正式名『セイフティマット』が敷かれていた。

 

「ともかく起きよう。まだ安全と断定できないからな。」

 

「もうこのままおやすみしたいぃ~…。」

 

「ほらお姉ちゃん、起きて。ここまで皆お姉ちゃんのためについてきたんだから。」

 

「なにはともあれ全員無事でよかったですね。」

 

幸運にも四人とも無傷で地に足を付くことができた。

 

クズるモモイをミドリが引っ張り立たせマットを収納したところで…

 

「それにしてもここはなんだろう…。」

 

「そんなに深くないような場所みたいだけど…。」

 

「何らかの地下施設だっていうのは分かるが…。」

 

周囲を窺うと上で歩いていたくらいの広さの通路のようだ。

 

「待ってろ、今ライトをつける。」

 

「へぇ…Pip-Boyってライトも付いてるんですね。」

 

「とりあえず…道なりに進んでみよっか。」

 

「帰り道も探さないとだからそうしよう、モモイ。」

 

Pip-Boyに内蔵されているライトで照らしながらとりあえず道なりに進んで行くと…

 

「…ん?」

 

「どうした、モモイ?」

 

「…えッ!?」

 

モモイが何かを見つけ声を上げる。

 

「お姉ちゃん、一体なにが…えッ…!?」

 

その方向を見たミドリも同様に驚いたような声を上げる。

 

「アレは…?!」

 

「どういうことだ…?!」

 

先生とネイトも遅れて互いに驚きの表情を浮かべる。

 

そこは陽の光が差し込み明るくなっている部屋だった。

 

その日の光の中…まるで診察台のような椅子の上に…

 

「お、女の子…?」

 

「こんな廃墟に…!?」

 

生まれたままの姿で一人の少女が深く腰掛けていた。

 

どう考えても異常な光景だったが…まるでそこにその少女がいることが当然と言わんばかりに調和がとれていた。

 

「この子…眠っているのかな?」

 

警戒しつつ近づくとその少女は目を閉じ意識はないようだ。

 

「……返事がない、ただの死体のよう…あてっ!」

 

「冗談でもそんなこと言うもんじゃない、モモイ。」

 

「そうだよ、モモイ。不謹慎なネタはダメだよ。」

 

「うぅ…ごめんなさい…。」

 

「それに死体っていうか…ねぇ見てください。この子、怪我や病気とかじゃなくて…『電源が入っていない』みたいな感じがしませんか?」

 

一見してみると深い眠りについているようだが確かに寝息のようなものは感じられないが…

 

モモイとミドリが彼女に近づき容態などの確認に入る。

 

「確かに言われてみればなんだかマネキンっぽいね…。」

 

「でも…今にでも動きだしそうなくらい生気を感じるね…。」

 

一言で言うと『精巧に作られた人体模型』、そんな印象をこの少女からは感じる。

 

すると…

 

「…………。」

 

「ネイトさん?」

 

「ッ!なんだ、先生?」

 

「どうかしましたか?」

 

「…いや、何でもない。」

 

ネイトの気配が一瞬だが変化したように先生は感じた。

 

それが何か分からなかったが…声をかけると一瞬でその気配も消え失せた。

 

「どれどれ?すごい、肌もしっとりしてるし柔らかい…。…あれ?ここに何か文字が書かれてる。」

 

そうこうしているうちにその少女を確かめていたモモイが椅子に何かの文字を発見。

 

「なんて書いてあるんだ?」

 

「…『AL-IS』…。アル、イズ?エー、エル、アイ、エス?どう読むか分からないけど…この子の名前?」

 

「名前というより…何かの型番…?」

 

「…ひょっとして…『アリス』?」

 

文字の並びからそれらしき読み方を色々考えていると…

 

「ちょっと待って、お姉ちゃん。これよく見ると全部アルファベットじゃなくて…『AL-1S』じゃない?」

 

「え、そうかな?」

 

ミドリがIの文字が1ではないかと意見する。

 

「ますます…何かの型番みたいですね。」

 

「いや、待て…。」

 

「ネイトさん?」

 

それを聞いたネイトは何かが引っ掛かった。

 

(1とS…?どこかで聞いたことがある並びだな…。)

 

ネイトは記憶の中で…どこかでこの組み合わせを聞いた記憶がある。

 

だが…

 

「…いや、少し引っかかったが…今思い出せなくてもそこまで重要なことじゃないだろうからいい。」

 

生憎、ハッキングやら何やらで文字の羅列は嫌というほど見てきている。

 

その中のどれかが思い浮かんだのだろうと、今は納得した。

 

