イナズマイレブン 〜聖火〜   作:半田。

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第5話 練習の成果!

 

雷門中との合同練習から約2週間の時間が過ぎ、フットボールフロンティアが開幕した。と言っても、まずは地区予選を勝ち抜く必要がある。

最初に行われるのは4、5チームによる予選リーグ。ここでのリーグ分けは完全なランダムだが、そのリーグの上位2校だけが次の予選トーナメントに駒を進められる。

雷紋は4チームでのリーグに振り分けられており、総当たり戦3試合をこの土日にこなすという日程になっていた。

 

「そういや今日の相手どこっすか??」

「ちょっと。話聞いてなさすぎよ。対戦相手くらい把握しときなさい」

「さーせん。······どこなのか教えて頂けはおりま···ん?···しませんでしょうか?」

 

燎莉(かがり)の怪しい丁寧な言葉遣いに、ため息をつく野咲(のざき)。現在は稲津島から離れ、本州をバスで移動中だ。陸の乗り物なら酔わない野咲(のざき)が、薄い予選大会の冊子のページをめくってトーナメント表を指さす。

 

傘美野(かさみの)中よ。確かにウチの負ける相手ではないけれど、あんまり舐めてたら足元掬われるからね?」

「ええ。基本に忠実で、丁寧なサッカーをするという印象のチームでした。隙を狙って放り込んでくる、カウンターの縦パスには気を付けたいところです」

 

アイマスクを付けたまま会話に混ざる安芸(あき)一瞥(いちべつ)して、燎莉(かがり)は興味を失ったように背もたれに背中を預ける。

 

「そんなんどこのチームだって普通にやってくることじゃないっすか。ウチのDF(ディフェンス)なら何も問題ないすよね。アタシはシュートを決めることだけ考えときます」

 

そんな燎莉(かがり)に苦笑する面々。後方でがっはっはと笑って腕を組むのは、三年のCB(センターバック)館山(たてやま)だ。

 

「全く生意気な奴だで。ま、おめーがどんだけ油断してやらかそうと、俺達でフォローしてやるさ。な、門坂(かどさか)?」

「ええ?う、まあ最低限DF(ディフェンス)の仕事はしますよ······」

「っかあー!弱気な奴だで。折角身長持ってんだから、もっと『後ろは任せろ』ぐらい言って見せろい!覇気が足りん」

 

とばっちりを受けるもう一人のCB(センターバック)、二年の門坂(かどさか)は納得がいかないという表情をしながらも黙り込んでしまう。

 

CB(センターバック)のお二人には悪いっすけど、アタシら攻めまくるんで、暇しててもらいますよ。今日のアタシの目標はDouble(ダブル) Hat-Trick(ハットトリック)なんで」

 

座席横から後ろに向けて顔を出し、無駄に良い発音で調子に乗る燎莉(かがり)

 

「うわー腹立つ―」

「へっ。お前の新技には負けないぜ?」

「残念、私のあのシュートは秘密兵器なんで今日は封印でーす。私の不戦勝ですー」

 

隣の席の吹越(ふきこし)も、座席の上から顔を出して燎莉(かがり)を煽る。

 

「なんでだよ。撃たないんだから試合放棄でお前の不戦敗だろ。つか、隠すんですか?あの技」

 

ツッコミを入れながら、そう疑問を溢す燎莉(かがり)。ただその質問を投げようとした先の安芸(あき)には、彼女の視線が見えていない。

 

「島での練習は研究されようがない、というのはウチの強みだからね。どうせなら然るべき試合で、敵を驚かせた方が面白いだろう?それにあの速さは奇襲性もばっちりだ」

 

が、間を置かずに答える安芸(あき)

 

伊澄(いすみ)松風(まつかぜ)選手の技ばっか覚えてるんだからバレるんじゃないすかー?」

「最初は十分奇襲になるでしょ?」

「ちぇー。アタシもマキシマムファイア温存しとけばなー」

「んがっはっは。あの練習、もとい試合は注目度も高かっただろうな」

 

あの練習会は一般公開されており、非公式ではあるが、既に動画も出回っているようだ。自チームのみでの練習以外では初披露の技だったが、燎莉(かがり)のマキシマムファイアも多くのチームに認識されていることだろう。

 

