0-1 : 目覚め
「…もう、これしかないんです。」
少女は云う。
空と同じ色をした髪。
頭の上に天使の輪を持つ彼女は、懺悔するかの様にその言葉を吐き出した。
「私では、辿り着けなかった。」
「先生では、辿り着けても先生が死んだ。」
「だけど、貴女なら。」
「別の世界で誰かを導いた貴女なら、きっと ──── 」
…目が覚める。
目を開いた時、まず最初に目に入ったのは朽ちかけた天井だった。
体を起こして周囲を見渡す。
ボロボロの照明、正体不明の黒ずみ、表面の剥がれたコンクリート、薄汚れた金属扉。
無事なものと言えば、私が今まで寝ていたであろうベッドぐらいなものだった。
ここはどこだろう?
…いつまでも寝ている訳にもいかない。
まずは、周囲を確認しないと。
ベッドから起き上がり、錆びてざらついたドアノブに手を伸ばす。
幸い、内側はまだ錆び切っていなかった様で、少しがたつきながらもちゃんと開いてくれた。
扉を開くと、廃墟と呼ぶのが最も相応しいであろう景色が広がっていた。
窓ガラスも何もない吹き曝しの一室。
唯一、やたら小綺麗な机とその上に置かれたタブレットだけがその存在を主張している。
外に目を向ければ、廃ビルと遥か下の砂漠が目に入る。
私は、ゴーストタウンのビルの一室で目を覚ましたらしい。
…なんでこんなところに?
そこまで考えてふと気づいた。
私は誰だ?
いや、落ち着け。冷静になれ。
一時的に忘れているだけかもしれない。
一つずつ、自分について確認していこう。
私の名前はダンテ。
⬛︎⬛︎⬛︎が好きで、趣味は⬛︎⬛︎⬛︎。⬛︎⬛︎⬛︎の⬛︎⬛︎⬛︎として働いていて、⬛︎⬛︎⬛︎を手に入れる為に⬛︎⬛︎⬛︎を受け入れた。
…記憶が所々抜け落ちている。
いや、抜け落ちていった、と言うのが正しいかもしれない。
思い出そうとしたら、そこだけが空白になっていった様な…そんな感じがした。
〈…まぁ、どうしようもないか。〉
普通なら記憶喪失なんてものは一大事なんだろう。けど…
直感的に、これも目標の為に必要なことなんだろうと思った。
…目標が何かすら覚えていないのは少し恨むけど。
気を取り直して、タブレットを手に取る。
画面横にそれぞれ縦に6つずつ並んだボタン。
それぞれ別のロゴが刻まれており、なんだかそのロゴに不思議な懐かしさを感じる。
タブレットの左には用途不明のツマミ、小さな黒いボタンが二つ、そして排気口がついていた。
試しに色々押してみるが、反応はない。
電源ボタンも見当たらないし…電池切れかな?
タブレットの裏には小さく、「LCK-PDA」と刻まれていた。
機種名だろうか?
黒い画面に、ふと目を向ける。
そこには、時計が写っていた。
〈…?〉
なんで時計が写ってるんだろう?
自分の後ろを振り返ってみても、時計はない。
…もしかして、私、か?
震える手で、自分の顔に触れようとしてみる。
触れた手の先の感触は、あまりにも硬質で。
自分が時計頭になったのだと、理解するのにそう時間はかからなかった。
〈…ど、どういうことだ?〉
独りごちながら、ふと気付く。
自分の声すらも時計の音となっていることに。
〈あー、あー…はは、完全に時計だ〉
声に合わせてカチコチと音が鳴る。
半ばヤケになりながら出した自嘲は、機関車の汽笛の様な音となって虚しく響いた。
どうやら時計だけじゃなく汽笛も頭の中にあるらしい。
〈はぁ…過去の私、何したの…?〉
今となっては失ってしまった記憶を恨めしく思いながら、ひとまずタブレット…いや、PDAを持っていくことにした。
タブレットを抱えて気付いた。
タブレットの下に何か置かれている。
〈なんだろうこれ…手鏡?〉
楕円型の下に持ち手の付いたそれは手鏡にも見えたが、いくら覗き込んでも何も映さない。
置いて行こうかとも思ったが…
〈折角だし、持って行こうかな。〉
なんとなく、この鏡からも懐かしい感じがして、手放そうとすると心細くなる。
幸い、私のコート(寝る前から着ていたらしい)にポケットがあったので、そこに鏡を入れておくことにした。
〈…とりあえず、外に出るか〉
ふと感じた「このビルでやるべき事は全て済んだ」という予感に従って、煤けた階段を降りる。
…この予感も、失った記憶の影響なのかな?
外に出てみると、辺りは砂塗れのビル街だった。
…だいぶボロボロだけど。
砂漠の風に晒されて朽ちたビル達が、無関心そうに私を見下ろしている。
砂煙と熱を運んでくる風に吹かれながら、どこへ行こうか考えた。
〈とりあえず、こっちに行こうかな。〉
行く先もないまま、ビルの間をてくてくと歩いていく。
どれほど歩いただろうか、薄暗い路地を進んでいる時、ビルの中から「がたっ」と音がした。
何の音だろう、気になって確認してみると…
凹んだ外骨格、壊れた腕、ひび割れた足、歪んだ頭部。
幾つもの人の形をした壊れかけの機械が、私を出迎える。
唯一、その手に握る銃だけが無事なまま、割れることも欠けることもしていなかった。
壊れかけのオートマタ達は、ガタガタと震えながら立ち上がると、私へ銃口を突きつける。
それを見た私ができることは…
全力疾走でその場を離れることだけだった。
初投稿です。
一応自分もチェックしていますが、何かおかしい点や至らぬ点があれば指摘して頂けると幸いです。
ルビってどうやって振るんですかね…
(追記 6/5 6:13 タイトル番号を変更しました。)
戦闘描写ショボくていい?
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時間かかってもいいからちゃんと書いて
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削っていいから早く投稿して