これだから低性能スマホは…
「ん?」
自分の横を黒いバスが通り過ぎていく。
最早ほとんど人も居らず、バス亭なんてものも消えて久しいこの場所を走っていくソレは、とても
珍しいものに思えた。
同時に、何故こんな場所にバスがあるのかとも思う。
こんな場所にまでわざわざ来る車など精々が運送トラックぐらいなもので、それも基本的には
片手でスマホを取り出し、画面を見る。
もう少しで学校には遅れてしまうけど…
「…ちょっと、追ってみよう。」
シロコはペダルを踏み込み、バスの後ろを追い始めた。
そう程なくして、そのバスは停まった。
…自分達の学校の前に。
あそこに停まったということは、私達に用事があるということだろうか。
バスから出てきた二人に声を掛ける。
「ん、誰?」
声に反応して、二人が振り返る。
その二人組は、色々と不思議な見た目をしていた。
まず一人目、全体的に優しそうな雰囲気を醸し出している大人。
頭にヘイローが無く、顔立ちや骨格からして男性であることが見て取れる。
スーツを緩く着こなしており、右腕には連邦生徒会所属を示すテープが巻かれていた。
そして二人目、時計頭の大人。
遠目ではロボットの様に見えていたが、近づくと頭だけが時計と化していることがわかる。
同じくヘイローはないが、そもそも人間の頭がないのでそれの所為かもしれない。
体も華奢で、全体的に中性的でどっちかわからない。
赤いコートの左腕に刻まれた紋章は所属している組織だろうか。Limbus Company…どこかの企業?
遠目では普通の人間とロボットに見えていた為警戒していなかったが、それが普通でないと分かれば警戒心も強まる。
シロコは
まだ敵と決まった訳ではない為急に撃ったりはしないが、妙なことをすればすぐにでも撃つつもりだった。
"あ、こんにちは。この学校の子?"
「うん。見た感じ、連邦生徒会の人みたいだけど…こっちの人は?」
そう聞くと、時計の人はカチカチと音を鳴らし始める。
何か言ってるんだろうか。わからないけど。
"このバスの管理人のダンテだよ。私の…同僚。うん、そうだね。"
"私はシャーレの先生。君の名前は?"
「砂狼シロコ。よろしく。」
時計の人が手を差し出してきたので、自分も手を出して握手する。
別に敵対するつもりはないらしい。あまり警戒しなくても良さそうだ。
「それで、アビドスに用があるの?」
"うん、ここの対策委員会に呼ばれて…。"
「ならお客様だね。案内する。」
連邦生徒会ということは新設されたという「シャーレ」の先生だろうか。確か、支援要請を出してた筈。
片方の時計頭はよく分からないけど…。
まぁ、きっと大丈夫だろう。
こんな頭だから警戒されるかもと思ったけど…割とすんなり通ることができた。
ロボットなんかが普通に歩いている世界だからだろうか。
〈先生、敷地内にバスを入れていいか聞いてくれない?〉
"シロコ、このバスって校舎に停めてもいい?"
「いいよ、あの辺りなら。」
そう言うとシロコは、校庭の辺りを指し示す。
それを聞いて私は、ファウストにジェスチャーで「あの辺りに移動して」と伝える。
バスが移動し始めたのを見て、私達も校舎の中へ移動し始めた。
〈ありがとうね、先生。同僚って紹介してくれて。〉
"別に大丈夫だよ、命の恩人だしね。でも、どうして付いてくるなんて言い出したの?"
それを聞いて、私は返答に詰まる。
星に従ったとか言っても気狂いと思われそうだし…。
〈……なんとなく、かなぁ…。〉
"…本当になんとなく?それ。"
やっぱりこうなるよな。
理由どうしよう…?
"…まぁ、あまり深くは聞かないでおくよ。ダンテにもやるべきことがあるんだろうし。"
先生はそう言うと、この話題はこれでおしまいと言わんばかりにシロコと話し始めた。
「ただいま。」
「おかえり、シロコせんぱ…い?」
私達を見て、ツインテールを垂らした子が言い淀む。
少し警戒しているその様子は、なかなか人に心を開かない野良猫の様に見えた。いや、実際猫耳は生えてるけど。
「後ろの大人誰?見たことないけど…。」
"こんにちは!"
