リーリエロスでカントー行ったよ外伝 the horizon de alola! 作:バケットモンスター、縮めてバケモン
うっそお!? アヤメとの再会!!
カントー地方、25番道路の先にあるみさきのこや。
そこには、ある革命的な研究を成し遂げた博士と呼べる人が住んでいる。
人呼んでポケモンマニア。名をマサキ。
とある地方へ向かうハネムーンの途中、トラブルによりカントーへ戻ってきた俺たちは、たかだか数日しか離れていないにも関わらず酷く懐かしさを感じるこの家へ帰ってきていたのだった。
「『ダイマックス』?」
「せや。クロウくんらが行こうとしてたガラル地方の名物やな。特殊なエネルギーをポケモンに流し込むことで、一時的な巨大化を果たすことができるんや。ポケモンによっては、姿も変わるそうな。使いこなせるトレーナーは数少ないって話やで」
なんだそれ初耳だが?
聞いたことない地名だったからワクワクで行こうと思ってたんだが何それ???
「そのガラル地方で、ダイマックスパワー? エネルギー? が暴走して、空路に影響が出たみたいや」
「ふぅん……」
「クロウさん? 行かないでくださいね? 大人しくしていましょう?」
バレたか。ちょろっと先に向かって事件解決しようと思ってたのに。
リーリエの旅路を邪魔するとは不届き千万。即刻排除されるべきである。
しかし、他でもないリーリエがそう言うのなら仕方ない。
「旅行続きでも疲れてしまいますし、少し休憩していきましょう」
「おー。キャンピングカーはそのままにしてあるから、少しの間くらいこっちで探していきゃええ」
「本当ですか? ありがとうございます!」
ふと俺が使っていたスペースに目をやると、俺の『リーリエロスでカントー行ったよ』がそこに鎮座していた。
正確には、俺のレポートとリーリエの
分厚く、他の資料と比べて異彩を放つそれを手に取り、ぱらぱらとめくる。
リーリエの字、丸くてかわいいな……。
「そういやクロウくん。アヤメちゃん、近くに来てるらしいで」
「……ん?」
アヤメちゃん?
ポケモンでアヤメって言えば、アニメに出てきたカスミの姉の……?
ハナダシティのアヤメ……?
「アヤメちゃんや。覚えとらんか? 知り合いって聞いとるんやけど」
「え、アヤメ? アヤメってなんすか? 全然覚えが……」
「んー? 仕事のパートナーって聞いたんやが……」
「え仕事? マジでわかんないです」
仕事って言えばRR団だよな。
アレかな、突然のヨウリエに絶望して全てに興味関心が無くなったときに一緒に働いたのかな。
てことは同姓同名? えー? わかんない……。
「クロウさん、クロウさん」
「どしたのリーリエ」
「説明、していただけますか?」
振り返った先には笑顔のリーリエ。
「……今日もご機嫌、うる───」
「麗しくないです」
「…………」
「説明、していただけますね?」
「はい……」
なんだ? マジでなんなんだ?
アヤメ……? アヤメって誰ぇ……?
「浮気、ですか?」
「ぜんぜんぜんぜんぜんぜんぜん!!!! 全然そんなこと絶対、無い!!」
「……どうでしょう。クロウさん、女性の知り合い多いですから」
「んなっ……!!」
リーリエが……ぷいっとそっぽを向いてしまった……。
ああ……終わりだ……。
死のう……。
「とける……」
「カプ・オリオは『とける』を覚えとるんか?」
「いいえ」
「だいばくはつ……」
「死のうとしてゐる……。目に生気が無いで」
「浮気者のクロウさんに慈悲はありません!」
「イーブイ、俺に『じわれ』『ぜったいれいど』」
「えほぼ〜」
「ここ!!!! 部屋の中やから!!!!」
天変地異に無惨にも真っ二つになって行くみさきのこやに出来た大穴から這い出た俺は、自分に降りた霜を払いながら考える。
「クロウさん、やりすぎです!」
「オオ、アア……保険降りるんかこれ……?」
「うーん。マジで心当たり無い……アヤメ……?」
と、降りかかる『ベノムショック』を無効化しながら考えていると、半壊しているみさきのこやの扉を叩く音が。
「すみませーん。どなたかいらっしゃいますかー?」
「私が出ます」
「お、渦中の人が来たみたいやな」
「渦中の人、ですか? ということは……」
扉の先に、アヤメとやらが?
