海の彼方で   作:錫樹トシアキ

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231・巡る季節が世界を変えていこうとも

「それにしても――」

「うん?」

「飲食店なんて、5年もてばいいなんて言われてる世の中、まだここがあるなんてね。俺が今日寄った店、全部なくなってたってのにさ」

海は注文を待っている間、自分が練り歩いていた頃とは随分様変わりした気がする秋葉原の町並みを見つめていた。

 

本当の意味では日本人ではない自分が言うのも皮肉だが、今や東京は日本人よりも外国人のほうが多く歩いているような街になってしまったし、いわゆるアングラ的な店は自分が高校生だった頃の時点でだいぶ少なくなっていた秋葉原。

かつてのアングラ的町並みからは様変わりして、いつしかおしゃれな店だとか、大衆向けの店が多くなっていたし、よく通っていたゲームセンターだって3つ全て閉店していた。ゲームセンターに寄ったついでによく外食で立ち寄っていたカレー屋だとかもおおよそなくなってしまっていて、海は時代の流れを痛感していた。

 

そんな中、あまり期待していなかった、華耶と初めて出会ったときの喫茶店だけはそこにしっかりとあった。

さすがに店主は代替わりもしていたし、店の概観なんかはいくらか変わったように見えたが、それでも30年続いたその店の看板商品であるソフトクリームは確かにそこにあり続けていた。

 

「あまり、考えないようにはしてたんだけどさ。今が幸せだからこそ。これまでもずっと幸せであり続けてきたからこそ――」

「うん?」

華耶は注文を待ち続けている間、ぽつりと呟き始めた。

 

 《この辺に住んでるの?》

 《まぁ、一応、はい》

 《学生さん?》

 《えぇ、まぁ。この春から大学生になったばかり》

 《よかったらこのあとお茶でもどう?》

 《スカイツリーに用事があるんじゃ?》

 《せっかくだから一緒にどうかなって話してるんだよ》

 《せっかくって言われても……》

 

「――あの時さ、海くんが電車に乗ってなかったらあたし、どうなってたんだろうなって。助けてくれた人が海くんじゃなかったら、どうなってたんだろうな、って、たまに考えるんだよ。……あの時、この辺に住んでるのかどうかまであの人は聞いていた。仮に、スカイツリー行くのを断れたところで、ああいうのって、変に後ろを付回してきて家を探りに来ててもおかしくないじゃん。あたしさ、あの時点で割と詰みかけてたと思うんだよね」

「言うほどか?」

「うん。割とだよ。割とお母さんとはよく東京来てたから、土地勘はまあまああったけどさ、住んでるところまでどうにかできるかって言ったら……あとは多分、叔父さんの会社の社宅くらいしか身寄りがなかったと思うし。でも、いくらなんでも社宅にあたしが行ったら、ちょっと不自然じゃん。仮に逃げ込めたとしても、叔父さんたちの家まで巻き込みたくなかったし」

グラスの中の氷をストローでつつき回しながら、華耶は横目で海を見つめた。

 

「ほんとにさ、あたしが海くんに選ばれて、よかったと思うんだよ。海くんはあたしを選んだってつもりでいると思うんだけど、多分、どちらかというと、あたしが海くんに選ばれたんだと思う。世の中にもし神様ってものがいるならね」

「だとしたら、もうちょっと俺にも神様とやらに愛されたかったけどね。神なんて実態のないソレに。十分すぎるくらい俺はたくさん神様のかわりに、華耶にも――華耶だけじゃあないけどさ。いろんな奴らに愛されてきたんだろうけどさ」

 

注文したソフトクリームが運ばれてきて、カップになみなみと盛り付けられたそのクリームを二人とも慌しく食べ始める。流れた月日はそこにあっても、この慌しさだけはあの日のままだ。

 

