LimbusCompany キヴォトス支部   作:しーちきん

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本当にごめんなさい、日付勘違いしてました。
お詫びに2日連続投稿するので許して下さい。


1-8 : 委員会の事情

 

 

「お帰りなさい、皆さん。お疲れ様でした。」

 

「ただいま〜。」

 

 

ヘルメット団のアジトを潰した私達は、校舎へと戻ってきていた。

道中特に襲撃もなかったことから奴らは完全に潰せたと考えて良いだろう。

 

「アヤネちゃんも、オペレーターお疲れ。」

 

「あはは、と言っても私は回復と先生のサポートぐらいしかできてませんが…。」

 

"いや、色々と教えてくれたお陰で指揮しやすかったよ。ありがとうアヤネ。"

 

私達は今、再び委員会の部室で話をしている。

流石に計19人も入ると少し狭いけど…まぁ仕方ない。

遠距離でも話せると言っても、手間を考えると近くに居てくれた方がよかった。

 

「火急の事案だったカタカタヘルメット団の件が片付きましたね。これで一息つけそうです。」

 

「そうだね。これでやっと、重要な問題に集中できる。」

 

…重要な問題?

学校を襲撃されてるのも結構重大なことだと思うんだけど…もっと重い問題が起こってるんだろうか。

補給物資に関しては先生が謎の手段で用意したみたいだし…。

それについて私が質問しようとしたけれど───

 

 

「うん!先生達のお陰だね、これで心置きなく全力で借金返済に取り組めるわ!」

「ありがとう、皆!この恩は一緒忘れないから!」

 

 

───答え合わせは、意外にも早かった。

 

"ちょっと待って、借金返済って?"

「……あっ、わわ!」

 

この様子を見るに、できれば隠しておきたい事だったらしい。

既に開いた口を慌てて閉じようとする姿からは強い焦りが感じられた。

 

「あー…やっぱりまだ借金残ってるんだね。それもそっか。」

 

〈覚えてるの、ルナ?〉

 

「あ、はい。えっと…言って大丈夫?これ。」

「ま、待って!言わないでルナさん!」

 

確認を取るルナに対して、セリカは鋭い口調で静止の言葉を掛けた。

最早懇願にも近いその声を聞いて、ルナは私に対して首を竦めるとホシノに目配せをする。

 

「いいんじゃない、セリカちゃん。隠すようなことじゃあるまいし。」

 

「か、かと言って、わざわざ話すようなことでもないでしょ!」

 

意地を張る彼女に対して、ホシノは諭す。

 

「別に罪を犯したとかじゃないでしょー?」

「それに先生達は私たちを助けてくれたでしょー?」

 

「ホシノ先輩の言う通りだよ、セリカ。この人達は信頼していいと思う。」

 

便乗して意見を述べたシロコに対して、尚もセリカは言い募る。

 

「そ、そりゃそうだけど、結局部外者だし!」

 

「確かに大人でもパパッと解決できるような問題じゃないかもしれないけどさ。でも、この問題に耳を傾けてくれる人なんて、先生か管理人ぐらいしかいないじゃーん?」

「悩みを打ち明けてみたら、何か解決法が見つかるかもだしね。それとも、何か他にいい方法があるのかなー?セリカちゃん?」

 

「う、うぅ…。」

 

正論を叩きつけられたことで、セリカは言い淀んでいる。

それでも尚、彼女は口を開いた。

譲れない理由でもあるのだろうか。

 

「でっ、でも、さっき来たばっかりの大人でしよ!今まで大人たちが、この学校がどうなるかなんて気に留めたことあった!?」

「この学校の問題は、ずっと私たちだけでどうにかしてきたじゃん!なのに今更、部外者が首を突っ込んでくるなんて…。」

 

「私は認めない!!」

 

「うおっ!?」

セリカは入口に立っていた囚人を押し退け、廊下の奥へと走り去っていった。

なんとなく、彼女があんなに意地を張っている理由がわかる気がする。

 

アビドスはきっと、多くの大人達に見捨てられた学校なんだろう。

いや、元から向き合おうとしなかったのかもしれない。あの言い方には学校の部外者、とりわけ大人に対する不信感が強く感じられた。

急に差し伸べられた手に戸惑っているのだろうか。

 

「私、様子を見てきます!」

 

ノノミもセリカを追って駆け出していく。

後には、微妙な雰囲気なままの部室が残された。

 

「…えーと、簡単に説明するね?」

「まぁわかってると思うけど、この学校、借金があるんだ…まぁ、ありふれた話だけどさ。」

 

"それって幾らぐらいなの?"

 

「私が離れた時は9億ありましたね。」

「9億!?」

 

値が大き過ぎて最早よくわからないけれど、それが恐ろしく高いと言うことはわかる。

 

「…正確には、9億6235万円、です。」

「アビドス…いえ、私たち『対策委員会』が返済しなくてはならない金額です。」

 

〈…返済できないとどうなるの?〉

なんとなく、結果はわかっているけど…。

 

"返済できないとどうなるのって、ダンテが。"

 

「廃校になる。この学校が銀行のものになるの。」

 

「ですが、実際に完済できる可能性は0に等しく…。」

「殆どの生徒は諦めて、この学校と街を捨てて、去ってしまいました…。」

 

「そして私たちが残った。」

 

聞いている限り、それは子供が背負うにはあまりにも重い問題に思えた。

そんなものを5人だけで耐え抜いてきたのだろうか。あのヘルメット団の様な他の問題と共に。

 

「学校が廃校の危機に追いやられたのも、生徒がいなくなったのも、街がゴーストタウンになりつつあるのも…実はすべてこの借金のせいです。」

 

"…なんでそんなことになったの?"

