LimbusCompany キヴォトス支部   作:しーちきん

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アンケート回答ありがとうございます。
アンケートを元に、次回からの投稿は本編2に人格1、別世界線1といった感じにしていこうと思います。
とは言ってもここら辺は筆の進み具合で変わってくる部分なので、絶対にこの通りという訳ではありません。ご了承下さい…。


1-10 : 柴関ラーメン

 

 

〈おはよう先生…って言ってももう昼だけど。〉

 

"おはよう管理人。ごめんね皆、遅くなっちゃって。"

 

「いえ、連絡も貰ってましたし大丈夫ですよ。おはようございます。」

 

 

少し申し訳なさそうな顔をした先生に対して、アヤネがそう返す。

 

結局、私達があの会話を聞いていた事が二人にバレることはなかった。

少し怪しまれはしたけど……今は気にしてないみたいだし大丈夫かな。きっと。

 

 

"あれ、セリカはまだ来てないんだね。"

 

「今日は登校自由日ですからね♧セリカちゃんのことですし、バイトでもしてるんじゃないでしょうか?」

 

〈へー、そんなシステムもあるんだね。〉

 

ふと思ったけど、私達に休日ってあるんだろうか。

多分無いんだろうな。経験値採光の幻想体も曜日によって変わるし……。

 

「先生って駅から来たんだよね?だったらセリカちゃんとも会いそうな感じするけどねー。」

 

"一本乗り遅れちゃったから、その所為かな?"

 

学校に来るのが遅れたのもそういう理由だろうか。

 

〈なんで乗り遅れたの?アビドスの電車って割と本数少なかった気がするけど…。〉

 

"あー、仕事がすごい溜まってて…凄いねキヴォトスって。一日空けてただけでああなるとは思わなかったよ……"

 

…なんとなく、先生から物悲しい雰囲気が漂っている。

手伝ってくれる生徒とか居ないんだろうか。聞いた話だと、当番の制度があった筈だけど…。

 

"…まぁ、それはいいや。今日は何するの?"

 

悲しい笑みから一転、優しげな笑みに変わった先生が問う。

その質問に対して、アビドスの皆は顔を見合わせて考え込んだ。

 

「うーん…と言っても定例会議も明後日ですし…今日は特にやる事も無いですね……。」

「折角だし、今日は親睦を深める日ということにしません?私達って、まだあまりお互いのことを知りませんし⭐︎」

「ん、セリカがいない。やるんだったらセリカもいる時にするべき。」

 

ああでも無い、こうでも無いと様々な意見が飛び交う。

そして、今まで特に何も言わなかったホシノからある提案が出た。

 

 

「だったらさ、セリカちゃんのバイト先に行ってみない?丁度お昼なことだしねー。」

 

 


 

 

「いらっしゃいませ!柴関ラーメンで…。」

 

「あの〜⭐︎18人なんですけど〜!」

「あ、あはは…セリカちゃん、お疲れ……。」

 

 

営業スマイルで振り向いたセリカの顔が、そのまま固まる。

 

…迎えたお客さんが自分の知っている人達だったらそうもなるだろう。

おまけにすごい人数だし。

 

 

あの後、囚人の皆に「ラーメン食べに行かない?」と言ってみた所、全員乗り気な様だったので全員で行くことにした。

 

こんな大所帯だと迷惑かもと思ったけど…結構席が空いてるみたいだし、大丈夫かな?

 

「うへ〜やっぱりここだと思った。」

 

「え、何で全員…はっ、まさか尾けられてた!?」

 

「うへ?ここら辺でバイト先といえば、ここしかないじゃん。だから来てみたの。」

 

「ホシノ先輩かっ……!!ううっ……!」

 

 

「おぉ、随分と大所帯で……セリカちゃん、おしゃべりはそれぐらいにして、注文受けてくれな。」

 

店の奥から、柴犬の獣人が出てきて指示を出す。

口調からして、この店の店長だろうか。

 

「あ、うう……はい、大将。それでは、広い席にご案内します…こちらへどうぞ……。」

 

そう言うとセリカは、ひとまず対策委員会の皆から案内していく。

次いで先生が、私達が席についた。と言っても私達と先生達の席は簾で仕切られてるけど。

 

 

