リーリエロスでカントー行ったよ外伝 the horizon de alola! 作:バケットモンスター、縮めてバケモン
朝が来ました。
服に着替えた上でウルトラギアを使いスーツを纏って、先日の夜ヨウさんが作り置きしてくれたサンドイッチを手に、誰も起きていない時間から洞窟へ潜ります。
徐々に明るくなっていく空に照らされながら草原を全力で走り二層へ降り、一足跳びに思い切り岩の柱へ飛び移りました。
2回、3回とそれを繰り返し、ロープを伝って螺旋の柱を登り、また岩の足場を跳んで……。
息を切らしながら三層へついた私の目の前に現れたのは、先日と同じオーベムさんでした。
また、ついてこいと言うように背中を向けるオーベムさんについていくと、先日の空洞の横を通り過ぎてさらに奥まで進んでいきました。
そしてその先には、下へ続くゲートが。
「べむべむ」
「ありがとうございます」
「……ガブゥ」
「ごしゃあ」
「……! ガブリアスさん、ゴーゴートさん」
いつのまに私の後ろにいたのでしょうか。
2匹はオーベムさんの両隣に立ち、3匹で私を見据えます。
そしてその体が徐々に光りだし、視界が光でいっぱいになって、目が眩んで。
目のちかちかが治った時、そこに3匹はいませんでした。
代わりに……。
「みゅーっ!」
「じらっちゃ……!」
「せれびぉ?」
「あなたたちは……!」
以前、クロウさんを助けていただいた時の3匹さん……!
真ん中のピンク色の方は見覚えがあります。リリーさんが変化してしまった、ミュウというポケモンさんです。あの時よりは可愛らしいフォルムをしていますが。
「皆さん、あの時は本当にありがとうございました」
「みゅ?」
「じら」
「しぇれ……」
「あの時、皆さんがいなければ……私はこうして、クロウさんを探すこともままならなかったでしょうから」
心からの感謝を込めて、頭を下げます。
くすくすと笑う3匹さんは、私の周りを楽しげに飛び、笑っていました。
そして、3匹さんから淡い光が私に集まって……。
「Zリング……」
一つの塊となって、私の左腕に装着されました。
また、助けてくれるということでしょうか。
「ありがとうございま……あら?」
振り返った頃にはもうそこに3匹さんはおらず、ただそこに、Zリングを創った光の残滓が残るのみでした。
「……ありがとうございます」
どこへともなく、頭を下げます。
……マオさんからZクリスタルを貰ったは良いものの、Zリングを持っていませんでしたね。
クロウさんはリングもクリスタルも無しでZワザを打っていましたから、感覚が麻痺していました。クロウさんのせいですよ。
「……本当に、クロウさんのせいでこんなところまで……」
だから……。
だから。
責任、取ってくださいね?
「……よし」
振り返り、三層のゲートを潜りました。
いつもと同じ、緩やかな坂と段差の洞窟。
けれど、この先は何かが違う。
私の心の奥底が、ただ、ただそこに
「第四層のゲート……」
その先は、洞窟でした。
第三層のものとも、先ほど通ってきた通路のものとも違う、結晶が至る所に露出している、鉱山のような洞窟でした。
ポケットの中にあるクサZが、結晶に反応している気がします。
それに、至る所……結晶から、Zパワーを感じる……。
まさかこの虹色に輝く結晶、全てがZクリスタル……?
……いえ、こんなことを考えている場合ではありません。
先に進みませんと。
「…………」
クロウさん。
いつも無茶ばかりして、私を心配させて。
「…………」
今度はこんなところで、何をしてるんですか?
どうして、連絡してくれないのですか?
「…………」
私はこんなにもあなたを探しているのに。
あなたはどうして、何も言ってくれないのですか?
「…………!」
私は……!
「……来たんだ、リーリエ」
「クロウさん……!」
その、背中が……!
「足音を聞くまでわかんなかったな……。あいにく、
振り返った、クロウさんの向こう。
壁一面に生えるZクリスタル結晶には、アローラの島々が映っていました。
ありとあらゆる視点から、ただ、見守るように。
観測者であるかのように、ただ、見るだけ。
「リーリエ、俺は」
「……どうして何も、言ってくれなかったんです?」
「…………」
私、すっごく悲しかったんですよ。
「あんな事言って、勝手にいなくなっちゃうの、ズルいです」
「……ごめん」
「無茶はしないって、約束したじゃないですか」
「でも……」
クロウさんのことだから、また1人で背負い込もうとしたんじゃないですか。
……たしかに、私は無力でした。できることなんて何ひとつありません。ただヨウさんやクロウさんの後ろに隠れて、怯えていたのも事実です。
でも……でも。
相談くらいはしてくれても、良いではありませんか。
「クロウさん、これを」
「……お守り……?」
「クロウさん、ずっと持っていてくれたんですね」
クロウさんが首から下げているのは、私が作っていたお守りですよね?
まだ未完成で不恰好なものなのに、ずっと持ってくれていたんですよね?
「あれから新しく、作り直したんです」
「……未完成なのに持っていってごめんね」
全然気にしてませんよ。
それよりも見てください。これ、鈴がついていてとても綺麗な音を奏でるんです。
お守りの作り方には鈴は書かれていませんでしたが、これは私なりのアレンジということで。
「貰ってください」
「……それはできない……」
「どうしてですか……?」
悲しそうな顔をしたクロウさんが、こちらに手を伸ばします。
ばちっ!
