「……何だよ。3月まで家空けるんじゃなかったのかよ」
「スポーツやってると、予定通りにいかないこともあるんだよ」
家に帰ると、居間でサッカーの中継を見ている新の姿があった。
「じゃあ早いところ、今年の主要メンバーから父さんは外されたわけか」
「そういうことだね」
「ミスターチーターズとやらが、聞いて呆れる」
「俺もそう思ってるよ」
煽ったつもりで投げつけた言葉を、海は相変わらず文字通りそのまま受け取った上に反論もしてこないので、新はつまらなさそうに舌打ちをしながら足を組んでみせた。
身長は180半ばだろうか。自分に似て、必要以上にガッチリしすぎていないすらっとした長く引き締まった細い脚がハーフパンツから覗かせる。
テーブルの上にはゼロカロリーのコーラを飲み干したあとがあり、風呂から上がってからしばらくの間、ずっと居間でテレビを見ていたようだった。
「ま、そりゃそうだよな。父さんと同じ世代の選手なんて、サッカーじゃもうほとんど使い物にならない。こないだミッリョーネが引退したけど、トップリーグで活躍してる40代なんてあとはこないだ日本に移籍してきた、エスペランサ・エルバくらいだ」
「エルバ、今日本に居るんだったか」
自分よりも少し年上のかつての名選手の名前を聞いた海はふと新のほうを向き興味を示した。
華耶と出会う少し前の頃から既にその名を轟かせていた世界的スター。とっくに引退してしまっていたものと思っていたものだから、海はそれを意外に思った。
「エルバほどの超一流選手が、晩年を日本のリーグなんかでプレーするなんてね。日本も代表レベルだと海外とやりあえる力をつけてるかもしれないけど、リーグ全体で見たら全然だ。『日本のサッカーをナメてはいけない』なんて海外選手がメディアで積極的に発信してるけど、そんなもん、リップサービスにもほどがある。上のチームでやれないから日本にきて現役にしがみついて、たまにだけちょっといいパスなんか出してみたりして『エルバはまだまだやれる』だとか『やっぱり衰えてもエルバのパスやクロスは世界級』なんて評価をもらいたくてやってるだけにすぎない」
「……」
「運動量だって全然だ。ドリブルだって、みんなもともと世界のトップスターだったやつに怪我させたくないからハードにぶつかれないだけで、みんな気を遣ってるんだよ。あんな老いぼれた選手が日本のリーグのスタメンでずっと使われてるうちは、せっかく世界で戦えるようになった日本サッカーに明るい未来なんかない。ディフェンダーのやつらなんて、やけにポっと出のそのへんのフォワードは容赦なく削りたがるくせに、こうして海外から来たかつての名選手なんかは怖くて削れないんだ。自分がキャリアにトドメを刺して、世界中から加害者として見られたくないからな。そんな生ぬるいサッカーやってるうちは、日本はいつまで経っても、1部リーグのごく何チームかが強いだけで、2部以下なんかは草サッカーみたいなもんだ」
早口でまくし立てる新の言葉を、海は黙って聞いていた。言わせたいように言わせておこう――と思いながら、冷蔵庫の中の缶コーヒーをつかみ、プルタブを開けた。
「父さんだって、本当は気を遣われてるんじゃないの」
「……」
「本当はもう上位打線に座ってるべきじゃないのに、周りが気にして父さんを上で使ってやってるだけでさ。父さんの他に責任を擦り付けられるやつがいないから、とりあえず勝てなかったら父さんのせいにしといたら皆分かりやすいからそうしてるだけなんじゃないの。集客だとか、勝てない理由のなすりつけだとか、そういうワケありで父さんが試合に出させてもらえてるだけで、本当は父さんなんかが上に立ってたら勝てないの分かってて嫌々使ってやってるんじゃないの。それでもし勝てたら父さんのおかげってことにしとけばいいし、勝てなかったら全部父さんの責任にしておけば、ファンだって、球団だって、世間だってみんな納得するし、『悲劇の天才打者』みたいなことにしておけば父さん以外の誰も傷つかないしな」