「それにしてもこの子は…それにこの場所、一体何だろう?」

 

「この子に聞いた方が速いんじゃない?」

 

「起きて話してくれるならいいんだけど…。」

 

「これが童話とかなら『口づけ』で目覚めるのが定番だが…そんなファンタジーが通用する場所でもないか。」

 

「それにそういうのはまず『王子様』がいることが前提ですよ。」

 

「…俺たち二人、どっちもそんな柄じゃないしな。」

 

「確かに。」

 

野郎二人がそんな会話をしていると…

 

「…それ、アリだね。」

 

「「え?」」

 

「んじゃ、ネイトさんからやってみよっか!」

 

「ちょッモモイ!?」

 

何を思ったのか、面白そうな表情を浮かべたモモイがネイトの手を引っ張り彼女に近づいていく。

 

高校1年生にしては非常に小柄なモモイだがやはりキヴォトス人、ネイトが割と本気にならなければ抗えない位の力はある。

 

あっという間にその少女のそばまで連れてこられ…

 

「さぁ、ネイトさん!ブチュ~とやっちゃって!」

 

「バカッ!おとぎ話のたとえ話を真に受ける奴があるか!」

 

「そっそうだよ、お姉ちゃん!それしたってこの子が起きるって保証はないんだから!」

 

「えぇ~物は試しって言うじゃ~ん。」

 

「試すのにも限度ってのがあるぞ!?全く…。」

 

なんとかモモイの手から逃れるネイト。

 

このままでは彼女に頭を押さえつけられて強引にキスさせられかねない。

 

「………しかし、間近で見ると本当に生きているみたいだな…。」

 

「でしょう?」

 

…その行為はこの場の全員…いや万人が見ても『全く違和感がなかった』だろう。

 

ネイトはいまだに目を閉じている少女の頬にそっと手を当て…

 

「…ごめんな、静かだったのにこんなに騒いで…。」

 

これまで見たことがないほどの慈しみを湛えた表情と声だった。

 

まるでそれが当然のような光景だった。

 

モモイもミドリも先生ですら…記憶の奥底に持つ確かな暖かさが想起された。

 

その光景はまるで…。

 

…その時、何らかの電子音が室内に鳴り響いた。

 

「ん?」

 

「な、何この音!?」

 

「まさか本当に警戒システムかなにかが…!?」

 

その音に辺りを警戒する三人だが…

 

「待て…。今の音…『この子』から聞こえたぞ…。」

 

一番近くで聞いたネイトがすっと手を放しそう告げる。

 

「え?ま、まさか…?!」

 

ミドリが…いやこの場の全員がその少女に注目すると…

 

「『最高位権者接触許可対象』を検知。休眠状態を解除します。」

 

先ほど流れたような機械音声がどこかから響き…

 

「…………。」

 

「め、目を覚ました…?」

 

ゆっくりと…その少女の目が開かれた。

 

その少女は周囲を見渡し…

 

「状況把握、難航。」

 

鈴を転がすような声でなんとも機械的な言葉を発する。

 

そして、

 

「会話を試みます。………説明をお願いできますか?」

 

周りにいるネイトたちを眺めそう要請した。

 

「え、えっ?せッ説明?何のこと?!」

 

「え、説明が欲しいのはこっちの方!貴方は何者!?ここは一体何なの!?」

 

突然の問いかけにモモイとミドリは訳が分からず声を荒げる中…

 

「………。」

 

「?」

 

「…ともかくこれを着なさい。」

 

ネイトが自らのコートを脱ぎ彼女の肢体を隠すように羽織らせた。

 

すると…

 

「………不明のステータスを確認。このステータスの説明をお願いできますか?」

 

コートとネイトを見つつネイトにそう尋ねてきた。

 

「さぁ、それは俺にも…。それより…俺達は君のことが知りたいな。教えてくれるかい?」

 

そう曖昧な笑みを浮かべつつネイトは少女について尋ねるが…

 

「…本機の自我、記憶、目的は消去状態であることを確認。データがありません。」

 

少女は淡々と『分からない』旨を答える。

 

「ど、どういうこと…?い、いきなり攻撃してきたりしないよね?」

 

「肯定。接触許可対象への遭遇時、本機の敵対意志は発動しません。」

 

「うわ、凄い。ロボットの市民ならキヴォトスによくいるけどこんなに私たちに似てるロボットなんて初めて。」

 

「いや、ロボットというより…。」

 

「ネイトさん?」

 

「…なんでもない。」

 

「うーん…先生、ネイトさん。どうしましょう?」

 

