アズサに青春を教えたい   作:眠り狐のK

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久しぶりのアズサ本更新です!



風邪を引いたアズサをヒフミが看病してあげるだけの話

「風邪ですね」

「そう……」

「エデン条約のときに色々動き回っていたようなので、その疲れが今になって出てきたのかもしれませんね。今日は一日安静にしていてください」

「……うん、わかった」

 

 セリナからの言葉に少ししゅんとした雰囲気を見せるアズサ。アズサは現在、寮の自室で寝込んでいる。セリナの手に持つ体温計に表示される数字は38.2度、完全な風邪である。

 

 

コンッ、コンッ―――

 

 

 ふと、部屋の扉をノックする音が聞こえてきた。

 

「? 誰でしょう?」

 

 アズサの看病をしていたセリナは首を傾げながらも部屋の扉を開ける。

 扉を開けると、そこには心配そうな表情のヒフミが立っていた。

 

「あの、アズサちゃんが倒れたと聞いて……」

「安心してください、ヒフミさん。アズサさんはただの風邪なので、安静にしていれば良くなります」

「そうなんですか? よかったです……」

 

 セリナからアズサの状態を聞いたヒフミは安心したようにほっと胸を撫で下ろす。その様子を見たセリナは優しく微笑みかけ、ヒフミを部屋の中に招き入れた。招かれたヒフミは「お邪魔します」と一言断って部屋の中に入り、アズサの元へと向かう。

 

「ヒフミ……」

 

 部屋に入ってきたヒフミを見たアズサは少し申し訳無さそうな表情を浮かべながらもヒフミの名前を呟く。

 

「アズサちゃん、体調はどうですか?」

「……まだ休息が必要だと思うけど、少し良くなった。…………その、ごめん……ヒフミ。ペロロ様のライブ、一緒に行く予定だったのに……」

「いえ、アズサちゃんの身体が一番です。今日はしっかりと休んでください」

「うん、そうする。今日はヒフミだけで楽しんできて」

 

 その言葉を聞いたヒフミは目を閉じる。そのまま、部屋に静寂が走る。その様子を見ているアズサは頭の上にハテナマークを浮かべながらヒフミを眺めていると、ヒフミはゆっくりと目を開いて口を動かした。

 

「……ペロロ様のライブは、キャンセルしてきました」

「!? ど、どうして?」

 

 アズサの表情に困惑の色が浮かぶ。

 それもそのはず、ヒフミは何よりもペロロ様を優先するほどに、モモフレファンであり、ペロロ様ファン。そのペロロ様への愛は、テストとペロロ様を天秤にかけてペロロ様を選ぼうとしてしまうほど。

 そんなヒフミが、ペロロ様のライブを諦めると言い出したのだ、驚くのも無理はない。

 

「たしかに、ペロロ様のライブは楽しみにしていましたし、私だけでライブに行くことも考えました。でも――」

 

 ヒフミの脳裏に浮かぶのはアズサの楽しそうにしている表情、今日という日を楽しみにしていたその姿。最初の頃は殆ど出ることのなかったその表情、それがモモフレンズを通じて少しずつ、出てくるようになった。

 そして、ヒフミ自身も。ペロロ様が好きなことは今でも変わらない。ペロロ様のためならどんなに遠いところだって、ブラックマーケットにだって行く、そんな精神は変わらない。

 でも、いつしかその精神はほんの少しだけ変わっていた。アズサがモモフレンズと出会ってから、アズサという大切な友達が出来てから。

 アズサと共にペロロ様を追いかけ、色んなところに遊びに行って、色んなものを見に行っているうちにこう思うようになった。

 

「アズサちゃんと一緒に行く方が、もっと楽しいですから」

 

大好きは譲れない。

ペロロ様も。

大切な補習授業部の友達も。

ペロロ様も大事だけど、大切な友達を放っておきたくない。

 

「だから、私もアズサちゃんの看病をしてあげます。アズサちゃんが元気になったら、一緒に行きましょう?」

「ヒフミ……」 

 

 その時、部屋の中に携帯の着信音が鳴り響いた。

 

「はい、セリナです。……え? 新しい患者さんですか? 数が多くて人手が足りていないんですね、わかりました。すぐに向かいます」

 

 セリナは電話を切り、少し申し訳無さそうにヒフミを見る。

 

「えっと、申し訳ないんですけど、アズサさんの看病お願いしてもいいですか?」

「はい、任せてください! こちらは大丈夫なので、救護騎士団のお仕事頑張ってきてください、セリナさん」

「ありがとうございます、ヒフミさん」

 