「何………!?空い……!………!」

…セリカの怒声が聞こえてくる。こっちに来るのは大分後になるだろう。

 

「…久しぶりだな、この店に来るのも。」

 

「ルナちゃん的に何かおすすめとかあるー?」

 

「このお店はどれ頼んでも美味しかったよ。強いて上げるなら個人的には柴関ラーメンかな?」

 

「結構期待できそうだな。匂いもいいし、こんな場所でも商売やってけてるみたいだし。」

 

席に着くや否や、メニューを一斉に見始めた皆を横目にPDAを起動する。

狂気の横で煌々と光るクレジットの欄は、未だ使われることの無いまま4,000,000の値を示していた。

食事はいつもバスの配給食だったし……。

 

…囚人達が割と乗り気だった辺り、配給食ってあんまりおいしく無いんだろうか。見た目は普通だったけど。

頭が時計では食べることもできないので、想像するしかなかった。

 

〈配給食っておいしくないの?〉

 

「そういう訳じゃないけど…流石に毎日アレは飽きるわよ。すごい美味しいって訳でもないし…。」

 

「食べてると虚しくなってくるんですよね、アレ。」

 

そうこうしていると、少し疲れた様な表情をしたセリカが注文を取りに来る。

 

「…ご注文はお決まりですか?」

 

〈…大丈夫?大分疲れた顔してるけど。〉

 

「何言ってるかわかんないわよ…そもそもあんた食べれるの?」

 

「ダンテは大丈夫かって聞いてるよ?私はこの柴関ラーメン!」

「特製味噌ラーメン、味玉トッピングでお願い。」

「塩を頼む。」

「……チャーハン。」

「ナナちゃんラーメン食べないんですか…?あ、私も味噌で。」

「塩ラーメン、ネギ追加。」

……

 


 

 

「いやぁー!ゴチでしたー、先生!」

 

ラーメンを食べ終え外に出たタイミングで、元気よくホシノが叫ぶ。どうやら先生に奢ってもらったらしい。

…少し先生の肩が下がっているのは気のせいじゃないだろう。

 

「早く出てって!二度と来ないで!仕事の邪魔だから!」

「あ、あはは…セリカちゃん、また明日ね……。」

 

ぷりぷりと怒るセリカを尻目に、私達は帰った。

 

"それじゃ、一旦私は帰ろうかな?のんびり食べすぎたね。"

 

空を見ると、もう日が暮れかかっている。

確かに別れるにはいい時間帯だ。

 

「それじゃ、また明日ね、先生。バイバーイ。」

 

"うん、みんなもバイバイ。また明日!"

 

「バイバーイ!」

 

そう言って私達は柴関ラーメンの前で別れた。

 

 

だけど何故だろうか。

今日はまだ、一悶着ある気がしていた。

 

 


 

 

「はあ…やっと終わった。目まぐるしい一日だったわ……。」

 

 

バイト終わりの帰り道。

 

私は一人、色々と愚痴りながら歩いていた。

 

にしても今日は本当に大変だった。いや、お客さんは確かにいつもより多かったけど、大変だったのはそのせいじゃない。

 

こんなに大変だったのは、アビドスのみんなが来たせいだ。

 

 

「みんなで来るなんて…騒がしいったらありゃしない。」

 

「人が働いているってのに、先生先生ってチヤホヤしちゃって。ホント迷惑、何なのアレ。」

 

 

思い出しても腹が立つ。

 

自分が他の席にラーメンを運んでいる横で、先生にあーんしてたり、口元を拭いてたり、しかも先生はすごい緩んだ顔してたし…。

 

いや、羨ましい訳ではないけど。

 

なんというか、自分の味方だった筈のみんなが先生と仲良くしてるのを見るのは…自分の居場所が消えてしまったみたいでイライラした。

 

そんなことないのはわかってるけど……。

 

 

「ホシノ先輩、昨日のことがあったからってわざと先生を連れてきたに違いないわ!」

 

 

ホシノ先輩もホシノ先輩だ。

 

いつもは大人なんか信用してない口ぶりなのに、なんで今になって先生に味方するんだろうか。

 

ホシノ先輩も警戒心は強い筈なのに……。

 

 

「…まぁ、その分管理人達は割と普通だったけど。」

 

 

みんなに色々と弄ばれたせいか、相対的にあのバスの人たちがまともに見えた。

 

