Fallout archive   作:Rockjaw

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人は全員ちがう。そしてどんどん変わる。
―――ゲームクリエイター『岩田聡』



It's a Game, not Entertainment.

モモイがアリスの偽装入学&入部を宣言した後…

 

〈GAME OVER〉

プニプニ:どれだけ剣術を鍛えたところで、我が銃の前では無力…フッ。

 

「ッ!!??!?」

 

「うーん、やっぱプニプニが『フッ』っていうのは不自然かな?」

 

「…ツッコミどころはそこじゃないと思う。」

 

「これ…本当に最序盤の敵なんだよね…?」

 

「やってて思ったが…序盤でやるようなことじゃないと思うぞ…?」

 

ネイトたちはテレビを囲みアリスがゲームをプレイしているところを見学していた。

 

数十分前、

 

「…ということでしょ?」

 

「う、う~ん…確かにその考えに間違いはないんだけど…!」

 

「お姉ちゃんの言い分も分かるけど…やっぱり心配…。」

 

あの後、モモイはミドリと先生を説得していた。

 

生徒の偽装入学、キヴォトスにおいてこの行為は『密入国』と同義だ。

 

到底許されることではない。

 

だが、正当な手続きを踏んでアリスをミレニアムに編入しようとするのも…それはそれで問題がある。

 

キヴォトスでは『学籍』が『戸籍』の代わりだ。

 

それで問題のアリスだが学籍以前の問題でこれまでの経歴が一切ない。

 

つい先ほどまで廃墟の向上地下で休眠状態だったのだから当然である。

 

しかも、入れようとしている学校がミレニアムというのも厄介だ。

 

ネイトがいい例だが所属が『アビドス高等学校』の用務員というのをホシノ達が承認したのでこうやって活動ができている。

 

これは当時のアビドスがトップ含め5人しかおらずよく言うと風通しのいい学校だったからできたことだ。

 

対して、三大校の一角であるミレニアムはマンモス校。

 

編入の手続きにも時間がかかる上学籍が一切ない人物の編入などおいそれとは認められないだろう。

 

先進国より途上国の方が入国管理がお粗末なのは語るまでもない。

 

ユウカに事情を説明し特例で入学を認めてもらうのも考えたが…これも現状は悪手だ。

 

セミナーは今、ゲーム開発部関連で多数の生徒に目を付けられている。

 

そこに身元不明のアリスを特例で入学させゲーム開発部に入部させると彼女たちの立場まで危うくなってしまう。

 

ではシャーレに頼って…というのも出来ない。

 

シャーレは所属や学籍によらず不特定多数の生徒の協力を仰ぐことのできるキヴォトスの特異点ともいえる超法規的組織だ。

 

が、この権限が及ぶのも学校に所属する『生徒』だからこそ。

 

今現在、学籍も何もないアリスにはいかに先生でもどうこうしようがないのだ。

 

…だからこそ、御法に触れるこの方法が最短且つバレなければ被害もない策だというのがモモイの談である。

 

「この子をうちの部員に偽装するなんて…本当に大丈夫?」

 

言い分は分かったがミドリの懸念は別にある。

 

「『大丈夫』の意味を確認…『状態が悪くなく問題が発生していない状況』のことと推定、肯定します。」

 

「いやいや、肯定できないって!この口調じゃ絶対疑われるよ!?」

 

そう、それはアリス自身だ。

 

目覚めてからこの方、『人格サブルーチンを組み込む前のロボット』のような会話しかできていない。

 

これでは苦情を言ってきた生徒どころかユウカにさえ怪しまれるだろう。

 

「やめておこう!?これは無理だって!やっぱりユウカに素直に説明して…!」

 

涙目になり危ない橋を渡ろうとする姉を思いとどまらせようとするミドリだが…

 

「今やめるっていう選択肢の方が無理だよ、ミドリ。なんとしても私たちのゲーム開発部を護らなきゃそうしないとユズの居場所が…寮に戻る訳にもいかないし…。」

 

「それに…アリスの存在を何時までも宙ぶらりんにしておくわけにもいかないだろう、ミドリ。」

 

「……。そう…ですね。」

 

モモイとネイトに部活の存続とアリスの今後を諭され…渋々だが受け入れるのであった。

 

「ともかく服装もある程度整ったしあとは武器と…学生登録して、学生証を手に入れないと。」

 

「…なんだかスパイ映画みたいですね、ネイトさん。」

 

