ふと目を閉じると
ナニかの唄がきこえてくる
どこからきこえるのかもわからない
それは、まえから?
それとも、うしろから?
はたまた、うえから?
あるいは、したから?
ぼくたちがいまいるここは
どこにつながっているんだろう
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夏、猛暑、東京某所
うだるような熱気が行き場を失い、地下へ地下へと群れを成して逃げ惑う。
太陽にはもう少し低燃費でいてくれないかと願うばかりだが、何光年も先へ祈りが届くころにはわたしの身体は冷たく、
その暑さを感じることはなくなっているだろう。
私、樋口円香は浅倉透宅へ向かうせいぜい2、3分間で夏を嫌というほど感じている
この暑苦しさ、彼の姿が頭をよぎるがあの高燃費で誠実で虚実的な彼は
きっと太陽ですら毛嫌いせずにすぐ打ち解けていることだろう。
このままでは、干からびてしまう危険性が出てきていたためどうでもいいことを考えるのはやめ
足早に地面を蹴る。
浅倉宅
浅倉「うす」
樋口「うす」
市川「あ~円香先輩も来たの~?」
樋口「暇だから」
涼しい。先日、小糸に怒られてから20℃まで温度を下げていないようだが、それでも外と比べると格段に涼しい。
浅倉「この前、お母さんに冷房下げすぎて叱られたから。27℃、今」
どうやら少し違うらしいが、今はそんなことどうでもいい
福丸「この前は冷やしすぎだから…!当然だよっ!」
浅倉「へーい」
市川「今日はなにやるの?」
浅倉「特に、なにも」
いつものことだ。
今更、とりたてて驚くことはない。雛菜も小糸も同意見のようだ
浅倉の言葉で動揺している様子はない
今日もか、と納得すらしている様子だ。
普段から予定があるから集まっているわけではない
みんなでいるのが好きだから集まっていない
無論嫌っているわけでも無いが。
世間の皆様方が思う『いつも一緒、なかよし四人組』の理想とはかけ離れているかもしれないが、それが私たちだ。
そういうんじゃない。
浅倉の部屋に置いてある雑誌を手に取り目線をそちらへ向ける
市川「え~でも夏らしいことしたくない?」
浅倉「あり」
樋口「なにか案は?」
浅倉「なし」
樋口「…」
浅倉「これから考えればいいじゃん、4人もいるんだし」
福丸「そうだね!やっぱりプールとか?」
樋口「今日、休館日だったはずだけど」
福丸「あ、そうなんだ……。」
市川「あは~。じゃあ、またやる?お部屋でプール!」
浅倉「あ~。あの後絞られた。こってり」
市川「え~そうなの~?」
浅倉「おこづかいを人質にとられてる」
市川「じゃあダメか~」
一通り会議もどきを行うと、またそれぞれやっていたことをやり始める
私も再度雑誌に目線を落とし、ページを捲る。
市川「あ~!」
自分のスマートフォンを眺めていた雛菜が急に声をあげる
樋口「なに?」
市川「このアイスかわいい~。今、近くにきてるんだって~」
浅倉「いいね、アイス」
どうやら、SNSで移動販売のアイスについて流れてきたらしい
覗いてみると耳がついていて、形をクマに似せたアイスらしい。
福丸「か、かわいい……」
樋口「いいんじゃない。やることもないし」
浅倉「よし、行くかー」
それぞれが軽く身支度をして浅倉宅を後にする。
市川「あつい~」
樋口「騒がないで。余計暑くなる。」
市川「でも、あついんだも~ん」
流石、夏というべきか先ほども照らされた嫌というほど主張してくる太陽に辟易とするが
それに負けないように木々に止まったセミたちも騒ぎ立てている。
更に彼女、市川雛菜も交じり騒ぎ立ててくれているおかげでいつもより5割増しで夏を感じることができている。
浅倉「太陽、憎し」
樋口「同意」
福丸「もう少しだよ…!がんばろ」
市川「もう限界~」
7割増しの間違いだったかもしれない。
さきほど、安請け合いした自分を恨みたくなりながらも歩を進め、目的地である移動販売車に到着した。
