「……じゃあ新はさ、そのトリさんに見捨てられるのが嫌だっただけ?なんだか、トリさんって人が自分にとって都合がいいから、付き従ってるだけにしかあたしには聞こえないんだけど」
何杯目かの水を飲み干し、再び席に着いた新に華耶は質問を投げかけた。母親からの容赦のない言葉の応酬に新は自分の重ねた罪の重さを思い知った。華耶ならば少しくらいは理解してくれるだろう――なんて甘い考えは一瞬にして切り捨てられたのだ。
無論、切り捨てられるようなことを今までしてきたのだから、言葉の応酬だけで済んでいるだけでもありがたく思わなければならない――そんなことを新は一瞬思った。
華耶からの裁判官のような冷たい目線から目を逸らし、しばらく新は黙り込み――願わくば沈黙がいつか自分を救ってくれればとも思ったが、そうもいかないようで、ようやく重たい口を開いた。
「……最初は、そうだったよ」
「……」
「でも、俺は……スポーツマンなんて基本、自分さえよければいいって思ってる、自己顕示の塊だと思っていた。若いころのトリさんだって、俺にはそう見えていた。それでも、トリさんは期待には応え続けるし、そうして自己顕示欲丸出しのプレーをしながらも実力で周囲を納得させて、そして常にスターで居続けた。父さんのことだって、そう思ってた。野球選手のくせに、チームメイトの誰からもサインとかを俺たちのためにもらってくれるわけでもないし、テレビに映る姿はヒットなんか打っても全然嬉しそうにしない。内心、周りのことを馬鹿にして、周囲を見下すためにわざわざ弱いチームに居続けて、自分がチームの中で一番まともなんだっていう政治をしているように俺には見えていた」
「……」
想像していたよりも遥かに偏見に満ちた新からの言葉に華耶は眉間にしわを寄せて思わずため息をつきそうになったが、ここで変に反応しては言葉の意味が変わってきてしまいそうだからぐっとこらえた。
ただただ、自分の息子ながら愚かな勘違いをしていたものだ――という呆れと、自分の子育ては間違っていただろうかという罪悪感とが交互に華耶をかき乱し続けた。
「どいつもこいつも、俺が、俺が……って、自分さえよければいいもんだ、って思いながらスポーツしてるもんだと思ってた。でも、トリさんに怒られたあと、たまたま父さんの取材をニュースでを見たとき……なんだか、違う気がしたんだよ。トリさんも、段々トップ下や中盤に下がっていった経緯の中で、自分が前に出て行くだけじゃなくて、周りをどう生かすかを大事にするようになったって言っていた。父さんは……打点王なんか取っても、あんまり喜んでなんかなかった。それを俺は近くで見ていたつもりだったから、父さんは単に安打を打ちさえすれば何だっていいと思ってるタイプだと思ってた。でも……そうじゃなかった」
新はそうして搾り出すような声でなんとか答え、再び水を口に含みながら髪をかきあげた。暖房が効いているとはいえ、妙に汗ばむ感じがした。
「……本当は、俺からいろんなことを謝らないといけないもんだとは分かってるんだよ。父さんにだけじゃない。母さんにも――俺は、ずいぶんひどいことを言った。俺が間違ってるって分かった後、今度は俺が軽はずみに放った言葉が俺にのしかかってきた。あそこまで言ってしまったんだ、結果で示さなきゃ、俺、ダサいって言葉ではちょっと許されないところまできてるじゃないか」
「……」
うんともすんとも言わずに黙って聞いている華耶。せめて「そうだね」とでも言ってくれるか――と新は思ったのだが、その思いはあっさり打ち砕かれてしまった。仕方なく、一人でその続きを呟き続けることにした。
「だから……そこから半年近くは、晴留たちに顔を合わせるのだって、辛かった。晴留たちにだって、謝ってどうにかなるような次元じゃないから。でもきっと、そうして俺が結果で示そうとして前に出れば出るほど――母さんや、晴留や、父さんからしてみれば、自分本位にしかプレーしてないようにしか見えないのかもしれないとも思った。……実際、そうなんだよ。周りを生かせとは監督やトリさんから教えてもらったし、イギリスに居たときみたいに皆が世界級の選手じゃないから、周りを生かすための動きだって自分から積極的にしないといけない。でも、俺は……結局、フォワードなんだよ。フォワードは、点を取るのが仕事なんだよ。だから結局、こんな形でしか俺は……俺は俺を表現できなかった」
