仮面ライダーゼインのハンドレッドハンティング   作:K/K

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見ていて書きたくなったので書いてみました。


ハンティング1

 崩れ行く建物。

 逃げ惑い、泣き喚く人々。

 一糸乱れぬ行進で彼らを容赦なく追い詰めていく機械の兵団。

 築き上げられた文明が崩壊していく様子を最も高いビルから見下ろす一人の男。

 見た目は壮年の男性。黒を基調としたスーツを纏い、腕には赤いブレスレットを付け、左目を囲うように幾本もの黒い曲線のタトゥーが入れられている。

 

「ははははははは」

 

 男は嗤っていた。全てを。人々の慟哭も嘆きも怒りも哀しみも男にとっては愉快なもの。男は高所より人々を文字通り見下していた。

 

「破壊しろ! 蹂躙しろ! この世界の未来は我らハンドレッドのものだ!」

 

 高揚と共に出される『ハンドレッド』という名。その名は男が属する組織の名であった。

 ハンドレッドの名の下に弱者たちの未来を奪う。組織の命令でもあるが、男にとって最高の興奮を味わえるのがこの瞬間である。

 顕微鏡で微生物の動きを観察するかのように人々の様子を注視し続ける男。その時、男に迫る足音があった。

 興に水を差された男は苛立しそうに溜息を吐きながら振り返り、その目を見開く。

 銀色のアンダースーツの上に装着された純白の装甲。装甲の各部には金の装飾が施されている。勿論、それはただの飾りではなく装甲の一部なのが見て分かる。

 付けられた左右非対称のマントは左肩に固定されており、左右で長さの違うそれは最も長い箇所は足元付近まで垂らされている。

 金で縁取られた白い仮面。水色の複眼に一対の角のようなアンテナ。無機質な仮面の筈なのだが、不思議なことに笑っているような印象を受ける。

 白騎士、軍服の礼服という印象を他者に与える姿。それだけではない。一部の隙も無く立っている様子は見る者に厳粛な存在であることを印象付ける。

 

「……この世界に仮面ライダーは居ないと聞いていたが?」

 

 仮面ライダー。男は目の前に現れた存在をそう呼ぶ。

 

「何者だ? 貴様は?」

「私の名はゼイン。全ての悪意を駆逐し、滅する仮面ライダー」

 

 仮面ライダーゼイン。そう名乗った存在を男は鼻で笑う。

 

「悪意を駆逐する、だと? この俺を滅ぼす気なのか? 面白い! ならば覚えておけ! これからお前を滅ぼす者の名を! 俺はハンドレッドの──」

「不要だ」

「何?」

 

 男が言い切る前にゼインが遮る。

 

「これから滅ぶ者の名を覚えるなど──不要」

 

 ゼインの発言に男のこめかみに青筋が浮かび上がる。男は嘗てない程に見下された、そう受け取った。

 

「ならばお前を滅ぼし、俺の名と存在を刻んでやる!」

 

 男に腹部に装着されるドライバー。右側にスロット。それに繋がる三本のパイプが左側まで伸び、各パイプの先には透明の円筒状の装置があり、斜めに並んでいる。

 キメラドライバーと呼ばれるそれを装着した男は、続けて取り出すのはスタンプのような物体。正面にオクトパス、クロサイ、オオムカデが刻印されたもの。

 バイスタンプという名のそれはこの世界のものでもハンドレッドが生み出したものでもない。ドライバーと同じくハンドレッドがある世界の技術を模倣し、複製したもの。

 様々な生物の遺伝子情報を記憶することが出来るバイスタンプだが、男のバイスタンプはその中でも取り分け特異であった。

 

「ゲーム開始だ!」

『トライキメラ!』

 

 トライキメラバイスタンプの頂点部分を押し込むことで起動。内包された三種類の遺伝子が活性化し光を放つ。

 トライキメラバイスタンプをキメラドライバーのスロットにセット。

 

『オク! サイ! ムカ! Come on!  キメラ! キメラ! キメラ!』

 

 音声が鳴り響き、男の周囲にオクトパス、クロサイ、オオムカデが出現。円筒状の装置も発光する。

 

「変身っ!」

 

 セットされているトライキメラバイスタンプを横に倒す。

 

『スクランブル!』

 

 オクトパス、クロサイ、オオムカデらはバラバラに分解され、変身者に繭のように張り付く。

 内側から発せられた赤いエネルギーにより繭は砕け散り、その下から禍々しい仮面ライダーが現れる。

 

『オクトパス! クロサイ! オオムカデ! 仮面ライダーダイモン! ダイモン! ダイモォォォン!』

 

 全身はトラを彷彿とさせるオレンジと黒、銀のスリートンカラー。左側頭部、左胸上部からタコの足とムカデの足、サイの角を組み合わせたような赤いパーツが生え、銀の装甲で覆われた左肩からも同様のパーツが突き出されている。

 仮面からはみ出る程の紫色の複眼。額からは同色の角が生えており、下顎部分には牙の装飾が施されている。

 悪魔の語源となったギリシャ語のダイモーン。その名に相応しい悪魔めいたこの姿こそ先に告げられた仮面ライダーダイモン。

 