市川「写真で見たとおり~」
樋口「そりゃそうでしょ」
福丸「どれにしようかな……!」
浅倉「……」
メニュー表を眺めながら各々が欲しいものを注文し、作られるのを待つ
浅倉が暑さのせいか口数が少なく、呆けているように見える。
彼女はいつもこの通りだった、と言われればそうだったかもしれない
そうじゃないかもしれない。
浅倉「買おう」
樋口「は?」
浅倉「だから、この車買おう」
浅倉が突拍子もなく言い出したことに3人とも顔を見合されている。
市川「やは~面白そう~」
3人ではなかったらしい。
樋口「どういうつもり?」
浅倉「ん?」
浅倉「あー、この前4人で逃げ出したときPにつかまっちゃったじゃん」
浅倉「でも、こいつがあれば逃げ切れるかもよ」
浅倉「アイスも食べられる。いつでも」
市川「やは~さいこう~」
福丸「また迷惑かけちゃうよ……!?」
浅倉「あー」
浅倉「私たちも売ればいいじゃん、アイス」
浅倉「それなら大丈夫だよ、クビになっても」
市川「雛菜、かわいい制服着た~い!」
また、いつものような思いつきらしい。
そういうところも彼女らしいのかもしれない。
わたしたちは『いつも一緒、なかよし4人組』ではいられない。
だが、この関係に居心地の良さを感じているのは事実だ。
そうでなければ、一緒に過ごすことはないだろう。
『いられない』のであって『いたくない』わけではない。
各々進みたい道がある。
それもおそらく違う道になるだろう。
皆、少なからず気づいている。
そう遠くない未来のこと
樋口「いいんじゃない」
『いたくない』だけ
なら、一緒に進む未来があっても
そう思っただけ。
浅倉「……!」
福丸「え……っ!」
市川「やは~なんか意外~」
樋口「別にいいでしょ」
樋口「小糸はどうするの?」
福丸「ぴぇっ」
福丸「みんながそういうなら私も」
浅倉「ふふ、おーけー」
樋口「移動販売するとして、経営とかはわかるの?」
浅倉「あー、小糸ちゃん、まかせた」
福丸「え!」
市川「小糸ちゃんなら任せられるねぇ~」
樋口「小糸なら大丈夫」
福丸「えへへ」
福丸「が、がんばるね!」
福丸「でも、この車って何円くらいするんだろう」
市川「いっぱ~い」
浅倉「稼がないとね、いっぱい」
市川「あ!アイス溶ける~」
福丸「わ、早く食べないと!」
浅倉「……頭、痛い。キーンってする」
市川「あは~雛菜も痛い~」
樋口「はあ」
樋口「小糸、気をつけて」
福丸「う、うん!円香ちゃん!」
話に夢中で溶けかかったアイスを急いで食べ、帰路につく。
かわいくつくられたクマも幾分か悲しそうにみえる
いや、溶けたせいでそう見えただけだろう。
もしくはこのかわいらしく彩られたクマも太陽に辟易としているのか
求めてもいない汗をかいて苦しんでいたのかもしれない
クマから目線を逸らし、そそくさと食べ進めることにした。
十数分後、エアコンの効いた部屋へ戻ってくる
市川「あは~やっぱりお部屋が一番すずし~い」
樋口「暑すぎ」
浅倉「小糸ちゃん、やっぱりもう少し下げてもいい?」
福丸「え、この前みたいに20℃まで下げちゃダメだよ!」
浅倉「わかってるって」
樋口「浅倉、ナイス」
文明の利器に改めて賞賛を送りながら先ほど数ページだけ眺めていた
雑誌を再び手に取りひと段落ついた。
ほかの面々も各々落ち着いているみたいだ。
福丸「そ、そういえば…!」
市川「ん~どうしたの小糸ちゃん?」
福丸「車を買うって言ってたけど、お金はどうするの?」
浅倉「あー」
浅倉「大丈夫でしょ」
樋口「適当」
浅倉「アイドルだし、稼げるよ」
市川「雛菜もお仕事がんばる~」
福丸「わ、わたしも頑張らないと!」
樋口「はぁ」
珍しく具体的な(彼女にしては)未来のことについて考えていたのだろうと
関心していたが、良くも悪くも彼女は変わっていなかったのかもしれない。
まぁ、それが彼女の魅力かもしれない
変わらない
わたしたちも『変わらない』
今の
ままで