早起きは三文の徳。
「…私のミスでした。」
「私の選択、それによって招かれたこの全ての状況。」
少女は云う。
空と同じ色をした髪。
頭の上に天使の輪を持つ彼女は、懺悔するかの様にその言葉を吐き出した。
「結局、あの結果に辿り着いて初めて、あなたの方が正しかったことを悟るなんて…」
懺悔を聴きながら思う。
何故か、この言葉も光景も、私が何度も見てきたものの一つに過ぎない様な気がした。
「…でも、それでも。私より正しかったあなたでさえも。」
「遍く奇跡の始発点には、辿り着けなかった。」
でも、ここからは違う。
これは、本来であればありえない筈の物語。
神の糸と蜘蛛の手で編み出された、何よりも美しい織物で。
誰もが築くことを諦めた、運命に刃向かうバベルの塔で。
「…きっと、私の話は忘れてしまうでしょうが、それでも構いません。」
「何も思い出せなくても、人は同じ状況で、同じ選択をしていくことを、あなたは証明してくれました。」
静かに頷く。
「ですから……大事なのは、経験ではなく、選択。」
「あなた達にしかできない選択の数々。」
幾つもの情景が、脳裏をよぎって行く。
私が取りこぼしてしまった生徒たち。
私を信じてくれていた子供たち。
「責任を負う者について、話したことがありましたね。」
「あの時の私にはわかりませんでしたが…今なら理解できます。」
「上に立つ者としての、責任と義務。そして、その延長線上にあった、あなたの選択。」
「それが意味する心延えも。」
沈黙に浸る。
「ですから、先生。」
「私が信じられる人である、あなたになら。」
「別の物語で誰かを導いた、あの人となら。」
「この捻れて歪んだ先の終着点とは、また別の結果を…」
「そこへ繋がる選択肢は、きっと見つかるはずです。」
「だから先生、どうか…」
「私に、もう一度だけ、チャンスを…」
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──
「…い」
「…先生、起きてください。」
「先生!!!」
目を覚ます。
何か、とても長い夢を見ていた気がする。
水底から浮上した時の様な開放感が、そこにはあった。
"……?"
「少々待ってくださいと言いましたのに、お疲れだったみたいですね。なかなか起きない程熟睡されるとは。」
少し混乱している表情を見てか、
「…夢でも見られていたようですね。ちゃんと目を覚まして、集中してください。」
「もう一度、改めて今の状況をお伝えします。」
「私は七神リン、学園都市『キヴォトス』の連邦生徒会所属の幹部です。」
"…うん、よろしくね、リンちゃん。"
「……まぁ、良いでしょう。」
「ですが、そのような呼称は公的な場では控えて頂けると幸いです。」
「そしてあなたはおそらく、私たちがここに呼び出した先生…のようですが。」
…え?把握してないの?
疑問に思ったのが顔に出ていたらしく、リンは続けてこう言った。
「ああ、推測形でお話ししたのは、私も先生がここに来た経緯を詳しく知らないからです。」
さっきのことと言い、人のことをよく見ている子みたいだ。
どうやら色々と複雑な状況になっているらしい。
「……あまり混乱されてないようですね。事前に何か伝えられていたのですか?」
"こんな状況には慣れてるからね。"
「…そうですか。」
少し呆れた様にも、感心している様にも見える表情でリンは呟く。
「でも今はとりあえず、私についてきてください。」
「どうしても、先生にやっていただかなくてはいけない事があります。」
"私のやるべき事って?"
「そうですね…」
「…学園都市の命運をかけた大事なこと…ということにしておきましょう。」
薄く微笑んで、リンは言った。
エレベーターに乗り込むリンに続いて、私もエレベーターに乗り込む。
エレベーターはガラス張りになっていて、乗っていても外の景色がよく見えた。
移動を開始したエレベーターに乗りながら、リンは私に振り向いてこう言う。
「『キヴォトス』へようこそ、先生。」
"…"
『どうしました?先生。』
アロナが急に立ち止まった私に問いかける。
あれから数日が経った。
たった数日だけでも(というか主に初日に)色々なことがあった。
各校生徒との顔合わせとかシャーレ部室奪還とかアロナとの出会いとか…
今は、シャーレに来た依頼をこなしに移動している最中だ。
"…ううん、大丈夫。"
私にも立ち止まった理由は、よくわからない。
ただ、目の前を通っていったバスに、何か強い違和感を覚えた。
ありえないものがそこにある、そんな違和感。
決してそれは嫌なものではなかったけど。
"…アロナ。さっきのバス、何か変じゃなかった?"
『バスですか?うーん…』
『ちょっと珍しいデザインなこと以外は、特におかしいところはなかったと思いますよ?』
"…そっか。"
『…そんなにあのバスが気になるんですか?』
"ちょっとね、何か違和感を感じて…。"
アロナの言った通り、ただ珍しいデザインというだけだったのかもしれない。
でも、その一言で片付けるには、あまりにもその違和感は大きくて。
『…そんなに気になるなら、あのバスに関して色々調べてみましょうか?』
"できるの?"
『はい、アロナちゃんにお任せ下さい!』
今は歩いてるから画面を見れないけれど、満面の笑みで胸を張っているアロナの姿が脳裏に浮かんだ。
"じゃあ、お願いするね。変なこと頼んじゃって申し訳ないけど…"
『大丈夫です!アロナちゃんは先生をサポートするスーパーAIですから!』
アロナはそれだけ言うと調べ始めたらしく、鼻歌が段々と遠くなっていった。
あの違和感は何か、なんで違和感を感じたのか、色々気になることはあるけど…
"…とりあえず、行ってみようか。"
ポケットの手紙を取り出し、太陽に翳す。
手紙の封筒には、アビドス対策委員会と書かれていた。
明日からは1章を投稿する予定です。
そういえば昨日投稿した時間から一気にお気に入り登録増えたんですよね。ヒナちゃんマジック。
お気に入り登録、感想、評価ありがとうございます!
毎度言っておりますが、執筆のモチベーションになる為どしどしして頂けると私が喜びます。
次回の投稿予定は6/6のままですね。
戦闘描写ショボくていい?
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時間かかってもいいからちゃんと書いて
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削っていいから早く投稿して