「一応これでも地下組織の実働メンバーだった俺にその話するのか?」

 

「…え?」

 

「学生証については私の方で何とかするから。ミドリはネイトさんや先生とアリスに『話し方』を教えてあげて。」

 

サラッとカミングアウトされたネイトの過去に固まる先生をしり目にモモイはミドリにそうお願いする。

 

「は、話し方?」

 

「今のままだとミドリが言った通りに疑われちゃうかもしれないからさ。ユウカにだって疑われたら本当に後がないし…。」

 

確かに今のままだと何かの拍子に…

 

『本当にゲーム開発部の部員なのか?』

 

と尋ねられたらアリスは…

 

『肯定、あなたの質問に対しアリスの回答を提示。私はゲーム開発部の部員。』

 

という杓子定規どころか人間味もない回答をしかねない。

 

しかも、相手はユウカという規律を重んじる生徒だ。

 

そうなった暁には何もかも無に帰し廃部…という恐れもある。

 

「それは…そうかもだけど。…仕方ない、やれるだけやってみるよ。」

 

「よし、じゃあ任せた!」

 

ミドリの了承を取り付け、モモイは部屋を飛び出していった。

 

「偽造屋の伝手でもあるのか、モモイには?」

 

「多分ヴェリタスの所ですね…。」

 

「学生が学生証を偽造って…。」

 

最早何でもありなミレニアムの事情に頭が痛くなってきている先生である。

 

「というかネイトさんはどうしてそんな平然と…。」

 

俺の国アメリカじゃ密入国者やそれを斡旋する連中なんて星の数いたからなぁ…。」

 

「???」

 

「え、えっと…アリス、ちゃん?」

 

「肯定。本機の名称、アリスです。」

 

「うん、じゃあアリスちゃんって呼ぶね。それにしても話し方かぁ…。良く考えたらどうやって習得するんだろ?」

 

「まぁ普通はテレビとか他人の会話を聞いて真似ながら身につくものだが…。」

 

アリスはいわば言葉が話せる赤子も同然。

 

学習能力はあるがそれを身につかせるのはまた別の話である。

 

「うーん…幼年期用の教育プログラムってインターネットに落ちてるかな…。」

 

「シャーレにそう言うのないか問い合わせてみようか、ミドリ?」

 

「いいんですか、先生?」

 

「これくらいなら問題ないよ。」

 

と、ミドリと先生がそれ用の教材を探している中…

 

「………!」

 

「どうかしたか、アリス?」

 

「正体不明の物を発見、確認を行います。」

 

周囲を見回していたアリスが部室の片隅にある物を発見。

 

「質問、この物品について説明をお願いできますか?」

 

それを手に取りネイトに見せると…

 

「げッ…。」

 

彼にしては珍しく…げんなりした表情を浮かべた。

 

「どうかしました、ネイ…あッ!そっそれは…ッ!?」

 

ネイトの様子に気付いたミドリもアリスを見てぎょっとした表情を浮かべる。

 

アリスが手に持っていた物とは…

 

「て…『テイルズ・サガ・クロニクル』…!」

 

「『テイルズ・サガ・クロニクル』とは?」

 

「えぇっと…ちょっと恥ずかしいけど私たちが少し前に作ったゲームなの。まぁ…その…かなり酷評されちゃった奴なんだけどね…。」

 

「これがあの…。」

 

ゲーム開発部の代表作(!?!??)『テイルズ・サガ・クロニクル』だった。

 

これを見た途端、ネイトの顔から生気が消えっぱなしである。

 

が、何を思ったか…

 

「あ、そうだ。クソゲーランキングでは1位になっちゃったしアリスちゃんがどう思うかは分からないけど…。」

 

「お、おいミドリ…まさか…!?」

 

「アリスちゃん、私たちのゲーム…やってみない…?」

 

にやっとした表情を浮かべ悪魔のような提案をするミドリ。

 

「正気か、お前…!?」

 

「でも、『会話』をしながら進められますからゲームをやってみるのも勉強になるかもしれませんよ?」

 

「えぇっと…何でネイトさんはそんな必死に…。」

 

ミドリを止めようとするネイトだがとうのアリスは…

 

「ここまでの両者の言動の意図、完璧には把握しかねます。しかし…肯定、アリスはゲームをします。」

 

にっこり笑いながら了承するのであった。

 

「ほッ本当に!?ちょっと待ってて!すぐにセッティングするから!」

 

それを聞いたミドリは大喜びでプレイ環境を整え始める。

 

