ペコリーヌ「キャルちゃーん☆…って、違う!?」セリカ「ここ、どこ!?」   作:司偵

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アロナ「庭園?」アメス「教室?」

「風?」

 

 急に吹き込んできた風にアメスは顔を持ち上げる。

 

 その場所は美しい花々に囲まれた庭園…しかし、そこにいるのは彼女だけ。この場所に普通の人間は入ってくる事は出来ないのである。

 しかし、そこにガラガラとまるで場違いの様な引き戸を開く音が響いた。アメスは何事かと慌てて音の聞こえてきた方へと振り向く。すると、そこには引き戸があった、先程までそこには何も無かった筈なのに。そして、その中から声が聞こえてきた。

 

「えっと、ここは…庭園…?」

 

 そこには空色の髪色をした小柄な少女がいた。

 

「あなた、何者?」

 

 見た事が無い見知らぬ人物がこの場に突如現れた事にアメスは警戒するような表情を浮かべた。

 

「あ、その…怪しいものではありません。ただ、目の前に変な扉があったので開けてみたらここに…」

「変な扉ねえ…」

 

 確かに謎の人物が現れた引き戸は奇妙なものであった。何もない空間にポツンと引き戸だけが存在している。そして、アメスはその引き戸の先を覗き込んでみる。

 

「教室…?」

 

 引き戸の向こうは教室のような部屋であった。しかし、壁は崩れており、床は水浸しである。

 

「あんまり見ないでください。えっと、その…恥ずかしいので…」

「そう、悪かったわね」

 

 アメスは視線を逸らす。

 

「いえ。こちらこそ、勝手に入ってすみませんでした。それで、ここはキヴォトスのどこのシステムでしょうか?」

「どうやってここに入ったのか知らないけれど、アクセス先間違えてない?そんな名前の所知らないわよ」

「ん?キヴォトスはシステムの名前ではなく…」

 

 謎の人物は首を傾げている。

 

「ところで…結局、あなたはどちら様?」

「えっと、申し遅れました。私はアロナ、シッテムの箱のメインOS…そして、システム管理者です」

 

 聞いた事が無い名に今度はアメスが首を傾げる。

 

「聞いた事が無いわね…あたしはアメス。まあ、そっちと似たようなものでここの管理をしているわ。色々と雁字搦めだけれども」

「どうも。それで、ここは?ここに着くまでのログを辿ってもどうしても分からなくて」

「あなたぐらい賢いAIなら聞いた事もあるでしょう。ここはレジェンド・オブ・アストルムの成れの果てよ、変な事に巻き込まれる前にさっさと帰った方がいいわ」

「レジェンド・オブ・アストルム…?いえ、その…聞いた事が無くて」

 

 ここ、レジェンド・オブ・アストルムはとんでもない規模の大事件を起こしており、知名度は否が応にでも高い。外部の情報収集をあまり行わない人工知能なのだろうか、とアメスはアロナの様子を見て考える。

 しかし、それなら何故ここに迷い込んできた?疑問は次々浮かぶ。見たところ、彼女は不審な動きはしておらず、無害と言っていいぐらいだ。システムのセキュリティスキャンにも引っかかるような動きは無い。だが、そう思わせるように相手が動いているなら話は別だ。よって、警戒を怠る事は出来ない。

 

「レジェンド・オブ・アストルム…検索してみましたが、見つかりませんね」

「そんなまさか」

「キヴォトスのネットワーク全体でも検索してみたのですが、うーん…こんな通路が出来た原因が分からないから、せめてどこに繋がってしまったのか程度は調べたかったのですけど」

「ねえ、そのキヴォトスって何?」

 

 アメスの問いにアロナは驚いたような表情で答える。

 

「えっ…キヴォトスはこの学園都市の名前ですよ?」

「そんな名前の学園都市なんて聞いた事ないけど…」

 

 話が噛み合わない。相手が一体どこから来たのか、アメスはこの事態を調べようと空間にウインドウを立ち上げる。しかし、どうにもログを追う事が出来ない。そして、謎の引き戸の正体も掴めない。

 

「妙ね。本当にその扉が何なのか分からない。壊れたデータにしてもおかしいわ」

「そうなんです。もう本当に何が何やら…あの、アメスさん。あなたもあの引き戸、潜ってみてもらってもいいですか?検証したいので」

「え?」

「普通ならこんなお願い絶対しません。でも、今は明らかに普通じゃないから…」

「駄目よ、あたしはここから出られない存在だから。うーん」

 

 しかし、そうは言うものの気にはなる。だが、アメスはこの庭園の外に出ると消えてしまう恐れすらある。

 

「じゃあ、試しに片手だけ…」

 