「でもさ、海くんもがっつくタイプだよね」

二口目には華耶は何かを思い出したのか、フッと笑いながら、溶けないうちに食べきろうとしている海を見つめた。

「食べ物に?」

「ううん。ぶっちゃけさ、あたしはあの時既に片思いっていうか、一目惚れしてたんだよ。それはもう何度も言って来た事だとは思うけどさ」

「まあ、うん」

「あの時、本当はあたしから連絡先交換したかったんだよ。どうにかしてさ。だから、都合がいいと言えば、確かに都合はよかったんだけどさ」

「……」

海は何かを思い出したようで、思わずそのスプーンを止めた。

「……」

海は苦々しい表情を浮かべながら、かき消すようにしてソフトクリームを食べ続けたものの、なかなか頭の中の苦い感情が抜けてはくれなかった。

 

「海くんのほうからまた会ってくれる?って言われたときはさ、ちょっと驚いたよね。あの時海くんが、あたしにどんな感情を抱いてたかは分からない。いや、その後の海くんの話聞いてたら、なんとなーくは分かるよ。分かるけどさ。でも、あの時はまだ、海くんが何抱えているかなんか分からないでいたからさ、あたしはてっきり、海くんも一目惚れみたいな感情を抱いてたのかなって、ちょっと舞い上がってたところはあるんだ」

そう言いながら、華耶はソフトクリームを再び口にしはじめた。海は追加で頼んだコーヒーで苦さを別のアプローチからかき消そうとしたが、なかなかコーヒーでは中和しきれずにいた。

 

「華耶があの時、連絡先交換しないといけないって思ったのと同じように、俺もそう思ったんだよ、あの時。何度も言ってきたけど……それは、華耶がおふくろに少しだけダブって見えたからだけどさ。でも……なんだろうな。あの頃の俺は、たぶん俺は年下や同級生とはあまり付き合えないって思ってたんだよ」

「そういう趣味だったの?」

「……茶化すなよ。前の女が、ハーフの俺と付き合ってるっていうのをステータスにしようとしてたところがあったし、なんだか、俺に俺以上のものを求めすぎていたんだよ」

 

自分に自分以上を求めるな――海がたびたび口にしていた言葉だ。華耶は海がいったいどんな人間とどんな関係を築いていたか、それは、男女関係のみならず仕事においてもどんなものだったかの全てまでは知らない。

それでも、度々こうして出る言葉ということは、海にとってそれなりに気にしているものなのだろう。

 

「アイツさ、俺に何してほしいかも言わないのに、なのに――俺に常に何かを求めているんだ。そしてそれにそぐわないと、勝手に不機嫌になる。それって結局、俺だけじゃなくて、相手そのものに勝手に期待して、相手のことを自分の中で実物以上に評価してるから起きることだろ。年上と付き合ってたならきっと、そういうところ多少は口には出してくれるんじゃないかって勝手に俺は思ってた。……こういうところだよ。俺もそういう意味では、華耶のことを華耶以上に思ってしまってる。だから、お互い様といえば、そうなんだ」

 

それは違う――と否定するには、海の言葉は乗っていた。ここで変に口を挟むと話がねじれそうだから、華耶はじっと海の目を見つめ、肯定する意志を見せた。

 

「でもさ、華耶は俺に、出会った時からずっと華耶のままで居てくれただろ。だから……まあ、そうだね。あの時俺はきっと、一目惚れしたんだよ。仮に華耶が今後俺のことを振り回すとしても、それは前の女よりもきっと、理知的な振り回し方だろうって思ったからね、話しぶりから見て。このタイミングを逃したら、きっと次また俺に寄ってくる女っていうのは、俺を色眼鏡で見てくる奴だろうと勝手に思い込んでたから」

