「最近、連絡が取れない方々が増えてきたと思っていましたが……原因は貴方ですね?」
知的な雰囲気を漂わせる細身の男が対峙するのは、各世界を渡りながらそこで悪を為すハンドレッドを狩り続ける正義の代行者にして救世主を名乗る仮面ライダーゼイン。
「ああ、貴方のことを責めている訳ではありませんよ? 寧ろ感謝しているぐらいです」
くくく、と男は喉の奥で笑いながら華奢な体を揺らす。怒りを露わにせず、逆に散ったハンドレッドのメンバーを嘲っていた。
ハンドレッドの構成員であるその男は、胸ポケットに赤いハンカチが入った漆黒の外衣という姿。他のハンドレッドと同様に組織を象徴する色を身に纏っている。ハンドレッドのメンバーは共通して組織の一員の証である紋様を左目周りに入れられているのだが、男はそれを入れたおらず代わりに掛けてある眼鏡の左側だけが紋様と同じ形をしていた。
「幹部の席は少ない。ですが、狙っている者たちは多い。貴方がふるいに掛けてくれたおかげで無能共を労力無しで片付けることが出来ました。ありがとうございます」
感謝し礼まで言っているが眼鏡の男の態度が慇懃無礼そのもの。言動の端々から隠し切れないプライドの高さが滲み出ている。
「そして、そんな貴方を葬れば私は簡単に、無駄なく、最短で幹部の座に即けるということです」
黙って男の話を聞いていたゼインが口を開く。
「貴方が無能か有能かなど私にとって何の興味も無いことです。私にとって最も重要なことは滅ぼすべき悪意がそこにある。それだけです」
ゼインは眼鏡の男の野望など欠片も興味が無いことを淡々と告げる。眼鏡の男はゼインの言葉を鼻で笑い、顎を上げながら眼鏡の位置を修正し見下した眼差しを向ける。
「──ふん。貴方も有象無象の一つに過ぎないことを私が証明してあげましょう」
眼鏡の男が外衣の中から取り出したのは、ゲームパッドに似た紫と黒の外装のアイテム。ガシャコンバグヴァイザーと呼ばれる可変武器だが、バグヴァイザーにはもう一つの姿があった。
眼鏡の男は閉じていた外衣を広げる。その腹部には銀色のベルトで固定された黒のバックルが装着されてある。
眼鏡の男はベルト──バグスターバックルにバグヴァイザーをセット。
〈ガッチョーン!〉
バックルに付けられたことでバグヴァイザーは武器から変身ベルト──バグルドライバーと成る。
そして、眼鏡の男は変身をする為のもう一つのアイテムを起動。
〈デンジャラスゾンビ!〉
白いケースから透明な基盤が伸びるアイテム。ライダーガシャットと呼ばれるそれはゲームを基にしている。それはゼインも知っているものであり、これもまた彼のゼインドライバーを形成する技術の一つである。
眼鏡の男の背後に『DANGEROUS ZOMBIE』と投影された画面が浮かぶ。
「不死身の力……存分に味わってくれ! 変身!」
眼鏡の男はデンジャラスゾンビガシャットをバグルドライバーのスロットに挿し込む。
〈ガシャット!〉
流れる動きでバグルドライバー上部のスイッチを押した。
〈バグルアップ!〉
バグルドライバー中央に赤い光で映し出される踊るゾンビ。それが現実世界に現れ、眼鏡の男を隠す。
〈デンジャー! デンジャー!〉 〈Genocide!〉
これから起こることが危険であることを文字通り伝える音声。
〈デス・ザ・クライシス! デンジャラスゾンビ!〉
濁った咆哮が響く中で現実世界に投影されたモニターが突き破られ、そこから現れる白色の仮面ライダー。
頭部には鋭角に曲がった黒と白のパーツが連なっている。外装は骨を彷彿とさせる左右非対称の装甲をしており、右肩にはボルト型、左肩にはスパイクアーマーが付けられている。
左胸には本来ならばライダーの体力を示すゲージがあるのだが、このライダーには表示されている体力は無く、常にゼロと表示されてある。
目の部分には赤のバイザーが装着されているが、左側のバイザーは砕けており青い目がそのまま露出。変則的なオッドアイとなっていた。
変身した姿の名は仮面ライダーゲンムゾンビゲーマー。
「死を取り込むことで死を超越したレベル
未知なる力を表すXが付けられたゾンビゲーマーは、両手を手刀の形にして構え、その状態で走り出す。
