透き通る青い春の世界で、テロ牧師(偽)   作:神倉棐

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プロローグ
十字架を持つ少女


 

 

アビドス自治区旧市街地

 

砂漠に呑まれて以降、活気どころか人気すらなくなったはずの廃墟の街(ゴーストタウン)

 

そんな近代的な街並みの一角、ありきたりなファミリーレストランの抜け殻を前に、海魔の紋章と統一された迷彩塗装が施された大多数のオートマターが古の戦列歩兵の如く展開し各々の大小様々な銃口を向けていた。

 

「撃て!」

 

上役の命令を忠実に聞き、そして実行する。ただそれだけが求められ、それに応える彼らにとって警告などという人道的で高尚な前置き(無駄)などは存在しない。

命令から間髪入れずに垂れ流された銃弾、あるいは榴弾の暴風雨が店内を蹂躙する。

 

「……」

 

砂まみれなアスファルトに響いた硬質な落下音と、足元に雑多に転がった真鍮製の薬莢の山。廃墟としてはまだ綺麗にカタチを保っていたハズのファミレス、しかしおよそ数十秒間の一斉掃射はファミレスどころかその背後にあった幾つかの廃ビルさえ巻き込んで瓦礫の山と更地へと変えていた。

 

「……バケモノめ……っ!」

 

しかしそんな破壊の嵐を受けてなお、変わらぬモノがひとつ。

 

崩落と掃射によって舞い上がった砂埃と硝煙の中から日光を浴びて輝く鈍色の光。

 

あの破壊の渦の中で白い布の覆いがほつれた以外傷ひとつ付いてさえいない人の丈ほどある大きさの十字架と、その背に隠れるようにして4人掛けのテーブル席へと腰掛けた、頭上に天使の輪(ヘイロー)を浮かべ見知らぬ黒い衣装(ブレザー)に身を包んだその少女。

 

「誰なんだ!なんなのだ、お前は⁉︎その十字架は⁉︎5.62mmじゃない、12.7mmどころかバズーカの直撃を山ほど受けてさえも傷ひとつ付くことのない!並の生徒(キヴォトス人)なら3度はヘイローを砕けるだけの弾幕だぞ⁈」

 

銃弾の1発を生身で受けたところで致命傷どころか擦り傷程度にしかならないキヴォトスの生徒たちであっても、その護りの根源たる天使の輪を3度砕いてなお余りある火力をぶつけても肉体どころか十字架にさえ傷ひとつついていない非常識(イレギュラー)に、半ば発狂しつつそう叫ぶ現場指揮官。

そんな指揮官らしき存在に応えるように黒の少女は今まで飲んでいた飲み物が入っていたらしきグラスを捨てると、立ち上がると同時に十字架の覆いを抑えていた拘束をワンタッチで外しつつ、ふと胸元から一本の棒状の物──ココアシガレットを取り出し咥える。

 

次の瞬間、驚くほど滑らかな動きで十字架は銃把らしき髑髏(ドクロ)を中心に回転し、そしてその展開された装甲から露出した砲身がアンドロイドたちに向けられていた。

 

 

 

 

「───タダの()()()や」

 

 

 

「う、撃てぇええっッ!」

 

 

 

 

最初とは異なり双方から放たれた銃弾の応酬。()()()()()()()()P()M()C() ()── 1対多数のそれも明らかに数が多い方が有利な包囲殲滅状態で仕掛けられたはずの銃撃戦は、開始数秒であらゆる戦術的有利(タクティカルアドバンテージ)をねじ伏せた黒の少女のみが無傷でそこに立っていた。

 

 

 

 

アビドス砂漠、某所

 

「……死体?なんか用意のいいイキダオレですね」

 

炎天直下、砂に塗れた大地にて。

 

「もう、()()()()()()!失礼だよ!」

 

大海の如き砂丘のひとつ、一攫千金の宝探しに来た彼女たちがその頂き付近に突き立ったソレに気付いたのは偶然だった。

 

「だ、大丈夫ですか?」

 

半ば砂に埋まりつつあったソレ──覆いに包まれた人の背丈ほどある十字架を抱いたアビドスでは見慣れぬ黒のブレザーの少女。スカートでなくズボンを履いた彼女に対し、碧い髪色の少女はおっかなびっくりといった格好で砂まみれの少女にそうやって声を掛ける。

 

「……だ…っ」

「だ?」

 

そうしておっかなびっくりと声を掛けた碧の少女の声に、辛うじて反応した黒の少女から漏れ出たそれに2人の少女たちは集中する。

 

「大丈夫……じゃないかも……」

「衛生兵ー⁉︎」

「ここに衛生兵なんていませんよ……先輩(センパイ)

 

ばたりと倒れ込む件の少女と大混乱に陥る少女、それに対し冷静にツッコミを入れるちょっと天然が入っているらしき少女たちの騒がしい声が、今日のアビドス砂漠には響いていた。

 

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