リーリエロスでカントー行ったよ外伝 the horizon de alola!   作:バケットモンスター、縮めてバケモン

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忍び寄る波はすぐそこに!

 

「足ががくがくします……」

「夕べはお楽シミでしたネ?」

「違いますよ!?」

「おや、意味がお分かりデ?」

「……!! もうっ!!」

 

メカブさんは! メカブさんはもう!

 

ゴーゴートさんに長く乗っていたせいか、足の筋肉が固まってしまって震えるのです!

一層に戻ってからはずっと歩いていましたし、今日はいつもよりも疲れました……。

はぁ……。

 

「お疲れリーリエ。だいぶ遅かったね」

「はい……。それに関して伝えなければならないことが……」

「それよりも、先に晩御飯にしようか」

「オ腹ペコペコー」

「あ……はい!」

 

今日の晩ご飯はアローラプレート。アローラプレートといってもさまざまなものがありますが、これはコーンやグリンピースのピラフを使ったものですね。上にかかったデミグラスソースから香ばしい匂いがします。

 

「スゲー!! これヨウが作タの!?」

「いや、これはデリバリーを炒め直しただけだね。さすがに一からは作れないよ」

「家事力のナイ男はモテないヨ」

「お、俺チャンピオンだし家事力無くてもモテるし」

「ナマ言ってンじゃネーヨ腐れメンズ」

「ひっどい! ねえリーリエ! メカブがひっどい!」

「ま、まぁ温め直しができるだけ良いのではないでしょうか……」

 

少なくとも、料理はできるのに興味関心の面が欠如して全く料理をしない博士よりはマシ……かもです。これもひどい言い方ですけど。

 

「しかし、デリバリーですか? こんなところに?」

「うん。リーリエに差し入れがあるみたいで、ついでに送ってもらったんだ。メカブ、あれどこ?」

「ココ。でも、ナーンか怪しく無かっタ? 運ビ屋だかなんだか知らんケド、クッソ元気だっタよネ」

「ありがとうございます。……差出人はマオさんですか。信用できる人なので、そのマオさんが選んだ運び屋さん?も怪しくないと思うのですが……」

 

メカブさんに渡していただいたガムテープを剥がすと、中にお手紙と小さな包みが入っていました。

包みの中には木箱が入っていて、手のひらに乗ってしまうサイズです。

木箱の蓋を開けると、そこにはキラキラと輝く……。

 

「……クサZ?

「お手紙を読みますね。『アローラ、リーリエ……」

 

アローラ、リーリエ!

ヨウから聞いたんだけど、くさタイプのポケモンを捕まえたんだって!?

あのリーリエがポケモンを触れるようになるなんて驚きだなー!

とにかく、このクサZをあげるから、目的の役に立ててね!

今度会う時は、その目的がなんだったのか、教えて欲しいなー!

 

「ヘェ、友達思イだネ」

「……ええ、そうですね、マオさんはとても良い人なのですが……」

 

()()()()()()()()()()()()()……?

私は以前からほしぐもちゃんや、ヨウさんのポケモンさんに触れていますが……どなたと勘違いしているのでしょう。

それにポケモンさんが傷つくのだって、論理的結論として、私がその気になりさえすれば───

 

「待っテ!!」

「……え……?」

 

ばん、と机を叩いてメカブさんが立ち上がりました。

息は荒く、その頬を汗が伝っています。

 

「今、何ヲ考えテたノ」

「え……」

「何!! 考えテたノ!!」

 

手は震え、肩で息をするメカブさん。

その目はバイザー越しでもしっかりと私を見据えていて、ごくりとつばを飲む様子から相当焦っているのがわかりました。

 

「め、メカブさん……?」

「ママ!!!!」

「ひっ」

 

我を忘れて声を荒げるメカブさんに肩がすくんでしまいます。

 

「そのマオって人のコト……金輪際、考えないデ」

「どうして……ですか?」

「どうしてモ!!」

 

……どうして。

どうしてそんなに怒っているのですか?

 

マオさんは……マオは私の大切な友人です。

金輪際考えないでって、どうしてそんなことを。

 

「訳を、話してください」

「ボクがボクじゃなくなるカラ」

「意味がわかりませんよ」

「とにカく、マオのコトを考えルだけでモ、ダメなんだヨ!!」

 

〜〜〜っ!!

 

「マオは悪い人ではありません! スクールでもずっと一緒だったんですよ! それがなんですか! 考えるだけでもダメって! スイレンもマーマネもカキもみなさん私の大切なクラスメイトです! それを、それを……バカにしないで!」

「……ッ、ウグゥ……! スクールだかなんダカ知らないケド、そコまで言ウならバトルで決着をつケよう!」

 

苦しそうに頭を抑えて呻いた後、ウルトラボールを構えるメカブさん。

いいでしょう。こちらもゼンリョクで迎え撃ちます!

