アルカディア、ファビアヌス大陸、ウェストレイル王国。
アメリカの西部開拓時代を彷彿とさせるこの国で、一人の男が料理を作っていた。
フライドチキンにソースをかけ、皿にはウィンナーが載っている。
(美味そうだな。よし、ボクのものにしちゃおう!)
そんな彼の隙を突き、一人のフェアリー、ミターが食べ物を盗もうとしていた。
ミターは巧みに投げ縄を操ると、見事にウィンナーに引っかかった。
投げ縄がかかったウィンナーは食器ごと引っ張られ、飛び散った食器は割れ、
寝ていたガンナー、ホク・レーの鼻を通り抜ける。
(美味そう……)
ホク・レーはウィンナーのにおいを感じ、食べようとするが、
ウィンナーは素早くミターのところに持っていかれた。
「……ん?」
思わず起きたホク・レーは、何が起こったのか様子を見る。
しかし、ただの思い違いかと思い、再びぐっすりと眠りについた。
「おい、このぐうたらガンナー!」
当然、主人はそれを見過ごせず、トライアングルを鳴らしてホク・レーを起こす。
ホク・レーはすぐに食器とフォークとナイフを持って主人のところにやってくる。
「お前は飯の時にしか起きないみたいだな」
「いやいや、別に?」
ホク・レーは首を横に振るが、あながち間違いではない。
実際、食べ物を盗み出したミターを無視してしまったからだ。
そんなホク・レーに、主人は次々に、皿に料理を載せていく。
「この美味そうな鶏の足が欲しいか? マッシュポテトと一緒に?
そしてソースも、たくさんか?」
フライドチキン、マッシュポテト、ソース……。
それらは全てホク・レーの食欲を刺激し、ホク・レーは思わず食べようとしたが、
主人はすぐに料理が載った皿をホク・レーから取り上げた。
「だが、これはダメだ! どうしてか分かるか?」
主人がお冠でそう言うと、再び投げ縄でウィンナーが盗まれてしまった。
「あれのせいだ!」
主人が指差した先には、食べ物を盗んで住処に持っていくミターの姿。
彼はミターに悩んでいるし、ホク・レーは泥棒を捕まえもしなかったので、
ホク・レーに対し、非常にうんざりしていたのだ。
「あいつを捕まえて追い出さなければ、お前に飯はやらん!」
そう言って主人は拳銃を何発も撃ち、ホク・レーを家から追い出した。
「くっそぉ~、あの泥棒妖精め~。絶対に捕まえてやる!」
ホク・レーは早速、ミターを捕まえようとする。
幸せそうにウィンナーを食べているミターに、
ホク・レーは近くのペンキで指を塗ってウィンナーのふりをし、
ミターを誘って捕まえようとする。
「あっ、ウィンナーだ! 美味しそう!」
ミターは投げ縄を取り出すと、素早くホク・レーの指に絡みつける。
そして、ミターは思い切りホク・レーごと指を引っ張り、住処に入れた。
「あ、あれ? ウィンナーじゃなかった?」
「違う、俺だ! 待てぇぇぇっ!」
ホク・レーはミターを追いかけて捕まえるが、
ミターは捕まる寸前に鍬を倒してトライアングルを鳴らす。
食事の合図だと思ったホク・レーはミターを放り出し主人のもとに向かうが、
当然、今は食事の時間ではなく、主人はホク・レーの食器を取り上げた。
「妖精を捕まえるまで飯はやらんと言ったはずだ!」
「え、そ、そうだったのか?」
「お仕置きだ!」
「うわぁぁぁぁぁっ!」
主人の拳銃から、ホク・レーは大急ぎで逃げ出した。
ホク・レーは体勢を整え直して投げ縄を構え、ミターを捕まえようとすると、
ミターはホク・レーの投げ縄をかわし、ローストチキンに引っ掛ける。
「かかったか!?」
ホク・レーは喜んで投げ縄を引っ張ったが、現れたのは主人だった。
主人はローストチキンを取り上げ、再び拳銃でホク・レーを追い払った。
