(ライブ会場での災害から二年……。とても長かったな…。)
私はあの後ライブ会場でのことについて調べると、奇跡的に死者が出ておらず、重症者多数、軽傷者少数で済んだというニュースが流れているのを見つけた。
もし私があの場所に行かなかったり、歌わなかったのならと考えると、想像がつかない。
しかしこれが現実だ。死者が出ず、負傷者のみで済んだ、まさに奇跡だと持て囃される始末。私としては、これで良かったのだろうか疑問が残るばかりだ。
それともう一つ。あんな大勢で歌ったことの弊害だろう。なんと、私の歌っている姿が写真や映像で撮られていたのだ。
幸い、どれも顔が写っておらず、情報が漏れていることが無かったのは不幸中の幸いだろう。というか顔が写っていないことをいい事に、ネットやテレビで取り上げられるのは、些かどうかと思うのだが……。
まあ私に実害が出ていないのだ。出てきたらその時だろう。
ちなみにだが、私はこの二年間で専門学校を卒業し、現在音楽プロデューサーとして活躍中だ。
まだまた無名ではあるが、いつかこの世界の歌手に、前世の曲をカバーしてもらいたいものだ。
さて、そんな感じで私は、いつもの日常を過ごしていたのだが………。
「助けてください、楽さん!!」
勘弁してくれ………。
時は5分前に遡る……。
──────
『『あっ。』』
『楽…さん…?』
『ああ……、響くん。久しぶりだね。元気にしてた』
『いや今それどころじゃないんです!ノイズが!!』
『ノイズが……。──それで、その子は?』
『親とはぐれちゃって……。安全なところまで連れて行きたいんですが、私だけじゃ……。だから……』
『助けてください、楽さん!!』
──────
と言う訳だ。
私としては自分だけでも生き残りたいのが本音だが……。彼女らはまだ子供、対して私は前世も合わせて40後半…。どちらが生きるべきか分かり切ったことことだろう。
「響くん、彼女は私が背負おう。その方が動きやすいだろう。」
「えっ、でもそれじゃ楽さんが……。」
「私はいい、これでも大人だ。子供の君が背負おうより、私が背負おう方が合理的だ。それにノイズが来ているんだろう?ならば急がないと!」
「……はい!!」
そう会話をし、響を先頭に後ろに私が着く形で道を走り抜けた。
最初はノイズのいない道を通れていたが、次第にノイズの数が増え、通れる道が少なくなっていた。
そして………
「いっっ!」
響がこけてしまった。
恐らく道が荒れてきて段差にでも躓いたのだろう。私は急いで響に駆け寄った。
「大丈夫か!?響くん!」
「私は大丈夫です……。でも、周りにノイズが…!」
そう言う響と同時に辺りを見回すと、辺り一面ノイズに囲まれていた。
どうやら私達は知らず間に、挟み込まれる形となっていたようだ。
このままだと……不味い……
そんな私の不安を感じたのだろう、背負っている女の子からは今にも泣きそうな啜り声がしている。
(この状況を何とかするには、一つしか無いな。)
(私が歌うしかないか……)
そう覚悟を決め、行動に移そうとした。
すると、響が女の子に「生きるのをあきらめないで!」と言った。するとその直後、響は何かを呟き、
謎の光に包まれた。
私は困惑した。突然過ぎて頭に情報が入ってこない。
そして謎の光が消えると、そこにはどこかで何度も見た変な服を着た響が立っていた。
女の子はかっこいいと言っていたが、私としては困惑に次ぐ困惑だった。響本人も困惑しており、何とも言えなかった。
そんな格好になった響は、歌いながらノイズに突っ込んで行った。
見たことがあった為何となく予想はついていたが、どうやらあの服にはノイズと触れても炭にならず、ノイズを殴れるようになるよぅ。成程、だからツヴァイウィングはあんな服を着ていたのか。
そんな風に考えていると、響がこちらに降りてきて「逃げましょう!」と言った。流石に響がノイズを殴れるようになったとは言え、相手の方が数が多く、分が悪い。私はすぐに肯定し、女の子を連れて走り出そうとした。
その時
いきなり剣と槍が降り注ぎ、ノイズを串刺しにした。
この技には見覚えがあった。確か……
そう思いながら剣と槍が降ってきた方向に振り返ると、これまたやばめな(私は見慣れたが)服を着た風鳴翼と、元気になった様子の天羽奏が立っていた。
私は、今までのことを振り返り、この後どうなるかを予想し、脳内で対応を練り始めた。
その間にも翼と奏はノイズを屠っていき、最後に巨大なノイズまで倒してしまった。
ノイズが消滅し、安全が確保された為か、人が集まってきた。女の子は女の人と抱き合って笑っている。恐らくあの子の母親だろう。
「良かった。あの子がお母さんの元に帰れて。」
いつの間にか服が変わっている響が、私の隣に立ちそう呟いた。
「ああ、本当に良かった。響くんがやってくれなければ、私達はどうなっていたことか……。」