間合いに入り込むと繰り出されるゾンビゲーマーの手刀がゼインの顔を狙う。ゼインは迫り来る手刀を手で払い落そうとするが、直前に何かに気付き頭部を横に倒すことでそれを回避。続けて放たれた手刀は躱し難い胴体へ放たれたが、ゼインは素早く身を翻してゾンビゲーマーの側面に移動しつつ、前のめりになったゾンビゲーマーの後頭部を肘で打つ。
前傾姿勢となったゾンビゲーマー。外れた手刀が地面に突き立てられる。その途端、地面が泥のように溶け始め、固体と液体の中間のような状態へと変えられると共に汚泥のニオイが周囲に広がる。
「ふはっ!」
地面に刺さった手刀を抜くと共に背後を水平に薙ぐ。ゼインは既に手刀の間合いの外におり、手刀から飛び散る汚泥もゼインに触れることはなかった。
「勘が良い……この腐食の力に良く気が付きましたね」
ゾンビゲーマーの手に込められているのは万物を腐食させる力。有機物、無機物を問わずゾンビゲーマーの手に触れられると腐り、最後は朽ち果てる。地面ですら今のように一瞬で汚泥に変わってしまうのを見れば、ゼインも触れられたら只では済まない。
「貴方も腐り果てなさい!」
ゾンビゲーマーが踏み込み、ゼインを貫こうとする。だが、そんなゾンビゲーマーの顔に影が掛かった。
影の正体はゼインの足。ゾンビゲーマーが接近してくるタイミングでカウンターのキックを出しており、結果ゾンビゲーマーは自らゼインの足の顔面を衝突させる。
「ぐあっ!?」
出鼻を挫く一撃にゾンビゲーマーの足が止まる。ゼインはすかさずゼインドライバーに挿し込まれてあるプログライズキーを押し込む。
『ジャスティスパニッシュメント!』
白と金が入り混じる光がゼインの右拳から発せられる。正義の力を破壊に変えて、善を貫く意思を以って敵を貫く一撃がゾンビゲーマーの胸部に炸裂した。
「がはっ!」
ゾンビゲーマーはゼインのジャスティスパニッシュメントにより殴り飛ばされる。地面を滑走し、十メートル以上は移動し背骨が折れそうになるぐらい仰け反る。
「──ははっ」
しかし、それ以上のことは起こらなかった。禍々しい紫のオーラを纏いながら限界まで反らされていた上半身がバネのような勢いで戻って来る。
「くくくく。中々良い攻撃でしたが、私を殺すには威力が足りなかったようですね」
「──成程。ゾンビの名は伊達ではないということですか」
ゾンビゲーマー。既に死んでいる者はそれ以上死ぬことはないというのを再現するかのような不死に近い耐久性を持つ。ゼインの必殺技を受けても速攻で復帰してみせた。
「いつまで落ち着いていられるかな!?」
ゾンビゲーマーはバグルドライバーのAボタンとBボタンを同時に押した後、Aボタンを押す。
〈クリティカルエンド!〉
ゾンビゲーマーが空中に跳び上がり、黒いオーラを放ちながら縦回転し出す。
必殺技の体勢に入ったのを見てゼインも動く。
『パラドクス・パズルゲーマー!』
仮面ライダーパラドクスのパズルの力を操る特性。
『執行!』
セットされたゼインカードが断裁されるとゼインの頭上にメダル型のパワーアップアイテムであるエナジーアイテムが並ぶ。ゼインは両手を動かし、エナジーアイテムの並びをパズルのように変えていく。
そして、ある組み合わせになると選ばれたエナジーアイテムがゼインに取り込まれた。
〈鋼鉄化!〉
〈マッスル化!〉
〈高速化!〉
鋼鉄化の効果によりゼインの体が鉛色に光り、その後にマッスル化で全身が膨張する。だが、最後の効果が発揮される前にゾンビゲーマーが車輪のように回転しながら突っ込んで来た。
当たれば回転により何度でもダメージを与えてくる連続キック。それがゼインの頭上から迫ってきている。
ゼインは焦ることなくプログライズキーを押し込んだ。
『ジャスティスオーダー!』
〈PERFECT CRITICAL COMBO!〉
ゾンビゲーマーのキックがゼインの頭頂部を砕くかと思われた次の瞬間、高速化による見えない速度で振り抜かれた上段蹴りがゾンビゲーマーを一撃で蹴り飛ばした。
「あぐあっ!」
死ななくても痛みや衝撃はあるらしく呻きながら地面を跳ねていくゾンビゲーマー。だが、すぐに立ち上がり先程と同じくボタンを同時押しした後に今度はBボタンを押した。