「ま、その点で言ったらあたしも十分色眼鏡だったわけだけどね」

「でも、華耶は俺をハーフだからって特別扱いはしなかっただろ」

「うん。海くんは、海くんだから。海外から来たから海くんなんじゃない。そのくらいはあたしだって分かってる」

「そうだろ。……それだけで、よかったんだよ。あの頃は。毎日を生きるのが精一杯だったからな」

海は苦い表情を浮かべたまま、コーヒーをすすりきった。

言うだけ言ったら少しは頭の中の苦々しさが取れるだろうかと思ったが、次には小恥ずかしさが襲ってきて、海は思わずグラスの中の氷を口に含んでなめはじめた。

 

「ところで映画の公開、いつだったっけ?」

「5月の連休前くらいだったかな。前期混合戦の前に何日か休養日があるだろ。そこを狙ったんだってさ。なるべくシーズンに穴あけるような公開日にしたくないって。だからなんか、映画っては言ってるけど、サイトで購入してダウンロード形式で、みたいな配信もするみたいだよ」

「劇場に行かなくても見られるっていうのもなんだかね。劇場で見てほしいところない?せっかくの映画」

「別に。特殊効果とかするわけでもないし。見たい人が見たいような形で見てくれればそれでいいよ」

 

海は駐車場に停めた車のエンジンをかけ、華耶を助手席に乗せる。この日は華耶の仕事が休みだということで、晴留が『今日は自分たちが菜巳の面倒を見るから久々に二人でデートしてきて』と半ば家を追い出すようにして朝から外を練り歩いていた。

 

いきなりデートしてきてと言われても……と困った二人は、アニメのロケ地にもなった聖蹟桜ヶ丘のあたりに行ってみたり、昼は海がよく通販で冷凍食品を注文していた武蔵小山の洋食屋で昼食をとったり、その周辺を歩いてみた。

プランもろくに立てずに突然街に飛び出しても、都内というものはどこにでも目的地をつけられるからこそ、二人はどこに行くか迷い――それで結局、海の高校時代の軌跡をたどることになった。

かつての町並みを歩けば歩くほど、武蔵小山の商店街もあれからいくらか店舗の入れ替えや区画整理なんかもあったりして、当時から自分の記憶にある姿というものは一人で何度か立ち寄った喫茶店や総菜屋たちしかなかったのだが――。

 

少し遠回りして帰ろうと、レインボーブリッジ方面へと車を走らせ、そこから首都高をやや大回りしていく形で進路をとった車。土曜の夕方とあって少し混んでいるが、渋滞というほどの渋滞でもなく、海の二人乗りの愛車は軽快に首都高を走っていく。

時計は17時を回り、ヘッドライトや街灯が辺りを照らし始める。窓を開けると、先ほどまでの、冬の終わりと春のはじまりを告げるような生ぬるく浮かれきったような風は少し冷たくなり、肌が締まりそうだ。

 

〈――さて、本日のゲストには人気アイドルユニット・FREE'zia所属の堀井貴教さんにお越しいただきました。さて、早速ですけど例の人気Vtunerとの熱愛疑惑に関して――〉

〈いやちょっと早くないすか!?あんまイジんないでくださいよー、結構まだ焦げ臭いんですから〉

〈いやそう言っても今日やっぱ皆それが気になってると思うんで――〉

「人の恋愛なんかほっときゃいいのに。下らない」

海は片手でラジオのチャンネルを変え、ため息をついた。

 

〈――ラジオ川柳の時間がやってまいりました。今回のテーマは『肉』です――〉

〈――たった今入ってきた速報です。川口市役所の市民課に刃物と改造モデルガンを持って立てこもっていた、東京都・動画配信者の乾睦慎容疑者が機動隊に取り押さえられたとの情報が――〉

「……そういえば、さ。お母さんの件、どうなったんだっけ」

話題を変えるべく、華耶はふと、最近音沙汰のない母親のことを聞き出した。海はハンドルを握ったまま、少しばかり唸って――

 

「え?あんまりうまくいってない?」

華耶は心配そうに海の横顔を見つめた。

「いや、そういうわけじゃあないんだけどさ……」

「じゃあ、どういうわけ?」

「……なんというか……プロだよ、アイツは」

「オルガさんのこと?」

「……ああ」

海は口をひん曲げながら、淡々と話し始めた。

 

