レジェンドカメンライザーのグリップを握り、反対側の手はカードを取り出す。そこに描かれているのはレジェンドだが細部が異なる。それは未来を示すレジェンドの新たな姿。
レジェンドと共に描かれている黄金の獅子がカードの中で吼える。獅子もまた新たなる変身を待ち望んでいた。
レジェンドはカードをレジェンドカメンライザー中央部にあるスロットに挿す。
〈FINAL CHEMY RIDE〉
今のレジェンドの到達点。伝説を超えた者に与えられる姿。
「はああああああ……はっ!」
レジェンドカメンライザーで円を描きながら銃口が頭上を指すと引き金を引く。
撃ち出されるのは光弾ではなく、レジェンドがこれまでに集めてきたレジェンドライダーケミーカード。連なって幾重の輪となりレジェンドを囲う。
レジェンドライダーケミーカードが煌めきながら周囲を回る中でレジェンドはレジェンドライバーをベルトから外し、代わりにグリップを折り畳んだレジェンドカメンライザーをベルトにセットする。
〈LE・LE・LE・LEGENDARY LEGEND!〉
輪となったレジェンドライダーケミーカードは回転を速めて光輪を作り出し、その光輪がレジェンドに重なる。レジェンドカメンライザーにセットしていたカードがレジェンドの前に現れ、レジェンドカメンライザーと同じになるようにレジェンドの額に填め込まれる。
レジェンドの体が金の光を撒き散らしながら変わる。
仮面部分はレジェンドのときよりもより鋭角に形に変わり、首周りには実体化した二重の光輪が装備されており、襞襟または花弁のようにレジェンドを飾る。
最後に周囲に展開されていたレジェンドライダーケミーカードが光輪に収まることで伝説を超えた伝説が降臨。
その名も──
「あれこそがカグヤ様がレジェンドカメンライザーによって変身なされた姿……仮面ライダーレジェンダリーレジェンド! 伝説を超えた伝説が今ここに降臨なされました!」
自らの役目を全うする為、危険は承知で誰の耳にも届くように声高らかにレジェンダリーレジェンドの名を告げる。
レジェンド改めレジェンダリーレジェンドの姿をゼインは凝視する。まるで観察、分析しているかのように。
『──へっ! 多少見てくれが派手になっただけじゃねぇか!』
レジェンダリーレジェンドの姿を見てⅩドゥームズギーツが発したのは侮蔑の言葉。何倍もの大きさを誇るⅩドゥームズギーツが等身大のレジェンダリーレジェンドを恐れる理由など何一つ無かった。
「愚か者め」
Ⅹドゥームズギーツの言葉をレジェンダリーレジェンドは鼻で笑う。
「この輝きを理解出来ないのは貴様が無知だからだ。だが、カグヤ様は許そう、その無知を。そして憐れもう。ゴージャスな輝きの価値を知らない貴様の無知を」
上から目線の憐みにⅩドゥームズギーツの頭に一気に血が昇っていく。
『こ、この野郎……派手過ぎて目がチカチカすんだよ、お前は!』
「カグヤ様の輝きを直視出来ないのは、偏に貴様が醜悪なだけだ。真にゴージャスなものを目の当たりにして自分の醜さに気付かされるからな」
その言葉はⅩドゥームズギーツの単純な思考を振り切れさせるのに十分であった。
『殺すっ!』
殺意を乗せた拳をレジェンダリーレジェンドの頭上に降らす。それは解体用鉄球が降ってくるのに等しい。だが、レジェンダリーレジェンドは何一つ焦ることなくカードを取り出そうとし──
『執行!』
「ほう?」
──止めた。何故なら防ぐ必要がなくなったからだ。
振り下ろされる筈であったⅩドゥームズギーツの拳はゼインによって止められていた。
『な、何だ!?』
Ⅹドゥームズギーツがいくら押し込んでも拳が押し返される。Ⅹドゥームズギーツの全体重を乗せた一撃はゼインの腕二本に完全に力負けしている。
「ゴージャスな力だ。その力の持ち主の名は?」
レジェンダリーレジェンドはゼインが他のライダーの力を借りて戦っていることに薄々気付いていた。レジェンダリーレジェンドはゼインの赤くなった両手を見ながら訊ねる。
「仮面ライダースーパー1・パワーハンド」
「その名、覚えた。どうやら世界にはまだまだカグヤ様に相応しいゴージャスな仮面ライダーが存在するようだ」