私は喋っても聞こえないと思い、会釈だけを返す。
「こ、こんにちは…って違う。結局誰なのよ。」
「お客さん。うちの学校に用があるんだって。」
「わぁ、びっくりしました。お客様がいらっしゃるなんて、とっても久しぶりですね。」
「そ、それもそうですね…でも来客の予定ってありましたっけ…。」
どこかふわふわとした子は笑顔でこちらを見ている。
眼鏡を掛けた子は少し不安そうに、手元のタブレットで予定を確認し始めた。
"『シャーレ』の顧問先生です。よろしくね。"
それを聞くと少女達は、全員揃って驚いた様な表情を見せた。
「…え、ええっ!まさか!?」
「連邦捜査部『シャーレ』の先生!?」
「わあ⭐︎支援要請が受理されたのですね!良かったですね、アヤネちゃん!」
「はい!これで…弾薬や補給品の援助が受けられます。」
どうやら相当切迫詰まっていたらしい。
道中で全校生徒が五名とも言っていたし、あまり援助も受けれていないのだろう。
「それで、こっちの時計頭は?」
〈先生の同僚のダンテだって伝えてくれ。〉
"同僚のダンテだよ。喋れないけど、声は聞こえてるから安心してね。"
「へぇ…よろしく、ダンテ。」
「よろしくお願いします⭐︎」
「よ、よろしくお願いします!」
各々の挨拶をしてくる彼女達に、私も会釈を返す。
「あ、早くホシノ先輩にも先生達のこと知らせてあげないと…あれ?ホシノ先輩は?」
「委員長は隣の部屋で寝てるよ。私、起こしてく…」
そのとき、銃声が響く。
やかましく鳴り渡ったその音は、この会話を中断させるには十分なインパクトを持っていた。
「じゅ、銃声!?」
「!!」
窓の外を見に行ったシロコが、何かを見つけた様に殺気立つ。
肩越しに私も覗き込んでみると、そこには
「ひゃーはははは!」
「攻撃、攻撃だ!!奴らはすでに弾薬の補給を断たれている!襲撃せよ!!学校を占拠するのだ!!」
「隊長!校庭に謎のバスがあるぞ!どうする!?」
「まとめて奪っちまえ!ひゃはははは!!」
「わわっ!?武装集団が学校に接近しています!カタカタヘルメット団の様です!」
「あいつら…!性懲りもなく!」
以前襲ってきた奴らと同じかと思ったが、微妙に名前が違う。
案外、ヘルメット団というものは大量に派生しているのかもしれない。
「ホシノ先輩を連れてきたよ!先輩!寝ぼけてないで、起きて!」
「むにゃ…まだ起きる時間じゃないよー。」
何処かで見た覚えのある生徒が猫耳の子に連れられて入ってくる。
確か、星を見た時に幾つかの情景に映っていた子だ。
「ホシノ先輩!ヘルメット団が再び襲撃を!こちらの方々はシャーレからいらっしゃった先生方です。」
「ありゃ〜そりゃ大変だね…あ、先生?よろし…」
青と橙のオッドアイが、私の姿を捉える。
即座にその子は目を見開き、手に持っていたショットガンを両手に構えて私に突き付けた。
「答えろ。お前は誰だ。黒服の仲間か?」
〈…えっ?〉
恐らく、誰か因縁の相手とでも勘違いされたらしい。
その身に纏う雰囲気は先程と似ても似つかない、鋭く刺し殺す様なものに変貌していた。
「…えっ、ホ、ホシノ先輩!?」
「…!」
「何してるの先輩!?」
その様子を見て、周りの子達がヘルメット団のことも忘れて騒ぎ出す。
普段もこんな雰囲気を出すことは滅多にないのだろう。
〈…えっと、先生。私はその黒服って人と関係無いって伝えてくれる?〉
"う、うん…ホシノ、その人はダンテって言って、黒服って人とは関係無いよ…?"
「…。」
その言葉を聞いて、ホシノは少し考え込んでいる。
永遠にも感じられる数秒が過ぎたのち、ホシノは口を開く。
「…本当に無関係なんだよね?」
頷く。
こんな訳の分からない勘違いで殺される訳にはいかない。
再び沈黙が訪れる。
少しして、ホシノは銃を下ろして先程までの殺意を霧散させると軽く謝罪を投げてきた。
「…うへ、ごめんねぇ。嫌な知り合いと似てたからさぁ〜。」
そう言いつつも、目線は変わらずその先鋭さを保っており、完全に警戒を解いた訳では無いことが見てとれる。
"…び、びっくりした…。"
「何やってるんですかホシノ先輩!?びっくりしましたよ!」
「ん、先輩は少し落ち着くべき。」
「いやぁ〜ごめんねぇ?もう大丈夫だよ〜。それで、ヘルメット団が来てるんだっけ?」
それを聞いて、驚愕で思考を止めていた面々がはっとした表情になる。
言われて思い出したが、この学校は襲撃されている最中だった。
「そ、そうでした!先生方はこちらでサポートをお願いします!」
「すぐに出るよ。先生のお陰で、弾薬と補給品は十分。」
「はーい、みんなで出撃です⭐︎」
戦闘準備を整える皆を見ながら思う。
…どうやってバスに指示を出そうか。
そう思いながらヘルメット団を見ていると、PDAから通知が鳴った。
【ダンテ、ある程度近ければ遠隔でも指示を出すことは可能です。】
【襲撃を受けている為戦闘指示をお願いします。】
見ると、メールボックスにメッセージが飛んできている。
内容とアイコンからしてファウストの発言だろう。
であれば問題はない。囚人からも何人か見繕って出撃させよう。
〈先生、取り巻きは私の方で相手するよ。中央の奴らをお願い。〉
"わかった、やってみるね。"
さあ、戦闘開始だ。
え、囚人達はどうしたって?
12人も連れ歩くのどうかと思ってバスに残しました、よってルナとホシノの邂逅は次回となります。
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投稿していない間もじわじわと増えていくのを見ていると、自分の作品が皆様に受け入れられた気がして嬉しくなります。
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次回の投稿は6/12を予定しています。
戦闘描写ショボくていい?
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時間かかってもいいからちゃんと書いて
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削っていいから早く投稿して