イナズマイレブン 〜聖火〜   作:半田。

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第4話 稲津(いなつ)での日々!

 

 

雷紋(らいもん)中、昼休み。校庭でケイドロやドッジボールに生徒たちが勤しむ中、端にある小さなサッカーゴールに向けてシュートを放つ少女が一人。燎莉(かがり)だ。

 

(ただ動きを真似するだけじゃ、あのシュートは撃てない。でもまずはキック力を鍛えなきゃ、土俵にすら上がれない)

 

ただひたすらに蹴る、蹴りまくる。

 

マキシマムファイア!」

 

(あれが決められないようじゃ、最強のストライカーなんて夢のまた夢だ。アタシも、あんなシュートを!)

 

その様子を校舎の一階、近くの窓から眺めるのは、雷紋イレブンが1人、2年の女性選手の那須(なす)日凪子(ひなこ)だ。

 

(あの合同練習から、凄いやる気ね、聖火(せいか)ちゃん。······羨ましい。けど私は、今のあの子に、その気持ち以外のものを感じている。この感覚は―――)

 

と、そこで那須(なす)の休んでいる保健室の扉が開く。入ってきたのはサッカー部の顧問、野咲(のざき)だ。

 

「体調はどう?」

「大丈夫です。いつものことですし」

「まあ、そうよね。······何見てたの?」

「あそこで聖火(せいか)ちゃんが練習してるのを見てたんです」

 

那須(なす)の指刺した先、何度も何度もゴールへシュートを蹴り込む燎莉(かがり)を見て、何とも言えない表情をする野咲(のざき)

 

「······この前の合同練習、いえ、豪炎寺(ごうえんじ)さん、ですか?」

「あ、ごめんね。そんな分かりやすい?」

 

野咲(のざき)は不覚!とばかりに拳をトンと額に当てる。

 

「私はベンチから皆をよく見てますから。いつもと違ったら何となく分かりますよ。安芸(あき)くんなら、そうじゃなくてもすぐ分かっちゃうかもしれませんけど」

「う······」

 

あからさまに目を逸らす野咲(のざき)那須(なす)はそれを見てクスクスと笑う。

 

「あはは。安芸(あき)くんとは、もう何かお話した後なんですね」

「そうなのよねー。賢すぎるのも、先生としては困っちゃうわ。······私的には、燎莉(かがり)のこと、そこまで気にしてる訳じゃない筈だったんだけどね。生徒2人に指摘されたら、自分でも分かんなくなってきちゃったわ」

 

野咲(のざき)は丸椅子を窓の近くまで移動させて、そこに腰掛ける。

 

聖火(せいか)ちゃん、あの合同練習の後はずーっとシュート練習してますよ?」

「んー······逆効果になっちゃったかなあ」

「やっぱり、『強いシュート!』ばっかり!になってるのが気になるんですか?」

「だいたいそんな感じねー。確かに燎莉(かがり)のシュートは凄いんだけど、それ一本で戦うっていうのは危うさもあるし、勿体無いと思っちゃうのよね。結局は本人次第とはいえ」

 

窓枠に肘を置き、頬杖をつく野咲(のざき)

 

「だから豪炎寺(ごうえんじ)選手のシュート以外のプレーを近くで見せられたら、と思ったんだけどね」

豪炎寺(ごうえんじ)さんはストライカーですけど、他のプレーも超一流、ですもんね」

「そういうこと。実際、あの練習試合でも、フリーマンとしてパスやキープの上手さは魅せてくれたしね。ただ······」

 

言葉に詰まる野咲(のざき)の先を、那須(なす)が引き継ぐ。

 

「―――あの試合には佐護(さご)くんがいた、ですよね」

「······ええ。中学最強のGKとは知ってたけど、あの強さは予想外だったわ。彼の一年生の試合、前の秋大会の映像は見たことあったんだけど、その時より格段に強くなってた」

聖火(せいか)ちゃんの100%、いえ、それ以上だったシュートを、(ことごと)く止めちゃいましたもんね。あの豪炎寺(ごうえんじ)さんに、"シュートを撃たせた"っていうのも、同年代の選手として、恐ろしさすら感じる実力でした」

「ほんとにね。燎莉(かがり)の目が、豪炎寺(ごうえんじ)さんのシュート以外のプレーに向けられなかったのは、彼の存在がかなり大きいわ。誤算ってやつね」

 

はあ、とため息を吐く野咲(のざき)

しかし那須(なす)は布団の中から脚を出し、ベッドに座り直すと、

 

