ハーフボイルドとアイドル   作:日高昆布

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お待たせしまた。
自己満小説でしたが、意外と読んで頂けて嬉しいです。
感想ありがとうございました。


Cでトップアイドル/偽物のシンデレラ

「おい! 止まれ!」

 

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 私の名前は樋口円香。幼馴染の浅倉透が胡散臭い大人にスカウトされて芸能界に入ったのをきっかけに、市川雛菜と福丸小糸の4人でユニットを組むことになった。正直アイドル活動にはそこまで興味はなく、何かと迂闊な浅倉が悪い大人に食い物にされないかが心配だったところが大きい。それにダンスも歌も習ったことのない素人が生き残れるとも思っていなかったし、レッスンを積んだとしても結果は変わらないと思ってた。

 だからコンテストで負けた時も当然だって思ったし、グランプリを取ったアイドルのパフォーマンスを見てそれも当然だって思った。でもその結果を受け入れている自分がいると同時に、悔しがっている自分もいた。次は負けたくないって思ってる自分がいた。

 思えばこの時、ようやく私はアイドルとしてのスタートラインに立ったのだと思う。

 人から見れば変わらないかもしれないけど、レッスンにも自分なりに真剣に取り組んだ。学校の成績も維持しつつ、ってのは結構辛かったけど、3人がいたから頑張れたし、楽しく感じられた。

 でもやっぱりトップアイドルになるってのは、生半可な難しさじゃない。満を持して挑んだ2回目のコンテストでも、優勝することはできなかった。頂点に立っていたのは、前のコンテストと同じアイドルだった。不思議と悔しさはなく、どこか晴れ晴れとした気持ちになっていた。いつあの頂きに立てるかは分からないけど、今抱いている気持ちと同じものを皆に与えられるようなアイドルになってみたいと思った。

 

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 私の名前は樋口円香。幼馴染の浅倉透が胡散臭い大人にスカウトされて芸能界に入ったのをきっかけに、市川雛菜と福丸小糸の4人でユニットを組むことになった。正直アイドル活動にはそこまで興味はなく、何かと迂闊な朝倉が悪い大人に食い物にされないかが心配だったところが大きい。それにダンスも歌も習ったことのない素人が生き残れるとも思っていなかったし、レッスンを積んだとしても結果は変わらないと思ってた。

 だからコンテストで負けた時も当然だって思ったし、グランプリを取ったアイドルのパフォーマンスを見てそれも当然だって思った。でもその結果を受け入れている自分がいると同時に、悔しがっている自分もいた。次は負けたくないって思ってる自分がいた。

 思えばこの時、ようやく私はアイドルとしてのスタートラインに立ったのだと思う。

 人から見れば変わらないかもしれないけど、レッスンにも自分なりに真剣に取り組んだ。学校の成績も維持しつつ、ってのは結構辛かったけど、3人がいたから頑張れたし、楽しく感じられた。

 でもやっぱりトップアイドルになるってのは、生半可な難しさじゃない。満を持して挑んだ2回目のコンテストでも、優勝することはできなかった。頂点に立っていたのは、前のコンテストと同じアイドルだった。不思議と悔しさはなく、どこか晴れ晴れとした気持ちになっていた。いつあの頂きに立てるかは分からないけど、今抱いている気持ちと同じものを皆に与えられるようなアイドルになってみたいと思った。

 

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 私の名前は樋口円香。幼馴染の浅◾️透が胡散臭い大人にスカウトされて芸能界に入ったのをきっかけに、◾️川◾️◾️と◾️◾️◾️◾️の4人でユニットを組むことになった。正直アイドル活動にはそこまで興味はなく、何かと迂闊な朝倉が悪い大人に食い物にされないかが心配だったところが大きい。それにダンスも歌も習ったことのない素人が生き残れるとも思っていなかったし、レッスンを積んだとしても結果は変わらないと思ってた。

 だからコンテストで負けた時も当然だって思ったし、グランプリを取ったアイドルのパフォーマンスを見てそれも当然だって思った。でもその結果を受け入れている自分がいると同時に、悔しがっている自分もいた。次は負けたくないって思ってる自分がいた。

 思えばこの時、ようやく私はアイドルとしてのスタートラインに立ったのだと思う。

 人から見れば変わらないかもしれないけど、レッスンにも自分なりに真剣に取り組んだ。学校の成績も維持しつつ、ってのは結構辛かったけど、3人がいたから頑張れたし、楽しく感じられた。