「ふぅぅ……」

 

 変身を終えたダイモンは溢れ出る力に熱が籠った吐息を洩らす。纏っている端が擦り切れたマントが吐息に呼応するかのように揺れた。

 

「この姿に変身させたことを後悔させてやろう、ゼイン!」

 

 力と衝動のままダイモンは一気に距離を詰め、ゼイン目掛けて拳を突き出す。ゼインは掌打で拳の軌道を逸らすが、ダイモンはすかさず中段回し蹴りを放った。

 命中すれば上半身が分断される威力がある中段回し蹴りをゼインは一歩下がることで紙一重で回避した。

 

「見たか!」

 

 圧倒的パワーと手数により避けることしか出来ないゼインにダイモンは高らかに言う。

 

「これこそが仮面ライダー──悪魔の力だっ!」

 

 動きを止めたゼイン。

 

「それは違う。仮面ライダーの力は正義と秩序を為す為にある」

「ほざけっ!」

 

 戯言と一蹴し、ゼインの顔面を砕く為に繰り出されたダイモンの拳。

 命中する──かと思われた次の瞬間、仰け反ったのはダイモンの方であった。

 

「がっ!? あっ!?」

 

 一拍置いて殴られたことに気付き、ダイモンは顔を押さえる。今、自分の身に起こったことが信じられない様子であった。

 

「パワー」

 

 ダイモンが攻撃をする前にゼインの拳が腹部に突き刺さり、その痛みに悶絶して動けなくなる。

 

「スピード」

 

 動けないダイモンに打ち込まれる拳、肘。額の角を掴まれ、無理矢理下を向けさせられるとゼインの膝がダイモンの顔面を突き上げた。

 

「テクニック」

 

 ダイモンは後退するが踏み止まり、ヤケクソ気味に反撃の蹴りを出す。ゼインはそれを肘で打ち落とし、その反動を利用してダイモンの胸を肘で突く。

 

「ぐはっ!?」

 

 突き抜けるような衝撃にダイモンはその場で膝を折る。そんなダイモンをゼインは冷たく見下ろす。

 

「全てが私の予想の範囲内だ」

 

 突き付けるのは現実。ダイモンが何一つゼインの脅威になり得ないという事実。

 

「く、おおおおおっ!」

 

 ダイモンは叫びながら立ち上がり、トライキメラバイスタンプをレバーのように横へ三回倒す。

 だが、ダイモンの反撃もゼインにとって予想内のこと。ゼインもまた既に行動に移っていた。

 ゼインの指に挟まれる一枚のカード。裏にはゼインのマークが刻印されてある。

 ゼインカードと呼称されるカードが挿し込まれる。挿し込まれた先はゼインの腹部に装着されてあるドライバー。

 様々な技術の集合体であり、正義を執行する為のアイテム。

 

『キマイラ!』

 

 ゼインカードがドライバー中央にセットした状態で左側にあるレバーを引く。

 

『執行!』

 

 カードが吸い込まれて下から出て来た時、カードはシュレッダーにかけられたように細かく裁断されていた。

 裁断されたカードを気にも留めず、今度は右側に既にセットされたもう一つの変身アイテムであるゼインの顔とマークが描かれた仮面ライダーゼインプログライズキーを押し込む。

 

『ジャスティスオーダー!』

 

 ゼインの名の下で正義が下される。

 

『クロサイエッジ!』

 

 それに真っ向から反抗するダイモンは、クロサイの頭部を模したエネルギーを左拳に乗せて放つ。

 

『キングクラブエッジ!』

 

 迎え撃つのはダイモンと同質の力。ゼインの拳はキングクラブの鋏の形をしたエネルギーが纏わっていた。

 拳と拳が衝突。互角──かと思われたが、打ち付けられていた鋏が開き、クロサイごとダイモンの拳を挟み、砕く。

 

「ぐああああああああっ!」

 

 拳が砕かれる痛みにダイモンは絶叫を上げる。しかし、ゼインはどんなに相手が喚こうが閉じた鋏を開こうとしない。

 

「ふん!」

 

 ゼインは腕を捻る。ダイモンはその動きに合わせて回転。閉じていた鋏がようやく開くが圧砕と回転によりズタズタになっていた。

 

「ぐ、ううううう!」

 

 ダイモンは負傷した左手を垂らしながらもトライキメラバイスタンプを二回倒す。

 

『オクトパスエッジ!』

 

 横蹴りの体勢になって突き出される足からタコの足が伸び、ゼインを絡め、貫こうとする。

 

『クロコダイルエッジ!』

 

 ゼインは回し蹴りを繰り出すと、その足からクロコダイルの頭を模した力が発生し、タコの足を纏めて噛み千切る。

 更に振り回した足の勢いを利用して今度は反対側の足による後ろ回し蹴りを放ち、それがダイモンの鳩尾に命中。

 

「がっ!?」

 

 息を詰まらせるダイモンだが、追い打ちでクロコダイルの牙がダイモンの胴体を左右から挟む。

 

「あぐあっ!」

 