「まァいいや。知られてるからこそ、2週間でどんだけ成長したかを見せて、ビビらせてやる」

「おお、その意気だ。ほら、こういうとこはお前も見習えるで」

「······」

 

迷惑顔の門坂(かどさか)は完全にスルー。こういうことが出来る辺り、実は気が強いのではないかと燎莉(かがり)は思うのだった。

 

「ほらほら、ちゃんと座る!先週、グループリーグの相手の映像は、チームのイナリンクにURL貼っといたでしょ?みんな乗り物酔いには強いんだから、その動画でも見てなさい」

 

野咲(のざき)の指示に「はーい」と答える面々だったが、

 

「あい、着きましたよ。竜宮(りゅうぐう)サッカー場前〜」

 

運転手から到着のアナウンスが流れる。当然ながら動画を見る時間は0だ。

 

「タイミングよ」

「流石っすね」

「あはは、意外と近かったですね」

 

バスはゆっくりと止まったのに、ガクリとずっこけて見せる野咲(のざき)だった。

そして、バス側面のトランクに積まれていた荷物を受け取り、サッカー場へと向かう雷紋一同。

 

「うおマジか。ひっろ!」

「奇麗だな〜」

「な。流石都会」

 

四方をネットで囲まれた市民サッカー場は、綺麗なトイレや運営設備など快適な環境が作られていた。サッカーコートも4面あり、それら含め周囲の運動が出来そうな広場まで全て青い芝生が茂っている。

 

「広。そして人多っ」

「ひえー。この地区の予選リーグの半分のチームが来てるんでしょ?そりゃ多いわ」

 

燎莉(かがり)吹越(ふきこし)が話しているように、サッカー場は既に多くの選手や関係者達が集まり、ごった返しと言うに相応しい状況だ。

 

「荷物置いたらすぐ集合。私達は1試合目からだから、早くアップとるよー」

 

野咲(のざき)の号令で、選手たちは上着を脱いで、白を基調とした雷紋のユニフォーム姿になる。そしてキャプテンの安芸(あき)主導のもと、コートの外周でランニングと準備運動を行う。そして、空いたコートでボールを蹴り合っていると、すぐに試合の時間は訪れた。

 

 

雷紋中:フォーメーション

 

FW(フォワード)

11 滝ノ上(たきのうえ)昇太(しょうた)(3)  9 山口(やまぐち)(とおる)(2)   10燎莉(かがり)聖火(せいか)(1)

 

MF(ミッドフィルダー)               

13 吹越(ふきこし)伊澄(いすみ)(1)            6 天羽(あもう)隆弘(たかひろ)(3)     

         7 安芸(あき)創士郎(そうじろう)(2)

 

DF(ディフェンス)

5 渋谷(しぶや)紡来(つむぐ)(2)            2 駅田(えきた)裕司(ゆうじ)(2)     

    4 館山(たてやま)大貴(だいき)(3)    3 門坂(かどさか)千尋(ちひろ)(2)

 

GK(ゴールキーパー)    

         1 多井(たい)國次(くにつぐ)(3)              

 

ベンチ 12 月城(つきしろ)(げん)(1) 8 那須(なす)日凪子(ひなこ)(2)  

 

 

 

傘美野(かさみの)中:フォーメーション

 

FW(フォワード)

 11 雨井(あまい)結衣(ゆい)(1)         10 滴之(しずくの)水青(すいせい)(2)

 

MF(ミッドフィルダー)                

9 村田(むらた)晴彦(はるひこ)(3)             14 波多野(はたの)順也(じゅんや)(2)    

    7 涙島(るいじま) 颯太(そうた)(3)   6 水沢(みずさわ)滝人(たきと)(2)

 

DF(ディフェンス)

4 堀池(ほりいけ)浩二(こうじ)(3)            5 川端(かわばた)滉介(こうすけ)(1)     

    2 霧島(きりしま)(じゅん)(2)    3 露草(つゆくさ)彩香(あやか)(3)

 

GK(ゴールキーパー)    

         1 傘蔵(かさくら)透真(とうま)(2)              

 

ベンチ 8 星野(ほしの)(なぎさ)(2) 12 流水(るすい)連汰(れんた)(2)

13 (かすみ) 凛子(りんこ)(1) 15 道成(みちなり)燈斎(とうさい)(1) 16 小川(おがわ)和登(かずと)(1)

