その間に私は、特機部について調べてみることにした。
どうやら特機部とは、特異災害対策機動部という政府管轄の組織のようだ。その特異災害対策機動部の仕事としては、災害時の避難誘導やノイズの進路変更、被害状況の処理らしい。
そこまでは分かった。が、
それよりだ。実はこの三週間の間に、私が呪いのようなものを持っていることが分かった。
それは、ノイズが私を率先して襲ってくるということだ。
それが分かったのは、仕方無く買い物に出かけた時だった。私が外に出たタイミングで、たまたま人がノイズに襲われている状況を発見した。
何やかんやで私は、ノイズを倒すことが出来る力を持っている。が、今まで力を使ってきたのはどれも私が襲われた時ばかりだ。こんなことを断言するのは恥ずかしいが、私はヒーローでは無い。当然ながら、一般的な感性や道徳は持っているとは思うが、あいにく自己犠牲の精神や偽善的エゴの精神は持ち合わせていない。
だから、誰かの為にこの力を使って、一人でも人を助けようなんて心持ちにはなれない。私はまだ、自分のことで手一杯で、他社に手を差し伸べる余裕なんて無い。
そんな風に考えを固め、その場をそそくさと離れようとした。
そのつもりだったのだが……。
私がノイズを避けて、大きく弧を描くように迂回した時、木の枝か小石かは定かではないが、とにかく何かを蹴飛ばしてしまったのだ。
ノイズがその音を認識したのか、一斉に音の発生源である私に顔を向け、先程の襲われていた人など眼中に無いかのように私に一目散に襲いかかってきた。
おかげで私はノイズが自壊するまで逃げる羽目になった。ちなみにその襲われていた人は他のノイズに襲われたのか、元いた場所にはおらず、代わりに炭だけが残っていた。
炭になった人には申し訳無いが、そういうことが分かった為余計に迂闊に外に出ることが出来なくなったという訳だ。
しかし、ノイズが狙いを定め襲ってくる…、この現象には見覚えがある。それは、いつぞやにあった白髪の少女が持っていた杖のことである。
その少女は杖を使ってノイズを呼び寄せたり操っていた。ならば、特定の条件の人間を優先的に攻撃するようノイズに命令することも可能かもしれない。
それに、その少女が喋っていた、フィーネと言う言葉…。恐らく話し方からして人の名だろう。
そして、少女はそのフィーネという人物に従っているようだ。
そのフィーネという人物がどの様な人なのか分からないが、ノイズを操る杖を少女に渡して私を襲わせたのだ。ろくな者ではないだろう。
もしそのフィーネが私の力を知っているならば、いつか相まみえるだろう。できれば遭うようなことにはなって欲しく無いが……。
─────いい加減現実逃避はやめよう。ここで、私の今の視点に戻そう。
「やけにノイズがうろちょろしてると思ったら、何やってんだアンタ………。」
「……………。」
そこには、もはや見慣れたやばい格好をしたツヴァイウィングの歌姫の天羽奏と風鳴翼が立っていた。
確かに二人で来るとは言っていたが、このタイミングで来るのはやめて欲しいものだ。
とにかく、この場から逃げる時間稼ぎをしよう。
「おや、誰かと思ったら特機部二の方々ですか。わざわざ二人で来るとは、暇なのですか?」
「暇じゃねぇさ、アタシ達だってやる事がある。ただ………」
「アンタを野放しにしてる方がよっぽど問題だ!」
どうやら時間稼ぎは無理そうだ。仕方無い、ならば今回はこれを歌おう。
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「風鳴司令!例の者に二人が接触しました!」
「そうか……──緒川!ここは任せたぞ!」
「司令!?どちらへ!」
そう呼び止めようとする緒川の声は、俺の耳を素通りするのみだった。
(あの時ですら奴は全力を出していなかった。もしその全力が、翼や奏に向けられたとしたら…?)