「…アリス。」

 

「???」

 

「諦めるなよ。ここには『完走者』もいる。バックアップは任せろ。」

 

そんなネイトの姿をアリスは不思議そうに眺めるのであった。

―――――――――――――

 

―――――――

 

――――

コスモ世紀2354年、人類は劫火の炎に包まれた……

 

…国語力が足りない語り出しだがこれが『テイルズ・サガ・クロニクル』の開幕のテキストだ。

 

さて、このゲームの何が『クソゲーランキング1位』に輝かせたかというと…

 

「ボタンを押します…。」

 

チュートリアルを開始します。

まずはBボタンを押して目の前の武器を装着してみてください。

 

「Bボタン…。」

 

「アリス、Bを押しちゃ…!」

 

「え?」

 

ネイトの警告もむなしく…アリスはテキスト通りにBボタンを押してしまった。

 

次の瞬間、スピーカーから爆発音が流れ…

 

「???」

 

〈GAME OVER〉

 

「ッ!!??!?」

 

画面には赤くゲームオーバーの文字が現れた。

 

「アハハハッ!予測できる展開程つまらない物はないよね!」

 

いつの間にか戻ってきていたモモイが笑いながらそんなことを言ってくる。

 

「あのな、モモイ…。Bを押せって言っておいて言う通りやったらゲームオーバーはいくらなんでもあんまりだろ…。」

 

「え…今のバグとかじゃなくてトラップなんですか!?」

 

「本当はBじゃなくてAボタンが正解だ…。」

 

げんなりした表情のネイトの説明を受け唖然とする先生。

 

自分もそこそこゲームをやってきたが…ここまでひどい物はなかった。

 

「お姉ちゃん、学生証作りに行ったんじゃなかったの?」

 

「行ってきたんだけど遅かったからか誰もいなかったの。明日また早い時間に行ってみるよ。」

 

「それはさておき…改めてみてもこの部分はちょっとひどいと思う。」

 

「だよな、ミドリ。俺は間違ってないよな?」

 

ネイトどころか作り手側のミドリにさえやりすぎと言われるこのトラップ。

 

『テイルズ・サガ・クロニクル』、有り体にこのゲームを表現するなら…『作り手の悪意を煮詰めて濃縮還元した』ようなゲームだ。

 

先ほどのような初見殺しが盛りだくさんなのはもちろん、明らかなバランス調整不足の強敵やテキストの抜けや意味不明な文…上げていけば枚挙にいとまがない。

 

プレイするだけで正気度がゴリゴリ削り取られていく。

 

「も、もう一度始めます…。」

 

「再開…テキストでは説明不可能な感情が発生しています。」

 

「あっ私それ分かるかも!きっと『興味』とか『期待』とかそう言う感情だと思う!」

 

「どう考えても『怒り』か『困惑』だと思うけど…。」

 

「あとは…『後悔』とかか?」

 

ショックから立ち直ったアリスがプレイを再開するが…それはまさに前途多難だった。

 

そして場面は冒頭に戻る。

 

チュートリアルのトラップを回避し武器を装備したアリスはとうとう敵とエンカウント。

 

こんな序盤に出会う雑魚敵は簡単に倒せるはずだ。

 

…まさかこっちは剣なのにあっちが銃を持ってるなんて誰が予想できようか。

 

しかも即死攻撃。

 

こんなん作者なら即アンインストールしてお気持ち表明しますわ。

 

で、まさかの雑魚敵に一方的にやられたアリスは…

 

「…思考停止、電算処理が追いつきません。」

 

目を見開いて固まっている。

 

「あ、アリスちゃん、大丈夫?」

 

ミドリが心配そうに声をかけていると…

 

「アリス。」

 

「あっ…。」

 

「落ち着いて、ここは出の遅い『秘剣ツバメ返し』じゃなくて素早さが上の通常攻撃で十分だ。」

 

ネイトはアリスの肩に手を置きアドバイスをする。

 

「…分かり、ました。…リブート、今度は銃の射程距離把握に努めながら接近し過ぎないよう攻撃速度の速い攻撃でプニプニを排除します。」

 

「そうだ、そうやって課題を分析して着実に行こう。」

 

「アリス、肯定。」

 

アリスはネイトからのアドバイスを組み込みプニプニへの対処方法を構築…二度目の挑戦にしてプニプニを撃破した。

 

「アリス、やりました。」

 