「いえ、楽さんがあの時あの場所にいてくれたお陰です。楽さん、ありがとうございました!」
そう言って感謝の言葉を私に伝える。私は何だか照れくさなりながらも、「こちらこそ、ありがとう。響くん。」と言葉を伝えた。
その時の響の顔は、今まで見たことが無い明るい笑みだった。
そんな話をしていると、奏と翼とその多数の黒スーツの男達が近づいてきた。
私はいつでもアレが使えるように、心の中で準備した。
響が去ろうとするのと同時に、私もこの場から逃げようとしたが、いつの間にか黒スーツの男達に囲まれた。翼と奏が言うには、「色々聞きたいことがあるので連行する(意訳)」ということらしい。
面倒になることが確定したのが私は、周りに聞こえない声で小さく呟いた。
何かを呟いたのに気付いた響が私に聞き返すのも束の間。
「Arrrrrthurrrrr!!!」
「よう坊主!面白いことになってるではないか、余も混ぜよ!!」
「酔狂よの、雑種。だがその道化っぷり、中々に笑えるぞ?」
そして始まるカオス
バーサーカーとライダーが突っ込み、アーチャーが弾幕を張るかの様に武器を飛ばす。辺りは徐々に崩れ、穴が空き、ホコリが舞いつつある。
そんな様子を眺める私の背中を突く者がいた。こっそり後ろに振り返り、またまた背後に立っていた
───────
あの後ひとしきりに暴れたライダーとバーサーカーとアーチャー、私を逃がしてくれたアサシンに感謝し、家についた。
今私は自身の部屋で一人寂しく座っているのだが、実際には七人が霊体に近い状態で口論をしており、中々五月蝿い。
そしてその話はいきなり私に矛先が向いた。
「しっかし、余や貴様らがこんな坊主によって生まれたとはなぁ…。」
「ふん。座に干渉してきた時は、流石に本体の我も驚いていたぞ。」
「今の私は、
それを聞いて私は思わず思っていたことを口に出した。
「ちょっと待ってくれ。ということはあなた達は、疑似サーヴァントやデミサーヴァントの類い、ということか?」
「あっているようで、あっていないともいえるな。」
「今の我々はサーヴァントの様にマスターから魔力を供給して現界するのではなく、貴様の歌によりこの世界に誕生、存在を許されている状態だ。もし貴様が望めば我々はすぐに霧散し、消滅するだろう。」
「それに、本来英霊として召喚される筈の我々は、複数のバグを持っている。例えばセイバーが話した別の世界での聖杯戦争の記憶。これは本来、英霊として呼ばれる際消去される記憶である。だが我々はこの記憶どころか、
「そして、この様なバグを抑止力は許容しない。恐らく我々の情報、記憶は座に還らず、闇に葬られるだろう。」
「なので、私達という存在を知るのはあなた。創造者であり現マスターであるあなたのみなのです。」
そんな情報を聞いて、私は今にも倒れそうだった。受け止める情報が重すぎたからだ。
そんな様子を見て彼らは私を心配してくれているようだ。
「そんなに驚くな、坊主。余もこやつらも、貴様には感謝しておるのだぞ?」
「混ざったとはいえど、私達の人格が歪められているわけでは無い。かなり自由だ。」
「我もそいつらも退屈していた。暇つぶしに丁度いい。記憶が残らないのもあくまで可能性だ。抑止が邪魔するというのなら我が潰すのも一興だ。」
とまあこんな感じで彼らは私を案じてくれているが、私としては色々と辛い。私のエゴで創ってしまったのなら、仕方無い。
私は彼らに問い掛けた。
「一応、最後に質問を……。」
「許す。王であるこの我が許す。告げよ。」
「私がこの先何を行おうと、あなた達は私についてきてくれるか?」
その言葉によって、部屋には沈黙が走った。自分でもどうかと思う質問をしたが、これだけは答えて欲しいと思い問うた。
暫くして、セイバーが最初に口を開いた。
「あなたは私達の召喚者、創造者、そして……、形は違えど私達のマスターです。私はこの身が朽ち果てるまで、あなたの身が終わるまで、あなたと共に歩みましょう。」
そうしてセイバーは答え、私の手を握った。その手は温かく、やわらかく、同時にその人生がどのようなものであったか、感じる。そんな手であった。
次にランサーとライダーが口を開いた。
「俺もセイバーと同じだ。俺と貴様、どちらかが消えるまで貴様に付き従おう。」
「あっはっは!こうも先に言われてしまえばどうしようもない。余も貴様と共に生きようぞ!」
そうしてランサーは握手を、ライダーは拳を突き合わせた。どちらも戦士と、王として生きた者らしい、硬い手だった。
次にキャスター、アサシンが口を開いた。
「私はあなたに呼ばれ前のこの姿の時、様々な悪逆を尽くしてきました。しかしあなたに呼ばれ、昔の私と混ざったことによって、悪しき私は消え去りました。まずそれに多大なる感謝を。」