 

 

 

本日の雷紋の初戦は、傘美野(かさみの)中との試合。

傘美野(かさみの)中のキックオフで試合がスタート。中央MF(ミッドフィルダー)涙島(るいじま)にボールを預け、FW(フォワード)が上がっていく。

山口(やまぐち)の軽い当たりをパスで躱す。マークの薄いDF(ディフェンス)ラインでボールを何度か回すと、再び涙島(るいじま)の下にパスが渡る。涙島(るいじま)はトン、と軽く足の甲でボールを持ち上げると、チーム全体に伝わるよう宣言する。

 

「必殺タクティクス!涙天(るいてん)の攻!」

 

試合開始早々、手札を切ったのは傘美野(かさみの)中だ。ボールを地に落とさないようなパス回しで、雷紋中を翻弄していく。

 

「うお、ボール()れん」

 

SB(サイドバック)駅田(えきた)がマークに付く雨井(あまい)にパスが渡り、駅田(えきた)もプレッシャーをかける。しかし、胸トラップでボールを動かしてからの、空中パス継続で雷紋にボールを触らせない。

 

「いくよ」

 

そしてボールの戻る先、涙島(るいじま)が浮いたパスをそのままボール下を滑らせるようにキック。山なりのパスが渋谷(しぶや)の前、傘美野(かさみの)FW(フォワード)滴之(しずくの)との間に飛んでいく。

 

(この飛び方なら俺が先に(さわ)れ―――)

「釣り出されるな!」

「!」

 

安芸(あき)の声に、その場で留まる渋谷(しぶや)

 

「ちっ」

 

ボールは地に着くと、まるで水たまりに着水したかのように急激にスピードを落とした。

 

「バックスピンがかかっていたのか」

 

飛び出していたら、対応できずに抜かれていただろう。滴之(しずくの)は止まるボールに合わせ、ぴったりの地点でパスを受け取る。

しかし、安芸(あき)の指示で、ボール保持者(ホルダー)DF(ディフェンス)の間に適切な距離の間合いができている。

 

「ふっ!」

 

滴之(しずくの)のトラップの隙を狙って渋谷(しぶや)が足を出す。つま先にボールが触れ、ボールがタッチラインを割った。

 

「OK、OK。ナイスカット」

安芸(あき)、サンキュ」

「油断なくいこう」

 

傘美野(かさみの)のスローイン。再び滴之(しずくの)がボールを受けるが、渋谷(しぶや)に慌てる様子はない。

 

(これじゃ抜けないな)

 

そう判断した滴之(しずくの)は一度中盤にボールを落とす。涙島(るいじま)がボールを浮かせ、空中でのパス回しが再び始まる。

 

「あ~面倒くせぇ」

 

燎莉(かがり)はボールをキープされている状況に愚痴を溢す。

 

「急に戻ったりするなよ、燎莉(かがり)

 

近くの山口(やまぐち)に釘を刺される。ただ燎莉(かがり)も今はまだ陣形を崩すべきでないことは分かっていて。

 

「分かってますよ。雷紋(ウチ)DF(ディフェンス)ならすぐ慣れんでしょ。それはそれとして、早くボール触りたいっす」

「ならいい。もう少しの辛抱だ」

「うす」

 

燎莉(かがり)はいつボールが来ても良いように、ボールの行方を目で追っていく。

 

「行け、雨井(あまい)

 

と、そこで状況が動く。涙島(るいじま)のバックスピンがかかったパスを受け取った傘美野(かさみの)FW(フォワード)雨井(あまい)が、駅田(えきた)にドリブルを仕掛ける。

 

駅田(えきた)、外側は抜かせるな。10番のマークは外すなよ、館山(たてやま)!」

「了解だで!」

「······分かりました!」

 

GK(ゴールキーパー)多井(たい)からの指示で、駅田(えきた)が少し外側に寄る。しかし、

 

クワグマイア!」

「ぬおっ!?」

 

雨井(あまい)がボールを両足に挟み、両腕で反動をつけそのままジャンプすると、駅田(えきた)周辺の芝がぬかるみへと変貌して足を取られる。

立ち幅跳びの要領でぬかるみを飛び越え、着地した先でシュート体勢の雨井(あまい)。バウンドしたボールに、七色の光が集まっていく。

 

