リーリエロスでカントー行ったよ外伝 the horizon de alola!   作:バケットモンスター、縮めてバケモン

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第三層、希望の試練! その目に何を見る!

 

青空がまだ薄い色のうちから草原を駆け抜け、まだ眠っているガブリアスさんの前を通り過ぎて二層に降りました。

吹き抜ける風を肺いっぱいに吸い込んで、頬をぱちんと叩いて、準備します。

大丈夫。もう2回目なのですから。

私は、飛べます。

 

「はいっ!」

 

次!

 

「はいっ! ……っ、はいっ!」

 

今度は螺旋の柱に、バランスを崩すことなく掴まれました。

じっくりと進んでいって、一番上まで登って。

 

「はあっ……はあっ……もう、お昼なんですね……」

 

額に玉の汗をかきながら上を見上げると、もう空の色は完全な青で。

出発した時間から計算しても、やっぱりお昼になってしまっています。

 

「……とりあえず、メカブさんからいただいたペグ……? を打ち付けなければ」

 

今回はメカブさんからアイテムを貰っています。

柱を上り下りするのに時間がかかるのなら、次にてっぺんに着いたときに上からロープを垂らしたら良いのでは無いかと。

そこで貰ったのが、キャンプなどでテントを張る時でも使うペグでした。

私たちが島のテントを張るのに使っているものの余りをベースにしているそうで、見た目こそ似ていますが……ウルトラギアと同じで、見た目が似ているだけの別の性能のもののようです。

 

「よい、しょ……と」

 

これもいただいたハンマーでペグを打ちつけ、ロープを通して下に垂らします。

試運転としてペグを強く引っ張ってみましたがびくともしません。科学の力ってすごいです。

 

……さて、ロープは垂らしました。

あとは簡単な飛び岩だけですね。

 

「はいっ! はいっ! ……きゃ!?」

 

がらり、と足場が崩れて落ちそうになります。

 

「あぶりぃー!!」

 

ボールから勝手に飛び出たアブリーちゃんが、その小さな体で私を支えてくれました。

 

「あぶりぃ……ぼぉーん!!!!」

「アブリー、ちゃん……!?」

 

蒼い閃光を放つアブリーちゃんは一回りその姿を大きくし、アブリボンちゃんに進化してくれました。

 

「ぶりーぼん!!」

「ありがとうございます、アブリボンちゃん! 一緒に飛びましょう! ……はいっ!」

 

……よし!

門まで来れました!

 

「……ごしゃ」

「あっ、ゴーゴートさん! 来れましたよ、ここまで!」

「ぶりーぼー!」

「ごしゃ」

 

ゴーゴートさんは一度だけチラリと私を見て満足げに頷いたあと、軽々と岩を跳んでいって見えなくなりました。

……まだまだですね、私も……。

 

「……では、ここからが本番ですね」

 

お昼の食事を摂りながら、洞窟を降りていきます。

この層と層を繋ぐ洞窟は光こそ無いですが、風も無いですし迷うこともありませんし、助かりますね……。

 

ゲートが見えてきました。ですが、一層、二層とは変わって眩しい光が漏れ出ていません。

第三層は屋外では無いのでしょうか? なにやら、薄赤い光がうっすら見えますが……。

 

「…………どうくつ……」

 

洞窟でした。

溶岩のように真っ赤な液体が岩肌をとぷとぷと流れていて、ゲートを通った瞬間にアローラの気候的なものとはまた違う蒸し暑さが私を襲いました。

ウルトラスーツがあって良かったです。顔は確かに暑いですが、それ以外のスーツに包まれている部分は快適なのであまり気になりませんね。

 

……しかし……。

ここでは、どこを目指せば良いのでしょうか?

一本道なのはありがたいのですが、こうも閉鎖的ですと不安になってきますね。

とりあえず、進んでみないことには……。

 

「ベムッ」

「っ……ポケモンさん、ですか?」

 

突如として現れたポケモンさんに思わず身構え、ボールを取り出してしまいました。

土偶のように薄茶色の体と、縦に長い頭部についた緑色の双眸。

前方……私の方に突き出された両手についている三つの電飾のようなものがぴこぴこと幾何学的に光っていました。

 

「……ベム」

「あなたは……?」

 

図鑑説明によると、名はオーベムさん。

3色の指を点滅させて仲間同士で会話をすることもあるのだとか。

 

「……ベムッ」

「ついてこい、と言っているのですか?」

「べむべむ」

「あっ、待ってください!」

 

踵を返してふよふよと奥の方へ行ってしまうオーベムさん。

慌てて追いかけると広い空洞のようなところへ出てきました。

クロウさんが助けに来てくれたおつきみやまの洞窟の空洞よりかは小さいですが、それでも……母様のお部屋くらいはあるんじゃないかしら?