「確かに私も、少し心配な気持ちはあります。でも、それ以上に······。私、あの後の聖火(せいか)ちゃんの練習を、ここ3日くらい見てて思ったんです。この気持ちは―――」

 

窓の外の燎莉(かがり)に目を向けて言う。

 

「私、楽しみなんだと思います。あの子がもっと凄いシュートを撃てるようになるのが」

「······なるほどね。期待、か」

「だって、雷紋(うち)のフォーメーション変えちゃったんですよ?あの子」

「そうだったわね」

 

雷紋の昨年度までのフォーメーションは4-4-2。先日の雷門とほぼ同じ陣形を使用していたのだ。

 

「元々のポジションに、新しく来たあの子達をどう当てはめようか考えてた私達に、当然のように言ったんですよ。『じゃあ3トップにしよう』って」

「チームの色を変えるのは、そう簡単なことじゃないわよねぇ」

「はい。でも、聖火(せいか)ちゃんはそれだけの価値が自分にあることを見せてくれた」

 

燎莉(かがり)達1年生が入部した直後の練習試合、万能坂(まんのうざか)中との対戦。後半から出場した燎莉(かがり)は、その試合半分の時間だけで、ハットトリックを決めて見せた。試合終盤も、彼女にマークが集まることで滝ノ上(たきのうえ)も動きやすくなり、大きな得点差をつけて勝つこととなった。

 

「雷門の10番くんもだったけど、1年生とは思えないシュート撃つのよねえ」

「はい、本当に。······きっと大丈夫ですよ。ほら、見て下さい」

 

再び窓の外に目をやる那須(なす)野咲(のざき)。そこにはボールを回収する燎莉(かがり)に走り寄る五つの影があった。

 

「ようやってんな〜」

「同じFW(フォワード)として負けてられない」

「一人で特訓はさせねえ!FW(フォワード)のスタメン枠は俺が奪ってやるんだからな!」

「シュート練習するなら俺も呼べよなー」

「私達も混ぜろー」

 

雷紋のFW(フォワード)陣、滝ノ上(たきのうえ)山口(やまぐち)月城(つきしろ)と、GKの多井(たい)、そして燎莉(かがり)と仲の良い吹越(ふきこし)だ。吹越(ふきこし)にガシリと腕を組まれて逃げられなくなった燎莉(かがり)と、それを笑う面々。そんな様子を見て、那須(なす)は思うのだ。

 

「このチームなら大丈夫です。みんな、ちゃんと一緒に頑張ってますから」

「······そうね」

「はい!それにあの子なんかまだ中学1年生なんですよ?今、少し視野が狭くなってても、これから長いんですから、全然大丈夫です!」

 

グッと両手を握って野咲(のざき)にアピールする那須(なす)

 

「それ、中学2年生の貴方が言うの?」

「あはは。でも、先生が不安そうにしてたら、私が偉そうにしちゃいますからね?」

「分かったわよ。そうね。私がしっかりしなきゃね」

「はい、しっかりしてて下さい!」

「もう······大人よりしっかりしてる子が多くて大変だわ」

 

校庭では、先程の6人の練習に、他のサッカー部員たちも集まり加わっていくのだった。

 

 

 

フットボールフロンティア。中学サッカーの全国大会であり、その頂点を決めるため各地のサッカーチームが争う。

 

全国大会に出場するためには地区予選リーグ、そして地区予選トーナメントを勝ち残る必要がある。

燎莉(かがり)たち雷紋は、強豪ひしめく東京の学校と区分されている。燎莉(かがり)たちの地区の予選大会には、2校分の全国出場枠があり、他の地区より枠が多い。ただ、その分全国出場へのハードルが低いのかと問われれば、全くの逆と答えざるを得ないだろう。

 

ここ20年間で幾度となく全国優勝を果たした超名門の雷門(らいもん)や、全国大会常連の帝国(ていこく)学園に加え、海王(かいおう)学園、野生(のせ)中、星章(せいしょう)学園等々。全国の舞台で戦うとしても何ら違和感のない強豪校が揃っている。

 

そんな魔の予選を抜けた先に、全国の強豪チームとの戦いが待っている。はっきり言って、茨の道にも程がある。

 

それも当然、全国2000以上のチームのおよそ2/3以上が予選リーグの数試合で姿を消し、全国の舞台に立つまでに56チームにまで絞られる。そしてその全国で頂点に立てるのは1チームのみ。それ以外のチームは、(すべか)らくそれまでに敗退しているのだ。

 