「はあっ!レインボーループ V2!」

 

雨が止めばそこには虹がかかる。雨井(あまい)のシュートが雷紋ゴールへの軌跡を描いた。が、そこには門坂(かどさか)が割って入る。

 

「止めます。ビルディングウォール V3

 

高層ビルが行く手を遮り、そこで虹は途切れてしまった。門坂(かどさか)の必殺技によって、シュートは威力を失う。

 

「―――撃たされた······!?」

「ナイスDF(ディフェンス)!そのまま真っ直ぐ攻めろ!」

 

多井(たい)からの指示がとび、門坂(かどさか)はそのままボールを前に蹴り出す。それを抑えた天羽(あもう)が続けて必殺技を発動した。

 

真 フェザーラッシュ

「ぐぅっ!」

 

空を舞う天羽(あもう)が翼となった腕を振るえば、次々と羽根が敵DF(ディフェンス)を襲う。

 

「······決めろ、燎莉(かがり)

「待ってましたあ!行くぜ!!マキシマムファイアG2!!」

 

フリーでパスを受けた燎莉(かがり)がゴールを狙う。素早い速攻で、傘美野(かさみの)は守備が全く機能していない。

強力なシュートの存在を知っていようとも、対策を打つ余裕がなければ意味はないのだ。

 

「うわああっ!」

 

傘美野(かさみの)GK(ゴールキーパー)は必殺技を発動すらできず、ボールごとゴールネットへ吹き飛ばされる。雷紋の先制点が決まった。

 

「おっしゃ!」

「ナイスシュート」

「こっからどんどん点決めますよ!DF(ディフェンス)ももう大丈夫そうだし」

「んだな〜」

 

傘美野(かさみの)の必殺タクティクスを使った攻撃を耐え抜いた雷紋DF(ディフェンス)陣も、盛り上がっていた。

 

「おーし、いい守備だったぞ。駅田(えきた)門坂(かどさか)!」

「はい!」「ありがとうございます」

 

多井(たい)の誉め言葉を受ける駅田(えきた)門坂(かどさか)も、得点を喜びつつ先ほどのプレーを振り返る。

 

駅田(えきた)、もう少し外寄っても良かったかも。大外も捨てきれなかったから」

「お、そうか。·······でもやり過ぎるとバレそうだしな」

「うーん、まあバレてもいいんじゃない?攻撃を躊躇(ためら)ってくれれば」

「そうなんだけどさ。俺せっかくなら()めるとこまで行きたいんだよなあ。ま、次は相手が忘れた頃にやるとして、もうちょい外側のギリバレなさそうな位置を狙ってみるわ」

「分かった」

 

ベンチでも、野咲(のざき)から月城(つきしろ)へのレクチャーが行われていた。半田(はんだ)監督に倣い、戦術ボードを使用している。

 

月城(つきしろ)くん、今の分かった?守備のほうね」

「えー、駅田(えきた)先輩が抜けるコースを内側に限定して、その先で門坂(かどさか)先輩が止める·······であってますか?」

「そうそう。多井(たい)くんが声出してたけど、ああやって守備を統率するのもキーパーの仕事なのよ」

「うす」

 

隣の那須(なす)も戦術ボードを覗きながら、会話に交じってくる。

 

「キーパーは、一番後ろからコートを見られるからね」

「なるほど」

GK(ゴールキーパー)含めて、ボール持ってない時のみんなの動きは参考になるから、よく見といてね」

「は、はい!」

 

FW(フォワード)側の話したいんだけどな、と思いつつ頷く月城(つきしろ)

コートでは傘美野(かさみの)ボールで試合が再開している。中盤からFW(フォワード)滴之(しずくの)にパスが送られるが、

 

「ほっ」

「ナイスカット。行くぞ、マイ・キャンバス

 

読んでいた渋谷(しぶや)がインターセプト。安芸(あき)にボールを渡し、今度は雷紋が必殺タクティクスで攻め上がっていく。ポン、ポン、ポンと軽快なパス回しで、前線の滝ノ上(たきのうえ)までボールが繋がる。

 

「流石に燎莉(かがり)へのマークは厚くなっているな。それなら······」

 