 

「べむ……」

 

部屋の中央で、オーベムさんは私に背を向けて佇んでいました。

オーベムさんの向いている方向は壁が綺麗に削られていて、まるで大きなディスプレイのようです。

しかし、それ以外に特徴といった特徴は無いような……?

 

「オーベムさん、ここで何を……」

「───ベムッ───」

「………………ぁ………………」

 

視界いっぱいに、赤と緑と黄色が溢れ出しました。

視界がぐわんぐわんとぼやけて、ゆがんで、ふしぎなきぶんです。

そういえば、まえにもこんなかんかくがあったような。

そう、あれはズガドーンさんに……。

 

……。

…………。

………………。

 

「っは……」

「べむ……」

「オーベム、さん?」

 

オーベムさんは私に()()を施したあと、何も語らずにただ岩肌を見つめていました。

その視線につられて、私も岩肌に目を向けて……。

 

「……あれ……?」

『オニスズメさんに襲われ……でも……わたし怖くて……足がすくんじゃって……』

「私……?」

 

岩肌に、ぼんやりと……しかし鮮明に……思い出を振り返る時のように、画面いっぱいにくっきりと、あの頃の私が映っていました。

ヨウさんはそんな私を見て、そして次にその身を挺してほしぐもちゃんを助けてくれました。

 

ばつんっ。

 

映された記憶のカケラは消え、岩肌に戻ります。

そしてすぐに、また新しく、別の記憶が映し出されました。

今度は岩壁いっぱいにではなく、小さな四角に区切られた記憶が、たくさん。

どれもこれも、ヨウさんとの思い出です。

 

「……あれ……この人……」

『オレっちは急いで1億円貯めなきゃなんねんだ!』

『そのために運び屋はもちろんどんな仕事だってやってるぜ!』

()()……さん……?」

 

呟いて、自分の口を抑えました。

私は、あの人のことを知っている。

知らないはずもない。あの日あの時、私を助けてくれて、ジガルデさんと一緒に。それだけじゃない、ムーンさんも……!

 

……ッ───!

 

頭痛に目を伏せると、別のところからまた声が聞こえてきました。

その声はとても懐かしくて、頼もしい……。

 

『オレ、マサラタウンの───』

「サトシ……? な……っ、私、また……!?」

 

知らないはずなのに、知っている。

覚えている。忘れていた。……いいえ、違う……!

 

他の、世界の……並行世界(別のウルトラスペース)の、記憶……!

私に直接関係のある人たちの姿……!

 

「っ、クロウさんは!?」

 

画面の上から下まで見ますが、それらしき姿が……。

どうして……? どうしてクロウさんだけ、ここにいないのですか!?

 

「どうして……っ!」

 

そう言って、画面の端の一番下に……隅に追いやられるように映し出されている、小さな画面に気がつきました。

その記憶は、私が知らない世界の記憶で……サンさんでもムーンさんでも、ヨウさんでもミヅキさんでもない。コウタさんやコウミさんでも無ければ、サトシでもない。

 

『…………』

 

画面の中のその人は……1人の男性でした。

真っ暗闇の中で、膝を抱えてポケモン図鑑サイズのゲーム機で何かをプレイしているようです。

 

『……この子が、リーリエ?』

「これは……私……?」

 

ぼそりと、誰に言うでもなく呟かれた言葉。

彼の持つゲーム機の中には、私がいました。

そこにはヨウさんと一緒に街を歩く私の姿が映っていて、まるで……私とヨウさんの思い出……というか人生そのものが、ゲームの中の存在として創作されたような……。

 

『……かわいいな』

「っ!? まったくクロウさんたら、またそういうことを軽率に言うんですから! …………クロウさん?」

 

私、どうしてクロウさんの名を……?

 

そう、考えた時でしょうか。

 

「……クロウさん……」

 

つうと、私の目から涙が溢れていました。

クロウさんだ。

声も顔も全く違うけど、この人はクロウさんなんだ。

私にはわかりました。

カプ・オリオさんが現れて、なぜかクロウさんであると理解したように。

心の奥底が、クロウさんがそこにいると訴えているのです。

 

『ポケモンの世界に……この世界に行けたら、きっと楽しいんだろうな』

「クロウさん……!!」

 

伸ばした手は記憶をすり抜けて、岩肌を引っ掻くのみ。

そうして、記憶が映らなくなって、たくさんあった画面は再び一つになりました。

 

『ほしぐもちゃん……無茶しないで……』

『あ……ヨウ(クロウ)さん……』

 

黄色い花がたくさん咲くお花畑で、ほしぐもちゃんとはぐれてしまった記憶。

そしてそれはすぐに切り替わり、その記憶を……ゲームとして、私とヨウさんがほしぐもちゃんを探す様子を眺めているクロウさんが呟きました。

 