リーリエが恐る恐る、斜め75度程の扉を開ける。
そしてその先には……。
「やあクロウくん、その節はどうも。お久しぶりだね」
「あの、あなたは……?」
怪訝そうな表情を浮かべるリーリエの目の前には、1人の女性が立っていた。
麦わら帽子の紐を首に引っ掛け、半袖の白いシャツと動きやすそうな作業服のズボン。
赤茶色の長い髪の毛を一房の三つ編みのおさげにして肩にかけ、小麦色の肌が健康的な印象を思わせる。
「あ、あ……」
隣にカイリキーを従え、こちらに手を振る様子に俺は……。
「……クロウさん?」
「アヤメええええええ!!!!」
「マッスルゥゥゥ!!!!」
カイリキーに、思い切りハグをしていた!!
「え?」
「おお、情熱的」
「感動の再会やな」
「……ええええええええ!?」
◇
「アヤメぇ! お前進化したのか! 久しぶりだなぁ!!」
「まっする」
「あっこら、手が二本空いてるからって、くすぐるのはやめろって! ははは!」
俺とアヤメが木材をそれぞれ脇に持ち、みさきのこやを修復しているその傍で、リーリエ、マサキ、ポケモンブリーダーの女性は真ん中でお茶を飲んでいた。
「……つまり、アヤメというのはあのカイリキーさんのニックネーム……?」
「そうそう! 最初はびっくりしたけどね。ニックネームを付けられたアヤメは自信が出たのか姉御肌になって、一躍みんなのリーダーになったんだ!」
「ほーん、クロウくんがポケセンでアルバイトを……。意外やなぁ」
「仕事が一区切りついたから、ご挨拶にでも、と思ったんだけどね」
「お姉さんは、お仕事は何をされているのですか?」
「運送業と大工をメインにしたポケモンブリーダーだよ。この前、イッシュ地方の大型建築に駆り出した時に、向こうのドテッコツとアヤメを一時的に交換してね。そうしたら進化したというわけさ」
へえ。お前そんなことしてたのか。
一緒に働いてたやつが海外進出とか、なんだか嬉しいな。
「まっする」
「しかし、どうしてここがわかったんや? メッセージもろたときは新手のストーカーかと思ったわ」
「ははっ、そんな彼みたいな真似しないよ」
「彼みたいな?」
「クロウくん、バイトしてる時もずっとうわ言みたいに『みさきのこやに行かなきゃ……』って呟いてたからね。行き先がわかったのは良かったけど、引いたよ」
「ええ……」
「アヤメと働いてた時はまだリーリエと会えてなかったから。今はもう、リーリエに会いたい〜なんてことは5日に一回くらいしか言わないよ」
「5日に一回は言うんかい」
「安心してください、ずっとそばにいますからね」
「ママ……」
「私はこれ、何を見せられてるの?」
「慣れてくださいな、いつものことやねん」
俺を抱いてよしよしするリーリエに癒されていると、今し方作業を終えたカイリキーアヤメが声を上げた。
「おうアヤメ、お疲れ」
「すんまへん、ウチのことなのに……」
「いーんですよ、本業ですから。修復からリフォームまでなんでもござれです」
「……! すごいです、一度壊れかけて修復したとは思えないクオリティです。 どこが壊れていたのかわかりませんよ!?」
「アヤメ、ドアの建て付けはちゃんと直したかい?」
「マッスル!」
「本当です! 少し前まで軋んでいたのが嘘のようです!」
「うん、良い仕事だ! よくやったね、アヤメ」
「マッスル!」
四つある腕を掲げ、ポーズを撮るアヤメ。
ピクピクと動く筋肉がかっこいい。
「あ、そうそう。クロウくん、これ知ってる?」
「え、なんすか」
「前に、どこだっけなー、どっかの地方で同じカイリキー使いに出会ったんだ。その時にバトルして、その人に勝って……それで、『今後のバトルに役立ててください』って、なんかくれたんだけどさ。使い方がわかんなくてね、いろんな人に聞いてるんだ」
小さな箱に入れられたそれは、布製で白を基調にし、赤と青のラインの入ったバンドだった。
スポーツ選手がしているようなもので、なかなかおしゃれだ。
「うーん。見たことないですね」
「トレーナーの人ならって思ったんだけど、そっかあ。ま、地道に探していくよ」
「普通のバンドなんじゃないっすか?」
「確かに、メガリングやZリングのような、何かをはめるところも見当たりませんね」
「そうだよねえ。博士サンはわかるかい?」
「ちょっと拝借」
マサキはそのバンドをさまざまな角度から眺めると、俺が愛用しているメテノ包帯と見比べ始めた。
なんだろう。共通点と言えば腕に巻くことくらいだけど。
「うーん、このマークのとこ、何か鉱石を使てますわ。ぽやぽや光っとる」
「本当ですね。でも、こんな光り方をする石、見たことがありません」
「………………」
「うーん、なんなんやろ」
───ばくん───
「……ゥゥ、グゥ」
「……アヤメ? どうした?」
バンドの光が強くなって行く。
何事かと構えるが、アヤメの様子もおかしい。
光が強くなるにつれて、アヤメが何か苦しんで……いや、これは……興奮?