「そう、まさにそれ!諦めず繰り返し挑戦して試行錯誤の末答えを見つける!それがレトロチックのゲームのロマンだよ!」

 

アリスも上機嫌になってモモイも嬉しそうだ。

 

一方…

 

「なぜ…ネイトさんはそんなに詳しいので?」

 

先生は疑問だった。

 

堅物というわけではないが…ネイトがゲームをプレイしている光景があまり想像できない。

 

だが、先ほどのアドバイスはまるで…相当やりこんでいるかのような口ぶりだった。

 

だが…

 

「まぁ…なんだ。年甲斐もなく意地になって…全ルートED回収したからな…。」

 

「…え?」

 

ネイトの口から出た答えに固まるしかない。

 

そう、このネイト…ゲーム開発部から貰ったこのゲームを何を思ったか完全攻略。

 

全ルートEDに実績もすべて解除している。

 

おそらく…というか確実にこんなことを成し遂げたのはネイト一人だろう。

 

後に…ネイトはこう語った。

 

「あのゲームを最初からまたやるかカイザーとの戦争をもう一度やるかを尋ねられたら…俺は後者を選ぶな。」

 

その後も…

 

「と、トラップの配置が以前と違います…!」

 

「アリス、ここのトラップはオブジェクトだろうがプレイヤーだろうがそこに何か来たら反応するぞ。」

 

「…ッ!アイテム『そこら辺の小石』を使用しながら進みます。」

 

リトライするたびに変化する即死トラップ地帯や…

 

「こちらの攻撃が通用しません…!」

 

「だが、画面に入れなきゃ反応はしないしこちらには気付かないぞ?」

 

「…!長射程武器『粗雑な狙撃銃』でステルスアタックを狙います。」

 

どうやっても回避不能な強敵などでアリスが詰まるたびに答えではなくヒントを与え攻略の手助けをしていくネイト。

 

「そっそんな攻略法が・・?!」

 

「伊達に完全クリア者じゃないですね、ネイトさん…!」

 

作り上げた自分たちですら思いつかないような攻略法も登場し只者ではないと汗をぬぐうようなしぐさをする才羽姉妹。

 

「………何だろうか、この状況。」

 

ただ一人、先生だけが置いてけぼりを食らうのであった。

 

そんなこんなで1時間半後…

 

「…電算処理系統及び意思表示システムに致命的エラーが発生。」

 

「頑張って、アリス!ここさえ乗り越えれば待望のクライマックスだよ!」

 

「今のはどう考えても『草食系』って言葉が出ないからって『植物人間』って書いたお姉ちゃんのせいでしょ!?」

 

「『ごめんなさい。私は植物人間ですので』って聞いて思い浮かぶのは昏睡状態の重症患者だぞ…。」

 

「アリス、大丈夫?一瞬意識を失ってたけど…。」

 

なんとか最終盤までやってこれたがここまで幾多のエラーを出しアリスはもうパンク寸前だ。

 

「…質問。どうして母親がヒロインで、それでいて実は前世の妻でさらにどうしてその妻の元に子供のころに別れたきりの腹違いの友人がタイムリープしてきてるのか…。いえ、そもそも『腹違いの友人』という表現はキヴォトスの辞書データに登録されてな―――。」

 

腹違いの友人…そりゃ友人は大概は腹違いである。

 

「エラー発生、エラー発生!」

 

とうとう声を大にして異常性を訴えるアリス。

 

すると…

 

「…アリス、ちょっとこっちに。」

 

「肯定!」

 

ネイトがアリスを呼び寄せ…

 

「落ち着いて、ここを乗り越えたらクライマックス。だからもう少しの辛抱だ。」

 

彼女の背中をさすりながらエールを送る。

 

「…………リブート。プロセスを回復。…ふぅ、ありがとう…ございます。」

 

「どういたしまして。さぁ決めて来い。」

 

「…はい。これが…ゲーム…。再開します。」

 

それでアリスも落ち着いたかプレイに復帰。

 

そこからさらに…30分後、

 

「こ…こ、ろ、し、て…。」

 

「凄いよ、アリス!開発者二人に完全クリア者が一緒とはいえ二時間でトゥルーエンドなんて!」

 

とうとうアリスはテイルズ・サガ・クロニクルを攻略した。

 

「…ちなみにルートってどのくらいあるの?」

 

「えぇっと…BAD3種類、HAPPY2種類、TrueのBルートも込だと…あと6周ですね。」

 

「ろ、ろく…!?」

 

