リーリエロスでカントー行ったよ外伝 the horizon de alola! 作:バケットモンスター、縮めてバケモン
メカブさんからいただいたライドギアもどき……ウルトラスーツに瞬時に着替えられるウルトラギアを腰につけます。
腰に回した紐の右腰側には キズぐすり や きのみ が入っているポーチがついていて、その反対側には あなぬけのヒモ や ゴールドスプレー などの便利なグッズが入ったポーチがあります。
背中のリュックにはいくつかのモンスターボールや日記が入っています。
「では、行ってまいります」
「暗くなる前には帰ルんダよ」
「外の明るさはわからないんじゃない……? 洞窟だし」
笑って見送ってくれるメカブさんを背に、私は洞窟内に足を運びました。
なんの抵抗もなく私を受け入れた洞窟は岩肌がゴツゴツしていて、奥へ進むにつれ暗くなっていきます。
しばらくすれば目が慣れるかもと思いましたが、慢心はいけません。
明かりがあるのならつけるべきだと、私は思います。
決して怖いわけじゃありません。決して。
「博士とメカブさんからいただいた、蓄光ランプ……」
光を溜め込み、暗いところでぼんやりと光る性質を持つウルトラスペース産の鉱石の光を鏡で増幅させて、周囲を照らすランプです。
メカブさんが二ヶ月間の遭難の際に助けられた鉱石のようで……。
ウルトラスペースには太陽がないカラ、こういう石がお役立ちなんだヨ!とメカブさんはおっしゃっていました。
大丈夫です。
太陽が無くたって歩けます。
あなたの世界を照らすためなら、暗闇だって歩いて見せます。
と意気込んで歩いていると、壁が目に入りました。
行き止まり、とも思いましたが、そうでもない様です。
「階段……?」
岩を切り出し作られた階段がありました。
明らかに人工的な……いえ、この形からすると、最初から階段の形で生まれてきた岩の様です。
空気の壁といい、階段として生まれてきた岩といい、この洞窟は不思議でいっぱいですね。
ランプの光を頼りに階段を降り続けると、奥の方から光が漏れていることに気がつきました。
少し眩しいですが……こんな洞窟で、しかも階段を降りた先に光……。
もう何があっても驚きません。きっと、光を放つ鉱石の様なものがたくさん自生しているのでしょう。
……鉱石の力だけでこんなに眩しいと、少し怖いですが……。
階段を降りた先の穴。
光が漏れ出しているそこを覗き込んで……。
「……ええ!!??!!??!!??」
そこには草原が広がっていました。
お腹いっぱいに吸い込んだ綺麗な空気が、この草原が本物だと物語っています。
……それに、足元の草も花も、遠くに見える森も……。
そもそも、この草原……洞窟を外から見た時よりも広くないですか!?
少なくとも、上から見た謎の島よりも広大です!!
「ふ、不思議です……」
ドアのない扉……人1人倒れるくらいの門のようになっている穴から一歩踏み出すだけで、その先は別世界でした。
ざふ、と足元の草を鳴らして振り返ると、そこには先ほど通った門が。
石のレンガが積み重なって門を形作ってはいますが、先ほど私が手を着いていたであろう壁がありません。
草原の真ん中にぽつんと、レンガの門が……。
門の奥にも草原が広がっていて、門の裏側は岩肌で埋まっていました。
……物理的に、おかしくありませんか?
だって、それなら私は今、どこを通ってこの草原にやってきたのでしょう……?
門の穴側を覗くとやっぱりそこには私が降りてきた階段があって……。
「どうやら
ともすれば、この草原のどこかにクロウさんが?
そもそもこの空間に、果てという概念はあるのでしょうか。
入口よりも後ろがあるという時点で、闇雲な捜索は難しいでしょう。
では、今私がいる位置は?
上を見上げて、私は……。
「太陽が無い……」
見上げた空には太陽が無く、しかし空は爽やかな青色を誇っていますし、今だって明るいです。
困りました。太陽の傾きでもわかれば、今向いている方角がわかるのですが……。
それに昼夜の概念があるのかも知りたかったです。最悪の場合、夜を迎えれば道がわからなくなって遭難してしまいます。
ランプはありますが、それだけで帰れるとは……。
「……あっ、ダメダメ。まずは進んでみないと……」
考えてばかりで何も行動しないのは私の悪い癖です。
まずは歩いてみませんと。
……よし。
草を踏み、歩き始めます。
当てがあるわけではありませんが、とにかく迷わないように前へ。
もし帰ることになれば、来た道を戻ればいいのですから。
空はどこまでも遠くまで伸びており、ときおり雲が私の上を通って影ができました。
影ができるということは光もあるということなのでしょうか?