新は視線をあちこちへと移し、なかなか華耶と目線を合わせようとはしなかった。到底、何かそうして自分の思いを話せば許してもらえるなどとは思っていないし、自分がそうして吐露する言葉の一つ一つが結局罪を減らすどころか、さらに罪を重ねていっている気がしてならなかった。
「……じゃあ、ズバリ聞くけど」
華耶はテーブルに肘をつき、新の顔を覗き込むようにしながら前に体をせり出した。相変わらず小さな体だが、今だけは新にしてみれば華耶がとてつもなく大きく感じられた。
「お父さんと直接競演するCMにOK出したのは、自分の世間体のため?新の目に見えている、自分の世界の政治のため?」
「そんなわけないだろ――!」
否定した後の言葉が、新からなかなか続かなかった。何かを言いかけて、うまく言い出せないような――そんな形にならないモヤモヤした感情だけがそこにあって、それをどう言語化すればいいのか悩んでいるような姿が、華耶には新をずいぶんと小さく見せた。
背だけは一丁前に大きくなったが、自分の子供は、いくつになっても、子供だ。
「……じゃ、もっとキツい言い方するけど――」
華耶もまた一度、コップの水を含んだ。
「俺もこれだけ頑張ったんだからお父さんだってきっと許してくれるはずー、みたいなさ。結果ありきでお父さんに近寄るチャンスを狙ってたとかじゃないんだよね?」
「それは――!……そんな言い方ないだろ。俺は……シーズン終わったら、いずれ、ちゃんと顔を出すつもりで――」
「でも、あたしがここに来るまで結局新はうちには顔を出さなかったでしょ?」
「それは……」
二度目の反論は、言葉が続かなかった。言葉が尻切れして、反論しようにも反論できるほどの材料がとうとう見つからなかった。確かに、今年一年でイギリスに戻るつもりでいるという話をつけていたものだから、シーズンが終わった今、本当はそこまでスタジアムでみっちり練習をする理由だってない。会う会わないのタイミングがどうと言い訳し続けていたのは、実際、紛れもない事実なのだ。
『練習なーんかよーりもさ。もーっと、日本に居る間のさーあ、自分の時間の使い方ー、ちゃんと考ーえるべーきなんじゃなーいの?』
と、鳥居からもつい何日か前に言われたばかりだった。
「家に直接行ったら素直に謝れる自信がないし許してもらえる自信がない。だから、競演っていう、他の人が見てるような場で、なんとなーく謝っておこう。そしたらお父さんだって、周りの目があるから許してもらえる、とかいう甘い考えで居たんでしょ?そういうとこだよ、新の自分本位なとこ」
「……」
新は唇を噛んで、そのままうつむいた。
『4割40本だなんだ、ってちやほやされて、結局一度も優勝できなかったじゃないか』
『必死に生きてるような顔しながら、何やっても中途半端な生き方なんかしてるから、何やっても1番になれないんだよ、親父は』
『向こうの国の国籍だってもう持ってないくせに向こうの国の国歌歌って、さぞいい気持ちだろうよ、親父はな』
自分が海に向かって言い放った言葉は、どれほど謝っても許されるような言葉ではないだろう。
あれほど嫌がっていた『佳井海の息子』というレッテルを、ファンは自分が思っていたほど向けなかった。
ただそこに、背番号25のエースストライカーがいた。スタジアムで声を張るものは皆、純粋に『佳井新』を応援していた――。
海はそんな新に対して一切自分からはコメントをすることはなかった。海もまた、新を自分の息子だからと特別扱いするようなことをメディアにはしてこなかった。
結局、自分ひとりだけが過剰に海を意識し続けていて、勝手に張り合っていただけだったのだ――。
それを一体どんな言葉で謝ればいいか、どんな形で償っていくべきなのか――新には想像がつかず、途方にくれた。