 

「来なさい、シロン!」

 

無我夢中で愛するその名を呼びますが、声は返ってきませんでした。

 

「シロン!? どうしたのです、シロン!」

「……ねえ、リーリエ」

 

私の手を掴んだヨウさんが、怪訝そうな顔で私に訊きました。

 

()()()()()()()()?」

「……ッ……?」

 

シロンは、アローラロコンで……。

真っ白な毛並みが綺麗でみんな褒めてくれて……。

もちろん、サト───……。

 

……ッ…………。

 

「リーリエ!?」

「頭が……痛い……!」

「ッグぁ、ウウウ……! ボクは……ボクの家族は……!」

「メカ、ブ……さん……?」

「違う……! ボクは、ボクだ……!」

 

ぐわんぐわんと歪む視界の奥で、メカブさんが立膝をついてうわごとのように何かを呟いています。

助けてあげなきゃ、と思う一方で、今手を伸ばしたら倒れてしまいそうなほど、息をするのもやっとの頭痛が私を襲うのです。

 

「ンッ!」

 

ぱちん、と自身の頬を叩くメカブさん。

ふらふらと立ち上がると、ふらふらとテントの方へ歩き始めました。

 

「ボク……シャワー浴びる……」

「う……あ……」

「リーリエ! ……リーリエ!!」

 

目の前がまっくらになっていきます。

残された私には、ただ肩を揺さぶられ声をかけられる感覚と、頭に鈍痛だけが残るのでした。

 

 

 

 

心配するヨウさんを宥めて2人分の食事を抱えたままテントの中で蹲っていました。

遠くからシャワーの音が聞こえていて、メカブさんが使用中なのが分かります。

 

……動けない……。

 

疲労感と頭痛による気だるさで立つこともままなりません。

ですが、メカブさんを怒らせたままにしてはいけません。

謝らなくては。

 

「ふぅっ……!」

 

全身に力を入れてなんとか立ち上がり、プレートをふた皿持ってテントを出ました。

近くなっていくシャワーの音を聞きながらふらふらと歩いていると、近くの岩場に見覚えのあるものが置いてあるのに気づきました。

 

……これ、メカブさんのバイザー……?

それに、スーツのためのギアも置いてあります。

機械だから外に置いているのでしょうか。

 

シャワー中は外しても大丈夫なのですね。寝ている間もつけっぱなしなので、不安でした。バイザーやスーツは防護服も兼ねていると仰っていましたから、ずっとつけっぱなしということはこちらの世界はメカブさんにとって、とても有害なのではないかと……。

 

「……ねえ」

「……!」

「ママ、そこニいるノ?」

 

扉の向こうから、メカブさんの声が聞こえました。

水が床に当たって弾ける音が響き続けるシャワールームは、私の声を待っているようでした。

 

「はい、ここに」

「ごめんネ。ボク、急に怒鳴っちゃっテ」

「そんな、こちらこそ謝るべきです! 訳を理解しようともせずに、ただ感情に振り回されて……!」

「良いんだよ。ママの怒りも最もだかラ」

 

怒り……。

 

「ママのクラスメイトなんでショ?」

「……それが……違うんです」

「え?」

 

マオさんは、クラスメイトではありません。

それどころか、私はスクールにすら通っていないのです。クラスメイトであるはずがありません。

でも、確かにマオとの会話を……朧げながら覚えていて、それはとても大切な時間だったと思うのです。

これでは、まるで……。

 

「信じられる話ではありませんが……私の中に、その……」

「記憶が2つある?」

 

……えっ。

 

「なんで、それを……」

「ボクも同じだから。理屈はわからナイけド」

「同じ、というのは……」

「ボクの頭の中……記憶が、変わっていくンダ。ボク、マオって人に会ったコトない。けどマオの話をママがし始めたトキに、確かにその時ニ……ボクの頭の中に、マオがいた」

「それは、なぜ……?」

「わかんないヨ。でも……緑の髪でツインテールで、褐色ガールでショ。違ウ?」

「……! あってます」

「あと乳がデカい」

 

………………あってます…………。

わ、私だってあと少ししたら……!

……ナツメさん、スタイル良いですよね……。

クロウさんは大きい方がお好きなんでしょうか……。なんだか自信が無くなってきました……。

 

「私、もう一つの記憶の中では、マオさんのことを『マオ』と呼んでいた気がします」

「なんなのかナー、ウルトラホールが影響した()()とかなのカナ。『マオさん』じゃなくて『マオ』のコトを考えると、ボクの頭の中ニそのマオが出てクルみたい。『マオさん』か『マオ』か、はたマタ外見が似てル別人なのカはわかラないケド」

「……リリーさん……」

 

別世界の私。

メカブさんの世界にいる、別世界のヨウさん。

そして、別世界のマオさん。

 