昭和ライダーの存在に関心を示すレジェンダリーレジェンドを余所に、ゼインは両手を突き出す。すると、Ⅹドゥームズギーツの巨大拳が浮きあがり、ゼインとⅩドゥームズギーツの間に隙間が出来る。
『ジャスティスオーダー!』
プログライズキーを押すことでパワーハンドの力は完全にゼインのものとなり、ゼインは両拳でⅩドゥームズギーツの拳を打つ。
「パワーパンチ!」
その瞬間、Ⅹドゥームズギーツの拳は跳ね上がり、真上を通り越して後ろ方向まで反らされていく。肩の可動域を超え、激痛が走る。Ⅹドゥームズギーツは殴り返された拳に引っ張られて後ろへ倒れ込んだ。
『こ、こんな! バカな……!』
切り札を出したのに全く状況が変っていないことにⅩドゥームズギーツは酷く動揺する。戦う前にあった傲慢な自信は今や罅だらけになっていた。
『み、認められるか! ハンドレッドが! 俺様が! こんな……! こんな無様に……!』
しかし、それを受け止めることも認めることも出来ずⅩドゥームズギーツは実際に怒っていることから目を逸らし、否定する。
ここで逃走を選択していたのならまだ命は繋がっていたかもしれない。レジェンダリーレジェンドは基本的に自分の世界からは動かず、ゼインと異なる世界で出会うのはほぼ事故のようなもの。
しかし、著しく冷静さを欠いており元から先のことを考える頭の無い彼は、何の解答も見出せないまま行動に移ってしまった。
『くそっ! くそ! くそ! くそぉぉぉぉ!』
Ⅹドゥームズギーツは立ち上がると虚空を掴む。黒い光が伸び、一振りの両刃剣が出現した。レイジングソードと呼ばれる拡張武装なのだが元の形とは色と細部が異なっており、それはⅩギーツが愛用していたクロスレイジングソードというⅩギーツの為の拡張武装。
『来るな! 来るんじゃねぇぇ!』
クロスレイジングソードを振り回して牽制するⅩドゥームズギーツ。巨体のⅩドゥームズギーツに合わせた大きさなので、まるで鉄塔でも振り回しているかのように見える。
迫力のある光景なのかもしれないが、ゼインもレジェンダリーレジェンドもその場から一歩も動いていない。Ⅹドゥームズギーツがやっているのは牽制でも何でもない。ただの恐怖心から来る防衛行動であった。
ゼインもレジェンダリーレジェンドもその様子を傍観している。もしかしたら、呆れ果てているのかもしれない。強大な力も大きな図体も全ては矮小な中身を守る為の張りぼて。
ちゃんと力と向き合って使えばゼインやレジェンダリーレジェンドも苦戦を強いられる力を持っている筈なのに、力を力として認識してないせいか本物よりも遥かに劣る。尤も、それは目の前のⅩドゥームズギーツだけでなく全てのハンドレッドたちに当てはまることであった。
『おあああああああああっ!』
Ⅹドゥームズギーツは恐慌状態のまま跳躍。一瞬で数百メートルの高さまで到達する。
『全部消えろぉぉぉぉぉ!』
クロスレイジングソードを投擲し、バックルのスロットルレバーを押す。
〈XGEATS STRIKE〉
〈DOOMS GEATS STRIKE〉
Ⅹドゥームズギーツの全身から炎のような黒と赤の混合したエネルギーが噴出。それがⅩドゥームズギーツの右足に集束すると、Ⅹドゥームズギーツがキックの体勢から落下。先に投擲していたクロスレイジングソードの柄頭を足裏で踏み付け、宿していたエネルギーをクロスレイジングソードへ移す。
まるで神罰を体現したかのような禍々しい稲妻。或いは万物を吹き飛ばすミサイル。どちらにしろ破滅しか齎さない必殺の一撃が今ゼインとレジェンダリーレジェンドへ迫っている。
「ふっ」
しかし、レジェンダリーレジェンドはそれすらも一笑し自ら前に出る。
「そんなものはカグヤ様の前で無力と知れ」
レジェンダリーレジェンドは先程使い損ねたカードをレジェンドカメンライザーに挿す。
〈FINAL CHEMY RIDE〉
〈GO GO GO GORGEOUS! EX-AID MUTEKI GAMER!〉
幾つもの星が螺旋を描き、レジェンダリーレジェンドの体に装着されていく。
『輝けー! 流星の如く! 黄金の最強ゲーマー! ハイパームテキエグゼーイド!』