では到底無理だと、最初から全国優勝など諦めるのだろうか。思い出づくりの記念受験で、皆大会に出場しているのだろうか。

 

······断じて否だ。ともすれば、『勝つとは思ってない』などと口にする選手も多くいることだろう。しかし、大会に出ない、そもそもサッカーをしないという選択もあるのだ。

 

それでもサッカーをやっている。フットボールフロンティアに出場する。それは皆、サッカーに懸けるものがあるからなのだ。それは自身の欲望、希望、あるいは他者からの期待や重圧、もしくは全く別の何か、なのかもしれない。

 

―――兎も角。全国2000チーム、5万人近くの中学生達が想いを懸ける大会が、始まろうとしている。

 

 

 

明くる日、太陽が沈みかけの夕暮れ。赤く染まる空に少女たちの声が木霊する。

 

「疲れたー!足いてー!」

「そりゃあんだけシュート蹴りゃあな」

「歩くのが辛い······」

 

そう言って島のなだらかな長い坂道を下るのは、雷紋サッカー部の1年生組、燎莉(かがり)月城(つきしろ)吹越(ふきこし)だ。学生カバンをリュックのように背負い、エナメルバッグと専用の袋に入ったサッカーボールを持っており、重量もそれなりだ。3人とも足の疲労を訴えるかのように重い足取りだが、中でも吹越(ふきこし)は脚を持ち上げられず、引きずるようにゆっくりと歩いている。

 

「おいおい、明後日だぜ?ウチの初戦は。そんなんで戦えんのかよ」

「元はといえば、聖火(せいか)が発端でしょー。今回のシュート練祭りは」

「はっ。途中からアタシより夢中になってたじゃねえか」

「いやー、新しい技の感覚の感覚掴んじゃったら、そりゃ夢中にもなるって。ああ、痛いー。全身が痛いー」

 

そんな吹越(ふきこし)の様子を見て、月城(つきしろ)は彼女のエナメルバッグをひょいと奪い取ると、自分のバッグの上に重ねるように肩にかける。

 

「試合はベンチで休んでてもいいぞ?吹越(ふきこし)。お前の練習した分のシュートは、俺が決めといてやるから」

「いやいや、遠慮しときます。本当に疲れ切ったら交代してあげるから、先にベンチ(あった)めといてよ。······バッグありがと。助かる」

 

吹越(ふきこし)からの感謝には鼻を鳴らすことで答える月城(つきしろ)。その様子を認識しながらも、一切気にしない態度の燎莉(かがり)は、

 

「つか伊澄(いすみ)の代わりに出るとしたら、ポジション的に那須(なす)先輩だろ。あの人、出てる時間ずっと本気でやりたいから今半分にしてるだけで、配分考えりゃ1試合(フルタイム)も別に無理じゃねえんだろ?」

「ぐっ······。だったら燎莉(かがり)お前が―――」

「悪ぃが脚が折れようと、試合が終わるまでアタシはコートを出ない。正々堂々スタメンは奪ってくれ。ま、来年滝ノ上(たきのうえ)先輩が卒業すりゃ出られるだろうし、そんな焦んなよ、今一番スタメンから遠い男」

「ぐぬぬ······」

 

容赦なく月城(つきしろ)を煽っていく。だが、煽られた月城(つきしろ)は言い返せない。それが全くの事実であるためだ。

ポジションの関係もあり、現状雷紋で試合に出場する機会(チャンス)が一番少ないのは、月城(つきしろ)で間違いない。

 

「悪いなー。チームのフォーメーションを変えちまうほどの実力の持ち主が同級生で!」

 

そうなのだ。同時期にチームに加入した燎莉(かがり)は、自分がスターティングメンバーとして試合に出られるだけの価値をチームに証明して見せた。そしてその彼女も、強大な相手を前に、自分と同じ······いやそれ以上の努力をしている。

悔しければ、結果を出して見返す他にないのだ。彼女の努力と想像を超えるしかないのだ。

 

「見てろよ、この大会中にお前をギャフンと言わせてやるからな」

「言うかよ。ま、楽しみにしとくわ。今大会の背番号10はアタシだけどな」

 

適当に受け流す燎莉(かがり)。先日選手たちには、雷紋のチームユニフォームが配られていた。

 

「あー、ユニフォームも配られたね。流石に10番は滝ノ上先輩のままだと思ってたからびっくりしたよー」

「雷紋のストライカーはもうアタシってことよ。伊澄(いすみ)とかは変わってないんだっけ?」

「うん。ていうか、他は誰も変わってないよ。普通はわざわざ変えなくていいしね」

「ぐぬぅ」

 