『おんなじ物を見て……』

 

そうしてまた、ばつんと記憶が切り替わって……。

 

『ついふらふらとブティックに入ってしまい……。最後の一着といわれつい、服を買ってしまいました……。気合を入れないと着れそうにもない服ですが……』

 

また、クロウさんが。

 

『おんなじ事で笑って……』

 

ばつん。

 

『ウルトラホールを 開ければ……! コスモッグ……死んじゃう……!』

 

ばつん。

 

『おんなじ事で焦って……』

 

そしてまた、切り替わって。

私とヨウさんが雨に降られ、洞窟に逃げ込むところが映りました。

 

『アローラの雨……。スカート、少し濡れました……』

 

ほしぐもちゃんを助けるため、笛を求めてナッシー・アイランドに行った時の記憶です。

雨と母様の思い出話をして、常に笑顔のヨウさんの表情に気まずくなりながら、雨が止むのを待って……。

 

『そういえばわたしが困っていると、いつもヨウ(クロウ)さんがいます』

 

私はただ、私の言葉を聞くしかありませんでした。

 

『あ、わたしが困ればヨウ(クロウ)さんといつでも会えたりして……』

『…… …… …… …… …… ……』

 

……まさか。

まさか、クロウさんは。

 

『わたしは…… トレーナーに なって ヨウさんと 旅したいな……』

 

そんな、ことを。

 

『俺が主人公に……ヨウになれたら、きっとそんなこともできるんだろうな』

 

クロウさんの言葉に、思わず膝をついてしまいます。

こんなにも、こんなにも胸が痛い。

 

『でも……俺に主人公が務まるかな』

『リーリエを守りたい。リーリエに好かれたい。リーリエと生きていたい』

『もし、リーリエの隣にいれたら……命を賭けても守るのに』

 

あの時の……!

初めて会ったあの時の、懐かしそうな目も!

ほしぐもちゃんのことや、昔の私を知っている理由も!

ぜんぶ! 全部わかってしまいました!

 

私とヨウさんの出来事を観測していて……! いや、ヨウさんとして! ヨウさんとして見ていたから! 見させられていたから! 私を、知っていたんですね……!

 

「クロウさんは別世界の……別の、ウルトラスペースから来た人なんですね……!」

 

───ウルトラスペース、名称不明───

 

「あなたはずっと……! ずっと……!」

 

───他ウルトラスペースを創作物として観測することのできるウルトラスペース───

 

「私の、隣に……!!」

 

───なお、観測対象とは接触できない───

 

込み上がる言葉と息に咳き込んで、つい手をついてしまいました。

だって……だってクロウさんは!

クロウさんは周りの人のことを知っていて、会話だってしたのに!

それを覚えているのはクロウさんだけで!

ククイ博士も、ハウさんも、兄様も、クロウさんは知っているのに……頼ることもできないで……!

 

ずっと……!

一人ぼっちで、迷い込んだ世界で!

 

『こういうとき さよならと いうのですね』

 

覚えていられなかった!!

あんなに大事な人を!!

あの約束を!!

ごめんなさい!! 思い出せなくてごめんなさい!!

ずっと!!

ずっと隣にいたのに!!

 

「……ベムッ」

 

その鳴き声で、気がつきました。

顔を上げると、そこにはもう記憶は映し出されていなくて。

ただ、私が泣いた跡だけが残っていました。

 

ひゅう、と私の目の前を何かが通り過ぎて、過ぎ去った方向に目をやると、

 

「───ベムッ───!」

「オーベムさん!?」

 

素早く洞窟内を跳ね回る白い何かに、攻撃されていました。

シュンシュンと飛び回るそのポケモンさんには、とても見覚えがあります。

 

「やめてください!」

 

オーベムさんの体勢が崩れたその時を見計らって、震える体を動かして割って入りました。

私の眼前に真っ白で綺麗な脚が、綺麗な姿勢のままピタリと止まりました。

 

「このオーベムさんは……私に教えてくれただけなんです」

「ロチェ……」

「心配してくれたんですよね。私が、泣いていたから」

「ロチェ」

 

脚を振り上げた姿勢のまま、フェローチェさんは話を聞いてくれました。

 

「これは私の罪なんです。ウルトラスペースがあるってわかっていたのに、クロウさんのことを疑いもしませんでした。教えてくださいって、言い出せませんでした。これは、そんな私の償いなんです。あの人を、忘れてしまった償い」

「…………」

「フェローチェさん」

 

メカブさんからいただいたウルトラボールを取り出しました。

たった一つだけの、小さな小さな希望。

私からクロウさんに送ったものと全く同じ形の、小さな……約束の証。

 

「あなたの力が必要です。私に、力を貸してくれませんか」

 

フェローチェさんはじっとウルトラボールを見つめると……。

 

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