星々の中でレジェンダリーレジェンドは新生する。
余すところなく金色に輝く全身。五芒星が見える頭部とそこから伸びる髪のように幾本も垂れ下がった刃。体の各部には煌めく星をイメージした十字型のパーツが装着されている。
レジェンダリーレジェンドの力は、レジェンドライダーたちの力を更に引き出し彼らの最強フォームへ変身させる。
仮面ライダーエグゼイドムテキゲーマーが変身した姿の名だが、オリジナルとは一部ことなり胸部に追加された金のパーツはVの形をし、豪華な宝石が幾つも埋め込まれている。
レジェンダリーレジェンドにより一層ゴージャスとなった仮面ライダーゴージャスエグゼイドムテキゲーマー。伝説とゴージャスとリスペクトが合わさった姿である。
前方斜め上より迫りくるⅩドゥームズギーツの一撃。ゴージャスエグゼイドは恐れることなく自分から前進していく。
そして、衝突する両者。だが、その衝突は静かなものであった。
『何ぃぃぃぃぃ!?』
クロスレイジングソードの切っ先は確かにゴージャスエグゼイドに触れている。しかし、それだけであった。
ゴージャスエグゼイドは防御態勢を全くせず、両手を広げてその身を晒している。クロスレイジングソードは胸部の飾りに触れただけで攻撃を無力化され、一ミリたりともゴージャスエグゼイドに刺さらない。
「今のカグヤ様──無敵!」
ゴージャスエグゼイドが胸を張るとクロスレイジングソードが弾かれ、それに足を付けていたⅩドゥームズギーツも宙に舞う。
『うおおおおおおおっ!』
渾身の一撃すらも全く通じなかったⅩドゥームズギーツは叫ぶしかない。
「さあ。ゴージャスなゲームクリアを見せてやる」
〈LENGEND FINAL ATTACK RIDE E・E・E・EX-AID MUTEKI GAMER!〉
銃形態となったレジェンドカメンライザーのトリガーを引くと、ゴージャスエグゼイドは虹と金の光を放ちながらジャンプ。右足から燃焼でもしているかのような激しい光を込め、Ⅹドゥームズギーツへ突っ込んでいく。
『ハイパークリティカルスパーキング!』
最初の一撃がⅩドゥームズギーツの腹に入る。すると、ゴージャスエグゼイドは瞬間移動のように消え、今度は背中にキックを打ち込む。ゴージャスエグゼイドは次々に瞬間移動を行い、Ⅹドゥームズギースの全身にキックを浴びせていく。
ゴージャスエグゼイドの速さにⅩドゥームズギーツは追い付けずされるがまま攻撃を受け続ける。
そして、最後の一撃が額に打ち込まれてとき、それをスイッチにして時間差で全身の至る箇所からダメージの発生と同時に『HIT』『GREAT』の文字が浮かび上がり、最後には『PERFECT』『GORGEOUS』の文字が刻まれる。
『究極の一発!』
〈GO GO GO GORGEOUS!〉
『うごああああああっ!』
百を超える攻撃を一瞬に凝縮された攻撃を受け、Ⅹドゥームズギーツは絶叫し地面に落下した。
「──やれやれ。本当にしつこいな」
ゴージャスエグゼイドからレジェンダリーレジェンドに戻ると付き合いきれないという態度をとる。
ゴージャスエグゼイドの必殺技を受けてもⅩドゥームズギーツはまだ動いている。耐久力だけならレジェンダリーレジェンドもウンザリする程のものである。
レジェンダリーレジェンドは仕方なく最後の一撃を放とうとするが──
『ディケイド!』
──その声にレジェンダリーレジェンドの動きは止まり、ゼインの方を見てしまう。
ゼインはディケイドが描かれたゼインカードをゼインドライバーにセット。そして、ドライバーのトリガーを引く。
『執行!』
「何!?」
レジェンダリーレジェンドはそこで初めてゼインの能力発動を見た。今まで偶然──或いはゼインが意図して見せなかったのか──発動の瞬間を見逃していたが、ドライバーにより細かく裁断されるディケイドのゼインカードに言葉を失う。
「ああ、何と……!」
遠くで見ていたバトラーもゼインのカード裁断に啞然としている。
「貴様……よりによってカグヤ様の前でディケイドのカードを!」
我に返って怒りを覚えるレジェンダリーレジェンドであったが、ゼインはそんな彼を無視する。