フシギバナがフシギダネの時もそうだった。何かの原因があって、ポケモンが怒り狂って我を忘れるような、そんな剣呑な雰囲気。
「リーリエ、下がって」
「は、はい」
「なんや!? なんなんや!?」
「アヤメ……本当にどうした……?」
「ウゥグォ、ウォォ…………」
───ばくん───
アヤメの身体が震えた。
いつからか、辺りから赤く光る粒子がアヤメにまとわりつき、そのせいかアヤメが赤く光っているように見える。
「クロウさん、あれを!」
「…………?」
「アヤメさんの頭上に、何か……!」
「なんだ……赤黒い……」
───ばくん───
「雲?」
「MOOOOAAAA!!!!」
「「「ええええええええ!?」」」
天井を突き破り、みるみるうちに巨大化して行くアヤメ。
赤い粒子を身に纏う姿は一回りも二回りも大きく。
四つの腕の先は、巨大化の反動なのかそれとも正当な進化なのか、マグマを思わせるエネルギーの本流を宿してオレンジ色に輝いている。
その目に正気は感じず、光が漏れ出していた。
「クロウさん、あの姿もしかして……!」
「あの赤い雲は見たことあるぞ! リリーと融合したけつばんが生み出した、偽物のミュウの上にあった!」
「……! アレや! アレがダイマックスや!」
「なんだって!?」「そんな!?」
「今の姿はダイカキリキー……いや、その中でも特殊なキョダイマックスをした姿、キョダイカイリキーなんや!」
キョダイ……カイリキー!?
確かに、ベースはカイリキーのまま、姿が変わっている……。
リージョンフォームとも、進化とも違う……似ているのをあげるなら、メガシンカみたいな……。
「MOOAAAAAA!!!!」
「うわっ……!」
「やめろアヤメ!! 私の声が聞こえないのか!!」
「力に飲まれてる! 突発的にダイマックスしたポケモンに稀に見られる暴走や!」
アヤメ……キョダイカイリキーは、その巨躯で木々を踏み倒し、雄叫びをあげる。
「MA……?」
まずい。キョダイカイリキーがハナダシティに気づいた。
ダイマックスがある地方ではどうなのかわからないけど、少なくともカントー地方は『巨大なポケモンに侵略された時の対処法』なんて限定的なもの、持っていない。
「このままじゃハナダが潰される!!」
「そんな……どうすれば……!」
「ッ、イーブイ、『サイケこうせん』!」
「えぼぼいぼッ!!!!」
「MA……? MAO……?」
「まさか、効いてない……?」
「ダイマックスしたポケモンは体力が爆発的に増えるんや! よほど優れたポケモンでも無ければ、チンケな攻撃じゃ効かへんねん!」
「だったらどうすれば! あんなデケェの相手に、普通のポケモンじゃ……!」
───ォォォン───
「……? 今何か、空から音がしませんでしたか……?」
───ォォォン───
「ホンマや。地響きか……?」
「いや、これは……」
───ォォォン───!
「……咆哮……?」
「GOOOOOOOッ───!!!!」
「山や! 山降って来た!!!!!!」
「きゃああああ!?」
巨大な大地が降って来た反動で軽く飛んでしまったリーリエをキャッチして地面を転がる。
「リザードン! 博士たちを頼む!」
「グォ……!」
「イーブイ、『そらをとぶ』!」
「えぼいっ!!」
リザードンとイーブイが、他に飛んでしまったマサキやお姉さんを救出している間、降って来た巨大な塊を見上げる。
山頂部には大木が根を張っており、根元には草木が生い茂っている。
それがゆっくりと、起きあがろうとしている。
「クロウさん、あれは山ではないようですよ……!?」
「ウソだろ……あれって本当に……!」
起き上がった山は、天を壊すほどの大きな咆哮をあげる。
「GOOOOOOO!!」
「カビゴンなのかよ……!!」
「クロウさん、木の上を見てください!」
「……!?」
「あそこにも、赤い雲が!」
ってことは、あれもダイマックス……いや、キョダイマックスなのか!?