 でもやっぱりトップアイドルになるってのは、生半可な難しさじゃない。満を持して挑んだ2回目のコンテストでも、優勝することはできなかった。頂点に立っていたのは、前のコンテストと同じアイドルだった。不思議と悔しさはなく、どこか晴れ晴れとした気持ちになっていた。いつあの頂きに立てるかは分からないけど、今抱いている気持ちと同じものを皆に与えられるようなアイドルになってみたいと思った。

 

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 ◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️。幼馴染の浅◾️透が胡散臭い大人にスカウトされて芸能界に入ったのをきっかけに、◾️川◾️◾️と◾️◾️◾️◾️の4人でユニットを組むことになった。正直アイドル活動にはそこまで興味はなく、何かと迂闊な朝倉が悪い大人に食い物にされないかが心配だったところが大きい。◾️◾️◾️◾️ンスも歌も習ったことのない素人が生き残れるとも思っていなかったし、レッスンを積んだとしても結果は変わらないと思ってた。

 だからコンテストで負けた時も当然だって思ったし、◾️◾️◾️◾️◾️を取ったアイドルのパフォーマンスを見てそれも当然だって思った。でもその結果を受け入れている自分がいると同時に、悔しがっている◾️◾️◾️◾️◾️。次は負けたくないって思ってる自分がいた。

 思えばこの時、◾️◾️◾️◾️私はアイドルとしてのスタートラインに立ったのだと思う。

 人から見れば変わらないかもしれないけど、◾️◾️◾️◾️にも自分なりに真剣に取り組んだ。学校の成績も維持しつつ、ってのは結構辛かったけど、◾️◾️◾️◾️たから頑張れたし、楽しく感じられた。

 でもやっぱりトップアイドルになるってのは、生半可な難しさじゃない。満を持して挑んだ2回目のコンテストでも、優勝することはできなかった。頂点に立っていたのは、前のコンテストと同じ◾️◾️◾️◾️だった。不思議と悔しさはなく、どこか晴れ晴れとした気持ちになっていた。いつあの頂きに立てるかは分からないけど、◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️

 

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「……え?」

 

 世界が壊れたような錯覚。

 いつもの3人だと思っていたのは、全く知らない人達だった。

 直前までの記憶はあるのに、ここに至るまでの記憶が何もない。何故このコンテストに出ているのか、どうやってここまで来たのか、この3人は誰なのか、ここはどこなのか。何故全く同じ流れの記憶がいくつもあるのか。何故目の前の人達は私が会話を続けている体で話し続けているのか。

 

「あ、あの!」

 

 反応は返ってこない。変わらず、まるで4人で会話をしているように記憶の中と一字一句同じ内容が続いている。

 それはあまりに常軌を逸した、恐ろしい光景だった。

 吐き気にも似た恐怖に、口元を押さえながら逃げ出した。

 少女が真っ青な顔をして走っていても、誰も何も言わない。ぶつかっても何も言わない。

 繰り返しが建物内の構造を正確に記憶させたのは、何とも皮肉な話だった。ロビーから外の景色が見えた時、これで助かるんだと円香は思った。しかしそこに救いはなかった。否、より恐ろしい光景が広がっていた。

 濃霧が街を囲んでいた。向こう側が一切見えず、それは最早壁と言っても過言ではない。

 崩れ落ちそうになる膝を叱咤し、必死に走った。視界にいる人に片っ端から話しかけるが、誰もマトモな反応を返さない。持っている携帯を叩き落としても、空になった手を見続け、指は虚空を滑る。

 そして円香は決定的なものを見てしまった。ある階を境に、窓も壁面の模様もない直方体になっているビル群を。

 

 ・

 

 どこをどう走ったのか、気付いた時には建物に背を預け膝を抱え込んで座っていた。

 夢であって欲しいと言う思いを、周りの全てが否定している。私服ではなくアイドル衣装で道端に座り込む円香を、誰も見ない。一瞥すらしない。

 携帯はなく、誰とも連絡を取ることができない。自分が正気であることを証明する手段がなく、いよいよ円香は錯乱状態に陥ろうとしていた。

 

「あ」

 

 異常と正常がひっくり返った世界で、円香は初めてこの異常な世界での異常を見た。

 ビルの壁面に描かれたスプレーによる斜めの4本線と、それを横切る1本線。その横に更に2本の斜め線。5本と2本。合わせて7本。その数は、繰り返しの数と同じ。

 脇目も振らず走り出す。それは間違いなく、自分と同じ正気の人がいる証。頬と震える手で触れる。温もりなどあるはずもないのに、狂気に陥ろうとしていた心を解きほぐす。

 体を離すと、それの下に左側を指す矢印が書かれていた。身を仰け反らせ、左側の建物を見る。数棟おきに同じ矢印があった。これを見付けた者へのメッセージだ、と確信した円香はまた走り出した。途中で足を挫きそうになり、靴を脱ぎ捨て裸足で走った。何度も人とぶつかりながら走った。