「……まあ、別にさ、お父さんは許してはくれると思うよ。表面上は。でもね、新がお父さんの心や、尊厳を傷つけたっていう事実はなくならないし……お父さん、知ってると思うけど、結構引きずるタイプだからさ。許した後だってね、きっと新の言葉をふと突然思い出してまたへこむと思う。その事実から一生目を背けちゃダメだからね、新。もちろん、新一人の言葉だけがお父さんの心を殺したわけじゃないけど……新もまた、お父さんの心を殺した一人なんだからね。分かってると思うけど、あたしは新たちのお母さんだけど……それって同時に、お父さんの恋人でもあるってことだから。お母さんとしてのあたしは、新のことを許すと思う。でも……お父さんの恋人としては……お父さんの――海くんの一人の女としては、あたし、きっと新の言葉を……一生とは言わないけど、しばらくは許さないと思う。ああまで言われて最後まで親でいられるほど、あたし……優しくないから」
「……」
華耶の言い放った言葉は、新の心に次々と弾丸を撃ち込んでいった。一つ一つが致命傷になるように――確実に新を撃ち貫くようにしたその言葉は、それぞれが重かった。
きっと、自分が言い放った言葉はこんなものではない痛みを伴うものだっただろう。新は華耶の言葉に涙を浮かべながらうつむき、そして黙って頷き続ける以外のことはできなかった。
華耶もまた、瞳に大粒の涙を溜めながら、それでもそれを必死でこぼさないようにしていることなど、新には見えていなかった。
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〈お互い、ゼロで終わりたくないもんだね〉
〈お互い、数字にこだわって生きているからね〉
〈数字にこだわるアナタにも、ゼロの日常を――〉
〈年末年始は〉
〈さらにおいしくなった『ダイワ・I/0【ゼロワン】』〉
ジェネルが箸で口に運びかけていたからあげを思わず止め、テレビの映像を食い入るように見つめていた。
「……結局、4パターン撮ったんでしたっけ?このCM」
「そうだね。キャッチボールするやつと、パスを返しあうやつと、今流れた、俺がアイツにビールを注いでやるやつと、逆にアイツが俺にビールを注いでやるやつの4パターン」
「収録、どのくらいかかりました?」
「この公園を借りられる時間が限られてたから、弾丸だったよ。一日で全パターン撮った。最後に映った居酒屋だって近くのスタジオ押さえてあって、一気に撮ったやつだし」
「じゃ、新くんとはあんま喋れなかったんですか」
「アイツ、俺以上に口下手のケがあるからね」
ジェネルは海の言い出した言葉に、そんなものはどんぐりの背比べではないか――と思わず噴出しそうになり、必死でこらえた。
「スタッフがなんかメイキングとか収録裏話みたいなやつ欲しがってスタッフが会話を振るかたちでいくらか話したんだけどさ。あんまりスタッフたちが望むような絵が撮れなかったからかな。メイキング動画なんか見ても、ほとんどカットされてるね」
海は携帯で動画サイトを開き、撮影の様子なんかが収められた15分ほどの動画のサムネイルをジェネルに見せた。
ボウルいっぱいのフライドポテトを揚げ終わった華耶が海とジェネルたちのもとへとそれらを運んできた。我先にと柊理がトングで皿に自分の分を盛り付け、続けざまに琉美と諒斗が交互に皿に盛り付けあって、夢中で食べ始めた。
若い衆の飲み会のような勢いのよさに、思わずジェネルは噴出し笑いをした。
「見てのとおり、食べ盛りでね」
「いいことじゃないですか」
「おいしくないって言われるよりはよっぽど嬉しいよ、あたしは」
呆れたような顔をする海をよそに、ジェネルと華耶は相変わらず意気投合していた。大きめにカットされたポテトをそれぞれ爪楊枝でつまみ始める。まだ熱く、いきなり大口で頬張るには危険そうだった。
「海くん的には、どうなの。新のことは許せる?」
「許す許さないとかいう次元というよりは……アイツが俺に向かって言ったことは、大体は事実だから。嘘やあることないことで俺をバカにしたならまだしもね」
「……でも、人の尊厳まで侮辱するようなことだって何度も言ってきたじゃない。どうだった?新、本当に反省してるようだった?」