「しかし消え去ったとはいえ、元がキャスターの私なのが事実。もし私がまた狂ってしまったその時は、私を消してください。そうしてくれるのなら、このジルドレェ、あなたと共にありましょう。」
「私は、あなたに何かを感じている……。人では無い何かを……。だがそれが何かは分からない。分かるその日まで、あなたに仕えましょう。」
そしてキャスター、アサシンと握手した。どちらも冷たく、少し硬い手だった。
私はバーサーカーに顔を向けた。片膝を立て、首を下に向けた状態であった。
私は取り敢えずバーサーカーに問い掛けた。
「私と共にいてくれるか?」
するとバーサーカーは首を立てに振り、私の手を握った。鎧越しだったが、思いは何となくと伝わった気がした。
最後に私は、ずっと黙っているアーチャーに顔を向けた。その顔はキレているようにも笑っているようにも感じない顔だった。
目と目が合いながら5分が経過した頃だろう。先にアーチャーが言葉を発した。
「どうした雑種?我に問わぬのか?」
「いや、あなたは一緒についてこないと思いまして。」
「はぁー……、たわけが!」
そうして座っていたアーチャーは立ち上がり至近距離まで近づいた。急な出来事だった為か他の英霊達が殺気立っていた。
そんな状況でもこのアーチャー、最古の英雄王ギルガメッシュは口を開いた。
「我は退屈していたのだ!座というただ召喚を待つだけの場所で待ち続ければな。したらどうだ!本体の我ですら知らぬ世界に来た、これを楽しまなくてどうする?」
「しかしサーヴァントの様なものとして、貴様がいないと動きも消えもできぬのは癪だった。だが今までの行動、まことに愉快であった。」
「よって、我も貴様に免じ、貴様を助ける程度ならしてやろう。」
そう言ってアーチャーは再び座った。他の英霊達からは殺気が消えており、代わりにアーチャーに向ける目が変わっていた。
それにアーチャーが気づき苦言を発した。
「なんだその目は?我にその目を向けるな!」
「いや……英雄王がいつもより優しい…?」
「あの頃の貴様はどこに…?」
「疲れているのか、英雄王?」
「その生暖かい目、不敬に値する!!!」
セイバー、ライダー、ランサーがアーチャーをいじり、アーチャーはキレた。
そしてキレたアーチャーが技を展開しようとし、キャスターとバーサーカーが間に入った。
「あなた達、このままだとマスターが怪我しますぞ!武器を収めよ!」
「Arrrr!!」
そんな様子を見て、私はついに、笑ってしまった。今まで笑ってこなかった反動だろうか。それとも、前世で見たキャラクター達が仲睦まじく話していて嬉しかったのか。私自身ですら分からなかった。
話はまだまだ続き、夜は更けていった。
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
響くんの検査が終わり、戻ってきたところで、俺は話を切り出した。
「さて、響くんの検査が終わったことだ。──響くん、この男について何か知らないか?」
「誰ですか、この人?」
どうやら、彼については知らないようだ。それは好都合だと、俺は響くんに彼の説明を始めた。
「響くんには説明したかもしれないが二課の目的はノイズの撃破、及びノイズによる被害を減らすことだ。ここまではいいか?」
「はい……。」
「そして、先程響くんが言ったシンフォギア以外によるノイズの倒す方法だが……。残念ながら、現時点において存在しない……
「あのー、さっきから話してるこの人って誰なんですか?」
「そうか、こいつの説明がまだだったか。……この男は二年前から活動し、特殊な方法でノイズを倒して続けている。名前も不明、何者か不明。俺達はこいつを、アンノウンと呼称している。」
「アンノウン……」
「俺達は二年前にこいつに接触し、何とか協力してもらえないか交渉したんだが……翼と奏が怪我を負う結果だった。」
「あの翼さんと奏さんがですか!?」
「ああ……。奴は文字通り桁違いだった。今の翼や奏と響くんが挑んでも、返り討ちに遭うだろう。」
「そんな………」
「幸い、アンノウンはこちらから仕掛けなければ攻撃してこない、極めて無害な存在だ。もしノイズとの戦闘中にアンノウンが来たなら、すぐに撤退してくれ。でなければ、響くんがどんな目に遭うか分からない。一先ず、俺からは以上だ。」
「はい………分かりました……」
そう言って響くんは部屋から退出した。すると、今まで黙っていた緒川が口を開いた。
「………司令」
「ああ、分かっている。………結果はどうだ?」
「はい……。二年前のライブでの証言、そして今回起きた何者かの襲撃、間違いなくアンノウンが関係していると思われます。」
「そうか……。こちらでもデータを収集しよう。」
(アンノウン……貴様は何者なんだ……?)
男の中の男もまた、正体不明の彼について悩むのであった。