(間違いなく、どちらかが死ぬかもしれん)
そこまで至った最悪の想像を振り払い、俺は速度を上げ、現場に向かった。
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なるほど、これが奏が味わった力か。道理で奏がボロボロになって帰ってくる訳だ。
【胸にこみ上げてく 熱く 激しい この想い】
【僕らは行く 最後の戦場(ばしょ)へ】
【手を取り合い 誓い合って】
(この歌の発生源はあの者か。シンフォギアに関連したものでは無いと司令は言っていたが……。それに、この歌。聴いていると力が溢れてくるような、身体が熱くなる様な感覚が……)
【明日の夜明け前に あの宇宙(そら)へと旅立つのさ】
【僕らが地球(ここ)にいたことだけ】
【どうか 覚えていて欲しいよ】
「クソッ!攻撃が通らねえ…、翼!」
「……ああ!」
STARDUST∞FOTON
逆羅刹
そこまで技を撃ったところで、ようやく歌う声が止まった。辺りは砂埃が立ち込めており、撃った技の威力を暗に示していた。
いくら不可思議な力を使うとはいえ、相手は人間だ。私はこっそり、奏に聞いた。
「奏、本当にこれしか無かったのか?あの者は歌っていただけに感じたが……。」
「いいや、アイツにはこれしかなかった。翼は記録でしかアイツのヤバさを知らないから言えるんだろ?」
「いやそんなこと…………奏。」
「分かってる。アイツはピンピンしてる。」
私は会話を中断し、奏と同じ方向に目線を向けていた。目線の先からは、先程と同じ声が聞こえていた。
【振り向くな 涙を見せるな】
【I GET THE POWER OF LOVE】
【明日を取り戻すんだ】
そして気付いた。
【「GONG鳴らせ!!」】
私達は、何かを間違えたのだと。致命的なミスをしたのだと、頭ではなく心で理解した。奏も、私も、再び歌を止めようと鬼気迫る思いで駆け出した
瞬間、私達は吹き飛ばされた。
私は何によって、どうやって吹き飛ばされたのかを見た。否、
そこには、おびただしい数のロボットが立っていた。しかも、どれも圧倒的な強さを感じるものばかりだった。
そこからは地獄。いや、地獄すらぬるま湯だと感じるレベルだった。
【今こそ立ち上がれ 運命(さだめ)の戦士よ】
巨大なトマホークやロケットパンチが飛んできたり
【稲妻の剣で 敵を蹴散らせ】
360°全方位からビームを撃たれたり
【安らぎを夢見る 鋼の勇者よ】
とてつもなく太いレーザーに焼かれかけたり
【守るべき未来と愛を信じて】
目で捉えられないほどのスピードで突っ込まれたり
【永遠へ!永遠へ!】
攻撃が終わった時には、奏も私もボロボロになっており、地に伏していた。
頭から血が溢れ、今にも意識が飛びそうだ。だが、奏が立ち上がっているのを見て、そんなことなど気にならなくなった。
辺りはロボット達に囲まれているし、私達も虫の息だ。はっきり言って状況は絶望的だ。
だからこそ、狙うしかない。
この現状を作り出した本体を。
奏も私も、考えは同じだった。
そして、同時に技を繰り出そうとした時、誰かに不意打ちをくらったのを感じた。
ただでさえ頭から血が溢れ意識が朦朧としていたのだ。そんな状態で意識外から攻撃をくらえば気絶するというのも。
そんな気絶する直前に目にしたのは、私にとってとても大事な人だった。
(叔父様……。)
そこまで意識がまわったところで、私の意識は完全に暗闇に落ちた……
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「風鳴司令………」
「緒川、二人を頼む。」 「…………はい。司令も、ご無事で」
そう言って緒川が二人を連れ視界から消えたところで、俺は目の前の者に振り向いた。
「すまない、待たせたようだな。」
(…………顔はよく分からないが、体型、データでの音声からして男か。だがそれ以上に………)
俺の目は、周りのロボットに向けられた。
(成程、二人はこのロボット達にやられた、ということか。数も相手の方が多い。交戦しないようにせねば…。)
「突然ですまないが、まずは謝罪をさせてくれ。」
「君を襲ったあの二人、あの子らは私の部下でね。どうやら独断で行動してしまったようだ。全く持って、こちらの監督不届きだ。」
「真に申し訳なかった。」
(さて、彼はどうするか?)
「………………」
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「真に申し訳なかった。」
………………どうやら、またやらかしたようだ。
取り敢えず状況を整理しよう。
私の目の前で頭を下げている男性は特機部二の司令官、つまり私を襲ってきた天羽奏と風鳴翼の上司である。今回の件は部下が起こしたことだが、上の立場である自分の監督不届きである。よって自分が謝るので許して欲しいとのことだ。
うん。別に許すでいいからさっさと会話を終わらせてこの場から離れよう。
「頭を上げてください。私は今回の件について気にしていませんので。」
「おお!それならば」
「ただ」
「───ただ?」
「今回損害を被ったのはこちら。せめて何らかの対応してもらいたいのです。」
「………ああ、分かっているとも。私ができることなら何でも言ってくれ。」
「そうですか。それでは、一つ。もうこれ以上、
「………分かった。二人にも、よく言い聞かせておこう。」
そこまで言ったのを確認し、私は特機部二の司令官に背を向け、自宅に向かって歩き始めた。
────
「ああ、疲れた……」
そう心の訴えを口に出し、ほぼ日課となっているベッドへのダイブを果たした私は、改めて今日のことを振り返った。
(あの男性の言い方からして、今回のは予想外、今までのは故意だったということだろうか。何にせよ、これで余計に絡まれることが無くなるといいが………)
「何にせよ、今日はもう寝よう。」
そう口に出し、起きたことを振り返るのを辞め、夢の世界へ走っていった──
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「お帰り、弦十郎君。どうだった、あれは。」
「…………結論としては、あれに干渉しないことになった。」
「あら?どうして?弦十郎君も気になってたんじゃないの?あれの力。」
「………確かに彼の力は気になるが、それ以上に彼を刺激した時、こちらが受ける被害はどうなるか。直接会って改めて、理解した。だからこちらからは、もう彼に接触もしなければ干渉しない。以上だ。」
そう言って弦十郎君は部屋を出ていった。それを確認した後、私は一つの映像データを開いた。
そこには、部屋を出ていったばかりの風鳴弦十郎と、顔が見えないが、歌っている人間と、その人間を守護するように立つロボット達の姿があった。
それを見て、私は研究者としての思考力を活かし、今一度こいつについて考察し始めた。
(最初は二機のロボットが、次に使った時には刃物が降り注いだような跡が、そして最後に大量のロボットの出現…………こいつは力を使う程、強くなっているようだ。それに、徐々にフォニックゲインの量が増加している。もしこいつが、あれの強奪を邪魔をしてくるのなら………。)
「弦十郎君に頼んで、起動実験を早めてもらおうかしら?」
始まりは、近い。