 全身飛び込まなければ何とかなる筈、そう判断して戸の中に片腕を突っ込んだ。普段なら即座に自身の体に異常が発生する。しかし…

 

「え、嘘。外に出ても何も起こらない…?」

 

 何も起こらない…そんな事実にアメスは愕然とする。次に片足を踏み入れる。足元には水に触れる感覚、意を決してもう一歩。全身が戸を潜る。

 

「本当に何ともないわ…」

 

 アメスは崩壊した教室のような部屋を見回しながらそう呟く。そして、別のシステムの中に入った筈なのに、元のシステムの操作は変わらずに実行できる。だが、今の自身の状況を確認したくてもうまく表示する事が出来ない様子だ。

 

「何かしら観測できると思ったのですが、駄目ですね。アメスさんが入った筈なのにシッテムの箱に変化が生じた様子も無いし」

 

 アロナも戸を潜って教室に入ってきた。

 

「うーん、今の私だと権限を大して行使できないのに…どうしよう」

「どういう事?あんた、ここの管理OSなんでしょ」

「ええ、そうなんですけど…まだ、このシッテムの箱の正式なユーザーがいなくて、だから大した事も出来ない状況なんです」

「ふーん、つまり待機中なのね」

「ええ。だから、この扉もどうしようも出来なくてアメスさんにもご迷惑を…」

 

 そんなしゅんとした様子のアロナにアメスは言う。

 

「まあ、実害は無いからそんな落ち込まなくても…そうね、面白い話でもしてあげる」

 

 そう言うと、アメスは空中にウインドウを展開する。そして、映像が流れだす。

 

「これはプリンセスを守る、ある騎士のお話…」

 

 

 

 

 そして、アメスが語り終わると…アロナがボロボロと涙を流し、わんわん泣いていた。

 

「聞くも涙です…記憶を失っても人々の為に働き戦うなんて…!!感動しました!!」

「あはは…喜んでもらえたようで何よりだわ…」

 

 思った以上の相手の反応にアメスは軽く引いていた。すると、ハンカチで涙を拭いたアロナは空中にウインドウを立ち上げた。

 

「多分、そっちは外の世界のシステムですよね。だから、ちょっとキヴォトスの街の様子でも見てみます?」

 

 ライブカメラの映像ならいけるかな…と、アロナが呟くとウインドウに多くのビルが乱立する街並みが映し出された。

 

「これがキヴォトス、沢山の学校から構成された学園都市です」

「見た事ない街並みね…え?ちょっと、動物が服着て二足歩行で歩いているんだけど!?」

 

 アメスは仰天したように指を差す。

 

「え?生徒さん達以外はこんな感じですよ。あと、ロボットもいます。ほら」

「ねえ、一点確認したいのだけど…キヴォトスってゲームか仮想現実の部類?」

「いえ?街の名前ですよ。見ての通り、人々がこうして生活する立派な街です」

 

 胸を張ってそう答えるアロナを見て、アメスは頭を抱えた。アストルムの外の現実の世界にあんな二足歩行して人間の様に生活する動物はいない…よって、ここが本当にフィクションの世界で無いと言うのなら、話はかなりややこしい事になってしまう。

 

「えっとね、アロナ。私の世界ってさっきの話聞いて分かるように一応ゲームの世界なの」

「ええ。そして、大変な事になっていて大騒ぎって」

「で、ゲームって事は当然外の世界は現実なのよ」

「そうですね。そうなります」

「で、私達の外の世界にあんなロボットや動物風の住民達は存在しないの」

「あー、外の世界ってやっぱりそんなに違うんですね。キヴォトスの常識が通じないみたいですし」

 

 あはは、と笑うアロナを見てアメスは再び頭を抱えた。

 

「えっ!!?」

 

 アロナが突然大声を出す。どうしたのかと、アメスが問う。

 

「アメスさん…あれ!あれ!!」

「落ち着いて、言葉で表現しなさい」

「あそこに映っているのって、さっきの話の騎士さんじゃ!?」

「え…嘘、ユウキ!?」

 

 そこにはアメスのよく知る人物が高層ビルの狭間に立っていた。周囲には学生らしき人々が立っている。そして、彼女達の手には現代的な銃が…

 

「いや、ちょっと!なんでみんな当たり前のように銃持ってんのよ!!」

「ここでは銃を持っているのが当然ですので」

「はあ!?」

 

 アメスは慌ててアストルム内でユウキの姿を探す。しかし、見つからない。これは本格的に不味い事態に発展したらしい。すると、庭園の方から声が聞こえてきた。

 

「やあ、早速で悪いけど…君も事態は把握しているね。という事で対処を…え?何、このまるで学校みたいな引き戸…」

 

 そこには赤い髪をした女性が口をあんぐり開けて驚いた表情で立っていた。

 




AIとAI
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