(チーズを取ったら引き金が引かれて、ミターはノックアウト、捕まるぞ~)
その後、ホク・レーはチーズと銃の罠を置いてミターを捕まえようとする。
ミターがチーズを取ったら、銃を撃ってミターを攻撃する仕組みだ。
(おや、美味そうだね。でも、なんか罠がありそうだ)
家に戻ってきたミターは食べ物を盗もうとするが、罠を警戒する。
そんな時、寝ている主人の手の横にパンがあるのを見つけ、
空を飛んで主人の手をパンで挟み、野菜で飾り付けをした後、
奇術の呪文を唱えてスプーンを作り出し、それでトライアングルを鳴らした。
「えっ、食事だって!?」
「ぎゃぁぁぁぁぁっ!」
大急ぎでホク・レーは用意されたパンに思い切り噛みつくが、
当然、主人の手に噛みついてしまい、怒った主人は拳銃を乱射した。
「それじゃあ、これでも持って帰っ……」
ミターがフランスパンを持ち帰ろうとすると、ホク・レーの姿を発見する。
急いでミターは牛の尻尾にフランスパンを挟んで逃げ出し、
ホク・レーはフランスパンに挟んである尻尾に気づかずパンを食べ、
怒った牛はホク・レーを突き飛ばしてしまった。
「やれやれ、ホク・レーは本当にドジだね。よし、ボクが助けてあげよう!」
ヘマをやらかすホク・レーに、流石のミターも同情したのか、
どこかから紙と筆記用具を取り出し、呪文で何かを書き記した。
「おい、泥棒! 今度こそ捕まれ!」
「まあまあ、ちょっと待ってよ。これを見て」
自分を捕まえようとやってきたホク・レーに対し、ミターは紙を渡した。
それは、ホク・レーからミターへの誓約書だった。
「何々? 協力してくれたミターに食事を半分やる、だって?」
「ね? 悪くない条件でしょ?」
食事をくれるのと引き換えに、ミターはホク・レーにわざと捕まろうとしたのだ。
ホク・レーは笑顔でミターの誓約を了承し、そしてミターも捕まった。
ジャガイモを調理していた主人の前で、ホク・レーとミターは一芝居をする。
それは、ホク・レーが二丁拳銃を乱射し、それをかわしていくものだった。
芝居を終えたミターが立ち去ると、主人はホク・レーのところにやってくる。
「よくやった、ホク・レー! ほら、これが食事だ」
「わあ、本当に食えるのか! 美味そうだなぁ!」
主人がホク・レーに食事を渡すと、ホク・レーは喜んで食べようとする。
そこに、誓約書を持ったミターがやってきて、ホク・レーに誓約書を見せる。
「ほら、約束通り、ボクに食事を半分……」
「そんな約束、した覚えはあるか!」
ホク・レーは拳銃で誓約書を撃ってボロボロにしてしまった。
「そ、そんな……。あいつと約束したボクが、バカだったの……?」
「ああ、そうだよ。この食事はみんな、俺のものだ!」
落胆するミターに、ホク・レーは大きく威張ってそう言った。
彼は、最初からミターと約束を守るつもりはなかったのだ。
「このっ……許さない! 魔法の矢よ、我が敵を打ち倒せ! マジックミサイル!」
ミターは呪文を唱えて、たくさんの魔法の矢を呼び出し、ホク・レーに向けて一斉射撃する。
「ぐぎゃぁぁっ! よくもやったな! 食らえ、フラッシュショット!!」
魔法攻撃を食らい、逆上したホク・レーは、二丁拳銃を乱射してミターを撃ち落とそうとする。
ミターは空を飛んで逃げ出し、ドアを開けて攻撃が主人に当たるように仕向ける。
そしてミターの思惑通り、二丁拳銃は主人の尻に命中し……。
「ボクを裏切った罰だよ、もぐもぐ」
二丁拳銃を乱射する主人と、主人から逃げ出すホク・レーが水平線の向こう側に消えていく。
ミターは、そんな彼らの背中を見ながら、皿の料理を食べるのだった。