「さっき聞こえた『最高位権者接触許可対象』って、どういう意味か教えてくれる?」

 

一先ず彼女には敵対する意思はないようだ。

 

より情報を得るために先生が先ほどの音声の意味を尋ねるが…

 

「回答不可、本機の深層意識における第一反応が発生したものと推測されます。」

 

「深層意識って…何のこと…?」

 

「ようは無意識だったということだ、ミドリ。俺が触れたことがトリガーで独りでに発せられたんだろう。」

 

あまり芳しい回答は得られない。

 

すると…

 

「うーん…廃墟の中の工場の地下、ほぼ全裸の女の子、おまけに記憶喪失…。」

 

「どうかしたの、モモイ?」

 

モモイが顎に手を当て何やらぶつくさ考えこみ始める。

 

「お、お姉ちゃん?今の言葉の羅列からは…いやなことしか思い当たらないんだけど…。」

 

さすがは双子、ミドリはモモイが何をしようとしてるのか察知するが…

 

「???」

 

「よし!この子をいったんミレニアムまで連れて帰ろう!」

 

「えぇー!?」

 

「ちょ、モモイ!?」

 

姉のモモイの考えを止めさせるには至らなかった。

 

当然、ミドリと先生は彼女に疑問を呈するような声を上げるが…

 

「だってこのままこんな危ないとこに置いてっちゃうわけにはいかないでしょ?」

 

「そ、それはそうだけど…!」

 

「それに私たちが帰っちゃったあと起きちゃったこの子がまた眠れるとは限らないし。」

 

「だからって連れて帰ってどうする気なの、お姉ちゃん!?」

 

「それは帰ってからのお楽しみ!よぉし、帰り道を探そう!」

 

尤もらしい意見を言い放って二人が怯んだすきに帰り道を探すためにずんずんと歩き始めるモモイ。

 

「ちょっと待ってよ、お姉ちゃん!」

 

「一人で歩くのは危ないよ!」

 

慌ててモモイを追いかけていくミドリと先生。

 

「???」

 

「全くモモイは…。」

 

その場にはネイトとその少女が残された。

 

「…まぁ、そのなんだ。一緒に来るかい?」

 

「…了解、本機は貴方達に同行します。」

 

少女はどうやらネイトたちについてくることを選択したようだ。

 

「そうか。じゃあ付いて来て…。」

 

と、ネイトがモモイ達の後を追うために歩き始めた…その時だ。

 

「…。」

 

「ッと、どうかしたか?」

 

少女がネイトと手をつないできた。

 

「………理解不能、また深層意識における第一反応が発生したものと推測されます。」

 

無意識だったのだろう。

 

むしろ、少女がこんな行動をとった自身に驚いているようだ。

 

だが…

 

「…そうか。じゃあ、手をつないでいこうか。」

 

「…はい。」

 

手を振り払う理由もない。

 

そのまま手をつなぎモモイ達を追いかけるネイトと少女なのであった。

―――――――――――――

 

――――――――

 

―――

幸い、帰り道にもロボット兵の姿はなく一行はそのままミレニアムのゲーム開発部部室まで戻ってこれた。

 

が、

 

「………。」

 

「あぁッ!私のWeeリモコンを口に入れないで!ペッてして、ペッて!」

 

ミドリから予備の制服を借りた少女はまるで赤ん坊のようなしぐさをとっている。

 

ゲームのコントローラーを口に含みもぐもぐとしているのを必死にミドリがやめさせようとしている中、

 

「ほら、それよりもこっちの方が甘くておいしいぞ。」

 

「………?」

 

ネイトがもっていたキャンディの包み紙を開き、

 

「ほら、口を開けて。」

 

「…んあー。」

 

彼女に差し出すと少女もそれを迎えるように口を開ける。

 

「いい子だ。…どうだ?」

 

「…本機には未知の感覚です。ですが…好ましく思います。」

 

口の中にキャンディを入れると少女はどうやら気に入ってくれたようだ。

 

「そうか、口にあったようでよかったよ。ほら、ミドリ。」

 

「あ、ありがとうございます…。」

 

「…なんだか堂に入ってますね、ネイトさん。」

 

「まぁ…な。」

 

「ほら、やっぱり放っとくわけにはいかないでしょ?」

 

「それはそうだけど…今からでも連邦生徒会かヴァルキューレ辺りに連絡したほうが良くない?」

 

確かにこのような場合はキヴォトスの統治組織に連邦生徒会かヴァルキューレに対応を仰いだ方が賢明だ。

 