 嚙み潰されるダイモンの体。装甲に罅が入り、罅の隙間から火花が散る。

 クロコダイルに嚙まれている状態でゼインはダイモンを蹴り飛ばす。装甲は引き裂かれて見るも無残な姿となった。

 

「はぁ……はぁ……はぁ……!」

 

 さっきまで弱者を見下していた自分が床に這いつくばっている。まるで弱者のように。苦痛と屈辱でダイモンは気が狂いそうになる。

 

「こんなこと……こんなことは……!」

 

 ゼインはダイモンを見ながら呟く。

 

「所詮は紛い物か」

 

 その言葉はダイモンの残された正気を焼き尽くすのに十分であった。

 

「ゼイィィィィィィン!」

 

 半狂乱になったダイモンは獣のような咆哮を出し、トライキメラバイスタンプを四回連続して倒した。

 

『オオムカデエッジ!』

 

 ゼインの周りにオオムカデの形をしたエネルギーが発生。ゼインに巻き付き、爆砕しようとする。

 だが──

 

『マッドリミックス!』

 

 ゼインの足元に橙の光が水面のように広がっていく。

 

『必殺! カオス! ツインキメラチャージ!』

 

 飛沫のように橙の光を飛ばしながら出て来るキングクラブの大鋏とクロコダイルの大顎。それらはオオムカデを挟み、噛み付き、引き千切りオオムカデの方を逆に爆砕させた。

 

「ば、馬鹿な……」

 

 渾身の反撃もあっさりと潰され、ダイモンはよろめく。

 偶然かそれとも因果か。破滅させられた者の力が逆に破滅させた者の力を追い詰める。時間も世界も異なる場所で因果応報が起きていた。

 

「そろそろ終わりにしましょう」

 

 ゼインは宣言し、新たなゼインカードを取り出す。

 

『ファイズ・アクセルフォーム!』

 

 カードをゼインドライバーへセット。

 

『執行! ジャスティスオーダー!』

 

 機密保持の為にカードは裁断され、内包されていた力がゼインのものとなる。

 いつの間にかゼインの右腕に腕時計──ファイズアクセルが装着され、ゼインはファイズアクセルのスイッチを押す。

 

『Start Up』

 

 その瞬間ゼインのスピードは千倍まで加速され、ダイモンが認識出来ない間に正面へ移動。

 

「悪魔だというのならそれに相応しい技で葬ってあげましょう」

 

 千倍の加速世界の中でゼインは更なるゼインカードを挿入。

 

『Ⅹ!』

『執行!』

 

 仮面ライダーⅩのカードが細かく断たれ、地面に落ちる前にゼインは動く。

 

『ジャスティスオーダー!』

「真空──」

 

 ゼインはダイモンの体を掴み、組み、後方へ回転。ダイモンの脳天を床に叩き付ける。

 

「地獄車!」

 

 叩き付けた反動で跳び上がり、車輪の如く回転して再びダイモンの頭を地面へ叩き付けた。

 真空地獄車。仮面ライダーⅩの技であり、相手の脳天を何度も叩き付けて戦闘力を奪うものであるが、ゼインはファイズアクセルフォームと併用することでそれを千倍の速度で行っている。

 技を続けるには建物の屋上は狭過ぎると判断すると、ゼインは数度ダイモンを叩き付けた後に大ジャンプをして飛び移った次の建物の屋上にダイモンを打ち付ける。

 屋上から屋上へ真空地獄車で跳び回るゼイン。ダイモンを打ち付ける度に建物の屋上は崩壊する。

 それを何度か繰り返すとダイモンは最早声を上げることすら出来なくなっていた。

 飛び移った最後の屋上。ゼインは巴投げのような体勢になるとダイモンを真上へ蹴り上げる。

 舞い上がったダイモンはやがて最高点に達する。その時、彼が見たものは自分を囲む無数の赤い円錐。そして、真正面に居る両手、両足を大きく広げたゼイン。

 

「X!」

 

 Ⅹの文字を表していた体勢からキックの体勢へ移る。

 

「キック!」

 

 感覚を超越したスピードで空中を疾走したゼインのキックがダイモンへと命中。そのタイミングで周囲の円錐もダイモンを貫く。

 

「っ!」

 

 圧倒的力と速さに蹂躙されたダイモンは空中で爆散。

 

『Time Out』

 

 ファイズアクセルに表示されていた数字がゼロになった時、既にゼインは屋上の上に立っていた。

 その傍には変身解除された男が横たわっている。

 

「お、お前は……一体……!」

 

 そう言い残し、男は消滅してしまう。

 

「やはり、また偽物でしたか。時間を無駄にしました」

 

 ゼインが男に下した評価は時間の無駄。何の脅威とも思われず、ゼインの記憶にも残らず、彼が嘲笑していた弱者以下の存在として終わる。

 ゼインは踵を返す。ゼインのセンサーは次なる悪意を捉えていた。

 ゼインは立ち止まらない。新たな悪意に正義の裁きを下す為に。

 




二つの仮面ライダーの力を同時発動出来たらなーという妄想を書いてみました。
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