安芸(あき)の腕の動きに従って、コートというキャンバスに新たな線が引かれる。左から中央へと折れる線は、C(センター)FW(フォワード)山口(やまぐち)へと伸びている。

 

「いっけぇ、追加点!」

「決める。ブルーアーク 改

 

その場で一回転しながら、大きく振りかぶった脚でダイレクトにシュートを撃ち込む。ボールは青い弧の軌跡を残し、傘美野(かさみの)ゴールへと飛んでいく。しかし、その前に二人のDF(ディフェンス)が立ち塞がった。

 

「させない!「ザ・ミスト」」

 

傘美野(かさみの)の二人のCB(センターバック)霧島(きりしま)露草(つゆくさ)が同時に技を展開。2つの霧が合わさり、より濃く深い霧となる。濃霧のオーラによって、シュートのスピードが削がれていく。

 

アン・ブレラ!」

 

GK(ゴールキーパー)傘蔵(かさくら)も今度は必殺技で応戦する。正面に傘をバッと開くように腕を伸ばすと、展開した傘がシュートを弾く。弾かれたボールがゴールバーの上を越えていった。

 

「む。止められたか」

「あれ霧野(きりの)選手の技っすよね、確か」

 

先ほど傘美野(かさみの)CB(センターバック)2人がシュートの威力を弱める為に使った必殺技、ザ・ミスト。それは日本代表にも何度も選出されている、松風(まつかぜ)世代の名DF(ディフェンダー)霧野(きりの)蘭丸(らんまる)が使用している技だ。

 

「そうだな〜。代表戦でもよく見るやつだ」

「不覚」

 

シュートを打った山口(やまぐち)は、いつも通りに表情は変わらずだが、悔しさは感じている様子。

 

「まあまあ。コーナーキックだし良しっすよ。アタシだったら決めてますけど」

「これは素だろうか」

「怪しいとこだな〜」

 

コーナーキックは天羽(あもう)が蹴るようで、良い場所を探りながらコーナーフラッグの横にボールを設置している。そんな天羽(あもう)に、燎莉(かがり)は大きく後退しながら声を張り上げる。

 

天羽(あもう)センパーイ!アタシにください!」

「······おお。わかった」

「く、舐めやがって」

 

当然燎莉(かがり)にマークはつけるが、他のマークまで外すわけにはいかない。燎莉(かがり)の前には傘美野(かさみの)MF(ミッドフィルダー)村田(むらた)が立ち、CB(センターバック)二人は燎莉(かがり)のシュートコースを塞ぎつつ他の雷紋攻撃陣をケアできる位置についた。

コーナーキックのため助走を取る天羽(あもう)に合わせ、燎莉(かがり)も走り出す。

 

「······いけっ」

 

ボールが蹴られると同時に踏み切り、回転し炎を纏う燎莉(かがり)

 

「なっ!高ぇ!」

「決める!真 ファイアトルネード!!」

 

マークについていた村田(むらた)だが、燎莉(かがり)の速い動きと高い跳躍力の前に置いていかれてしまう。

 

「「ザ・ミスト!!」」

 

CB(センターバック)二人もシュートブロックに入るが、数秒と持ちこたえることは叶わず霧が霧散する。

 

アン・ブレラ!!おおおおおおおお!」

 

GK(ゴールキーパー)傘蔵(かさくら)も必死にシュートに抗う。しかし、空から飛来する火球を、傘では受け止めきれない。

 

「うわああっ」

 

傘を突き破り、燎莉(かがり)のファイアトルネードがゴールネットに突き刺さった。

 

「っし!」

 

山口(やまぐち)のシュートを止めた、DF(ディフェンス)二人のブロックとGK(ゴールキーパー)の必殺技。それらを打ち破って得点を決めた燎莉(かがり)は、拳を握ってガッツポーズだ。

試合開始からたった10分。燎莉(かがり)は早くも2得点を決め、目標と言っていたダブルハットトリックが口だけでないことを証明する。

彼女のシュートには、練習の成果が如実に現れていた。

 

そんな燎莉(かがり)を、傘美野(かさみの)FW(フォワード)滴之(しずくの)は遠くからじっと見つめるのだった。

 

==================

☆クワグマイア<Quagmire>=ぬかるみ、泥沼

☆ブルーアーク:ただの青い弧を描くシュート。

 

 

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