《……感心しないな》

《ヨッシはいつもそればっかりじゃん。たまには人のやることを素直に評価しなよ》

《感心しないからそう言ってるだけじゃないか。どうにかしてるよ、お前。頭おかしいんじゃないのか?》

海は腕を組みながら、オルガの言い放った言葉にあまり乗り気にはなれなかった。

 

映画のラストシーンは海と母親との再会シーンにしたい――。

 

オルガのその提案に、海は難色を示した。

 

《分かりやすくていいじゃん。最後引退しました、子供が生まれました、だけでさ、話の全部が解決したことにはならないでしょーに。ヨッシのルーツをたどるには、やっぱそこから目を背けちゃいけないってゆーか》

《それはお前らの都合だろうが。お前らの都合で世界中に俺のおふくろをさらけ出すのも違うと思うし、第一、俺とおふくろの話は、プライベートなものだ。それを使って感動のダシにしてはいけない》

《でも、ドキュメンタリーって、時にこうして出会いの場を与えないといけないからさー。うちらがひとつの真実を伝えるためにたくさんの嘘もつかないといけないって皮肉ってみせたのはヨッシのほうじゃん》

《あのなあ。……プライベートな形でおふくろと会う場を提供してくれるなら、なんとも思わない。でも、俺とおふくろのそういうプライベートを――俺はともかく、おふくろのプライベートまでさらけ出すのは、やめてほしいんだよ。お前らの準備したことは、俺が望んだことか?おふくろが望んだことか?そこに同意がなければ、ただのヤラセじゃないか》

海はオルガをじっと睨み、オルガはその海の表情をまたじっと見つめていた。

 

《……最後までお前らみたいな人種に踊らされてろって言うなら、それでいいよ。それがお前らのやり方だって言うなら、どうせこれで最後だし、いいよ。踊らされてやるよ。これまでもそうだったしな。……でも、逆に、冷めるんじゃないか。そういう再会みたいなのをオチにするっていうのは》

《でも、私はどーしてもヨッシと母親とを会わせてあげたいんだわ》

《俺が望んだことじゃなくてもか》

《私の仕事の関係上……やっぱり、ヨッシと母親の関係っていうのは、映像に残さないといけない。佳井海という男が何をこれまで思い、何と戦ってきたのか――そして、これからの人生をどう生きるのかを描く以上、そこは譲れない》

《じゃあ、俺は会わないよ》

《分からない奴だなー》

 

オルガはあくまでも仕事の一環として海と母親と再会する手立てを作ってやったことをもう少しありがたく思ってほしいと思ったが、この男はこうなると長い。

どうせ、撮らないから会ってほしいという言い方をしても会いたがらないだろうから、仕事という形ならば――と、少し汚れ役を買って出たオルガ。多少は海から厳しい言葉をかけられるつもりではあったものの、なかなか話が進んでくれないことに内心苛立ちを隠せずにいた。

 

《俺にはお前のそのプロ根性が分からないよ。人の感情を使って客から金を取ろうってのか?》

《もう十分取ってるよ。ヨッシの感情を吸い上げられるだけ、吸い上げた。これ以上吸い上げたって、対して変わらないでしょ。黙って最後のシーンもヨッシでいてやってよ。本当にこれが最後だから》

《それが俺だけの問題なら別にいいんだよ。そこにおふくろを巻き込まないでほしいって言ってるんだ。俺のドキュメンタリーに、一般人であるおふくろを巻き込んで名前や顔までさらけ出すのは……それはやっぱり、違うだろ。お前たち映像を作る側の倫理観ではそれが当たり前なのかもしれないけど、俺の倫理観では、その提案は受け入れられない》