「ハハッ、二週間分の休日潰したら楽勝さ。」

 

改めてネイトの異常性も垣間見えた瞬間であった。

 

と、

 

「それにしても…もしかしてアリスちゃん、本当にゲームをやればやるほど…喋り方のパターンや情緒がどんどん多彩になってきている…!?」

 

ミドリがあることに気付いた。

 

そう、ゲームを始める前と比べてアリスの話し方が…

 

「勇者よ、汝が同意を求めるならば私はそれを肯定しよう。」

 

「……確かにそうだが…これは…。」

 

…変わっているが別の意味でユウカには紹介できないだろう。

 

「ゲーム一本からそのまま覚えたせいでまだ不自然かもですけど言葉を羅列してただけの時よりかなり良くなったと思いますよ!」

 

「まぁ…なんというか少しは上手になって入るね。」

 

「そ、それで…こういうのを面と向かって聞くのは緊張するんだけど…。」

 

するとミドリはもじもじとし始め…

 

「わっ私たちのゲームはどうだった!?面白かった!?」

 

アリスにテイルズ・サガ・クロニクルの感想を求める。

 

モモイも早く聞きたそうに目を輝かせている。

 

「………。」

 

「自分の思ったままを言えばいいさ、アリス。」

 

アリスはネイトを少し見てから…

 

「…説明不可。」

 

「えっえぇ!?なんで!?」

 

「類似表現を検索、ロード中…。」

 

「あ、よかった…。表現が分からなかっただけなんだ…。」

 

「で、でもなにを調べてるの…!?まさか悪口…!?」

 

「落ち着け、ミドリ。大丈夫さ。」

 

どういっていいかを検索し始め、

 

「…面白さ、それは明確に存在…。」

 

「おぉっ!」

 

「プレイを進めれば進めるほど…まるで別世界を旅しているような…夢を見ているような…そんな気分…もう一度…。」

 

結果がまとまったのかぽつりぽつりと話し始める。

 

すると…

 

「もう一度…。………。…。

 

「えぇッ!?」

 

「あっアリスちゃん!?どうして泣いてるの!?」

 

アリスの目から涙があふれ始めた。

 

「決まってるじゃん!それくらい私たちのゲームが感動的だったってことでしょ!?」

 

「このゲームってギャグよりのRPGのはずだよ…!?」

 

「ありがとう、アリス!その辺の評論家の言葉なんかよりその涙の方が百倍嬉しいよ!」

 

疑問を呈すミドリをしり目にモモイは大喜びだ。

 

「ほら、アリス。涙を拭くといい。」

 

「はい…!」

 

「あー!こんなに喜んでくれるプレイヤーがいたなんて…はやくユズにも教えてあげたい…!」

 

とここに唯一居ないゲーム開発部の部長であるユズの名前を出した…その時。

 

「…ちゃ、ちゃんと、全部見てた。」

 

ロッカーから声が聞こえ扉が開き…

 

「あぁ、ユズ。帰ってきてたのか。」

 

「は、はい。ネイトさんが来た時には、PCで作業するため、外に出てましたけど、廃墟から帰ってきたときには…。」

 

「そんなずっと前から!?あれだけ探しても見つからないと思ったら…!?ひょっとしてアリスちゃんが怖かったの…?」

 

「ユズ、久しぶりだね。」

 

「せ、先生も、ご無沙汰してます。」

 

ゲーム開発部部長たる花岡ユズが現れた。

 

「あ、アリスは初めてだよね。この人が私達ゲーム開発部の部長の『花岡ユズ』だよ。」

 

モモイがアリスに紹介する中、ユズはアリスにおずおずと近づき…

 

「え、えっと、あの…その…。」

 

「?」

 

「あ、あ、あ…ありがとう。」

 

「ありがとう?」

 

「ゲーム、面白いって言ってくれて…もう一度やりたいって言ってくれて…。泣いてくれて…本当にありがとう。」

 

「???」

 

「面白いとか…もう一度とか…そう言う言葉が、ずっと聞きたかったの…。」

 

自分が作ったゲームをここまで楽しんでくれた彼女に感謝の言葉を伝えた。

 

「ユズちゃん…。」

 

「物作りしているなら誰しも通る道だ。…よかったな、ユズ。」

 

訳が分からずぽかんとするアリスと彼女の両手を取って感謝の意を伝えるユズを見ながらそう呟くミドリとネイトなのであった。

―――――――――――――

 

―――――――

 