結局、一度も家には戻ってこなかったことに華耶は少し不満そうにしながら海へと視線を詰め寄せた。向かいの椅子から睨んでいるだけなのに、圧倒するような目力だ。
「……まあ、反省……してるんじゃ……ないかな」
海は否定も肯定もしないような曖昧な返事をしておいた。
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収録が終わり、いそいそとスタッフが撤収の準備を始める。
飲みかけていたビールをぐっと飲み干した新は、スタッフの邪魔にならないよう、セットから離れていった。
海はCMのたった数十秒の合間に一口を大きくビールを飲むものだから、OKが出るとすぐさま残りのビールを飲み干していった。何度もNGは出すつもりはないし、やるからには早く終わらせて欲しい――という意思の表れなのだろう。スタッフはただただ海の酒の強さに驚きながらも、頼むから酔いつぶれないでくれよ――とその海の飲みっぷりを遠めで眺めていた。
海は決して演技派というわけではないが、これまで嫌というほどCMの収録をこなしてきたからかずいぶんと収録慣れしているようで、新の知っている自然体の海でありながら、カメラから向けられる視線だとか、監督から求められた構図を割とすぐにこなしてみせていた。
この日既にNG分を合わせると7缶のビールを開けているが、まるで表情も態度も、人となりだとかたたずまいだとかも全くブレることない海がそこにいた。
新は自分が酒にさほど弱いとも強いともいう自覚こそなかったが、この短時間にあれだけの量のビールを飲んでピンピンとしていられる海を見て素直に驚いていた。
「……親父」
なるべくまっすぐを保とうとした足つきだが、どこか浮遊感のある足取りが海には見て取れた。海はそんな新を見て、少しだけ苦笑を浮かべた。
「ああ、新か。収録、お疲れ様」
「……ああ」
自分から声をかけたはずなのに、海のほうから労いの声をかけられたものだから、ますます新はやりづらくなった。
「本当は、もっとゆっくり家で色々やれたらいいのにな。お前、年が明けたらすぐにイギリスにまた戻るんだろ」
「……ああ」
「日本リーグの得点王が通用しない、なんてファンを失望させるようなこと、したらダメだからな。お前、これからは最年少記録保持者って箔がつくんだから」
「……ああ」
海は新といくらか距離を保ったまま、声をかけ続けた。
新はなかなか海に言葉を言い出せないまま、なんとなくその場で時間だけが流れていった。
次々と解体され、何事もなかったかのようにガラリとしていくスタジオに、時間の流れの速さを新は痛感した。今更どんな言葉をかけるべきなのか、言葉が次々脳を滑り落ちていって、何もかもがまとまらず、新は一人でやきもきしていた。
「……親父は、来年、どうするんだよ。コーチの話なんか出てるくらいだから、来年は色々と正念場なんだろ」
「まあ、ね」
海はもう一本スタッフからもらっていたビールを開けて、ぐっと一口飲み込んだ。
まだ飲むのか――と新は思ったが、考えてみたら海が家でどれほどの量の酒を飲んでいるかなど自分はよく知らない。海だって自分からは子供たちに飲んでいる姿を見せようとはしなかったが、避けていた時間の長さが、『海は自分のことを知らない』のではなく、実際のところはむしろ『自分のほうが海のことを知らない』という事実を生み出しているように感じられて、胸が痛んだ。
「ダメなら、スパっと辞めたいとも思ってる。ダラダラと代打に出てくる俺を世間は待ってるわけじゃないだろうから。でも、きっと、それでもいいから俺を見たいと思ってる人々だって、それだけいることだって、分かっている。だから、きっと俺が辞めたいとふと思ったすぐ後には、現役を続けるべきなんじゃないか、って思いも出てくると思う。だから……来年かもしれないし、再来年かもしれないし、もっと先かもしれない。でもね、俺が俺の野球をできないようなら、辞めてしまったほうがいいと思ってるのは事実だよ。本当は今年でスパっと辞めてもよかったんじゃないかって思ってるくらいだ。……でも……やっぱり、ちゃんと日本一になって引退したいからね。もう一度スタメンで日本一を目指して……そこに挑むことすらできなくなったときは、素直に俺の終わりだと思う」