《……じゃあ、母親側のほうは全く映さないか、映像だけ使って音声は使わないかなりして、何かしらこっちで工夫する。もちろん、そのことについてもウルスラにもちゃんと確認を取ったかどうかの証拠をヨッシに見せる。……それでいい?》

 

オルガは深いため息をついて、海を見つめた。ため息をつきたいのはこっちのほうだ――と海は思いながら、オルガを睨んだ。

 

《証拠だけじゃない。誓約書書いてくれるか。契約書でも誓約書でもなんでもいい。誓ってくれ。後付でもいいから、おふくろにはちゃんと口約束だけじゃなくて、正式に許可を取った上での公開だ、って。お前らの都合だけじゃなくて、おふくろ本人が望んだ証拠があるなら、俺だってもう文句は言わない。……でも、だからって強要はしないでほしい》

《でもさー、ウルスラはヨッシに会えるなら会いたいって言ってたよ》

《それは、お前が都合よくおふくろの言葉を解釈して、口約束で引き出した言葉だろ。映像に出すことになるかもしれないとは話したのかよ》

《うん。今この件で難色示してるのはヨッシだけ》

 

本当かよ――と海はオルガのけろっとした表情に腹が立ったが、ここで自分だけが腹を立てても醜いだけだから、ハァと深いため息を長くついた後、オルガを睨みつけ――

 

《……じゃあ、なおさらだ。できれば、おふくろの映し方は本当に気を遣って欲しい。おふくろはこうして矢面に出て、世間から――世界中から叩かれようとしてる。でも、何度も言ったように、別に俺はおふくろを恨んでるわけでもなければ、別におふくろにこれまでの罪を懺悔させたくて映画を作ってもらうわけじゃあない。それもこれも何もかも、俺の父親が蒔いた種なんだ。おふくろが悪者だみたいな編集だけには、絶対しないでほしい》

《……わかったよ。そこだけは履き違えないつもりでいるから》

《大体お前――俺とおふくろの本当の関係までおふくろに話したんじゃないだろうな》

《いずれ分かっちゃうことだからね。話した》

《話したって、お前――》

海の言葉を遮るようにして、オルガは続けた。

 

《聞いたところで失望なんかしてないし、隠してたことだって失望なんかしないし、自分はこの事実を受け入れる――って、何もかも話した》

《……で、おふくろは?》

《よかった、って泣いてた。許してもらえるなんて思ってなかったから、って。私別にそーゆーの気にしないから、って言ったけどさ。自分だけがこれまでの人生を気にしてるだけだったんだね、って、ずっと泣いてた》

《……変にこじれてないならよかったよ。お前が余計なこと言っておふくろがおかしくなったら、お前のことを殴るだけじゃすまないところだったよ》

《殴れないよ。ヨッシは人に手を上げられる性格じゃーない》

《それは、お前がこの数年俺を見てきて勝手に抱いてる幻想だよ》

《でも実際殴らないでしょ。殴って気がすんで、その後自分に何が起きるかまで考えてるヨッシには、短絡的な感情で人を殴れはしない》

《ヤな奴》

海はオルガに心底嫌そうな顔を向けながら、危うく立てかけた中指をしまった。

 

「……じゃあラストシーン、まだ撮れてないんだ」

「そこ以外はもう大体終わってるらしいけどね。あとはラストシーンとちょっとの編集だけで本当にすぐにでも公開できる状態らしい。……俺の意思とは別にラストシーンを向こうが勝手に決めるのもどうかと思うけどね」

海は嫌そうな顔をしながらハンドルをしっかり握った。

 

「で、お母さんはいつ来日する予定なの?」

「来週」

「どこでどう会うかとかは」

「それも向こうが勝手に決めるから連絡待ってろだってさ。どうせ暇人だろ、ってさ……」

「まあ、暇っちゃ、暇だからね」

「すぐ会える系OB選手みたいな感じで見られるの、癪だね」

海は嫌そうな顔をしながら、ギアを下げながら流れの悪くなった車線を変更して前の車を追い抜いていった。

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