 そしてようやく辿り着いた。そこは交差点の一角にあるコーヒーショップだった。扉に大きくWのマークが描かれていた。

 整わない息をそのままに横断歩道を渡ろうとした時、世界に変化が現れた。世界そのものが白んでいく。またループが始まるのだと、直感的に分かった。

 やがて視界の全てが白に塗りつぶされていく中、円香はこの場所を必死に記憶した。自分でも分かっている。もし次のループで会うことが出来なかったら、自分の心は壊れるだろう、と。

 

 ・

 

 視界が戻ると、またコンテスト会場にいた。幼馴染のふりをする見知らぬ他人を押し除け、会場を飛び出す。目印になる矢印はないが、街そのものが広くなく、そう時間を掛けずにあのコーヒーショップに辿り着くことができた。

 少しだけ息を吐いた事で、足の痛みが意識の上層に浮かび、それが疑問を抱かせた。果たしてこの扉の向こうにいる人が味方になってくれるのか、と。

 

「よお。そんなところに立ってないで中に入ったらどうだ? 生憎コーヒーは出してやれないが、中々いい店だぜ」

 

 そこにいたのは、確かな正気を持つ人間だった。

 時間さえも分からぬ狂気の世界で孤独であった円香の胸に、その態とらしいキザなセリフが染み込んでいった。

 何かを言おうとしても口から意味のある言葉は出て来ず、代わりに漏れ出たのは嗚咽だった。

 中折れ帽子を被せ、その上から優しく撫でる。

 

「心配すんな。必ず帰してやるから」

 

 ・

 

 黒と緑のツートーンで彩られた派手なオンロードバイクが走っている。ライダーは華奢な体付きの少年で、指穴付きのカットソーの上にロングパーカーと、どこを取ってもバイクとはアンバランスであった。

 バイクは郊外にある豪邸の前で停まった。蝶番が壊れ傾いた門扉は塗料が全て剥がれ落ち錆び、庭から伸びた雑草が巻き付いている。

 登って中に侵入しようとした時、門扉と地面の間に携帯が落ちていることに気付いた。ディスプレイはほとんど汚れておらず、落ちてからそれほど時間は経過してないと判断し、拾い上げた。スリープボタンを押しロック画面でバッテリーの残量を確認。やはり落としてから精々数時間だ。

 

「ねえ。それ、何で持ってるの?」

 

 抑揚がなく、しかし確かな怒気を感じさせる声色。大の男が慄きそうな冷たい目をした少女に、表情豊かに怒りを表す少女と、怯えながらも見据える少女の3人がいた。

 

「おや浅倉透に市川雛菜に福丸小糸じゃないか。ならこれはファンの携帯じゃなくて、樋口円香の携帯と言うわけか」

 

 彼女らの怒りを全く意に介さずに近付き、携帯を差し出す。

 誤魔化すか、認めて開き直るか、逃げるかの何れかの反応を予想していた3人は困惑した。

 

「質問の答えだけど、そこに落ちてたから拾っただけさ。何故落ちてたのかは知らない。受け取らないなら落とすよ?」

 

 本当にやりかねないと思い、慌てて受け取る。それを見届けると、少年は踵を返し門扉のところへと戻る。

 

「あの、じゃあ何で君はここにいるの?」

 

「翔太郎がここに来て以降の消息が分からないからさ」

 

 門扉の前でしゃがみ込み、荒れ放題の庭を見ている少年の後ろに立つ3人。その超然的な態度から、友人──樋口円香の失踪に関与していないが、何かしらの事情を知っている、と言うのが3人の共通の見解だった。

 

「ん〜、何で円香先輩は鍵の掛かってる廃墟になんて入っちゃったの?」

 

「やっぱり誘拐されちゃったんだって……! 警察呼ばないと!」

 

「──どうなの?」

 

「樋口円香のローファーのサイズは21.5cmかい」

 

「え、あーどうだろう。たぶんそれくらい。何で」

 

「体重47kg程度の人物の足跡がある。つまり彼女は少なくとも自分の足で歩いてここに入った訳だ。他にも足跡は多数あるし、ついでに翔太郎の足跡もある。更に言うと、廃墟ではあるが高頻度で人の出入りがある」

 

「何で分かるの」

 

「見たまえ。伸びた雑草が、門扉のルート上だけ折れている。草丈から見ても、最近も開閉が行われていることが分かる」

 

