旧市街地の遭難者
アビドス自治区
キヴォトスへと赴任して早々、首都D.U.にて発生した騒乱を鎮圧し華々しく
「あの……大丈夫?」
「“だ、大丈夫……じゃないかも”」
アビドス高校に到着するどころか、そこに至る途中の市街地のど真ん中でイキダオレていた。
「あ、生きてた。道のど真ん中に倒れているから、死んでるのかと……え?じゃあ遭難者?」
多少傷んだアスファルトの上で市街地に流れ込んだ熱砂の味を味わう形でうつ伏せに倒れ込んだ先生に、
「“あ、はは……情けない話だけど、ね”」
「ん、分かったアビドス高校まで連れて行く。あとコレ」
べちゃりと地面に潰れた先生をその辺りに落ちていた木の枝でちょんちょんと突きつつ*1、先生の境遇を理解した少女はごそごそと鞄を漁るとそこから取り出した筒状のモノを先生へと手渡した。
「エナジードリンク。水分補給とちょっとはお腹の足しになると思う」
手渡されたのはエナドリの詰められたサイクリング用のドリンクボトル、並々と注がれていたソレは半ば砂漠に飲まれた旧市街地を三日三晩彷徨うこととなった先生にとって正に地獄に仏。受け取って早々、直接口を付けて飲もうとした先生だったがその後目の前の少女が続けた言葉と行動に動きを止める。
「あと……アッチの人も連れてかないと行けないかな?」
“アッチ?”
少女が指差した先、人の背丈ほどある十字架に潰されるようにして己と同じく市街地のど真ん中で行き倒れた哀れな
アビドス自治区旧市街地
「はい、コップ。落ち着いて飲んで」
「んっく……んっく……ぷはぁっ……生き返った……」
渡された紙コップを受け取って早々、迷うことなく口に付ける見慣れぬ黒の
「“ふう……生き返った……助かったよ、えっと……”」
「ん、私は砂狼シロコ。貴方も大丈夫そうで良かった」
「“ありがとう、シロコ”」
「ありがとな、スナオオカミのお嬢さん。ホンマ助かったで」
紙コップを手にホッと一息ついて命の恩人である白髪の少女──砂狼シロコに向けて感謝を述べる2人。ようやく落ち着いて話ができる程度には余裕を取り戻した哀れな遭難者2人組と救助者1人が改めて顔を合わせたその時、黒の少女はこの場における唯一の大人──先生に視線を向けた瞬間に目を剥いて驚いた顔をした。
「
「“……?”」
「?」
ツンツンと逆立った金髪、色の入った色眼鏡と青い瞳に左眼の泣き黒子、連邦生徒会仕様でありながら何故か赤色が多用された制服を着た大人の姿に、何かを口走ろうとした彼女だったが目の前の2人の反応に何故か突然口を噤む。
「げ……、マズイやっちゃな……遅れ過ぎやわ」
少し考え込むような素振りを見せた彼女だったが、ふと懐から取り出した懐中時計に視線を走らせると慌てたように立ち上がる。病み上がり故に止めようとしたシロコを手で制したその少女は改めて十字架を背負いつつ、彼女の手に紙切れ──連絡先を記した名刺を押し付ける。
「じゃあね、
改めて止める間もなく立ち去っていった黒の少女。十字架を背に旧市街地の路地へと消えて行った彼女の姿に変わり、ふとシロコは押し付けられた手元の紙片へと目線を落とす。
「
0X0-XXX-XXX
名刺というよりも走り書きに近い、そんな手書きで書かれたそこには少女の名前と連絡先が書かれていた。