創作短編集   作:アヤ・ノア

3 / 4
時間が巻き戻りやすい黄の地球、ゼフィロス。
そこで妖怪退治を営む(?)少年達のバレンタインでのお話。

バレンタインの一次創作小説です。
他者様のキャラをお借りしました。


しよくらあと

今日(こんにち)は、しよくらあとの日ですよ」

「あ、ありがとう……お市さん」

 

 そう言って、軽装の鎧を着た女性が、山のように積もったチョコレートを紫の髪の少年に渡す。

 たくさんのチョコレートを春樹に渡したのは、時の魔法使いが召喚した英霊、お市の方。

 山盛りのチョコレートを見て春樹は圧倒されるが、

 十中八九マスターのせいだろうと半ば諦めた。

 しかし、実際にお市の方を生で見る事ができた春樹は、多少ながら彼女に惹かれていた。

 

「……もしかして春樹さん、(わたくし)が好きですか?」

「い、いや、そんな事はないよ! なんか事情がありそうかなぁ、って思って」

「そうですか……なら、良かったです」

 

 お市の方は浅井長政と柴田勝家の正室なので、当然春樹には友人としてチョコレートを渡した。

 しかし流石に、友人に渡すにしてはかなり量が多いので、春樹は思い切ってお市の方に聞いた。

 

「でも、こんなに量が多いのはどうして?」

「あなた一人に渡すわけではありません。友達のみんなで分けて食べてくださいね」

「友達かぁ。僕が知ってる友達は……」

 

 春樹は山盛りのチョコレートを持っていきながら、友達がいる場所に向かった。

 その途中で偶然、ラッピングをしたチョコレートを落としてしまった事に、

 春樹は全く気が付かなかった。

 そして、そのラッピングをしたチョコレートを拾った少女にも、春樹は全く気が付かなかった。

 

「というわけでみんな、集まった?」

「おー、春樹! 今日はバレンタインデーだったな! って!」

「なんでそんなにチョコレートがあるの!?」

 

 春樹は自宅に翔太とまどかを招待する。

 翔太とまどかは、春樹が持ってきたたくさんのチョコレートを見て驚く。

 恋人がいないのにどうしてこんなに持ってきたのか、まどかは春樹に事情を聴いた。

 

「あ、あのね、お市さんが友達のみんなで分けて食べてほしい、って」

「お市さんって、あの、織田信長の妹の?」

「……ああ、そうだよ」

「えっ、本物!? 是非、会ってみたい!」

「いや、今日はバレンタインだし、みんなで一緒にチョコレートを食べようよ」

 

 急に食いつくまどかに、春樹は苦笑する。

 お市の方は「みんなで食べてほしい」と言ったので、たくさんのチョコレートを渡したのだ。

 ここで捨ててしまえば彼女に申し訳ないので、みんなで食べる事にしたのだが、

 三人でもこの量は多すぎる。

 そこで、とまどかが提案をする。

 

「このチョコレートを全部使って、美味しいケーキを作りましょうよ。

 これならお市さんも喜ぶでしょ?」

「そうか! じゃあ、僕がチョコレートケーキを作るからね!」

 

 こうして、春樹はお市の方からもらったチョコレートを全て使い、

 チョコレートケーキを作ってみんなで食べる事にした。

 まず、春樹はキッチンに入り、ビターチョコレート、ミルクチョコレート、

 ホワイトチョコレート、新鮮な卵や小麦粉、砂糖、バターを用意する。

 春樹は友人のワクワクする顔を思い浮かべながらチョコレートを溶かすために鍋を火にかけた。

 

 チョコレートが溶ける間、春樹は卵を泡立てて砂糖とバターを混ぜ合わせる。

 香ばしい香りがキッチン中に広がり、春樹の心はいつになく高鳴る。

 溶けたチョコレートを卵の混ぜ合わせたものに加え、さらに小麦粉を振るい入れる。

 生地が滑らかになると、春樹は型に流し込んだ。

 

(お市さんがくれたチョコレートなんだ。絶対に美味しく作らなくちゃ!)

 

 やがて、オーブンのタイマーが鳴り、春樹はケーキを取り出した。

 ふわふわしてチョコレートの香りが漂うケーキは、見た目もとても美味しそうだった。

 春樹はケーキを冷まし、ホイップクリームとフルーツで飾り付けた。

 

「さて、これでできあ……」

「待って、落とし物!」

 春樹が友達のためにケーキを切ろうとすると、

 突然、ラッピングをしたチョコレートを持った少女がやって来る。

 少女は息を切らしており、心なしか顔が赤くなっている。

「ユズ!?」

「はあはあ……わたしも、食べたい! 春樹……あなたと一緒に、食べたい!」

 この少女の名はユズ。

 彼女はとある出来事がきっかけで、アンドロイドでありながら春樹に恋心を抱くようになった。

 それは人間と機械という叶わない恋だが、ユズはそれに気づいていない。

「ユズ、よくオレ達の場所が分かったな」

「落ちてたの……拾った、だけ」

「ユズ、これ以上話したら倒れちゃうから、まずはみんなで一緒にケーキを食べよう」

 春樹はケーキを切り分けて、皆に配った。

 

「「「「いただきます」」」」

 皆は一口ずつケーキを味わった。

 チョコレートの濃厚な味わいと、しっとりとした食感に、春樹達は大満足。

「ホワイトチョコが入ってるか……!」

「気が付いたんだね、ユズ」

 ユズが言うと、翔太やまどかも頷きながら笑顔を見せた。

 春樹はその言葉を聞いて、とても嬉しくなった。

 

 こうしてチョコレートケーキを食べ終わった後、

 ユズは春樹の手を引いて、誰にもバレない場所に行った。

 彼女の口には、まだ少しだけチョコレートがついていて、

 片手には春樹に見えないようにチョコレートを持っている。

 ラッピングは既に解いていた。

「どうしたの、ユズ……?」

「あなたは気が弱いけど、いざという時には力を出してくれた。

 だから、わたしもあなたのために力を出したいと思った。

 女は男が守るものじゃない。それだと、わたしが弱い事を証明しちゃうから……。

 だから、わたしも戦う。あなたや、あなたの友達と一緒に。

 それと、落とし物だけど、春樹、これを……あなたに、渡す。

 大丈夫、ラッピングはしてあったから」

 そう言ってユズは、少し強引に春樹の口にチョコレートを押し込んだ。

 春樹の口の中で、甘い匂いが広がり、少し顔が赤くなる。

 

「大胆だねぇ、ユズ」

「……女は守られるだけの存在じゃないから。そもそも、男を決めるのは女だから。

 わたし……あなたが好き、だよ」

 さらにユズは春樹の頬にまで熱いものを贈り、彼の手を握る。

 こういう時だと、決まって女の子は積極的だと思う春樹だったが、

 彼女は実際に強いので反論できなかった。

 

「凄い力だな」

「加減はあまりしないから」

 赤くなった手と顔の春樹は、ユズの顔を見ながらそう言うのだった。




ユズはこんな時でも積極的にしてみました。
人間とアンドロイドの恋って、結構ありますよね。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。