 

苦々しい表情をした先生が問いかける。

答えは、誰にもどうにもならないものだった。

 

「…数十年前、この学区の郊外にある砂漠で、砂嵐が起きたのです。」

「この地域では以前から頻繁に砂嵐が起きていたのですが、その時の砂嵐は想像を絶する規模のものでした。」

 

「それで、砂嵐に対処する為に、どうしても資金を使わないといけなくなったんだよね。」

「だけど、こんな片田舎の学校に、巨額の融資をしてくれる真っ当な銀行なんて無かったんだよ。」

 

「結局、悪徳金融業者に頼るしかなかった。」

 

「…はい。最初のうちは、すぐに返済できる算段だったと思います。」

「しかし砂嵐はその後も、毎年更に巨大な規模で発生し…学校の努力も虚しく、学区の状況は手が付けられないほど悪化の一途をたどりました……。」

「…そしてついに、アビドスの半分以上が砂に香まれて砂漠と化し、借金はみるみる膨れ上がっていったのです……。」

 

「「「「「……。」」」」」

 

思った以上にどうしようもない事情に、全員黙り込む。

まだ誰かに騙された程度の話だったなら、その誰かを倒すだけでどうにかなったのかもしれない。

だが、それが誰の所為でもなかったのならどうだろうか。

 

〈シャーレに支援要請したのも、借金の所為?〉

「ダンテが、支援要請を行なったのも借金の所為かと聞いています。」

 

「…はい。」

「私たちの力だけでは、毎月の利息を返済するので精一杯で……弾薬も補給品も、底をついてしまっています。」

 

「セリカがあそこまで神経質になってるのは、これまで誰もこの問題にまともに向き合わなかったから。話を聞いてくれたのは、あなた達が初めて。」

 

「……。」

「…まぁ、そういうつまらない話だよ。」

「で、先生のおかげでヘルメット団っていう厄介な問題が解決したから、これからは借金返済に全力投球できるようになったってわけー。」

「もしこの委員会の顧問になってくれるとしても、借金のことは気にしなくていいからねー。

話を聞いてくれただけでも……。」

 

 

先生が立ち上がり、宣言する。

 

"私も手伝うよ、借金返済。"

 

「…え?」

 

「そ、それって…。」

 

唐突に降って湧いた味方に、アビドスの面々はまず驚きの表情を浮かべた。

その意味を理解していくと同時に、段々とその顔に喜びが宿っていく。

 

「あっ、はい!よろしくお願いします、先生!」

 

何処かぼんやりとした笑みを浮かべたホシノが、ソファに寝転がりながら言う。

 

「へえ、先生も変わり者だねー。こんな面倒なことに自分から首を突っ込もうなんて。」

 

そういうホシノの目には、期待が一つも見えなくて。

代わりにそこに宿っているのは諦念ばかりだった。

 

「良かった……『シャーレ』が力になってくれるなんて。これで私たちも、希望を持っていいんですよね?」

 

"ダンテは、どうする?"

 

先生が振り返り、私に問う。

確かに、この場で一番の部外者は私達だろう。連邦生徒会と繋がっている訳でもない、無関係な第三者。

ただ、それでも。

 

人として大事なものを見過ごすことは、どうしても嫌だった。

 

〈私も協力するよ。見過ごしても寝覚めが悪いしね。〉

 

「……!」

 

 

「…ちぇっ。」

 

 


 

 

〈…今更だけど、良かったの?〉

 

あの話し合いが終わった後。

私とファウストは、バスの廊下で対面していた。

 

「何のことでしょうか。」

〈私がアビドスに協力するって言ったことだよ。〉

 

〈Limbus Companyって、一応企業なんだよね?その一員である私達が、こんなことしていいのかなって。〉

 

このことは先生に付いて行き始めた時から疑問に思っていたことだ。

ファウストはあの時、「あなたの星に従った結果なら良いです」と言っていたけれど…普通、自分の仕事を離れるなんてことはあってはならないだろう。

 

「私達…いえ、ダンテには、任務遂行の方法についてある一定の自由が認められています。」

「これは、あなた自身の星に由来するものです。」

 

〈…私の、星?〉

 

今のところ、私が星をはっきりと知覚したことは数える程の回数しかない。

初めて囚人達と会った時。あのバスで目覚めた時。先生について行った時。

そのどれもが不思議なタイミングだった所為で、法則性がまるで見えなかった。

 

「あなたの星は、行くべき場所へと皆を導くもの。」

「その星に従う限り、あなたの選択は常に最善のものとなる。」

 

「どうか、あなたの星に従いますように。」

 

私を通して遠くの何かを見る様に、ファウストが呟く。

言うべきことは言ったと思ったのか、ファウストは自分の部屋へと戻って行ってしまった。

 

〈……。〉

 

私の星、か。

あれは一体なんなんだろう。

ポケットから手鏡を取り出し、自分と向き合ってみる。

 

〈…あれも、この頭の機能の一つなのかな?〉

 

思えば、この手鏡も不思議だ。

今の所はこれの使い道と言えば自分を写すぐらいで、かと言って捨て置く気にもなれなかった。

PDAと一緒に置いてあったから大事なものなんだろうけど…。

 

手鏡から顔を上げ、廊下に目を向ける。

どこまでも続いていた。どこまでも深かった。

 

 




実はサイレントに囚人情報のE.G.O追加してたりします。
まだ見てないって人は見てみて下さい。と言ってもあまり面白いものじゃないですが…。
次回の投稿は7/6、明日を予定しています。
感想及び評価、お気に入り登録お待ちしております。

戦闘描写ショボくていい?

  • 時間かかってもいいからちゃんと書いて
  • 削っていいから早く投稿して
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