「これならどうですか!?」
〈クリティカルデッド!〉
ゾンビゲーマーの足元から黒い影が広がり、そこから人型の影が這い出てくる、這い出てきた影はゾンビゲーマーと同じ姿となり、手を伸ばして一斉にゼインへ群がってきた。
一撃ではなく文字通りの手数による攻撃。しかし、ゼインにとっては恐れるに足りない。
『パラドクス・ファイターゲーマー!』
仮面ライダーパラドクスのもう一つの特性。格闘ゲームを体現した姿。
『執行!』
別のゼインカードがゼインドライバーによって細かく断たれ、その力がゼインに宿る。
ゼインの両手に装着される炎のパターンが描かれた赤い手甲。ゼインはそれを地面に叩き付ける。炎が噴き上がり、ゼインの周囲にいたゾンビゲーマーたちを全て焼き尽くす。
打撃武器兼発火装置である手甲でもう一度地面を打つと火柱が走り、後方に居たゾンビゲーマー本体を焼く。
「っあ!?」
ゾンビゲーマーが炎の熱で怯んでいる内にゼインはプログライズキーで技を発動。
『ジャスティスオーダー!』
〈KNOCKOUT CRITICAL SMASH!〉
ゾンビゲーマーが纏わりついていた炎を払ったとき、ゼインは既に完全に立っていた。ゾンビゲーマーはすぐに防御しようとするが、その動作に入る前にゼインの拳がゾンビゲーマーの鳩尾に突き刺さる。
息も声も出せない衝撃。ゾンビゲーマーの足が地面から離れる。ゼインは浮き上がったゾンビゲーマーに高速の拳打を浴びせる。
ゾンビゲーマーは全身を打たれた挙句、発火装置により火達磨にされていき、最後には会心の一撃であるアッパーがゾンビゲーマーの顎を突き上げた。
〈KO!〉
空高く打ち上げられたゾンビゲーマーは頭から地面に落下。そのまま動かなくなると変身が解除される。
不自然な方向に曲げられた眼鏡の男の首。生気を感じさせない目。ゾンビゲーマーは確かに不死の力を変身中に与えるが、ハンドレッドの技術ではゾンビゲーマーの力を完全には再現出来なかったらしく、許容を超えるダメージにより眼鏡の男は絶命をした。
ハンドレッドの末路らしく眼鏡の男の体が黒い塵へと還る。それを見たゼインは用が済んだように背を向けるが──何かを察知して振り返る。
そこには何故か紫色の土管が生えており、出口側面には多色で書かれた『CONTINUE』の文字が発光していた。
「言った筈ですよ? 不死身の力を存分に味わってくれ、と」
土管から生えるように消滅した筈の眼鏡の男が出てくる。
「……そういうことでしたか。どうやら貴方がゲンムからコピーした力はゾンビだけではないようですね」
「その通り」
眼鏡の男の手に黒いケースのガシャットが握られている。側面には白黒で描かれた『MIGHTY ACTION X』と一頭身のキャラ。
「便利なものですよ、コンティニュー機能というのは」
プロトマイティアクションXガシャットオリジン。最初に開発されたライダーガシャットであり、唯一の機能であるコンティニューを備えてある。
「そして、ただこれはただコピーしただけではありません。我々ハンドレッドの技術により──」
眼鏡の男の傍に画面が投影される。そこに表示されているのは『GENM Life Point 998』。
「オリジナルはライフが99まででしたが、我々は更にそれを増やしてライフ999を実現しました! さて!? 貴方は残り998のライフを削り切れますか!?」
眼鏡の男は勝ち誇ったように言いながらゾンビゲーマーへ再変身する。
「つまり、貴方はあと998回死にたいということですね?」
ゼインは全く動揺した様子を見せず、ゼインカードを投入。
『エグゼイド・マキシマムゲーマー!』
『執行! ジャスティスオーダー!』
ゾンビゲーマーは急に足元が暗くなったことに気付き、上を見上げる。そこにエグゼイドの巨大な顔がゾンビゲーマーを見下ろしていた。
巨大な顔は落下。ゾンビゲーマーは逃げる暇も無く押し潰される。
「ぐほっ!?」
上に乗っている巨大な顔から手足が展開される。それはマキシマムマイティXガシャットによって召喚される巨大パワードスーツ。搭乗者が居なくとも自律行動が可能なそれは、ゾンビゲーマーに馬乗りになった状態でその巨大な拳を何度も振り下ろす。
「がは! ぐお! ぐあ! はぐ!」