……ッ……!?
い、今のは……?
「何度もここから出ようと試したけど……ダメだった。俺は出られない」
「そんなっ……どうして!」
コレも、ウルトラホールの影響……皺寄せなのですか?
知らない世界で1人でいたクロウさんを、本当に1人にしているのですか?
「だから、ごめん。どう足掻いても俺はポケモンで、ここから出られないんだ」
「そんな……!」
「諦めてよ……」
そんな。
今にも泣きそうな顔でそんなことを言われて。
諦めるわけ、ないじゃないですか。
きっと、こちらから近づくのは大丈夫なはずです!
今すぐにでも、クロウさんを捕まえて……!
「……ぅ」
捕まえて……。
「……あの」
「? どうしたの、リーリエ」
「クロウさんシャワー浴びてますか?」
「……え?」
「言いにくいですが臭いが酷いです! お風呂入ってきてください!」
「え、あの、リーリエ? えっ、マジ?」
「はい」
「…………ッ!!!!」
目を泳がせるクロウさんはショックを受けた表情で、慌てて岩陰に走って行きました。
まったく。クロウさんは全く。
どうせ『俺、カプになっちゃったから』とか格好つけてお風呂に入っていなかったんでしょう!
「カメックス、『ハイドロポンプ』!」
「ハイドロ……」
「フシギバナ、『ソーラービーム』!」
「ソーラー……」
「はぁ!? 服まだ乾いてねえじゃん! ……ああもう! リザードン、『かえんほうしゃ』!」
「かえん……」
岩陰から熱波が漏れ出ています。
しばらくして、ふらふらとクロウさんが戻ってきました。
すんすん。……まぁ大丈夫でしょう。悪くないです。
「ちょっと服の裾が焦げていませんか?」
「だっ、それは急いでたからで……! ああもう、締まらないな!」
「ふふっ……クロウさんはそれで良いんですよ」
クロウさんに手を差し伸べて、ただ待ちます。
「帰りましょう、クロウさん。私たちの家に」
「……っ……」
その手を見て、怯えるように後ずさるクロウさん。
後ろめたさ。苦しさ。寂しさ。それら全てを混ぜたような表情。
……もう、あなたにそんな顔をさせたくありません。
「……ダメ……だ……」
……どうして……。
「俺、は……ダメなんだ……」
「それはクロウさんがカプ様だからですか? 約束を破って無茶をしたからですか? お風呂に入っていなかったからですか?」
「………………」
「……異世界から来た存在だからですか?」
「なっ……なんで……!」
全部知ってるんですよ。
ぜんぶ、知ってます。
ウルトラギアを解除して、髪を解いて。
「クロウさん」
───あなたが好きです───
「───!?」
「笑う顔も、たまに見せる寂しそうな顔も、何かを懐かしむ顔も。その声も、ちょっと不器用なところも、頭の先から足の先まで、好きなんです」
「……っ、……!?」
「何十回、何百回、何千、何万……。例えこの人生を繰り返すことになっても、私はあなたを好きになる」
「待っ、リーリエ、ちょっ……」
「私は!!」
声を遮って、湧き上がる言葉を全て紡ぎます。
言いたかったこと全部を、
「私は……っ、私があなたを愛する
「…………っ……」
「だから、帰ってきてください。どうか、私と一緒に、生きてください」
……ふう!
言っちゃいました!
「私の一世一代の告白、受けていただけますか?」
「あ……う……」
今度は、逃しませんよ。
「……リーリエ……」
その手が、私の手に触れて……。
バチッ!!!!
「…………!」
「っ、やっぱりダメなんだ……。俺は……もう人間じゃ無いから……ここから離れられないんだ……」
「そんなこと言わないでください! クロウさんは人間です! 絶対、絶対連れ戻して見せるんですから!」
「無理だ! もう帰ってよリーリエ!! 俺はもう、良いんだ!!」
絶対、絶対……!
……。
クロウさんが、ポケモンなのだとしたら。
ここはつまり、カプの祭壇ということになります。
ヨウさんや……他のウルトラスペースの皆さんは、カプのポケモンさんたちと戦って、捕まえてるんですよね……。
……あれ?
「クロウさん」
「…………?」
「ポケモンバトルを、しましょう!」
「……バトル?」
「私が勝ったら、一緒に帰ってもらいますからね!」
「…………でも……」
「あれぇ……? まさかクロウさん、かけだしトレーナーの私にも勝てないなんて言いませんよねぇ……?」
ちょっとズルイですが上目使い。これやるとクロウさん喜ぶんですよね。利用しているみたいで気が引けますが……しのごの言ってられませんから。
「〜〜〜! このっ……やってやるよ! でも俺が勝ったら、帰ってもらうからな!」
「良いですよ。やりましょうか」
お互い、ボールを構えて睨み合い。
一度、クロウさんとバトルしてみたかったんですよね。
「約束、守ってくださいね!」
「勝てたら、ね。……フシギバナ」
「行きますよ、アブリボンちゃん」
「頼んだ!」
「お願いします!」