それはつまり、背番号さえ変えるほど、チーム全体に燎莉(かがり)の実力が認められているということでもあり。月城(つきしろ)からすれば悔しい事実だ。

 

「でもユニフォームと言えばさー、ウチのエンブレムダサくね?なんなんだ、あのぐるぐる巻き」

「えー、なんかかわいい寄りでいいじゃん。私は嫌いじゃないけどな」

「お前ら知らないのかよ。地名にもなってる"雷紋"は、元々はああいう模様の事を言う言葉なんだよ」

 

月城(つきしろ)が言うように、雷紋とは幾何学模様の1種である。イメージしやすいのは、ラーメン屋で見る鉢の淵を飾る装飾としての使われ方だろうか。

豊作や吉祥の象徴とも言われ、それが昔に地名や学校名として使われたのも納得のいく話だ。

 

「へー、そうだったんだ!」

「しらねー」

「お前らなあ······」

「あ、夜野(やの)商店寄ってこうぜ。アイス食いたい」

 

自分で言い出しておいて、マークの成り立ちにはあまり興味のない燎莉(かがり)が指差すのは、道を曲がった奥にある古びた商店だ。

 

「一瞬これも持っといてくれ」

「あ?おい!」

 

月城(つきしろ)の返事を待たずに、彼の肩に更に追加で自分のバッグをかける燎莉(かがり)。文句も聞かず、一足先に商店へと向かう。

 

夜野(やの)商店はこの島有数の店で、菓子を含めた食品から、日用品、ゲームに至るまで大体何でも売っている、学生たち御用達の店だ。まあ有数と言っても、そもそもこの島に店が数えられる程しかない訳だが。と言うわけで、燎莉(かがり)吹越(ふきこし)は小学生の頃からお世話になっている店でもある。

 

「こんちゃー!おばちゃーん、棒のアイスまだあるー?」

「おーん、燎莉(かがり)ちゃんけ?アイス、まだ残っとると思うよ。えー······あら結構減ってるわ。バニラ2個とイチゴ1個」

「あぶねー、丁度じゃん」

 

ここは雷紋中に通う多くの生徒の通り道に近く、下校時にはよく菓子などが買われていく。暑くなり始めるこの時期ともなれば、アイスはかなりの人気商品になる。

燎莉(かがり)はスクールバッグから財布を取り出すと、小銭を店員のお婆さんに渡す。

 

「うん、ぴったりね。毎度ありぃ」

 

燎莉(かがり)は冷凍ショーケースから棒アイスを3袋取り出すと、後ろで待っていた2人に渡す。月城(つきしろ)がストロベリーで、女子2人はバニラだ。

 

「後で払う」

「あっ私が出すよ、持ってもらってるし」

「そんなつもりで持ったんじゃねえ」

「別にいいわこんぐらい」

 

受け取りながら月城(つきしろ)吹越(ふきこし)がそう言うが、燎莉(かがり)は興味なさげに断る。そしてふと、横の棚を見ると

 

「あれ、おばちゃん。この商品、場所ズラされてるぜ。あと、これ。同じ商品で数も少ないのに、そっちの棚にも並べられてた。移動させちゃっていいか?」

「あら、そうかい?じゃあお願いするよ」

 

燎莉(かがり)はアイスの袋を歯で挟んで持つと、商品の位置を直す。荷物の少ない吹越(ふきこし)もそれを手伝う。······学校を出る前に、一応手は洗っているのでセーフだ。

 

「値札はこのままで大丈夫ですか?」

「ありがとねぇ。それはわたしが後でゆっくりやっとくよ。アイス先に食っちゃいな」

「「はーい」」

 

先に外のベンチに座っている月城(つきしろ)の隣に、ドカリと座る燎莉(かがり)吹越(ふきこし)

談笑しながらアイスを食べる3人の様子を微笑まし気に見るお婆さんは、しんみりと言葉を漏らす。

 

「ほんと、燎莉(かがり)ちゃん達みたく気の利く子がうちにもいればねぇ。アンタらみたいのを見れなくなるのは、ちっと寂しいよ」

「ん?なんで?別に全国大会行ったとしてもすぐ戻ってくるっすよ?」

 

あっけらかんと言葉を返す燎莉(かがり)だが、両脇の吹越(ふきこし)月城(つきしろ)は神妙な顔をしていた。

 

聖火(せいか)、知らないの?跡取りが見つからなくて、おばちゃん達を最後に、閉店になるかもしれないって話。そもそもおばちゃんは私達の試合、別に知らないでしょ」

「マジかよ」

「安心しぃ。あと一年くらいは続けるから」

 