『ジャスティスオーダー!』
仮面ライダーゼインプログライズキーを押すことでディケイド固有の能力が発動。すると、レジェンダリーレジェンドのレジェンドライダーケミーカードが輝き、その中からクウガから始まりキバまでの仮面ライダーが強制召喚される。
「これは!?」
初めて起こる現象に驚きを隠せないレジェンダリーレジェンド。次に起こることはレジェンダリーレジェンドにとって衝撃的であった。
『ファイナルフォームライド・オールラ・ラ・ラ・ライダーズ!』
その音声が鳴るとクウガたちの姿が変えられていく。
クウガはクワガタムシに似たクウガゴウラムに。アギトはホバーバイクのアギトトルネイダー。龍騎は赤い龍リュウキドラグレッダー。ファイズは巨大光線銃ファイズブラスター。ブレイドは巨大剣ブレイドブレイド。響鬼は大きなタカになったヒビキアカネタカ。カブトは変身アイテムそのもののゼクターカブト。電王は変身前の姿であるモモタロス。キバは巨大な弓のキバアロー。
それぞれの仮面ライダーと縁がある乗り物或いはアイテムとなり、ゼインの周囲に浮かぶ。
「止せっ!」
何をするのかを察し、レジェンダリーレジェンドは止めようとするが間に合わなかった。
『ジャスティスパニッシュメント!』
仮面ライダーゼインプログライズキーが押し込まれるのを起動スイッチにし、ファイナルフォームライドした仮面ライダーたちが撃ち出される。
立ち上がったⅩドゥームズギーツに最初に到達したのはクウガゴウラム。体当たりすると同時に発光。その身を砕いて大爆発を引き起こす。
『うぐおっ!?』
後に続く者たちも同様に次々と爆発。仮面ライダーとしての力を全て破壊に変える自爆特攻。
『うぐあああああ──』
Ⅹドゥームズギーツは連鎖する爆発に覆われ、最期は断末魔すら呑み込まれて消滅してしまった。
Ⅹドゥームズギーツの最期を見届けたゼインは背を向けて去ろうとするが、その足が止まる。ゼインの額にはレジェンドカメンライザーの銃口が突き付けられていた。
「……今のでハッキリとした。カグヤ様と貴様は決して交わることがないと」
「そのようですね」
レジェンダリーレジェンドの敵意にゼインは静かに答える。銃口を突き付けられて絶体絶命の危機──ではなかった。こうなることはゼインにとって予測済み。
レジェンダリーレジェンドがレジェンドカメンライザーを向ける一方でゼインもまたレジェンダリーレジェンドの喉元に手刀を突き付けている。いつでも『ジャスティスパニッシュメント』を発動出来る状態で。
「貴様の戦いには伝説たちへの敬意を感じられない」
「敬意? 敬意とは貴方のように仮面ライダーたちに
合理的な考え方をするゼインにとってレジェンダリーレジェンドのゴージャスという概念を理解出来ない。輝ける戦いを見ても今のような感想しか抱かなかった。
レジェンダリーレジェンドの敵意が一瞬膨れ上がる。だが、すぐに萎むとレジェンドカメンライザーの銃口を下ろしてしまう。
「貴様とカグヤ様では根本が違うな。これ以上の会話は無駄だ」
互いに相容れない存在と認識し、争うのも無意味と判断した。
「貴様にはカグヤ様の世界の住人たちを救われたという借りがある。それに免じて今日のところは見逃す。そして、二度とこの世界に足を踏み入れるな」
その言葉が嘘ではないことを証明する為にレジェンダリーレジェンドは変身を解除する。
「──貴方と戦うのは現状得策ではない。それに滅ぼすべき悪でもない」
総合的に判断してゼインも攻撃態勢を解き、カグヤの隣を通り過ぎていく。ゼインの姿が彼方に消えるまでカグヤはゼインを睨みつけていた。
「マイロード!」
バトラーが駆け寄る。
「……これでよろしかったのですか?」
「どうだろうな。……もしかしたら、何らかの形でまた会うかもしれない」
ゼインは一人我が道を行く。
悪を全て滅ぼす為に思わぬ寄り道をしたが、そろそろ元の世界に帰る時である。
「アウトサイダーズ……待っていなさい」
彼の名はゼイン。全ての悪意を滅ぼし、駆逐する為の救世主。
ゼインの戦いはまだ終わりを見せない。
これにて完結。
続きがあるとしたらアウトサイダーズが終わったぐらいかな