そうでなくともセミナーには相談すべき案件だが…

 

「それはそうだけど…それはまだ・・。私たちのやるべきことが終わった後にね。」

 

それは時期尚早と判断するモモイ。

 

「やるべきこと?」

 

「まぁ、確かにシャーレの私がいるから多少報告が遅れても問題はないと思うけど…何をするつもりなの、モモイ?」

 

それが何なのか尋ねるミドリと先生だが…

 

「さて、とりあえず名前は必要だよね。うーん…。」

 

モモイはとっくに自分の世界に入り彼女の名前を考え始める。

 

そして…

 

「…よし、じゃああなたのことは『アリス』って呼ぼうかな。」

 

少女に目を合わせて名前を提案すると…

 

「むぐッ…。…本機の名称、『アリス』。確認をお願いします。」

 

少女は口の中のキャンディーを飲み込みモモイが読んだ名前『アリス』で応答してきた。

 

「ちょ、ちょっと待って!それはお姉ちゃんが勝手に読んだ名前でしょ?!本当ならAL-1Sちゃんなんじゃないの?!」

 

と反論するミドリだが…

 

「まぁミドリ。そんな型番みたいな名前は俺も寂しいと思うぞ?」

 

「でしょでしょ~?それにそんな長い名前呼びにくいじゃん。」

 

「ネ、ネイトさんまで…。」

 

ネイトもどうやらモモイの案が好ましいようで…

 

「どうだ?君のことは『アリス』と呼ぼうと思うが…良いかな?」

 

彼女の目をまっすぐに見つめネイトがそう質問すると…

 

「…………肯定。」

 

「あ、笑った!」

 

「本機、アリス。」

 

初めて彼女…アリスが微笑んだ。

 

「アハハ!ほら見たか!私のネーミングセンス!」

 

「あぁ、さすがはモモイだな。」

 

「うーん…本人が気に入ってるならいいけど…。」

 

「それにいつまでも名前がないのはかわいそうだからね。よろしくね、アリス。」

 

「肯定、よろしくお願いします。」

 

何はともあれ彼女の名前が決まった。

 

すると…

 

「さぁッそれじゃ次のステップに行ってみよっか!」

 

気を良くしたのかモモイが宣言する。

 

「お姉ちゃん、一体何考えてるの…!?仔猫拾ってきたとかそういうレベルじゃないんだからね!?」

 

いい加減奔放過ぎる姉に嫌気がさしてきたか涙目になりながらミドリが抗議するも、

 

「ミドリの方こそよく考えてみてよ。そもそも私たちが危険を冒してまでG.Bibleを探してた理由は何だっけ?」

 

こういう時のモモイはかなり冷静でミドリを諭すように尋ねる。

 

「そっそれは…良いゲームを作ってミレニアムプライスに入賞して廃部を取り下げさせるためでしょ?」

 

「そう、いま一番大事なのはそれ。でも思い出して。私たちの廃部を訴えてきた生徒たちがゲーム開発部の何が問題って訴えてきたかを。」

 

再びモモイに尋ねられミドリは少し考えると…

 

「…部員の規定人数に達していないってこと?」

 

「そう!このままだと受賞してもひょっとしたらまたこんな騒動が起こるかもしれないじゃん!」

 

「それはそうだけど…でもそれがアリスちゃんと何が…。」

 

部員数の問題とアリスがどう繋がるかと首をかしげるが…

 

「…お、お姉ちゃん?まさかとは思うけど…。」

 

すぐにその結論に思い至り表情がゆがんだ。

 

そして…

 

「こ、この子をミレニアムの生徒に偽装してうちの部に入れようとしてるんじゃ…!?」

 

「むっふっふっふ~。」

 

はっきり言って無茶苦茶もいいとこのミドリの答えにモモイは上機嫌に笑い…

 

「アリス!私たちの仲間になって!」

 

「んむ?」

 

またネイトからキャンディを貰ったアリスにそう宣言するのであった。

 

「わ、私がいるところで堂々とそういう話は止してほしいかなぁ…なんて…。」

 

「…ちなみにそこら辺どうなんだ、連邦捜査部『シャーレ』の先生よ?」

 

「…………き、聞かなかったことにしておきます。」

 

以上がこの場の大人二人の会話である。

 

大人の耳とは都合よく聞こえなくなるものなのだ。

 

「あぁもう…大丈夫なのかな…。」

 

ミドリのそんな心配そうな声が部室内に響くのであった。




幸福は神とともにあること、それにいたる力は魂の響きなる勇気。
―――文学者『グリム兄弟』
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