いや木の上に雲があるんなら木がダイマックスしてんじゃねえか!? カビゴン関係ないんじゃねえのアレ!?
「MAAAAAA!!!!」
「GOOOOOO!!!!」
───ゴッ───!!!!!!!!
巨躯と巨躯の掴み合い。
キョダイカビゴンとキョダイカイリキーが睨み合った。
ハナダシティに向かおうとするキョダイカイリキーを、キョダイカビゴンが身体を張って止めている。
「キョダイカビゴンはたまにしか起き上がらないって資料で読んだんやが……! 資料の個体より木が小さい! アグレッシブな個体なんやな!」
「危ないからリザードンに捕まっててくださいよ!?」
まんま怪獣大決戦(なお人類を守ろうとしているのはカビゴン)だが、キョダイカビゴンが優勢だ。
有り余るその力をフルに発揮して押し返すその姿は、まさに森の守護者。
……みさきのこやはもうほとんど原型がないけど。
「MAAAAAA!!!!」
「GOOッ!!??」
「ああ、カビゴンさんが!」
「余った腕でビンタされた! やべえ倒れるぞ!」
「GOOOO……!」
ハナダを背に倒れるカビゴン。
巨木で木々を薙ぎ倒し大きく地面を抉ったキョダイカビゴンが顔を上げた先には、四つの腕を思い切り振りかぶるキョダイカイリキーの姿が。
「やめ───!」
と、お姉さんが小さく声を上げたのも束の間。
「MAAAAAA!!!!」
「GOOッ……GOGO……!」
「カビゴンさん!! あの技は……!?」
「キョダイシンゲキや……」
「キョダイ……」
「シンゲキ……」
───ばくん───
倒れたキョダイカビゴンの姿が震え、赤い粒子がキョダイカビゴンから溢れ出る。
そこらの一軒家なんてつまめてしまう大きな身体はみるみるうちに小さくなり、やがて森の中へ消えていく。
「GOO……ゴォ……」
森の中から、カビゴンの鳴き声と共に何か光のようなものが飛んできたが、それも霧散していってしまう。
「MAAAAAAAAAA」
「まずい、街に行く気だ……! アヤメ、しっかりしろぉ!」
「クロウさん、どうしましょう……!」
「ッ………………」
どうする。
どうすればアレと戦える?
カビゴンはもうダイマックスが解けてしまった。
カビゴンが起きてくれればまた戦えるかもしれないが、今から森に向かって回復アイテムを使うんじゃ間に合わない……!
「俺にもダイマックスが使えれば……」
「えぼ」
「……そうそう。今お前が纏ってる赤い粒子を使えるポケモンがどこかにいれば……」
…………。
「えぼ」
「お前できんの?」
「えぼぼ」
「クロウさん、これを」
「あの時のバンドじゃん」
「あの赤い光とこのバンドの放つ光、何か関係があるように思えるんです。原理はわかりませんが……」
まあ、メガリング、Zリングに続く腕に装着するアイテムだ。
今までのゲーマーの勘として、何か怪しいとは思っていたけど。
「
「えぼぉッ!!」
「 キ ョ ダ イ
マ ッ ク ス ! ! ! !」
イーブイが格納されたボールが、赤い粒子を纏って小さく震える。
───ばくん───
バランスボールほどの大きさに膨れ上がり、エネルギーを光にして放つボールを背後へ……つまり、ハナダシティの方向へ軽く投げる。
落下して来たボールを蹴り上げ、そのままくるりと回転してキョダイカイリキーを見据えた。
一拍置いて、俺の背後からどすんと超質量の何かが落ちて来た音がした。
「EBOOOOOOOOOOO!!!!」
「キョダイイーブイ……ちゃん!? いえ、大きいから
「行くぞイーブイ! ぶちかませ!!!!」
「EBOッ!!!!!!」
毛玉が爆ぜた。
大地を蹴ったキョダイイーブイは呆気に取られていたキョダイカイリキーへ肉薄し、杭を打つかのように全体重を乗せたタックルをお見舞いした。
「MAAA……!?」
「
「胸張ってる場合じゃないぞ! そのまま抑えろ!」
「EBOBO」
「クロウくん! 今のイーブイはまねっこが使えん! 今タックルしたんはダイアタックっちゅうワザなんや! ノーマルワザは全部ダイアタックになる!」
「……!? じゃあゴーストは!?」
「ダイホロウや!」
まねっこ使えないマジ!?