それとも、空自体が発光している……?
疑問は尽きません。
どうしてクロウさんはこんなところに?
ウルトラホールはどうしてここに繋がったのでしょう?
……そもそもクロウさんがいたとして、一緒に戻ってくれるでしょうか。
いえ。戻らせます。
勝手に残させません。
絶対ぜったい、ぜ〜ったいに、捕まえてみせるんですから。
ふんすっ!
「しかし、結構歩きましたね……」
額に浮かんだ汗がじんわりと肌に滲み、肩があがります。
無理はいけません。一度休憩にしましょう。
振り返れば、私の指の先よりも小さくなったゲートが見えます。
こうして門が見えるのなら、まだ帰れる距離であることを実感させてくれますね。見えなくなってからが本番です。
「疲労回復は飲み物よりも木の実を……」
「あぶり〜……」
「あら?」
ポーチから取り出したオレンの実のヘタを取ろうとしていると、草花の向こうから小さなポケモンさんがやってきました。
……ポケモンさん、いるんですねココ……!!!!
「あなたは? ……えっと、図鑑……」
図鑑に表示されたポケモンさんの名はアブリー。
人や動物、果ては植物の感情を読み取り、そのオーラを頼りに花や蜜を探すポケモン……と書いてあります。進化するとアブリボンという名前になるのだそうです。
……ふむ?
「もしかしてお腹が空いているのですか?」
「あぶ……」
「こちらをどうぞ」
「あぶりぃ!? ……あ〜ぶ!!」
近くを見渡しても花などは特に見当たりません。
このアブリーさんは花を探して彷徨い、お腹を空かせていたのではないでしょうかという推測でしたが……当たっていましたね。
ぺろりとオレンの実を平らげたアブリーさんは嬉しそうに私の周りを飛び回り、私の指の先に止まってくれました。
にこにこと笑うアブリーさんはしばらくご機嫌に体を揺らしたあと、ハッとしたように震え始めました。
辺りをキョロキョロと見渡して、困ったように震えています。
「ど、どうしたのですか?」
「あぶぶ〜……」
「そういえば、アブリーさん? ……ちゃん? の、お仲間さんはどちらに……」
「あぶ! あぶりぶりぃ〜!!!!」
「えぇっ……? お仲間さん、ですか?」
「あぶり! あぶぶ! ぷりぃ!」
うーん……。
「もしかして、迷子とか……」
「あぶりぃ!!!!」
「ほ、本当に迷子なのですか!?」
合ってました……!?
身振り手振り……と言っても手が見えませんが、困ったような顔をしているのはわかりました。
うーん。
進行方向に進んでそれらしき場所があれば、少しくらいは寄り道しても大丈夫ですよね?
「良ければ、私もお家探しをお手伝いしますよ」
「あぶり!? ぶりぃ〜!!」
アブリーさんはくるくると私の周りを飛び回ったあとで、私の帽子の上に着地しました。
……たしかに、ずっと飛んでいるよりはそちらの方が楽ですね。
「では、出発しましょう」
まだ空は明るいです。
とりあえずは、まだ進めそうです。
◇
「こちらは?」
「あぶり〜……」
「見覚えないですか」
◇
「お花畑ですね?」
「ぶりぃ……」
「ここも違う、と……」
◇
「あっ、ツツケラさんたちの巣が」
「ぶり!?!?!?」
「あっ、どちらへ!? 逃げないでくださ〜い!」
◇
「迷ってしまいました!!」
「ぶり…………」
右左後ろ、どこを見渡しても目印のゲートがありません!
森やお花畑、岩場など通りましたが……自分が来た方角が一切わかりません!
思えばアローラでは迷ってばかりでした……!
行動する時はほとんどクロウさんと一緒だったために忘れていました!
カントー地方で少し慣れたと思っていましたが……未熟……!