 セリナは看病に必要な道具だけ残し、ぺこりとお辞儀をして部屋を後にした。

 

「あはは……私達だけになっちゃいましたね」

「問題ない。ヒフミの看病なら、信頼できる」

「アズサちゃん……私、頑張りますね」

 

 そうは言っても、今できることは大体セリナがやっている。

 今のヒフミに出来ることといえばアズサの話し相手になることだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この前先生と遊園地に行ったんですけど、その時―――」

「そうなのか、それはすごく楽しそうだ」

「アズサちゃんも今度一緒に遊園地に行きましょう!」

「うん、行ってみたい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえばもうすぐ◯◯水族館とモモフレンズのコラボがあるみたいです!」

「いいな、スカルマンのグッズはあるのか?」

「安心してください、当然あります!!」

「一緒に行こう、ヒフミ」

「はい、行きましょう。その為に今日はしっかり休んで元気にならないとですね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――そのとき、ハナコちゃんがコハルちゃんに―――」

「それは―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ふと、時計を見ると短い針は12時を通り過ぎ、13時が近くなっていた。

 

「気がついたらもうお昼ですね。アズサちゃん、ご飯は食べられますか?」

「うん、食欲はある」

 

 ヒフミの問いかけにアズサはゆっくりと頷く。

 

「じゃあご飯作ってくるので、少し待っててくださいね」

「ヒフミのご飯、食べたい」

「あはは……簡単なお粥ですけど……」

 

 一緒にご飯を食べに行くことは良くあっても、ヒフミの作るご飯を食べたことのないアズサは目を輝かせる。

 そんなアズサを見たヒフミは苦笑いを浮かべながらもキッチンへと移動する。

 

 しばらくすると、ヒフミがお粥の入ったお椀を持ってキッチンから戻ってきた。

 

「熱いので気をつけないとですね」

 

 アズサの隣に座ると、ヒフミはお粥をスプーンで掬い、ふーっ、ふーっと息を吹きかけて少し冷ましてあげてから左手をお粥が溢れないようにスプーンの下に添えてアズサの口元へと運ぶ。アズサもそれを受け入れるように小さな口を開け、お粥を口にする。

 

「うん、美味しい」

「よかったです♪」

 

 アズサの率直な感想にヒフミもほっとして笑顔を浮かべる。

 

「たくさんあるので、いっぱい食べてくださいね」

 

 アズサはそれに頷くと、再び目を閉じて口を開ける。次の一口を待っているのだろう。

 ヒフミはもう一口、スプーンで掬って同じように冷ましてからアズサの口の中にお粥を入れていく。

 一口、また一口と食べ、いつの間にかお粥を完食してしまっていた。

 

「ごちそうさま、すごい美味しかった」

「お粗末様でした、それなら作ったかいがありました」

 

 満足そうなアズサの表情にヒフミも笑顔をこぼす。

 

「少し、汗をかいてきたな」

「冷えたらいけませんから、拭きましょう。タオルを持ってきますね」

 

 ヒフミはタオルを取りに部屋から出ていき、少しするとタオルと着替えを持ったヒフミが戻ってきた。

 

「少し、脱がせますね」

 

 ヒフミは優しくアズサの服に手をかけ、汗でほんのりと湿った服を脱がし、その白い肌を露出させる。

 脱がせた服は綺麗に畳んで机の上に置き、タオルを手にとってアズサの元へ。

 ヒフミはタオルを広げ、アズサの身体を優しく拭いていく。特に、脇下や羽の付け根辺り等の汗をかきやすい部分は重点的に。きれいに洗濯されたふわふわのタオルが、ぽかぽかなお日様の香りがアズサの身体を包み込む。

 

「ん、ふふ……ヒフミ、くすぐったい」

「ちょっとだけ我慢です、アズサちゃん」

 

 脇下に触れると、アズサがくすぐったそうに身動ぎをする。極力くすぐったくしないようにと、ヒフミはその優しい手つきで汗を拭き取っていく。

 

「もう、大丈夫だと思う」

「わかりました、新しい服を持ってきたので着替えましょう」

 

 ある程度汗を拭き終わると、持ってきていた新しい服を優しくアズサに着せていく。

 新しい服を着せ終われば、再びアズサをベッドに寝かせ、冷たく濡らしたタオルを額部分に乗せてあげる。最後に、枕元にスカルマンのぬいぐるみと、ペロロ様のぬいぐるみをぽすんと添える。

