機械兵士の大群を率いて平行世界を侵略する組織ハンドレッド。
彼らの尖兵である機械兵士カッシーンらが都市や住人を蹂躙していく光景を高所から見下ろすのは、この平行世界の侵略を任された指揮官。
カッシーンとは異なりハンドレッドとして名乗ることと力を与えられた壮年の男は、全身を黒一色の衣服で統一し、赤い布を眼帯代わりに巻き付けて顔の左半分を覆っている。右目には引っ搔き傷のようなタトゥーを入れており、その出で立ちがハンドレッド共通の恰好である。
侵略は順調に進んでいる。だが、ハンドレッドの表情に余裕はなく若干の緊張があった。まるで何かを待っているかのように。
やがて出現する天に向けて伸びる黒い光の柱。それは別次元と繋がる裂け目であり、裂け目から別次元のエネルギーが七色の光となって零れ出ている。
「来たか……!」
ハンドレッドの男の緊張が強まる。それはある者が出現する前兆。多数のハンドレッドたちが犠牲となって積み重ねられ挙句、持ち帰ることが出来た数少ない情報である。
別次元の裂け目から飛び出したのは白い純白の騎士。
「お前がゼインか……!」
ハンドレッドはありったけの怨嗟を込めてその名を叫ぶ。
仮面ライダーゼイン。ハンドレッドが脅威と感じる数少ない敵の一人。
「ハンドレッドですね? 貴方も狩りに来ました」
敵意を剝き出しにする相手とは逆にゼインの対応は丁寧。しかし、言動には慇懃無礼さを感じさせる。
「同胞の仇、ここで取らせてもらう!」
ハンドレッドの男は、腹部にドライバーを装着。そして、左右の手に赤い外装の長方形の物体を握る。
まずは左の物体をドライバーの左側面に挿し込む。
『ゼツメツ! エボリューション!』
挿し込んだ物体はゼツメライズキー。過去に存在した絶滅種のデータが内蔵されたもの。
今度は右手に持つゼツメライズキーのロックを外し、展開状態にする。
『ミリタリーホーン!』
展開状態のゼツメライズキーを右側面に挿すとドライバー中央が左右に開き、正式名称ザイアサウザンドライバーが二つのゼツメライズキーのデータを読み取り、データを実体化させる。
「変身っ!」
〈パーフェクトライズ!〉
ハンドレッドの男の左右に出現する恐竜の頭部。片方はトリケラトプス、もう片方はカルノタウルス。
〈When the five weapons cross the Jet black soldier ZAIA is born〉
トリケラトプスとカルノタウルスの頭部が衝突し、一つとなると装甲に再変換され、中央に立っていたハンドレッドの男に装着されていく。
鋭角な黒い装甲。それを映えさせる白のライン。赤く輝く双眼もまた黒の中でより輝いて見える。冠の如く側頭部、額、額中央から伸びる計五本の角。
鋭さと威圧感を兼ね備えた漆黒の仮面ライダー。
〈I am the president〉
ハンドレッドの男に与えられた平行世界の力である仮面ライダーザイア。
変身後のザイアが構える。ボクシングのファイティングポーズ。他に武器は無く素手による攻撃を主としているようであった。
ザイアは前方へのステップで瞬時にゼインとの距離を詰め、牽制の左ジャブを放つ。
弾丸を超える速度で繰り出されたジャブは音の壁を突き破ってゼインに迫る。
しかし、ゼインはまるで予測していたかのようにジャブの軌道上からいなくなっており、ザイアのジャブは呆気なく空振りする。
ザイアは左ジャブを連発するがどれも空を切るだけでゼインに届かない。
「貴方もこの程度ですか?」
ゼインは躱しながら失望した言葉をザイアに浴びせた。
その言葉に強い怒りを覚えたザイアは、対物ライフルに匹敵する右ストレートをゼインへ打つ。
ゼインは伸びてきた右拳に正確なタイミングで掌を当てることで右拳を逸らし、その場で体を回転させてカウンターの後ろ回し蹴りをザイアの鳩尾に打ち込んだ。
「げはぁ!」
拳に乗せた勢いと蹴りの威力が掛け合わされたことでザイアは吹っ飛ばされる。
強烈な蹴りによりすぐには立ち上がられず膝を着くザイア。そんな彼に対してゼインは背を向けたままであった。
「……一体何を考えている?」
絞り出すような声でゼインに問う。
「今までの貴様は出会えば交戦するだけで我々に対して積極的に仕掛けようとはしなかった……! 貴様に何があった……!? 一体何故我々を狩り続ける……!?」
ザイアが言うようにゼインのハンドレッドに対するスタンスが変わった。ゼインは自分からハンドレッドを探し、葬るようになっていた。
「貴方たちが丁度良いからです」
「……何?」
「私は知りました。今の私では悪を駆逐することは出来ないと」
切っ掛けは平行世界の仮面ライダーゼインとアウトサイダーズとの戦い。平行世界のゼインは『ディメンション』というカードで他の平行世界のゼインを召喚した。このゼインもまた次元の狭間からその様子を見ていた。