「メカブさん。メカブさんのもう一つの記憶、というのはどういう意味なのですか?」

「ボクの頭の中には今、『マオのいないボクの世界の記憶』と『マオのいるボクの世界の記憶』が同時に存在してるンダ。昔食べた焦げパンケーキも、マオが作ったモノにナッテタ。……ボクがママに初メテ作ったものダッタのに!!」

「私も……初めてゲットしたポケモンさんが、違うポケモンさんに変わっていました……」

「シロンって奴?」

 

───……ッ……!!!!───

 

「ガァッ……!? ウッ……白い毛並みが()()()来タ……!」

「はぁっ、はぁっ、はぁっ……! また、この頭痛……!」

「やめようコノ話!!」

 

テレビ画面にノイズが入るように、記憶を遡ろうとすればするほど鋭い痛みが頭に走って思考が妨害されるのです。

きゅっと目を瞑って耐えていると、いつの間にかシャワーの音が聞こえなくなっていることに気がつきました。

 

顔を上げると、もう隣にバイザーは無く、代わりに髪を濡らしたメカブさんが座っています。

青白く光るバイザー越しに、こちらを覗いていました。

 

「でもじゃあ、どうしてマオさんにまで影響が……?」

「ドウダロウ……。でも、一つダケわかるコトがあって」

「わかること……?」

「下ノ階層に行くに連れテ、ウルトラホールの影響の波がデカくなってル」

「……!」

「さっき、『運ビ屋が〜』って言ったでショ」

「は、はい」

「ソノ運び屋、ライドポケモンで飛んで来たんだけどサ。実は……」

 

 

 

 

 

『こんちわー! お届け物お待ちしましたー!』

『ハ……!?』

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()の服着てタ」

 

……!?

そ、それではまるで!

 

「その通り……あれはどこカラどう見ても、()()()()だったんだヨ」

「ヨウさんが……2人……!?」

「でも性格なんかはヨウとは違クテ、ハツラツって感ジなんだヨ。だから不気味デ」

「それが……ウルトラホールの影響……?」

「ダト……思ウ」

 

そんな……。

認知のズレだけでなく、人を増やすことまで……!?

 

「重要なのはここカラ」

「……まだ、あるんですか?」

「荷物を……クサZ、だっケ。それを受け取った時なんだケド」

 

 

 

 

 

『受け取りのサインお願いしまーっす!』

『ナ……その服……それに顔マデ、そっクリ……』

『ここで良い?』

『ハ!? なんデ!? スルー何デ!?』

『じゃ、確かに渡しましたんで! さいならーっ!』

『……? どうかした、メカブ?』

『……イヤ……なんデモ……ない……』

 

 

 

 

 

「……認知ごと書き変わってタ。その人がソコにいるのが当たりマエみたいに……()()になってタんだ」

「だから……ヨウさんのいない場所でこの話を……?」

「ボク達が()()()()()()()を話すだけでも頭が痛くナルんだから、ヨウにも何かあったら困ルしネ」

「それは……私には話して大丈夫なのですか?」

「これは推測なんだケド。多分、影響は当人と、その当人と直接関係のある人間に降りカカルんだト思ウ」

 

いつだったか、ヨウさんが影響(皺寄せ)の話をしてくれました。

原初のウルトラホールが法則を捻じ曲げ現象を起こした結果、その皺寄せはウルトラホールを通った人間を優先して引き寄せられるのだと。

そして、今この島にいる3人。

私。

ヨウさん。

メカブさん。

全員が、ウルトラホールを通った経験があります。

だから皺寄せは3人とも……及び、この島を中心として、その綻びを増しているのでしょうか。

最初こそ気にならないほどの影響だったものが……小さな波が引いて大きな波を呼ぶように、どんどんとその力を増していって……。

ついには、存在という認識ごと歪ませ始めた。

 

ヨウさんの場合、『運び屋』を名乗る全く同じ見た目をした人間が現れる。しかし、ヨウさんはそれを認知できない。

私の場合、『二つ目の記憶』が無意識の中に現れる。

メカブさんの場合、私の『二つ目の記憶』に応じた人が、メカブさんの記憶の中に『もともとそういう過去だった』として、現れるようになる。

……あまりにも荒唐無稽で……おぞましい話です。

 

「つまり、原初のウルトラホールに何かが起こっている、と?」

「もシクは、何かが()()()()()()()()()。……ママが近づいてきている、とかネ」

「このまま、洞窟の探索を続けても良いのでしょうか……危険なのでは……」

「それはソウ。ソウ、なんだけド……」

 

メカブさんは少し上を向いて、何かを考えたあと。

 

「危険ナノは今に越したことじゃナイって言うカ?」

 

そうして、手をぐーにしてこちらに突き出してきます。

 

「ま、気にすんなヨ、ママ」

「……はい」

「ウルトラホールなんか危険なコトしかナイんだカラ。コッチはコッチで、影響を回避して見るヨ」

「わかりました。お願いしますね」

 

こつん、と拳を突き合わせました。

 

 

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