お婆さんは笑ってそう言うが、燎莉(かがり)の表情が晴れるわけもなく。

 

「いや、それはありがたいっすけど。そういう話じゃないっすよ······」

「そう言って貰えるのは有難いし、出来れば代々継いできたこの店も無くしたくないけどねぇ。私らももう歳だから」

「······おじさんも入退院を繰り返してるって聞きました」

「あの人は、もう。自分も歳だってのに、張り切るからよく腰をやるんだよ。あんま気にしないでおくれ」

 

呆れたように言いながら、よっこいしょと立ち上がるお婆さん。彼女の夫であるお爺さんもこの店の従業員なのだが、ここ最近はその顔を見る機会が減っていた。

 

「つっても。大変なことには変わりないじゃないっすか」

 

アイスを齧りながら、うーんと唸る燎莉(かがり)。暫く悩んだかと思えば、何か閃いたとばかりに口の中のアイスを飲み込む。

 

「―――そうだ。アタシ達、手伝いますよ!ずっとは無理でも、交代で朝来て手伝うとかなら······!」

「いや、聖火(せいか)。私達明後日からフットボールフロンティアだよ?残念だけど、中々手伝う時間はないよ」

「う、そうだった」

「それにそんなんじゃ、根本的なとこは解決しねえだろ。そんな簡単な話じゃねえ」

 

正論に挟まれ、ぐうの音も出ない燎莉(かがり)。溶け始めたアイスが、道路にポタリと垂れる。

 

「そうさね。アンタ達がどうこうする問題じゃない。だからそう気にしなさんなぁ。世の中どうにもならないことはあるもんさ」

「でも······」

「サッカーの大会があるんだろう?そっちに集中するこったね。何かしてくれるっていうなら、この島に嬉しい報告を届けておくれよ。よく分からなくても、若者の活躍は私らのようなジジババには嬉しいものだからねぇ」

「·····分かっ、りました」

 

燎莉(かがり)は残りのアイスに横から齧り付き、横にスライドさせるようにして、棒の先から口の中に放り込む。そして暫しの間口の中でガリガリやると、一気に飲み込んで言った。

 

「じゃあさ。おじさんにも言っといてくださいよ。アタシ達、絶対に全国大会に出て、テレビに映るようにしますから。楽しみにしててくれって。だからアタシたちの試合、見てくれよ」

 

地区大会はテレビでの中継はない。島の多くの人が気軽に見られるような中継があるのは、全国大会の試合からだ。

 

「そうだな。俺達にできるのはそれくらいしかねぇ」

「うん!へっはい、えんおふいいひあふ!」

 

月城(つきしろ)が続き、吹越(ふきこし)も口をモゴモゴさせながら謎の言葉を発する。

 

「そうかい。伝えとくよ。私も楽しみにしておくからねぇ」

 

お婆さんの言葉に、にっと笑顔を返す。だが、

 

「それより、もう暗くなったけど、帰らなくて大丈夫かい?」

「あっ、やべえ」

「あっふあひゃん!」

「急ごうぜ!」

「おい、お前は自分のバッグは持てえ!」

 

わちゃわちゃする3人を、お婆さんは優しい顔で見送るのだった。

 

==================

万能坂(まんのうざか)との練習試合

 

前半 雷紋   万能坂

    2  -  2

7分       (やなぎ)

16分  山口(やまぐち)

21分       (やなぎ)

28分 滝ノ上(たきのうえ)

 

雷紋: FW(フォワード)山口(やまぐち)燎莉(かがり) MF吹越(ふきこし)月城(つきしろ)

万能坂: MF日下部(くさかべ)梅田(うめだ)

 

後半 雷紋   万能坂

    4  -  0

2分  燎莉(かがり)

6分  燎莉(かがり)

6分 万能坂: DF床並(とこなみ)坂山(さかやま)

20分 滝ノ上(たきのうえ)

27分  燎莉(かがり)

 

計  雷門   万能坂

    6  -  2

 

月城(つきしろ)(げん)とかいう高身長イケメンは、部活の同級生が現状自分以外女子(見た目良し、関係良好)で、試合時のベンチでは綺麗な病弱先輩美少女と仲良くお喋りする、かわいい双子の妹持ちの中学1年生です。これは一生ベンチ温めてて貰わないといけない。

 




雷紋=渦巻き=ファイアトルネード(・・・・・)を表してるってコト!?流石に無茶があるか。
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