ゼインの予測では自分たちの勝利。それを信じて疑わなかった。だが、結果はゼインたちの完敗で終わった。
予測とは異なる結果にゼインは初めて混乱というものを覚えた。数多の善意から生み出された絶対の正義が悪に敗れたからだ。
ゼインは独り自問自答を繰り返す。何故正義と善意が悪と悪意に敗れたのか。
長い自問自答の末に導き出した答え、それは──
『データ不足』
究極の善意と正義を得るには同じ位の悪意と悪を知らなければならない、という判断を下した。
そこで目に付けたのは──
「貴方たちハンドレッドです。貴方たちの実力はアウトサイダーズには遠く及びませんが、平行世界を支配しようとする悪意だけは評価出来ます」
貶し同然のハンドレッドへの評価。
「故にデータとして貴方たちは丁度良い存在なのです──無駄に数も多いので」
「ふざ、けるなぁぁぁぁ!」
ゼインの言葉にザイアは激昂する。ハンドレッド、延いては自分をただのデータとしか見ていないゼインが許せなかった。
ザイアは叫びながら立ち上がり、拳を振り上げてゼインに向かって走る。
ゼインはそんな彼に背を向けたまま──
『サウザー!』
ザイアの前身である五本角の黄金のライダーが描かれたゼインカードを自身のドライバーに装填。
『執行! ジャスティスオーダー!』
カードを断裁してその力を得る。その間にもザイアはゼインとの距離を詰めていたが──
「おおおおお! ぬぐぅ!?」
ザイアの動きが止まった。ザイアのドライバーに突撃槍と剣の刃先を組み合わせた刺突武器が突き立てられている。
ゼインは振り向きもせず、ザイアを突いている武器の柄頭にあるリングを引っ張る。
『ジャックライズ!』
「ぬおぉぉぉぉぉ……!」
召喚した刺突武器──サウザンドジャッカーにより対象のデータを抽出していく。それに伴いデータが抽出されることでザイアに一時的な弱体化が起こる。
データを抜き終えたサウザンドジャッカーが離れると、ザイアもよろけて後退する。そこでゼインは振り返った。
『ジャッキングブレイク!』
サウザンドジャッカーのトリガーを引きながらサウザンドジャッカーを振るう。抽出されたデータであるトリケラトプスとカルノタウルスの頭部が出現し、トリケラトプスの角がザイアを突く。
「ぐほあ!」
突き飛ばされたザイアを出迎えるのはカルノタウルスの牙。ザイアに噛み付き、何度も牙を突き立てる。
「ぐああああああっ!」
火花を散らしながら苦しむザイア。何度も噛まれた後に宙へ放り投げられる。
「貴方たちは本当に丁度良い相手です。貴方たちのお陰で私は新たな力を得ることが出来るのですから」
『ダークカブト!』
ゼインカードに描かれるのは黒い仮面ライダーカブト。
『執行! ジャスティスオーダー!』
「クロックアップ」
瞬間、ゼインが消える。そして、宙を舞っているザイアが空中で見えない何かによって弾かれ、空中を左右に跳ねながら段々と高く打ち上げられていく。
最後は打ち上げられていた時以上の速度で空中から叩き落され、いつの間にかゼインがザイアの頭を踏みつけていた。
「貴方の悪意はこの程度なのですか?」
それを引き出す為にゼインはわざとザイアの頭を踏み締め、ザイアのプライドごと蹂躙する。悪意のデータを入手したことで得た対象の煽り方である。
ザイアはそれを押し返そうとするが、ゼインの力の方が強くて顔を地面から離せない。
獣のように唸りながら何とか顔を数ミリ離す。しかし、すぐに頭を踏み付けられて再度顔を地面に押し付けられた。
「……ここまでですね」
ゼインはザイアに見切りをつけ、ザイアの体を蹴り飛ばす。ザイアの体は地面を転がっていった。
「ささやかなデータでしたが、ご協力には感謝します」
『リュウガ!』
仮面ライダー龍騎に似た漆黒の仮面ライダーが描かれたゼインカードが断裁される。
『執行! ジャスティスオーダー!』
『FINAL VENT』
飛翔してくる漆黒の龍──ドラグブラッカー。ドラグブラッカーが口から黒い炎の塊を吐く。
ザイアに命中すると黒い炎は固まり、ザイアの動きを封じる。
ゼインの体は浮き上がり、その背後にドラグブラッカーがやって来る。ゼインはその状態でキックの体勢となるとドラグブラッカーはその背に黒い炎を吐いた。
吐かれた黒炎と纏ったゼインは空中を駆け抜け、動けないザイアを蹴り砕く。
断末魔の叫びを上げることなくザイアは爆発する。
ザイアが爆発した後にはザイアの残骸は残されていない。代わりにザイアが描かれたゼインカードが地面に落ちていた。
ゼインはそのカードを拾い上げる。
「──さて、次の
善と正義を究めて再び救世主となる為、ゼインのハンティングはまだ終わることはないだろう。