「一つ、聞くけどさ」
新は海の言葉に一言だけ質問を投げかけた。
「世界一にはなったんだろ。どうしてそんなに日本一にこだわるんだよ」
「……」
海は失笑を浮かべながら、髪をかきむしった。
「お前には、ちゃんと話したことがなかったか、あるいは、話したけどお前が忘れたかのどっちかかな」
「聞いてないと思う」
「そうか。……お母さんからプロポーズされたときに頼まれたんだよ。『自分は野球を諦めた身分だから、自分が見たかった景色に連れて行ってほしい』って。俺はそれを勝手に日本一になってほしい、って解釈し続けてるんだ。お母さんからは、もうそんなことはやめて欲しいって言われたけど……男としてはね、その約束、どうしても果たしたいんだよ。世界一にはなったかもしれないけど、あれは、世界で戦えるチームだったからだ。俺一人の力で勝ち取ったトロフィーじゃない。別に、日本一だって、俺一人の力で勝ち取れるもんじゃないけどさ。まして、これほど歳を取ってしまった以上、俺一人の力なんて、所詮ちっぽけなもんだけど。……お母さんだけじゃない。こんな俺に構ってくれたたった何人かの数少ないチームメイト……いや、戦友のために、なんとしても日本一を獲ってやりたいんだ。……つまらない理由だよ。お前みたいに、世界で戦えることを証明したいだとか、そういう、ちゃんと、スポーツマンとしてしっかりと前を向いてギラついてて、夢のあるもんじゃない。単なる意地だよ、俺のは。自分の実力を試したい、とか言えるほど、俺はそんなに野球というスポーツそのものが好きでもないし」
「いや……俺のは――」
自分の夢のほうがよっぽど単なる意地だし、自分だってサッカーそのものが好きかと言われると――と否定し、謝りたかったが――
「俺の分まで戦ってくれなんて言わないけど、向こうに戻っても、また得点王争いに食い込むくらいの活躍はしてくれよ。お前はまだ若いし、なんだって出来る時期なんだから。たくさん挑んで、たくさん……俺にできなかったようなことまでしてほしい」
肩をぽん、と叩いて海はその場を出ようとした。
「親父――」
振り返った海に、新は申し訳なさそうな顔をしながら――目線をあちこちに逸らし、もじもじとしたような様子を見せて、新は少し間を置いた。
「……親父も、スタメンに戻れよ。自分の父親が日本じゃ超有名なんだって、チームメイトに話す話題をまだ過去形にはしたくないんだよ。早くスタメンに戻って、これが自分の父親だって、自慢させてくれよ」
「無茶言うね」
新が必死で搾り出した言葉を、海は苦笑を浮かべながら再び背を向け、一足早く出口へと向かっていった。
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:
「してるんじゃないかなー、って。そういうふわ~っとしたのじゃなくてさ……なんかこう、申し訳なさそうにしたりとかさ、今までなんかきつい言葉ばっかりでごめん、みたいなのとかさ、なかったの?」
華耶が海の言葉に不満そうにまくしたてる。
「そういうのは……別に、俺から強要したってどうしようもないだろ。1月にイギリスに戻ったらまたすぐにアイツ、試合があるんだから。アイツが心の中で何か申し訳なさを持っていたとしても、俺がアイツの心から無理矢理ほじくりだすのもなんかこう……それは、違うだろ」
海はばつが悪そうに髪をかきながら、フライドポテトを口にした。
「言いたい放題言われてきたんだからさー、一言二言くらいなんか言ってやってもバチ当たらないのに。ねえ?ジェネルちゃん」
「そうですよ。海さん、他人にも厳しいですけど、自分に厳しすぎるんですよ。だけど自分にも非があるからーとか、向こうの言ってる事だって間違ってるわけじゃないからー、とか。そんなこと言ってたら、海さんが傷ついてばっかりじゃないですかー」
「……そりゃ、そうなんだけどさ。戻ったらすぐ試合がある、って聞いたら、やっぱり俺からはあんまり言えないよ。自分が同じことされたらやっぱり嫌だし」
海は苦笑しながら、不満げな表情を浮かべる華耶とジェネルをよそに、からあげをつまんでひとつ頬張った。