 

「ペロロ様もスカルマンもかわいい……!」

「ふふ、アズサちゃんが早く良くなれるようにお守りです!」

 

 添えられたぬいぐるみを幸せそうにぎゅっと抱きしめるアズサをヒフミは笑顔で見つめていた。

 

 その後も、少しお昼寝し、起きては時間を忘れて夜までお話を続けた。晩ごはんもヒフミが手作りでアズサに振る舞い、アズサは大層喜んでいた。

 

「あ……気がついたらこんな時間ですね……」

「本当だ……」

 

 ふと時計を見ると、その時計の短い針は10の位置を指していた。

 

「そろそろ私も帰らなきゃですね」

「あぁ、そうだな……」

 

 風邪で身体が弱っているからだろうか、はたまたこの楽しい時間をまだ続けていたいからか、アズサはヒフミが帰ってしまうことに僅かに寂しさを覚えていた。アズサのそんな表情を見たヒフミは少し考える。

 

「……今日はお泊りにしましょう!」

「ヒフミ……?」

 

 急なヒフミの言葉にアズサは首を傾げる。もしや、考えていたことが読まれてしまったのか、そんなことを思う反面、微かに気分が高揚する部分も感じていた。

 

「あはは……もう少しアズサちゃんとお話したくなったので……。えっと、ご迷惑でしたか?」

「ううん、そんなことない……! 私もヒフミともっとお話したい!」

「えへへ、決まりですね!」

 

 そうして、アズサの部屋にお泊りすることが決定した。そして、アズサの風邪のことも気にしながら寝るまでお話は続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「――それでですね、そのとき先生が……ってあれ?」

「すぅ……すぅ……」

 

 楽しい時間は続き、ヒフミが自らの思い出を話していた時、ふと寝息が聞こえてきた。寝息の方を見ると、アズサは僅かに安心したような表情で眠っていた。それを見たヒフミは安堵する。

 アリウスのことを知ってからと言うもの、アズサが補習授業部に来るまで、もしかしたらエデン条約の件が解決するまで安心して眠れる日がほとんどなかったのではないか、そんな心配が僅かにでもヒフミの中にあった。そんなアズサが、今こうして自分の前で安心して眠ってくれている。

 

「おやすみなさい、アズサちゃん」

 

 心の中でここまで自分達の絆を繋げてくれたモモフレンズへの、ペロロ様への感謝も伝えながら、アズサの寝顔を眺めてヒフミは優しく微笑みかけた。

 

 

 

 

 

――次の日――

 

「うーん……」

「……ヒフミ」

「んぅ……な、なんでしょうアズサちゃん……って!? あぁぁアズサちゃん!? な、なにを!?」

 

 アズサの目が覚めると、その隣には手を握りながらも眠るヒフミの姿が。その顔は赤くなっており、少し魘されているようにも見える。

 もしやと思い、アズサはヒフミを起こしてはぴとりと、自らの額をヒフミの額に引っ付けた。

 

「ハナコから、体温を測るときはこういう方法もあると聞いた。でも……よくわからない……」

 

 ハナコから教えて貰ったやり方。でも、アズサにはこのやり方で熱を測るのは難しかったようだ。

 

「ふ、普通に体温計を使ったほうがいいと思います……」

「あぁ、そうしよう」

 

 こくりと、アズサはヒフミの言葉に頷きベッドから降りる。

 ヒフミの丁寧な看病のお陰でアズサの身体はすっかりと良くなったようだ。アズサは救急箱を取り出しては中から体温計を取り出してヒフミの体温を測る。

 

「37.7°……風邪だな。ごめん……私のせいで……」

「い、いえ、私がやりたくてやったことですから」

 

 そんなことを言ってくれるヒフミにアズサは少し考えて何かを決めたように一人で頷き、ヒフミを自分のベッドに寝かせる。

 

 

 

 

 

「安心して、ヒフミ。今度は私がヒフミの看病をする」

 

 その日、アズサは一生懸命ヒフミの看病をした。




今回は特にヒフアズでゆりゆりしてた気がします。
実はこの話はとあるフォロワーさんと話してて書こうってなった回だったりします。
ノリと勢いで書いたのでもしかしたら解釈違いがあったらすいません。
でも一つだけ、書いてる間ずっとヒフアズっていいなぁって考えながら書いてました。


みんなもヒフアズを推してけ〜
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