どうしましょう……。
見上げた空はオレンジ色で、沈むべき太陽が無いためかのっぺりとした色合いになっています。
論理的結論として、私だって目印さえあれば元の場所に帰れるはずなんです。
……いえ、現実逃避はやめましょう。
迷子です。
「ぶり……」
「大丈夫ですよ。私が必ず、元の場所に戻してあげますから」
「ぶり……?」
不安そうなアブリーさんを励まそうとして、ポーチからきのみを取り出します。
「オレンの実ですよ……っとと、落としてしまいました……」
手が滑って転がっていってしまったオレンの実。
止まったオレンの実は、1匹のポケモンさんが持ち上げます。
「あ、ありがとうございます。よければあなたも木の実食べま……す……か……」
「……ぶり……!?」
1匹ではありませんでした。
「ぶり〜!」「あぶり?」「ぶりりぃ〜♪」
「あぶあぶ!!」「ぶり!」「ぶぁりぃ……?」「ぶり!!」
たくさんのアブリーさんが、泥だらけで飛んでいたのです。
「アブリーさん、もしかして」
「ぶり!!」
「お仲間さんなのですね! よかったです!」
みなさんこんなに泥だらけということは、ずっとこのアブリーさんを探していたのでしょうか。
なんだかすこし、うるっと来てしまいます。
「ぶりぼん」
「あなたは……アブリボンさんですか?」
「ぶりぼぃ。ぶりぼん、ぼんぶりぁん」
「わっ……。ええと、着いていけば良いのですか?」
アブリーさんの群れの中でただ1人、リーダーのように威厳ある姿を見せたアブリボンさんが、私の手をくいと引っ張って背中を向けます。
彼? 彼女? に着いていくアブリーさんたちを眺めながら数分歩いていると、見覚えのある丘に辿り着きました。
そのてっぺんには、岩のレンガで組まれたゲートがあります。
岩で埋まっているということはこちらは裏側……。進行方向と真反対!?
……いつのまに……。
「ぶりぼん」
「帰り道は……大丈夫みたいですね。ご案内ありがとうございます」
「ぶりり〜!」「ぶりぃ!」「ぶりぁ?」
「ふふっ」
笑顔でこちらを見送ってくれるアブリーさんたち。
「では、ありがとうございました」
「ぶりっ!」
「……あら……?」
迷子だったアブリーさんが群れの中から飛び出てきました。
それを後ろから眺めるアブリボンさん、アブリーさんたち。
「あぶりぃ……っ!」
「……えっ、と……」
「あぶりっ、ぶりぁっぶぅ! あぶりぶぶ!」
「もしかして……私と……?」
アブリーさんは一際おおきく宙返りをすると、
「あぶりぃ!!」
と言いました。
「で、ではモンスターボールを……」
「ぶりぁ!!!!」
「わわっ!?」
差し出したモンスターボールのボタンを勢いよく押したアブリーさんが、ボールから放たれた光に吸い込まれます。
私の手にぽとりと落ちたボールは、一回。
一回だけ揺れると、かちりと言って静止しました。
「……よろしくお願いしますね、アブリー……ちゃん」
「ぶりぼん」
「はいっ。アブリボンさんたちも、お元気で!」
手を振って見送ってくれるアブリボンさんたちを背に、私は階段を登りました。
やっぱり暗いのでランプをつけると、
「ぶりい!」
「持ってくれるのですか?」
「ぶ!」
「ふふっ、ありがとうございます」
ボールから飛び出たアブリーさんが、ランプを持って照らしてくれました。
そのおかげか、来る時よりも早く出口に着いて。
着いた頃にはもう、外は夜になっていました。
階段を登り始めた時間と計算しても、どうやら洞窟内の時間は外の時間と変わらないようです。
「リーリエ!」
「ただいま戻りました」
「怪我はない!? 中はどんなだった!? 大丈夫なの!?」
「あの、まずですね、中は……ぁ」
安心したからでしょうか。
足から力が抜けて、急に眠たくなってきました。
「リーリエ!?」
「ウルサイヨ! このコ、初めテの冒険で疲れてルんだから!」
「あ、そう、そうだよね。ごめん」
「とりあえずボクが預かっとくから、男子はテントに立ち入り禁止ネ」
ぁ……。
メカブさん、いいにおい……。
「そんなことしないけど!?」
「どうだかネ? また誘拐されナイように見張らなイとダ」
「あっ、あれはウツロイドの……! っていうかそれ誰から聞いたの!?」
「ニシシ! 教えナイ!」
ぅ。もう持ちません……。
おやすみなさい……。
「ウン。おやすみ、眠り姫」
「メカブ、リーリエをよろしく」
クロウさん……。