ど、どうすれば……!?
「
「クロウさん、イーブイちゃんが……!」
「うん、なんとなくわかる。さっきのタックルはダイアタックじゃない。別の技があるみたい」
「なんやてー!? 聞いたことないでー!!」
「リザードン、そのまま離れてくれ!」
「EBO」
「わかったよ。やってみよう! イーブイ! 『キョダイホーヨー』ッ!!!!」
「EBOOOOOO!!!!」
ばっふんっっっ!!
「そこだ! やれ! 窒息させろ! ロー! ロー!」
「な、なんて
「EBOBOBOBO!!」
「MAA……モゴ……MA……」
「すかさず
「EBOっ」
「MA」
上から押しつぶされ、バタバタともがいていたキョダイカイリキーはいつのまにか手から力が抜け、赤い粒子を残して力尽きていた。
───ばくん───
倒れ伏していたキョダイカイリキーの姿が元に戻るのにそう時間はかからなかった。
「やったな、イーブイ!」
「EBOOO!!!!」
すっかり環境破壊されてしまった森で、イーブイは嬉しそうに尻尾を振っていたのだった。
◇
「いやはや、迷惑かけたね。修理に何か問題があったらいつでも呼んでおくれ」
「マッスル……」
「丸く収まったんやし、ええんですよ」
「お姉さんはこれからどちらに?」
「休暇をとって、もう一度ガラルに行くよ。ダイマックスバンドの使い方もわかったことだし、あの子にもう一度会ってみる」
すっかり新築、なのに見覚えがあると言う奇妙な修復具合のみさきのこやの玄関を開け、左手にバンドをつけたお姉さんが笑う。
アヤメもリーリエの治療ですっかり元気。申し訳なさそうな顔をしていたけど、自我が無くなっちゃったたんじゃしょうがないよな。
あの時のリリーも、同じ感じだった。……うん。しょうがないんだ。
──────……
「……?」
部屋の中なのに、なんで風が……? 隙間風? いや、ほぼ新築だしな。そんなことあるわけないだろう。
きっと俺の気のせいだ。そうだよな?
「お姉さん。私たちたちも、もう少ししたらガラルに行くんです」
「そうなの? じゃ、どこかで会えたら良いね! ベストウィッシュ……ああ、ごめん、この前行った地方が混じっちゃった」
「良い旅を、ですね」
「お嬢ちゃんご存知? さすがだね。……じゃ、本当にこれで。バイバイ!」
手を振って、出ていくお姉さんとアヤメ。
彼女たちが今後、どんな冒険をするのか。大工として、何を創るのか。
それは俺にはわからない。リーリエにだってわからない。
名も知らぬ地方に名も知れぬワザや特徴があるように、この世界にはまだ見ぬ人とまだ見ぬポケモンがいるんだ。
だから、もしガラルで会ったらそれはすごい奇跡で。
「……嵐のような人でしたね」
「アヤメ、強くなってたなぁ」
きっと、その奇跡の裏にもたくさんのストーリーがあるんだ。
「それにしても良かったです。クロウさんが浮気していなくて」
「するわけないじゃん。俺はずっと前からリーリエ一筋だよ」
「……。ま、まぁ、許します。私だって、一生クロウさん一筋なんですから!」
「おっ!? お、おん……ありがとう……」
不意打ちのカウンターやめちくり〜www 照れるだろ。
顔を赤くしてぱたぱたと奥に引っ込んでしまうリーリエを見送り、俺はイーブイのブラッシングようのクシを手に取り、外に出る。
……さて。
「これ、どうしよう……」
「EBO〜!!」
「うわこっちくんな! お前いつになったら元のサイズに戻んだよ! おい! おい、う、ウ、ウワー!?」
「EBOBUE〜!」
「もうダイマックスは、こりごりだぁ〜!?」
超重量のもふもふの中で、俺は必死に叫んだ。