パワードスーツのパワーはゾンビゲーマーを上回っているので跳ね除けることも出来ず、容赦無く殴られ続ける。
ゼインは殴られている間にもう一つ召喚された武器を持ってゾンビゲーマーに近付いていた。
青緑色の片刃。中心部には3×3で三色に色分けされたタッチパネル。更に鍔側面には弧状の橙の刃が付けられ、片刃の反対側には銃身が設置されている。
ガシャコンキースラッシャーという名の複合武器にマキシマムマイティXガシャットをセット。
〈マキシマムガシャット!〉
〈キメワザ!〉
銃身に派手派手しいエフェクトと共にエネルギーが充填されていく。ゼインは身動きが取れないゾンビゲーマーの頭に銃口を突きつけた。
〈MAXIMUM CRITICAL FINISH!〉
発射された光線がゾンビゲーマーを撃ち抜く。すると、ゼロだった筈のゾンビゲーマーのライダーゲージが復活した。
エグゼイドに関連するライダーは変身するにはバグスターウィルスに適合していないといけない。マキシマムマイティXガシャットはそのバグスターウィルスを書き換えることができ、それによってゾンビゲーマーのバグスターウィルスは初期化されて不死の力を失った。
この力を──
「リプログラミング。これで貴方の不死性は消えた」
何だと、という言葉を叫ぶことも出来ないままパワードスーツに殴られ、遂にはライダーゲージが尽きる。
〈GAME OVER〉
ゾンビゲーマーが消滅する。しかし、すぐに土管が生えてそこからコンティニューされた眼鏡の男が出現した。
「無駄ですよ……! コンティニュー機能は記憶を引き継ぐことは出来ますが、ダメージなどは引き継がない! リプログラミングをして私のバグスターウィルスを無力化させてもコンティニューをすれば復活します……!」
強気な発言をしているが、眼鏡の男の顔色は悪い。肉体は完全回復しているが、精神的な疲労はしている様子。
「貴方は強い……! ですが、見たところ貴方の力は消耗品!」
ライフはまだ997残っている。長期戦になれば有利になるのは眼鏡の男。
「あとどれぐらい戦えますか!?」
長い、とても長い戦いであった。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
ゾンビゲーマーは死なない筈なのに今にも死にそうな程に弱々しい呼吸をしている。膨大にあったライフは削りに削られ遂に残り10を切っている。
「はぁ……はぁ……はははは……!」
しかし、ゾンビゲーマーは笑う。ライフを削った分だけゼインのゼインカードも大量に消耗させた。残り枚数も数える程になっている。
「私は……勝つ……!」
地獄のような長期戦を制したのは自分だとゾンビゲーマーは確信する。
だが──
『クロノス!』
ゼインがドライバーに挿入するのは時の神と同じ名を持つ最強格の仮面ライダークロノス。
『執行! ジャスティスオーダー!』
ゼインは手を掲げる。その手にはゾンビゲーマーが付けているバグルドライバーとは色違いの青緑色の可変型武器──ガシャコンバグヴァイザー
「何を──」
その声はバグヴァイザーⅡから発せられた音声により掻き消された
〈RESET〉
「──はっ!?」
気付けば何もかもが元通りになっている。戦闘による破壊の箇所も疲労も消費したライフすら。しかし、戦いの記憶だけはしっかりと残されていた。
眼鏡の男の前にゼインが立っている。文字通りリセットされてのなら、あれだけライフと時間を消費して消耗させたゼインカードも復活している筈。
眼鏡の男の内心を読むかのようにゼインは裁断した筈のクロノスのカードを見せ、眼鏡の男へ問う。
「あとどれぐらい戦えますか?」
数え切れない程の時間が経過した。
ゼインはクロノスのカードを見せながら問う。
「あとどれぐらい戦えますか?」
眼鏡の男は生気の無い、それこそゾンビのような表情で無言のままゼインの足元にプロトマイティアクションXガシャットオリジンを投げ捨てる。
ゼインはそれを踏み砕くのを見て、眼鏡の男はバグヴァイザーの銃口をこめかみに押し当てると自らの意思で自分の頭を撃ち抜いた。
「無駄な時間を省けました」
あと二話ぐらいでネタ切れになるのでそれまで書く予定です