「つまり、どう言うこと」

 

「中で何かが起きていると言うことさ」

 

 ──スタッグ

 

 唐突な電子音に辺りを見回していると、バギンと言う金属の切断音に身を竦める。次いで聞こえた金属同士の摩擦による不快な音で、門扉が動いていることに気付く。突然動き始めた状況に戸惑っていると、少年は平然と敷地内に足を踏み入れた。人の出入りがあると断定した上での不法侵入。

 かつては絢爛であったであろう庭園は、荒れ果てていた。ガーデンオブジェは緑に取り込まれ、造形植木は形を崩し、中央の噴水は苔むし水は濁り切っていた。

 

「君達はついて来ない方がいい」

 

 振り返りもせずに淡々と言う少年。暫し呆然と見送ってしまうが、透が小走りで追い始めたのをキッカケに、残りの2人も追従した。

 

「ねえ名前は?」

 

「フィリップ」

 

「フィリップ? 本名?」

 

「どちらも僕にとっては本名さ。言っておくけどもう1つを教えるつもりはないよ」

 

 邸宅はやはり全く整備されておらず、換気もされず空気は澱んでいた。蜘蛛の巣、日差しを曇らせる埃、傷んだ内装。とても日常的に人の出入りがあるようには思えなかった。

 しかしフィリップと名乗った少年は、床を暫し観察すると、澱みない足取りで歩き始めた。周辺にある部屋は一瞥もしない。それを追う3人。

 

「部屋、調べなくていいの」

 

「ノブに手形はないし、足跡も一直線にどこかに向かってるからね。調べる必要はないさ」

 

 廊下を進んだ先の階段を昇り、突き当たりの部屋に辿り着く。それまで淡々と歩んでいたフィリップが立ち止まっている。理由ははっきりしている。ドアの隙間から光が漏れているからだ。

 

「君達は僕の後ろにいるんだ」

 

 飄々とした態度を崩さなかったフィリップからの警告に、一もなく二もなく従う。それを確認し、埃の積もっていないノブを捻る。

 そこは椅子が整然と並び、前方に向けて傾斜が付き、巨大なスクリーンのある部屋だった。

 

「映画……?」

 

 無人のシアターで映像だけが流れている。

 自分達と同じくらいの少女が映し出されている。アクションやホラー要素は見当たらず、それが却って現実との乖離を浮き彫りにし、言いようのない焦燥感を与えた。

 背後のドアとは別の位置でノブを捻る音が聞こえた。身を強張らせて振り向くと、中に入っていくフィリップの姿が見えた。慌てて後を追う。

 

「行くなら行くって言ってよ〜」

 

「集中してたみたいだからね」

 

「……友達に変わってるって言われない?」

 

「言われないねえ。おや、映写機か。実物は初めて見るな」

 

 雛菜の文句も、小糸の指摘も全く意に介さず、ブースの中にポツンと置かれている映写機に飛び付く。この異常な状況に於いて、笑顔でいられることに、やはりフィリップは普通とは違うのだと改めて思わされる。

 そんなフィリップの横に付き、一緒に映写機を眺めている朝倉透という少女もやはり変わり者だろう。

 

「映写機って何」

 

「映写機とは1890年代にフランス人のオーギュスト・リュミエールとルイ・リュミエールによって発明された、今日まで続く映画の上映方式の元祖に当たるものだよ。フジセントラルやローヤル、ミクニというメーカーは聞いたことあるだろう?」

 

「え、ない。これはどこのやつなの」

 

「どれでもないね」

 

「そうなんだ」

 

「既存ブランドとは全く異なる造り、フィルムの映像は現代……。今度のドーパントは随分と面白い能力を持ってるようだね。ゾクゾクするよ」

 

 言うだけ言うと、部屋を出て下のシアターに向かうフィリップ。そしてあろうことか、シートに腰掛けるではないか。足を組み、背もたれに深く体を預ける様子は、まるで映画鑑賞の態度そのもの。

 自他ともにマイペースだと認める透も、流石にこの場に於いては奇行以外の何物でもない行動にはツッコまざるを得なかった。

 

「……何してるの」

 

「今ここで僕達に出来ることはない。後はそこの2人に任せるしかない」

 

 映画の登場人物に何を、とスクリーンを見た時、3人は信じられないものを見た。男に先導され、主人公の背後を横切る円香の姿。

 3人の視線がフィリップに向けられる。敢えて無視しているのか、気付いていないのか、薄く笑みを浮かべながら映像を見ているだけで、言外の疑問に答えることはなかった。

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