そこで妖怪退治を営む(?)少年達のバレンタインでのお話。
バレンタインの一次創作小説です。
他者様のキャラをお借りしました。
「
「あ、ありがとう……お市さん」
そう言って、軽装の鎧を着た女性が、山のように積もったチョコレートを紫の髪の少年に渡す。
たくさんのチョコレートを春樹に渡したのは、時の魔法使いが召喚した英霊、お市の方。
山盛りのチョコレートを見て春樹は圧倒されるが、
十中八九マスターのせいだろうと半ば諦めた。
しかし、実際にお市の方を生で見る事ができた春樹は、多少ながら彼女に惹かれていた。
「……もしかして春樹さん、
「い、いや、そんな事はないよ! なんか事情がありそうかなぁ、って思って」
「そうですか……なら、良かったです」
お市の方は浅井長政と柴田勝家の正室なので、当然春樹には友人としてチョコレートを渡した。
しかし流石に、友人に渡すにしてはかなり量が多いので、春樹は思い切ってお市の方に聞いた。
「でも、こんなに量が多いのはどうして?」
「あなた一人に渡すわけではありません。友達のみんなで分けて食べてくださいね」
「友達かぁ。僕が知ってる友達は……」
春樹は山盛りのチョコレートを持っていきながら、友達がいる場所に向かった。
その途中で偶然、ラッピングをしたチョコレートを落としてしまった事に、
春樹は全く気が付かなかった。
そして、そのラッピングをしたチョコレートを拾った少女にも、春樹は全く気が付かなかった。
「というわけでみんな、集まった?」
「おー、春樹! 今日はバレンタインデーだったな! って!」
「なんでそんなにチョコレートがあるの!?」
春樹は自宅に翔太とまどかを招待する。
翔太とまどかは、春樹が持ってきたたくさんのチョコレートを見て驚く。
恋人がいないのにどうしてこんなに持ってきたのか、まどかは春樹に事情を聴いた。
「あ、あのね、お市さんが友達のみんなで分けて食べてほしい、って」
「お市さんって、あの、織田信長の妹の?」
「……ああ、そうだよ」
「えっ、本物!? 是非、会ってみたい!」
「いや、今日はバレンタインだし、みんなで一緒にチョコレートを食べようよ」
急に食いつくまどかに、春樹は苦笑する。
お市の方は「みんなで食べてほしい」と言ったので、たくさんのチョコレートを渡したのだ。
ここで捨ててしまえば彼女に申し訳ないので、みんなで食べる事にしたのだが、
三人でもこの量は多すぎる。
そこで、とまどかが提案をする。
「このチョコレートを全部使って、美味しいケーキを作りましょうよ。
これならお市さんも喜ぶでしょ?」
「そうか! じゃあ、僕がチョコレートケーキを作るからね!」
こうして、春樹はお市の方からもらったチョコレートを全て使い、
チョコレートケーキを作ってみんなで食べる事にした。
まず、春樹はキッチンに入り、ビターチョコレート、ミルクチョコレート、
ホワイトチョコレート、新鮮な卵や小麦粉、砂糖、バターを用意する。
春樹は友人のワクワクする顔を思い浮かべながらチョコレートを溶かすために鍋を火にかけた。
チョコレートが溶ける間、春樹は卵を泡立てて砂糖とバターを混ぜ合わせる。
香ばしい香りがキッチン中に広がり、春樹の心はいつになく高鳴る。
溶けたチョコレートを卵の混ぜ合わせたものに加え、さらに小麦粉を振るい入れる。
生地が滑らかになると、春樹は型に流し込んだ。
(お市さんがくれたチョコレートなんだ。絶対に美味しく作らなくちゃ!)
やがて、オーブンのタイマーが鳴り、春樹はケーキを取り出した。
ふわふわしてチョコレートの香りが漂うケーキは、見た目もとても美味しそうだった。
春樹はケーキを冷まし、ホイップクリームとフルーツで飾り付けた。
「さて、これでできあ……」
「待って、落とし物!」
春樹が友達のためにケーキを切ろうとすると、
突然、ラッピングをしたチョコレートを持った少女がやって来る。
少女は息を切らしており、心なしか顔が赤くなっている。
「ユズ!?」
「はあはあ……わたしも、食べたい! 春樹……あなたと一緒に、食べたい!」
この少女の名はユズ。
彼女はとある出来事がきっかけで、アンドロイドでありながら春樹に恋心を抱くようになった。
それは人間と機械という叶わない恋だが、ユズはそれに気づいていない。
「ユズ、よくオレ達の場所が分かったな」
「落ちてたの……拾った、だけ」
「ユズ、これ以上話したら倒れちゃうから、まずはみんなで一緒にケーキを食べよう」
春樹はケーキを切り分けて、皆に配った。
「「「「いただきます」」」」
皆は一口ずつケーキを味わった。
チョコレートの濃厚な味わいと、しっとりとした食感に、春樹達は大満足。
「ホワイトチョコが入ってるか……!」
「気が付いたんだね、ユズ」
ユズが言うと、翔太やまどかも頷きながら笑顔を見せた。
春樹はその言葉を聞いて、とても嬉しくなった。
こうしてチョコレートケーキを食べ終わった後、
ユズは春樹の手を引いて、誰にもバレない場所に行った。
彼女の口には、まだ少しだけチョコレートがついていて、
片手には春樹に見えないようにチョコレートを持っている。
ラッピングは既に解いていた。
「どうしたの、ユズ……?」
「あなたは気が弱いけど、いざという時には力を出してくれた。
だから、わたしもあなたのために力を出したいと思った。
女は男が守るものじゃない。それだと、わたしが弱い事を証明しちゃうから……。
だから、わたしも戦う。あなたや、あなたの友達と一緒に。
それと、落とし物だけど、春樹、これを……あなたに、渡す。
大丈夫、ラッピングはしてあったから」
そう言ってユズは、少し強引に春樹の口にチョコレートを押し込んだ。
春樹の口の中で、甘い匂いが広がり、少し顔が赤くなる。
「大胆だねぇ、ユズ」
「……女は守られるだけの存在じゃないから。そもそも、男を決めるのは女だから。
わたし……あなたが好き、だよ」
さらにユズは春樹の頬にまで熱いものを贈り、彼の手を握る。
こういう時だと、決まって女の子は積極的だと思う春樹だったが、
彼女は実際に強いので反論できなかった。
「凄い力だな」
「加減はあまりしないから」
赤くなった手と顔の春樹は、ユズの顔を見ながらそう言うのだった。
ユズはこんな時でも積極的にしてみました。
人間とアンドロイドの恋って、結構ありますよね。