――――

その後ユズもアリスに自己紹介を終え…

 

「だから!良質なテキストとかがあるゲームをやれば話し方も自然になるんだって!さぁ、まずは『英雄神話』と『ファイナル・ファンタジア』と『アイズ・エターナル』を…!」

 

「アリスちゃんは初心者ゲーマーなんだよ、お姉ちゃん!『ゼルナの伝説・夢見るアイランド』から始めるのが一番だって!」

 

「これだけは、譲れない。次にやるべきは『ロマンシング物語』だよ。あ、でも第3弾だけはちょっと、個人的には、やらなくてもいいかなって…。」

 

ゲーム開発部3人娘は次にアリスにどのゲームをプレイさせるのか喧々諤々の論争を繰り広げていた。

 

確かに、テイルズ・サガ・クロニクルをプレイした2時間でアリスの言語能力は変化した。

 

ならば…もっと大量のゲームをプレイすればさらに言語能力が向上するかもしれないと考えたのだ。

 

「…??」

 

「…楽しいか、アリス?」

 

「期待。再び、ゲームを始めます。」

 

アリスもまんざらではなく笑顔を浮かべうきうきしていた。

 

「そうか。まぁ、余り根詰めすぎるんじゃないぞ?」

 

そう言い、ネイトは立ち上がり扉に向かう。

 

「ネイトさん、どちらへ?」

 

「ちょっと飲み物を買いに。」

 

「あ!自販機にある奴なら…。」

 

「今はコーヒーの気分なんだ。心遣いに感謝するよ、モモイ。」

 

部室内のレトロ自販機にはない苦みを求めネイトは部室棟をいったん後にし校舎へと向かう。

 

いつの間にか辺りは暗くなり生徒の気配はない。

 

少し進むと…煌々と光るタッチパネル式の自販機が現れた。

 

「さすがミレニアム、機材は最新式か。」

 

キヴォトスに来た頃には戸惑いもしたがいまは慣れたもので硬貨を入れてコーヒーをチョイスするネイト。

 

「…ふぅ甘苦さが沁みる。」

 

その傍らで微糖の缶コーヒーを楽しんでいると…

 

「…で、さっきから俺を追けてきて何か用か?」

 

不意に視線を鋭くし空けている左手は懐のデリバラーに伸ばしつつ自分が来た方向を見据える。

 

すると…

 

「気付いてたんだね。やっぱりあの人たちみたいにはいかないや。」

 

暗い物陰から…人影が現れると…

 

「………は?」

 

呆けたような声を上げるネイト。

 

それもそのはず…

 

「どうかしたの?」

 

「…どうしたも何も…なんで上半身下着一丁なんだ…?」

 

現れたのは…なぜか布部分にジッパーがついたブラ一丁の上半身をした長い三つ編みの桃髪の生徒であった。

 

一応コートは羽織っているがほとんど意味を成しておらずスカートもかなり短い。

 

布で覆われている面積の方が少ないまである。

 

こんな奇抜な格好はあのゲヘナの行政官くらいしか知らない。

 

「気にしないで、好きでやってない。」

 

「そっそうか。誰かに強制されてるんだったらちゃんとNOって言えるようになるんだぞ。」

 

「いつも言ってるけど部長に『ダメ』って言われて困ってるの。」

 

「…随分とイイ趣味の部長だな。」

 

生徒の話を聞き彼女に同情するネイト。

 

だが…

 

「本当だったらもう全部脱ぎたいのに。」

 

「前言撤回、それは部長が正しい。」

 

まさか脱ぐ方向への要求だったとは思わなかった。

 

いまさら少女の裸体に興奮など覚えないが目のやり場が無くなるのは困る。

 

「…で、何者なんだい?」

 

「私は『和泉元エイミ』。貴方が…『ロンギヌス』のネイトさん?」

 

「そんな大仰な呼ばれ方は知らないがネイトは俺だ。」

 

「急にごめん、大事なことだから誰にも気づかれるわけにはいかなくて。」

 

「………要件は?」

 

「着いてから話す。ネイトさんを待っている人がいるの。」

 

どうやら…また別件の厄介ごとが舞い込みそうだ。

 

「………案内してくれ。」

 

「こっち。」

 

残ったコーヒーを一気に飲み干しネイトはエイミを追い暗闇のミレニアム校舎内に消えていくのであった。




暗闇はなく、無知があるのみ。
―――劇作家『ウィリアム・シェイクスピア』
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