「……」
海は新の言葉に思わずコーヒーを飲む手が止まりそうになった。動揺していることを悟られてしまっては新の思う壺だから海は平静を保とうとしたが、自分が思っている以上に新には自分や自分を取り巻く世界のことがよく見えている。ゴシップで聞きかじったような知識だけではなく、新なりに感じたことがあるから、その言葉は一言一言、遠慮なく海のリアルを突いてきた。
「そのうち、みんな父さんに怪我させちゃいけないって、気を遣って内角になんかも投げなくなると思うよ。そうなったら、仮に父さんが4割なんか打てなくなってもきっと楽してヒットも打ち続けられる。みんなここまできて父さんにきわどい球なんか投げて、選手生命を絶たせるような怪我なんてさせたら、きっと死ぬまで叩かれ続けるだろうからね。本当は父さんがその歳でヒットを延々打ち続けられてる理由なんて、そういう周りからの忖度ありきなんじゃないの。4000本安打も夢じゃないみたいなことをメディアは言ってるけど、そんな気を遣われまくって4000本安打なんかして、父さんは満足なわけ?」
コーヒーを飲み終わった海はゴミ箱に缶を入れてから、新の顔も見ずに海はぽつりと応えた。
「本当にお父さんを取り巻く世界が、お前が言ったような世界だったらどうする?」
「嫌だね。俺はマッチアップした選手がどれほどのスターだろうが、俺のプレーをし続ける。俺は――俺でいたいから、こんな国に居たくないんだ。父さんみたいに、こんな国で忖度されて生きたいわけじゃない」
海は新がふと漏らした本音をしっかりと耳に残しながら、ソファに座った。
「出発、いつだっけ」
「来週。東京から出発する」
「大阪からじゃないのか」
「東京集合って言われちまったからね」
「そう」
海は新の必要最低限にとどめた連絡を聞いた後、二階に向かおうと居間から出ようとしたが、一度振り返り――
「新。仮にサッカーで世界とやりあいたいなら、一応言っておくよ。カメラの前で使う言葉は、気をつけておいたほうがいい。普段使ってる言葉って、思ってる以上に他人の前で出るから」
「父さんに言われるまでもないよ」
「そうか」
そう言って海は階段を上がり――部屋へと戻った。
もちろん、新の放つ言葉の全てが正しいわけではない。けれども、事実以上に事実を突きつけてきた部分もところどころあったし、海にとってあまり突かれたくない部分だってあった。
新は自分なりに世界を分かった気でいる。それは、自分が若かった頃のものと同じだ。自分だって、他人のことを言えるような人生を送ってきたわけではない。
それでも――世界がどれほどおかしくても、世の中がどれほど狂っていても、世界というものは、案外自分が自分として生きるだけで精一杯だということにはまだ新は気づいていないし、そうしたことに気づかなくていい生き方ができるなら……それに越したことはないだろう。
『父さんだって、本当は気を遣われてるんじゃないの――』
正しいから、反論できなかった――。
気を遣われてるからオープン戦なんかを外されて、休養をとってくるように言われたのだ。
こんな言葉、華耶が脇で聞いていたら鬼の形相できっと新に怒ったのだろうけれど、自分がこのまま調子を維持できれば別だが、いつか、本当に新が言うように気を遣われながら上で打ち続ける日も来てしまうのではないか――そう考えると黙ってこうしてもいられない、と海は思った。
強くそう思ったのだけれども、事実、こうして調子を崩しているのだから、新が自分に言い放ったように『自分はそうはならない』と言い返すことが海にはできなかった。
「――じゃあ、見送りにいってこいって上から言われたわけじゃないんだ」
「そこまで球団もやさしくないよ」
「でも卒業式の件があったし」
「それはそれ、これはこれ」
「……まあ、なんでもいいけどさ」