先生がああだったんだし、管理人も何かしてくるのかと思ったけど……。

 

普通に食べて、普通に料金を払って、普通に帰って行った。

 

頭が時計なことを除けば、あの中で一番まともだったかもしれない。

 

 

「いや、何もできないって言うのが正解なのかしら。私たちとは喋れないみたいだし。」

 

 

そうだ、勘違いしちゃいけない。管理人だって信用しちゃダメだ。

 

別に相対的にまともってだけで、あの席自体はどんなお客さんよりも騒がしかった。

 

幸い、今日来てるお客さんは優しい人たちだったから大丈夫だったけど。

 

 

「……ふざけないで。私がそう簡単に折れると思ったら大間違いなんだから。」

 

 

しっかりしろ。私。

 

ホシノ先輩はダメ、ノノミ先輩も勿論ダメ、シロコ先輩に至っては距離が異様に近いし、アヤネちゃんも信頼してたみたいだし……。

 

もう、私が最後の砦なんだ。

 

誰も彼も先生と管理人(大人たち)を疑うことを忘れてしまったから。

 

せめて…私だけは、この思いでぶつかっていかないと。

 

 

「ふう……。」

 

 

息を吐き出し、心を落ち着ける。

 

顔を上げると、静まり返った住宅街が目に入った。

 

 

「…そういえば、この辺も結構人がいなくなったなあ。前はここまでじゃなかったのに。」

 

 

所々で光る窓は、まだそこに住民がいることを示している。

 

とはいえ、その数は以前に比べればとても少なくなっていた。

 

元から多い訳でもなかったのに。

 

 

「このままじゃダメだ。私たちが頑張らないと……そして学校を立て直さないと……。」

 

 

アビドスが復活すれば、いなくなった住民も戻ってくるはず。

 

そうしたら生徒も帰ってきて、いつかはトリニティやゲヘナのような一大校に返り咲いて……。

 

 

「とりあえずバイト代が入ったら、利息の返済に充てて……っ!?」

 

 

目の前に急に現れた不審者に、慌てて銃を構える。

 

セーフティ解除。弾薬はある。スコープもバッチリ。気合い十分。よし。

 

 

「…何よ、あんた達。」

 

「黒見セリカ……だな?」

 

「カタカタヘルメット団?あんたたち、まだこの辺をうろついてんの?」

 

 

見れば、前の三人衆は全員同じデザインのヘルメットを被っている。

 

あれは確か、カタカタヘルメット団が付けていたものだった筈だ。

 

ああ….でも、ちょうどいいかもしれない。

 

 

「ちょうど良かった。虫の居所が悪かったの。二度とこの辺りに足を踏み入れられないようにしてやるわっ……!!」

 

 

そう言い放ち、前に向かって駆け出そうとした所で──

 

 

「くっ、ううっ!!」

 

 

後ろから飛んできた弾丸に、慌てて背後に意識を向ける。

 

足音。3つ、4つ、いや、もっと多い。これは…。

 

 

(まさか、こいつら最初から私を……?)

 

 

考える間もなく、爆発音が鳴り響く。

 

爆発と同時に広がった土埃は、私だけを巻き込むようにして広がった。

 

 

(対空砲?違う。この爆発音は……Flak41改……?)

 

 

火力支援?だとしたらどこから、いや、今はそれより…あれ、何か変な匂いが……。

 

…!これは、土埃じゃない。これは……。

 

催眠、ガス……?

 

 

(マズい……意識、が……)

 

 

 

 

 

「続けますか?」

 

「いや、生かさなければ意味がない。この程度でいいだろう。車に乗せろ、ランデブーポイントへ向かうぞ。」

 

夜の砂漠に車の駆動音が響く。

数秒経った頃、そこには誰も残っていなかった。

 

 




配給食のくだりは完全に妄想です。囚人達が肉とかアイスとか食べたがるのも別のもの食べたいからなのかなって。ただ美味しいもの食べたいだけかもしれませんけど…。
次回の投稿は7/17になります。多分本編です。
感想及び評価、お気に入り登録お待ちしております。
いつも読んでいただきありがとうございます。

戦闘描写ショボくていい?

  • 時間かかってもいいからちゃんと書いて
  • 削っていいから早く投稿して
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