風呂から上がり、部屋でしばらく適当に時間を潰していた海のもとに華耶が戻ってきた。家に戻ってくる、ということだけは聞いていたが、どういった事情で家に戻ってくるかまでは海から知らされていなかったので、どこか怪我をしただとか、そういう理由で戻ってきたわけではないことを知った華耶は少しだけ安心したそぶりを見せた。
「どうする?見送り、行く?」
「せっかく家に居るんだから、見送りくらいはね」
「駄目だよ、車の運転は。あたしが車運転するから、海くん、もしついてくるなら助手席だからね。絶対」
「……新が助手席じゃないのか」
「いいんだよ。海くんが車にいるなら、助手席は海くんのものだから。海くん後ろになんか乗せられないよ」
「そういうものかな……」
海はベッドに座り、壁にもたれかかって首の後ろに手を回した。
一週間後、新が家を出て行く日の朝。
晴留が家を出て行くときの日ほど玄関に誰かが送り出す、ということもなく、朝早く海と華耶は新を連れて真っ白なプレミアムセダンへと乗り込んだ。
移動中、カーオーディオから流れるニュースを聞きながら、華耶は新に現地に着いたら何をするかの再確認をし――海は一応、付き添いという形で助手席にこそ座っていたものの、口を挟むでもなくずっと窓の外の景色を眺めていた。
〈――お聞きいただきましたのはDOE'zのヒットソング、『ねじくれた白い流星』でした。こちらはかつてスポーツ飲料のCMソングなんかにも使われて――〉
「新。一応、最後にもう一回確認っていうか……言っておくけどさ」
「うん」
「知ってると思うけどさ、うちにはね、お金、腐らせるほどあるんだ。お父さんが野球だけじゃなくてCMとかのスポンサー料、とんでもなく稼いでるからね」
「そんなこと知ってるよ。建てようと思えばビルくらいは建てられるくらい稼いでるんだろ」
「茶化さないの。一応さ、お金、足りなくなったら連絡してくれればいつでも振り込むけど、だからってそのお金を周りにひけらかしたり、そのお金、よからぬこととかに使っちゃ駄目だからね。新のお金じゃなくて、お父さんが必死で稼いできたお金なんだから。新がどれほどお父さんのことを馬鹿にしようが、そのお父さんは億単位で稼いでる。今、新はお父さんが稼いできたお金で自分の夢を叶えようとしてるってこと、忘れちゃいけないんだからね?」
「分かってるよ。いつか返せばいいんだろ、倍で」
「……そういうこと言ってるんじゃないの。返す、返さないとかの問題じゃなくて、新が自分の思うような生活できてるのは、お父さんが仕事頑張ってるからってこと。新が向こうで何しようが勝手だけど、その間もお父さん、必死で野球してるんだから、それは否定しないでって話してるの」
「……」
本当に分かってるのか、というような顔をしながら華耶は不機嫌そうな顔をした。これが助手席に乗っていたらもっと不機嫌になっていただろうから、自分が助手席に乗っているのは正しかったのかもしれない――と海は思った。
パーキングエリアで一度給油をし、その間に華耶はおにぎりだとか、売店で名物の串焼きなどを買ってきて休憩をした。
金という自由を得るための大きな要素は、華耶の言葉がまるで冗談ではないほどにいくらでもあるのだが、自分が野球で一年のうち半分以上不在にしていることもあって、親子でドライブなんてことはほとんどなかった。晴留を車に乗せたときなんてレアケース中のレアケースで、今の生活を続けていたらきっとこれまでもこの先も合わせても、指で数えるくらいしか起きないことだろう。まして、子供の数だって他の家庭よりずっと多いから、家族総出でどこかで出かけるには車は二台ほどに分けなければいけない。
もし自分がもっと平凡な家庭を築いていたならば、新だってここまで尖った性格にもならなかっただろうし、もっとたくさんの思い出を共有できたかもしれない。
今更そんなことを考えてもしょうがないのだけど、新を壊したのは自分なのではないかという気持ちがどうしてもこうした場面で湧いてきてしまい、海はサングラスで表情を隠した。
これからしばらくは新と顔を合わせないということは、そんなことも考えずに済むということでもある。新がこのまま日本に戻ってこないなら、新が自分から逃げていくように、自分も新という存在から逃げることができる。新が家に居ない間は、この間のように現実を突きつけられることだって今までよりは減る。
それはお互いに、いいことなのかもしれない――
……などと考えている自分が恥ずかしく、海は唇を三角にしてぐっと噛んだ。
新は決して自分から逃げるわけではなく、自分という色眼鏡で他人から見られるのが嫌で家から出て行くというのに、そんなことを考えて家から出て行く実の息子をそんな風に思ってしまう。そんな自分は、新なんかよりもよっぽど自分本位な生き物なのではないか――そう海は考えてしまった。
東京が目の前に迫ってきた頃、空の色は突然曇りだし、次第に雨が降り始めた。通り雨というには少し雨の勢いが強く、ワイパーを早く動かしてもなお大粒の雨がフロントガラスを叩きつけ、視界を濁した。
「空港着いたら、もうそこから見送らなくていいから」
「いいの?」
「どうせ、見送ったってそこから飛行機が見えるわけじゃないし、空港着いてからすぐに飛行機が飛ぶわけじゃないし」
「でも……」
「一人になりたいんだよ。これから一人になるってのに、見送りが本来母さんだけだったはずなのに、父さんにまでも見送られたら、気が抜ける」
「そういう言い方はさあ」
華耶が思わず振り返りそうになるが、海が華耶を止める。
「新ももうすぐ大人になるんだから、言いたいようにさせておけよ」
「でもまだあたしからしてみたら子供だよ。親だよ?親が子供の背中を見送ったっていいじゃない」
「一人にさせてほしい、って言ってるんだから、そうさせてやれよ。一人で生きる覚悟を決めたやつの言葉だぞ」
「……海くんがそう言うなら」
華耶は不満そうにしながら、ハンドルを握り締めて空港への道をぐんぐんと走らせていった。
東京が近づくにつれて車の量が多くなり、悪天候ということもあって、快調には車は進まなくなっていった。それがどこか、今の自分たちと重なって見えて、華耶もまた、唇を噛んだ。
そうしてバックミラーに映る二人の顔は同じような顔をしていて、新はそれが面白くなかった。
「……それじゃあ、俺、行くから」
「連絡、ちゃんとするんだよ」
「分かってるよ」
「それと――」
「お金の話なら、もう分かったから。別に俺だって、遊びに行くためにイギリスに行くわけじゃない」
「ならいいや。それじゃ……頑張ってね」
「うん」
駐車場に車を止め、車の窓から新の背中を見送りながら、華耶はいったん車から降りて助手席に座った。
子供の帰りの時間などの都合もあってすぐに引き返して家に帰らなければいけないのだが、さすがに続けて運転は体力的に厳しいだろう――ということで、結局海が華耶を説得し、戻りの道を運転することになったのだ。
「……よかったのかな、これで」
「そう思うようにしよう。晴留だって、一人でよくやってる。晴留にできるんだから、新にだってできるはずだって思うしかないよ」
「そういうのじゃなくてさ。……行かせてよかったのかな、って。別に外国に行くのが心配っていうことだけじゃなくてさ。あんなんじゃん、新。……問題なんか起こさないといいな、って」
華耶はそう言いながら、オーディオをいじり、携帯とリンクさせて流行の曲を流し始める。海があまり聞いたことのないタイプの、明るくキラキラした感じの曲だ。気分だけでも明るくしたいのか、外の雨音と反比例するようにそのイントロは弾けていた。
「……大丈夫だよ。アイツだって、いつまでも子供でいられるわけじゃない。きっと……そのうち、アイツの見ている世界のフィルターが……もう少し綺麗になるよ。これは、そのための投資だと思いたい。きっとこのまま日本に居続けたら、アイツは、俺の存在のせいで壊れるかもしれない。アイツはきっと、自分でそれが分かってたんだよ。……と思うしかないよ」
「……なんだ。海くんも不安なんじゃん」
「子供の人生って言ったって、他人の人生だからね。自分では子供のことをどれほど理解してるつもりでも、それでも自分じゃないから何をするか分からないし、自分じゃないから、相手が何を考えてるか、本当のところはやっぱり……自分の子供でもさ、分からないよ。自分じゃ全部理解してるつもりでも、どこで何を吸収して、何を糧にして生きてるかだって、一分一秒たりとも見逃さずに見てきてるわけじゃないから分からないし。だから、アイツが本当は何に躓いてるかだって、本当は分かってないんだと思う。だから、今のところはこれでよかったんだ、って思いたい。……俺たちのやってることが正解かどうかは、何年か経ってみないと分からないよ」
「……変われると思う?」
華耶の問いに、海はしばらく言葉を選んだ。
変われると思う?と聞いたのは、新には変わって欲しいからだ。もちろん、海だってこのままの新でいていいわけがないとは思っている。でもここで『変われる』と答えるのは、互いが都合いいように子供を解釈したいだけのように思えて――海はしばらく黙った。
「……どうだろうね。分からない。変わるほうに賭けたい。そのためにそれなりの額払ったんだから……少しは変わってほしい。そりゃそうだよ。変わってほしいよ。他人に向かって言う言葉の分別くらいはつけられる大人になってほしい」
海は少しばかり語気を強めながら、高速道路を快調に飛ばしていた。続きそうな雨の降り方だったが、いつしか雨も小康状態になり、ワイパーも必要ないほどにまで天気は回復していた。
「……海くん、また新に何か言われたりした?」
「……まぁ、いろいろ……」
それ以上は言わなかった。変に詮索しないでくれ、という意味と同時に、自分でも、それをうまく言語化できる自信がなかったから海は言葉を濁した。華耶もまた、そんな海の雰囲気を感じ取ったのか、腕を組んでうっすらと笑みを浮かべた。
「……でも、よかったじゃん。新が家に居ないってことは、これからしばらく新から何か言われることなんてなくなるわけだから」
「やめなよ、自分の子供のことを、そんな言い方」
「……ごめん」
不機嫌そうに華耶の声を遮った海。ついさっき、自分が考えていたようなことを華耶に言われたことが、どこか心を読まれたような気がして少しだけ嫌だった。
「……悔しいか悔しくないかで言われたらさ、悔しくないわけないだろ。辛いんだよ、現実をズバズバと突きつけられるの。アイツ、俺によく顔も似てきただろ。20年越しに俺が、大人になった俺に人生を否定しにかかったように思えてさ。でも、だからって、アイツがいなくなって日常が平和になった、なんて少しでも思ってる俺がたまらなく嫌だ。アイツを産んだのは華耶だ。必死で腹が裂ける思いをして産んだ子供のことを否定するのは、俺だけじゃなくて、華耶のことも否定することになる。それは俺は嫌だ。でも、アイツに結果で示すには、もう俺は歳をとりすぎた。アイツは、俺がムキになって現役を続けてることだってきっと見抜いてる。だからこそ……だからこそアイツは、俺に――」
海は悔しそうな表情をにじませながら、車を走らせ続けた。華耶はそんな海を見て、大してトイレに行きたかったわけでもないのにトイレに行きたいと海に告げて、パーキングエリアに停まるように促した。
新が海にどんな言葉を投げたかは分からないけれど、よほど海の心に刺さるような言葉を投げたのだろう。そう思うと、新のことを応援したくてもなかなかできない――そんな自分の気持ちをよりいっそう加速させるように感じられて悔しかった。
ソフトクリームを買って戻り、海になるべく笑顔を取り繕って渡した華耶だったが、あまり甘くは感じられなかった。